ワニ狩り連絡帳 このページをアンテナに追加 RSSフィード

       

■ 2011-11-15(Tue)

[] 「無法松の一生」(1943) 稲垣浩:監督  「無法松の一生」(1943) 稲垣浩:監督を含むブックマーク

 戦時中の検閲で大きくカットされ、さらにその後GHQの検閲でまたまたカットされた1943年の作品。もちろん無法松は坂東妻三郎で、無法松が慕う未亡人役は、このあとに広島で被爆して夭逝された園井恵子が演じている。

 舞台は北九州の若松で、わたしが生まれたところに近いのだけれども、映画のなかでの出演者のことば(方言)が、ぜーんぜんちがう、という感じはある。ちょっと残念(これは近年の青山真治監督の作品がちゃんとあっちの方言を再現している)。

 冒頭、二階の室内から外を見下ろしたカメラがそのまま外へ飛び出し、外にいた人物をあおる位置にまで降下するという、あっとおどろくショットから始まる。まるで「さすらいの二人」のラストだわさという感じで、撮影は宮川一夫なのであった。ただの導入部のわずかなシーンに、こんな労力をはらうわけである。なんか、そのころの日本をとりまく情況への憂さ晴らしではないかという感覚を受ける。

 わたしは中学ぐらいのときに、学校の体育館でこの映画の三船敏郎版リメイクを見せられた記憶がある。どうしてもそのリメイクの方の「オレは汚れちょる」みたいなセリフが強烈に、ほとんどトラウマのように記憶に残っている(ただし「オレは汚れちょる」というのが正確かどうか自信はないけれど)だけに、松の想いのなんのほのめかしもなく淡々と終わってしまうこのオリジナル版には、ちょっと驚いてしまった。そうか、そこに検閲の魔手が及んでいたわけですか。それは監督も無念だったことだろう。
 それでも、時をへだてたいくつかのエピソードで構成されたこの作品の魅力ももちろんあるわけであって、やはり坂東妻三郎の存在感はすばらしいし、クルクルとまわる人力車の車輪のシルエットでじかんの流れを象徴するショットも美しい。




 

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