ワニ狩り連絡帳 このページをアンテナに追加 RSSフィード

       

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■ 2018-05-15(Tue)

[](7)「賛辞」 (7)「賛辞」を含むブックマーク

 バンドのウッドストックでの「失敗」をつづけて書いてしまって、このバンドのネガティヴな面ばかりを強調してしまった気もするので、今回は褒めちぎりましょう。昨日までは「惨事」だったけれども、今日は「賛辞」。

 まずは、今まで紹介の遅れていた、バンドの持ち味の十二分に発揮された曲を紹介しましょう。これはIncredible String Bandのセカンド・アルバムの"The 5000 Spirits or the Layers of the Onion"のオープニング・チューンの"Chinese White"という曲。この曲はマイク・ヘロンの書いた曲。

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 曲の中でギターの他に、何か聞き慣れない妙な弦楽器の音が聴かれると思いますが、これが前にバンドの紹介のところでも書かれていた"Gimbri"という北アフリカの楽器で、メンバーのロビンがモロッコ周辺を放浪したときに持ち帰ったモノらしい。それで本来はこのGimbriという楽器、ギターと同じように弦をはじいて音を出す「撥弦楽器」のところを、ここではヴァイオリンのように弓を使っての「ボウイング」でプレイしているわけです。こういう、「本来の演奏法を逸脱して演奏する」というのも、このバンドの持ち味でもありました(いろいろ詳しいことはまたいずれ)。

 このアルバムはポール・マッカートニーによっても賞賛され、このアルバムの中のロビンの曲"First Girl I Loved"は後にジュディ・コリンズやジャクソン・ブラウン、その他多くのミュージシャンによってカヴァーされました。また、土曜日の朝にピーター・バラカン氏がナヴィゲーターをつとめるFM番組「ウィークエンド サンシャイン」でも、先々月だったか、バラカン氏が思いがけずも、この"5000 Spirits"のアルバムが大好きだったというお話をされていました。

 次のアルバム"The Hangman's Beautiful Daughter"はバンドのキャリアでも最大のヒットアルバムとなり、前にも書かれていたように、ロバート・プラントによってレッド・ツェッペリンのアルバムにも影響を与えたということ。これにより、このバンドのロビン・ウィリアムソンとマイク・ヘロンとの二人のソングライターは、レノン/マッカートニーのコンビに比されるようなことにもなりまして(ま、ロビンとマイクは基本的に「共作」という形態は取らなかったのだけれども)。

 今日はもう一曲、バンドのデビュー・アルバム"The Incredible String Band"から、ボブ・ディランも賞賛したという、こちらはロビン・ウィリアムソンの曲、"October Song"を、拙訳と共にお送りいたします(この頃はまだ、普通のフォークっぽい曲調ではあります)。

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I'll sing you this October song, Oh, there is no song before it.
The words and tune are none of my own, For my joys and sorrows bore it.

あなたにこの、十月の歌を歌って聞かせよう。この歌の前には、歌などはなかった。
歌詞も旋律も、わたしのものではない。わたしの喜びも哀しみも、退屈なものにすぎないから。

Beside the sea, The brambly briars, in the still of evening,
Birds fly out behind the sun, And with them I'll be leaving.

夕暮れの静けさの中、海のそばの茂みから、
鳥たちが陽の後ろへと飛び立って行く。それと共に、わたしもここを去るだろう。

The fallen leaves that jewel the ground, They know the art of dying,
And leave with joy their glad gold hearts, In the scarlet shadows lying.

落ち葉たちが地を飾る。彼らは死ぬことの技を知ってる。
緋色の影の横たわるなか、その黄金の心を喜びと共に委ねる。

When hunger calls my footsteps home, The morning follows after,
I swim the seas within my mind, And the pine-trees laugh green laughter.

空腹がわたしの足を家へと呼び、朝がその後につづく。
わたしは心の中の海を泳ぎ、松の木は緑の笑い声で笑うだろう。

I used to search for happiness, And I used to follow pleasure,
But I found a door behind my mind, And that's the greatest treasure.

わたしは幸せを探し、喜びを追っていた。
しかし、わたしの心の後ろに扉をみつけた。そしてそれこそが、最大の宝だった。

For rulers like to lay down laws, And rebels like to break them,
And the poor priests like to walk in chains, And God likes to forsake them.

支配者は法をつくろうとし、反逆者はそれを破ろうとする。
貧しい僧侶は鎖につながれて歩こうとする。そして神は彼らを許そうとする。

I met a man whose name was Time, And he said, "I must be going,"
But just how long ago that was, I have no way of knowing.

わたしは「時間」という名の男と出会った。彼は「わたしは行かなければ」と言った。
あれはどれだけ昔のことだっただろう。もう知ることもできない。

Sometimes I want to murder time, Sometimes when my heart's aching,
But mostly I just stroll along, The path that he is taking.

時にわたしは「時間」を殺したくなる。時にわたしの心が痛むとき。
でもつまりたいていは、わたしは彼がたどった道を彷徨うだけなのだ。


 

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