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■ 2011-12-09(Fri)

[] 「ワイオミング」(1980) リチャード・ラング:監督  「ワイオミング」(1980) リチャード・ラング:監督を含むブックマーク

 さいきん洋画系のチャンネルで放映されている西部劇では、劇中であきらかに俳優が「Indian」といっていても、字幕では「先住民」と修正されている。「インディアン」というのはいっしゅの差別用語として、NGワードあつかいされているようだけれども、この映画の字幕ではひさしぶりに「インディアン」という文字がバンバン登場した。っつうのもこの映画自体が、そんな先住民への差別意識満載の映画なもんで、映画のなかでインディアンをバカあつかいしてるのに、字幕だけ気をつかって「先住民」なんて書いてみてもおかしなことになってしまうからだろう。ある意味で正しい選択ではないかと思う。

 しっかしこの映画、舞台は雪も降るアメリカ北西部のワイオミング(「ララミー牧場」はワイオミングが舞台だったけれども)に移しているし、時代もずっと下って、主人公は西部開拓者でもガンマンでもなく、ビーバーを狩るハンターである。主演のヒゲ面のチャールトン・ヘストンもそんなに若くはないし、西部劇としてもそうとうに遅い時期の作品、ひょっとしたら70年代にもなっちゃったころの作品じゃないのかな、などと思って観ていたら、なんとなんと1980年製作の映画ということがわかり、おどろいてしまった。もう「スター・ウォーズ」も公開されてしまっているし、西部劇ということで考えても、「西部劇、終わりだよね」というようなペキンパーの「ケーブル・ホーグのバラード」や、西部開拓時代に先住民が被害者であったことを描いた<西部劇>、「小さな巨人」や「ソルジャーブルー」などが公開されたのも1970年のこと。その「西部劇の終焉」の時代を経てこの作品かよ、というのは、ちょっとした驚きである。おそらく製作者は十年も経てばもう時効で、また観客はインディアンが悪玉であるところのかつての西部劇をなつかしむようになっているだろうと思ったのかもしれない。レーガン大統領登場前夜のアメリカの、アメリカン・スピリットをふたたび、という空気を反映させようとしたのかもしれない。主演が全米ライフル協会会長のチャールトン・ヘストンだというのもポイントだろう。もちろん、ここでヘストンが武器とするのは「ライフル」である。

 映画としてみても、たらたらとした展開で面白いものではない。クライマックスは激流に流されてのヘストンとインディアンとの対決なのかもしれないけれど、ただ激流に流されているだけだから主役は人間ではない。

 ワイオミング州という場所を調べると、たとえば野牛(バッファロー)の殺戮や先住民のリザヴェ—ション追い込みなど、地政的に興味深い地域であることがわかる。そのなかで、まさにはからずしてそのような地政ポイントをあらわにしてしまっているこの脚本、勉強になるものである。

 そう、この映画の音楽はなぜかミシェル・ルグランが担当していて、まったく彼らしくもない、ディミトリ・ティオムキンばりの壮大で勇壮なスコアを聴かせてくれるもまた、なんだかおかしいのである。



 

 

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