ワニ狩り連絡帳 このページをアンテナに追加 RSSフィード

       

■ 2012-11-23(Fri)

[]「デヴィッド・リンチ展 〜暴力と静寂に棲むカオス(DAVID LYNCH "CHAOS THEORY OF VIOLENCE AND SILENCE")」@原宿・ラフォーレミュージアム原宿 「デヴィッド・リンチ展 〜暴力と静寂に棲むカオス(DAVID LYNCH "CHAOS THEORY OF VIOLENCE AND SILENCE")」@原宿・ラフォーレミュージアム原宿を含むブックマーク

 まえにリンチの作品「インランド・エンパイア」を観たとき、「ああ、もうこの人は、ふつうの意味での映画なんかあんましつくらなくなっちゃうだろうな」なんて感じも受けたのだけれども、やっぱそれいらい、新作映画をつくるよりも、こういう展覧会のかたちでの美術作品の発表や、ネットをつかった実験映像っぽい作品の発表という方にちからをそそいでいる印象を受ける。こんかいのこの展覧会は彼の写真作品、ドローイング、コンバインされた平面作品などの展示を中心に、あれこれの媒体で発表された新旧の映像作品の上映をふくむ展覧会。

 まずは写真や平面作品から受ける印象だけれども、この人ってやっぱりヴィジュアル的な原点は「イレイザーヘッド」にあるのかなあ、という印象で、大きな作品に盛り上げられた「物体」などからは、どうしても「イレイザーヘッド」の胎児を思い浮かべてしまう。写真作品での「廃墟」からもまたそういう感覚を呼びおこされるし、「雪だるま」の写真連作(わたしはこの連作がとっても好き)からも、オーディナリーな人々がかいまみせるイマジネーションが(その技術的な稚拙さからか)どこかゆがんだ像として定着されてしまう「怖さ」を感じてしまう。
 あとは、ドローイングなどから受けるポップ・カルチャーからの影響というのも面白いところで、どこか「マルホランド・ドライブ」とかを思い出してしまう。とくにここでカートゥーンコミックの「マイティマウス」あたりを選んでいるあたりに、むかしTVで「マイティマウス」を見ていた世代の人間として、興味深いものがある。
f:id:crosstalk:20121125115354j:image:left ちょっとここでその「マイティマウス」について書いておきたいのだけれども、このスーパーマンがネズミに変身したようなヒーローは、どこか子ども向けでないというか、奇妙にセックスシンボルみたいなところがあって、いつも女性のネズミにモテモテだし、「ひょっとしたらこのネズちゃん、セックスに強いプレイボーイ?」みたいな、どこか子どもが見てはいけない世界をのぞき見してしまうような罪悪感を感じさせるアニメだった。なんか、イヤらしかったんだよね。そういうところがどこかでデヴィッド・リンチもわかってて描いているみたいで、共感してしまうところのある作品だった。

 映像作品でなんといっても興味をもって観てしまったのが、1968年に製作されたという(このとき、リンチは22歳)「16mm Experiment」という作品。まずわからないのがこの作品、彼のことをWikipedia で検索した経歴では該当する作品が不明。複数の作品をあつめてこのタイトルで上映している可能性もあるけれども、どうもわからない。
 おそらくはリンチ自身が出演しているらしい冒頭のオブジェと人物がからむシークエンスから、映像を二分割して左右対称シンメトリーでマンダラ模様を描き出すシークエンス、印象的な容貌の女性の映像と、彼がそもそものさいしょから「映画フリーク」ではない、きわめてダダイズム的(?)なところからスタートしているように思えるところが興味深いし、そのオブセッション(とでもいうもの)がやはり「人間の身体」というところにあると思える部分でも、とっても面白いものだった。そういう部分で、「ああ、この人も<視覚的人間>なのだなあ」(このことは断じて<映画的>ということではない!)などと納得させてもらえた、ということでも印象的な作品だった。

 ‥‥ほかにも気になって書いておきたいこともあるけれども、とりあえずはこのあたりで。


 

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