ワニ狩り連絡帳 このページをアンテナに追加 RSSフィード

       

■ 2009-01-31(Sat)

[] 大橋可也&ダンサーズ新作公演『帝国、エアリアル』joint BLIND EMISSION a.k.a.伊東篤宏 Featuring HIKO @初台 新国立劇場 小劇場 12月28日  大橋可也&ダンサーズ新作公演『帝国、エアリアル』joint BLIND EMISSION a.k.a.伊東篤宏 Featuring HIKO @初台 新国立劇場 小劇場 12月28日を含むブックマーク

 「書け!」というリクエストがありましたので、今ごろではありますが、遅ればせながら感想などを書かせていただきます。

 このタイトルの「帝国」はおそらくネグリ/ハートの<帝国>でしょう。「格差社会」を表現の重要な課題と考えられている大橋さんであれば、当然のことでしょう。決して「スター・ウォーズ」のダース・ベイダーとかが支配する「帝国」ではありません。<帝国>と発言する時には両手を耳の横にあげ、人さし指と中指を伸ばして「チョキ」の形にし、その人さし指と中指をピョコピョコと動かして、そのことばを強調しなければならないのです。たとえ冒頭に登場するスキンヘッドの大橋さんがダース・ベイダーのような支配者に見えたりしたら、それは解釈違いです。いや、普通そういう解釈はしませんが。

 ネグリ/ハートの語る<帝国>とは従来の歴史上の「帝国」と異なり、グローバリゼーションの動きと深く関わりながら、支配の姿を見せない支配の形をとるわけです。たとえかつてのブッシュ政権下のアメリカが「帝国」のように見えようとも、世界中あらゆるところに<帝国>の構造は存在しているということです。もちろんそのような<帝国>構造のただなかにある日本でも、小泉〜安倍〜福田〜麻生という近年の首相たちそれぞれが「指導者」として振舞っているわけではないという構造は多少はわかりやすいのではないでしょうか。そのような<帝国>の構造を「エアリアル」と捉える視点はいいですね。

 大橋さんは、このような現在に蔓延する<帝国>がアーティストのあり方をも規制してしまっていることを継続して訴えています。この場合、「ダンサー」であるということ、「ダンサー」として生きようとすることの困難さ、とでも言えば良いのでしょうか。以前ベストセラーになった『下流社会』という新書がありましたが、その中で「下流」と分類されたフリーターですか、そういう人の趣味/嗜好のアンケートの中に「舞踏」をやっているという回答がまぎれ込んでいたことが象徴的に思い起こされたりします。あのね、わたしなんかも、一時期アートイヴェントの企画とかやってしまったせいで、やりにくいったらありゃしない。あの時期5〜6年の経歴をどうするのよ、ということです。求職していて正直に「一時期アートイヴェントを企画していました」なんて面接で答えたりして、採用してはもらえませんのです。ま、自分のことはさておいて、例えば音楽やっていても絵を描いていても演劇やっていても小説書いていても、<帝国>な生き方からははずれてしまうのです。「いつまでも子供」なんて言われてしまったりするのですが、ではその「子供」に対する「大人」とは何よ、というと、企業の発展に自己の発展を重ね合わせて生きるようなことなのでしょうか。こういう構造が<帝国>なのでしょう。

 さて、前置きが長くなってしまいました。この公演ですが、ちょっとチラシ(これが大きいんだ!)なんかで大風呂敷を拡げすぎてしまった気配がなくもないわけです。というか、この公演はほとんど共演の伊東篤宏さんのオプトロンと、HIKOさんのドラムズの轟音ライヴこそが主役という印象が強いのですね。<帝国>に拮抗するノイズ音です。で、そういうノイズに対していったいどのような「身体」を配置するのかというのが今回の公演の要旨だったのではないのかと勝手に解釈するのですが、あれですね、ちょっと昔の本、唐十郎の『特権的肉体論』を思い出してしまいました。それからゾンビ映画なんか思い浮かべてしまったり。

 公演のあとに、舞台にまき散らされたコンビニ袋やコンビニ弁当のパッケージ、ペットボトルなどがあまりに清潔すぎることがちょっと論議になったようですが、うん、わたしの感覚ではそこにこそ『特権的肉体論』との差異があるように思い、極めて現代的な表象になり得ていたという感想があります。

 どうも最近の大橋さんの公演には「はったり臭さ」を嗅ぎ付けて敬遠する陣営と、一部お追従めいたおべっか遣いするヤツ(きっとチラシの文章を寄稿しているメンツに幻惑されているのでしょう)とはっきり分かれてしまう傾向にあるようですけれどもね、わたしはモロに「生きづらさ」を感じている人間ですし、自分のやっていたイヴェントでもこのような社会的なコンタクトはそれなりに試みていたつもりもありますので、支持しています。あまりちゃんとした感想ではありませんが、こんなところで。


 

[]二○○九年一月のおさらい 二○○九年一月のおさらいを含むブックマーク

 いちおう「おさらい」というのは続けます。

 新しい年の一月ですが、見に行ったステージは二つ。

1/24(土)木村美那子 ソロダンス『し とりあそび』@横浜 STスポット
1/31(土)ダンス・コミュニティ・フォーラム『We Dance』@横浜市開港記念会館

