ワニ狩り連絡帳 このページをアンテナに追加 RSSフィード

       

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■ 2018-06-14(Thu)

[](26)ジョー・ボイドと、ISBとの出会い。 (26)ジョー・ボイドと、ISBとの出会い。を含むブックマーク

 さて今日は、そんなインクレディブル・ストリング・バンドのプロデューサー/マネージャーだった、ジョー・ボイド氏が、いかに彼らと出会ったのかというあたりの、そもそもの根源的なところを、ジョー・ボイドの著書「white bicycles」から読んでみようではありませんか。

 それは1965年の5月の夕方、エジンバラでのことで、あるパーティーのあと、ジョージ・ブラウン*1が、きっとわたしが好きそうだと彼が思うミュージシャンを聴きに行こうと、わたしを案内してくれた。わたしたちは長いこと、わたしたちの足音しか聴こえないような舗道を歩いた。そこでは誰もがもう、自宅のレースのカーテンの裏側に戻って、静かにしてるようだった。質素なパブ、床にはおがくずが撒かれた、いくつかの椅子のあるパブに着いた。わたしたちはビールを頼み、三十人ほどの客が音楽の始まるのを待っている裏の部屋に入って行った。
 ロビン・ウィリアムソンとクライヴ・パーマー、二人ともブロンドのもじゃもじゃの髪で、ごっついツイードを着ていた。それで自分たちの飲み物を持って、椅子をフロアの真ん中に引きずって来た。クライヴはその実年齢よりも老けて見え、いささか疲れているようだったけれども、ロビンは礼儀正しく優美で、リラックスして見えた。彼らはスコットランドのトラッドを演奏したのだが、それはまるで、モロッコとかブルガリア経由で、アパラチアへの旅によって持って来られたような音楽に聴こえた。お互いの演奏をその技術と機知とで補完し合って行ったのだが、クライヴはだいたいにおいてバンジョーを弾き、ロビンは高く舞い上がるテナーで歌い、ヴァイオリンとギターを演奏するのだった。そのギターは低く調弦されていて、まるでシタールのように響いた。
 セットのあと、ジョージがわたしたちを引き合わせてくれた。ロビンとの会話で彼は優雅で心地よかったが、そのスコティッシュ訛りはかなりキツかった。彼のふるまいはどこか、ヒッピーと十九世紀の詩人との中間にあるように思え、それは自分自身への自信で輝いているようだった。わたしは、「スターを発見したのだ」と、確信したのだった。

 このとき、ジョー・ボイドはアメリカのエレクトラ・レコードの代理として動いていたわけで、そのアメリカの上司にロビンらと「契約したい」と伝えるべく、ジョーは半年後にまたエジンバラを訪れる。そのときにはロビンもクライヴもエジンバラにいなかったのだけれども、ま、いろいろとありまして(めんどいので翻訳しない)、ようやっとロビンらと連絡がついたとき、彼らはマイク・ヘロンを加えたトリオになっていた、というわけ。マイクはそれまでエジンバラの「Rock Bottom and the Deadbeats」(笑)というロックバンドにも在籍していたらしいのだが、ま、クライヴともロビンとも仲良くなっていたらしい(って、その後の成り行きでは<そうでもなかったんじゃないの?>というところなのだが)。

 それでジョーはロビンとマイクと会い、いっしょに茶を飲んでジョイント(大麻)を吸い、そこでロビンとマイクの演奏を聴かせてもらうことになる。

 (‥‥)わたしは衝撃を受けた。それらの曲は完全に彼らのオリジナルで、アメリカのフォークソング、スコットランドのバラッドの影響を感じさせられたが、そこにはバルカン音楽、ラグタイムミュージック、北アフリカ音楽、ミュージックホールの音楽、そしてウィリアム・ブレイクなどの風味に満ちていたのだ。マイクのちょっとディラン的な声と、ロビンの鋭いグリッサンドとのハーモニーはエキゾチックで、しかも商業的に成り立つものと思えた。わたしは彼らと<契約>しなければ、と思ったのだった。

 つまりこのような経緯で、ジョー・ボイドを中継ぎとして、インクレディブル・ストリング・バンドはエレクトラ・レコードと契約し、すぐにそのファースト・アルバムを録音、リリースすることになる。しかし、ジョーに言わせれば「わたしの野心などまるで気にかけない、真の反逆者だったクライヴ・パーマーは、すぐにアフガニスタンへと旅立ち、ロビンとマイクには<オレの帰りを待つな>と言い残したのだった」ということになる。そして、セカンド・アルバムの「The 5000 Spirits or the Layers of the Onion」が、録音されることになる。



 

*1:エジンバラでジョー・ボイドをあちこち案内した、現地の音楽通。

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