 って、両方とも横浜だったのか。遠いのにご苦労さま。どちらも楽しみました。

 映画も二本。

『ローリングストーンズ シャイン・ア・ライト』マーティン・スコセッシ:監督
『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』ギエルモ・デル・トロ:監督

 どっちも妖怪映画です。

 本は何を読んだのだったか。

『シン・レッド・ライン』(上・下)ジェイムズ・ジョーンズ:著 鈴木主税:訳
『スプーク・カントリー』ウィリアム・ギブスン:著 浅倉久志:訳

 期待したギブスンの新刊には、ちょっと肩透かしをくった感じでした。映画の原作でもある『シン・レッド・ライン』、ディテールは強烈なのですが、同じような名前のヤツがあれこれ出て来たり、読んでいて誰が誰なのかわからなくなります。これは映画の方もそうでしたが。

 DVD消費はいくらか落ち着きました。

『踊る大紐育』ジーン・ケリー, スタンリー・ドーネン:監督
『サボタージュ』アルフレッド・ヒッチコック:監督
『シェーン』ジョージ・スティーヴンス:監督
『荒野の七人』ジョン・スタージェス:監督
『オーメン』リチャード・ドナー:監督
『ウエディング』ロバート・アルトマン:監督

『M★A★S★H マッシュ』ロバート・アルトマン:監督
『ショート・カッツ』ロバート・アルトマン:監督
『ゴスフォード・パーク』ロバート・アルトマン:監督
『プロデューサーズ』メル・ブルックス:監督
『ブレージングサドル』メル・ブルックス:監督
『スター・ウォーズ エピソード2 クローンの逆襲』ジョージ・ルーカス:監督
『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』ジョージ・ルーカス:監督
『スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望』ジョージ・ルーカス:監督
『スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲』アービン・カーシュナー:監督
『スター・ウォーズ エピソード6 ジェダイの帰還』 リチャード・マーカンド:監督
『ビートルジュース』ティム・バートン:監督
『エド・ウッド』ティム・バートン:監督
『グッドフェローズ』マーティン・スコセッシ:監督
『ディープ・ブルー』レニー・ハーリン:監督
『レオン』リュック・ベッソン:監督
『クラークス』ケヴィン・スミス:監督
『モール・ラッツ』ケヴィン・スミス:監督
『ドグマ』ケヴィン・スミス:監督
『ジェイ&サイレント・ボブ 帝国への逆襲』ケヴィン・スミス:監督
『フォレスト・ガンプ 一期一会 』ロバ−ト・ゼメキス:監督
『ロック、ストック & トゥー・スモーキング・バレルズ』ガイ・リッチー:監督
『スナッチ』ガイ・リッチー:監督
『レイヤー・ケーキ』マシュ−・ボーン:監督
『パンチドランク・ラブ』ポール・トーマス・アンダーソン:監督
『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル 』 マックジー:監督
『ヒューマン・ネイチュア』ミシェル・ゴンドリ−:監督
『チェンジング・レーン』ロジャー・ミッチェル:監督
『死ぬまでにしたい10のこと』イザベル・コイシェ:監督
『小さな中国のお針子』ダイ・シージエ:監督
『河内山宗俊』山中貞雄:監督
『丹下左膳』松田定次:監督
『雪之丞変化』マキノ雅弘:監督
『白痴』黒澤明:監督
『羅生門』黒澤明:監督
『生きる』黒澤明:監督
『悪い奴ほどよく眠る』黒澤明:監督
『隠し砦の三悪人』黒澤明:監督
『蜘蛛巣城』黒澤明:監督
『無頼漢』篠田正浩:監督

 ま、ロバート・アルトマンは面白いです。『ゴスフォード・パーク』には感心しました。ヒッチコックの『サボタージュ』の原作はコンラッドの『密偵』だったのですね。知りませんでした。全部通して見た『スター・ウォーズ』、いちばん面白かったのは「帝国の逆襲」でした。ルーカスが監督したエピソード2とか3は、「何やってんだか」って感じではあります。そういう『スター・ウォーズ』ネタで、ケヴィン・スミスが『クラークス』の中で「あの爆破されたデス・スターには何も悪くない雇われ職人がわんさかいたはずなのに‥‥」と言っていたのがおかしくて、でも、『クラークス』はみずみずしい素敵な作品だなぁ。PTAの『パンチドランク・ラブ』の技法も素敵でした。『グッドフェローズ』並に。
 あと、やはり山中貞雄監督、すごい! 『河内山宗俊』、泣けます。松田定次監督の『丹下左膳』での、「星の降る夜にまた逢おう」というセリフにも泣かされました。黒澤明監督の『蜘蛛巣城』は、この監督には珍しく演出面で凡庸なシーンも目立つ作品でした。すごいところもあるのですが。しかし『白痴』はすごいなぁ〜。あきれながら見ていました。しかし、見終ったとたんにストーリーも何もかも忘れてしまう今日この頃です。

 そんなこんなの一月でした。

 

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