ワニ狩り連絡帳 このページをアンテナに追加 RSSフィード

       

■ 2018-11-30(Fri)

 今日はチケットを買ってあるので、仕事のあとに上野へ行き、「フェルメール展」を観る。そしてもういちど「デュシャン展」を観て、今特別公開されている京成線の「博物館動物園駅」の特別公開も観たい。これは「指輪ホテル」の羊屋さんが関わっていて、「アナウサギを追いかけて」というタイトルの展示空間になっている。この日に三つとも観られるといいのだが。

 仕事を終えて、飯田橋駅のそばのカフェで昼食をとり、わたしのチケットでは「フェルメール展」に入場出来るのは1時からなので時間がたっぷりある。それで千代田線で根津駅まで行き、そこから上野へ歩いてみた。むかし日暮里に住んでいた頃にはよく歩いた道のはずだけれども、こうやって歩くのは十年とかそれ以上の時をおいてのこと。根津の駅の近くにはスーパーの老舗「赤札堂」がまだ営業していて、この建物がなつかしかった。「そうか、この道は<言問通り>というのか」と思いながら北へと歩く。蔦(?)の吹き出したような、面白い建物を見た。

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 途中で杏林堂の角の、よく知っている道にぶち当たる。ここで右に曲がれば芸大があり、博物館に着く。
 先に、その「博物館動物園駅」の特別展示の様子をみようと思って前を通りかかると、もうこの日の<入場整理券>はすべて配り終えていて、「今日は入場出来ません」ということ。いったい一日にどのくらいの人が入場出来るのか知らないけれども、近くにいた係員の人に聞くと、この日は11時半ぐらいに整理券は配り終えてしまったという。金・土・日しかやっていない、この<特別展示>、単に観るだけではない「ガイド付き」とかいうコースもあるらしいけれども、そっちは一時間に十名とか、ごく少人数しか入れないので、わたしはもうあきらめているのだが、それ以外の「ただ観るだけ」でもこんな難関だとは。‥‥まだ展示も始まったばかりだから、もうちょっと落ち着くまで待たなければならないか。
 ちょっと駅構内を覗いてみて、つんのめった巨大なウサギを観ることができた。

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 さてそれでは仕方がない。ちょうど時間も1時になっているので、「フェルメール展」をやっている上野の森美術館へと行く。‥‥おっと、先日来たときにみた「当日券」の客の行列はないな、これはすぐに入場出来るのだろうかと思うと、係員に「1時からのチケットをお持ちの方はこちらに並んで下さい」といわれる。そちらには長大な行列が出来ていて、最後尾はもう御徒町の駅に達するのではないかと思えるほどだ(ちょっとオーバーな表現)。わたしはこういう行列は嫌いだし、とにかく2時半までは入場出来るわけだから、2時を過ぎればもっと空いていることと予測する。ここは先に「デュシャン展」を観て、そのあとに「フェルメール展」を観ることにしよう。

 それで国立博物館へ行き、2回目の「デュシャン展」。これは自分の記憶を強固にするためのもので、特に「アレをもういちど確認しておきたい」というものでもなかったのだけれども、今回はいろいろと展示されている「ボックス・セット」のことに神経がいってしまった。そして、<遺作>。

 ま、いろいろと思ったところもあったのだけれども、ちょっと駆け足で会場を廻り、2時前に博物館を出て再び上野の森美術館へ。とちゅう、ガーナの子どもたちが「マンフィー募金」というものへの募金の呼びかけをやっていた。わたしはこのところの海外からの「技能実習生」のことで、この日本のやり方に腹立たしく思っていることもあるので、こういうところで何か少しでも海外の人を助けたい気分になり、わずかな額だけれども募金した。「ありがとう」と握手してくれたガーナの男の子の手は、とっても冷たかったのが印象に残った。

 美術館に着いてみると、さすがに一時間前の行列もなく、すぐに中に入ることができた。しかし館内は相当に混み合っていて、たいへんなことになっている。だいたいそもそもがこの「上野の森美術館」というのはキャパも小さく、こんな多くの入場客をさばけるような会場ではないのだ(前から思っていたけれどもね)。特に2階の展示、付随するオランダ絵画の展示は酷い状態で、もともと通路ぐらいの幅しかないところに両側に作品を展示してあるものだから、観客が渦になっている。これは最悪だ。チラッとみて、そこまでに興味深い作品もないように見えたので、さっさと1階の<フェルメール>の展示へと移動した。‥‥そちらへ行くと、意外にも2階のような惨状はない。ま、展示室の片面にしか作品展示がないことも、そこまでに観客が混み合わないことに結びついていたのは間違いはない。そして時間的なこともあったのだろうか、さいごの頃にはかなりゆっくりと作品を観ることも出来た。

 美術館を出て3時。駅の方へ向かうと、さっきのガーナの人たちの募金が続いていた。足を止めて聞いたり、募金しようとする人はほとんどいない。わたしがさっき握手をした男の子は疲れてしまったのか、後ろに下がってすわり込んでいた。その他に2人の子どもと、2人の大人とが通りかかる人に声をかけていた。なんだかもういちど募金したい気になって、ひとりひとりの前に置かれた募金箱に募金して、その4人の人たちひとりひとりと握手をした。

 上野駅から常磐線で帰路に着き、4時半ぐらいに帰宅。待ちくたびれたニェネントくんがお出迎えしてくれる。すぐにニェネントにごはんを出してあげ、この夜のわたしの食事は、久しぶりにたらこスパゲッティなのだった。

        

 

[]「フェルメール展」@上野・上野の森美術館 「フェルメール展」@上野・上野の森美術館を含むブックマーク

 入場するときに配られる小冊子パンフには、「フェルメール作品10点」を集めた、などと書いてあり、実は10点でやるつもりだったのだな、とわかるし、時間もたっぷりあったのだからこのあたり修整しておけばよかったのに、などとは思う。それで、会場で数えてみると、9点来ているという告知だったのに、どう数えても8点しかないので、近くにいた係員の人に聞いてみると、つまり途中展示替えがあり、今展示されている「赤い帽子の娘」は年内で展示が終わり、来年になってから「取り持ち女」という作品が展示に加わるのだということ。それで、その合間の年末年始には7点だけの展示になるのだと。

 わたしは2階に展示されていた同時代のオランダ絵画にはほとんど興味はなかったのだけれども、そんな中で、珍しくフェルメールの影響を受けたのだという画家、ハブリエル・メツーの2点の作品は、室内の光を的確に捉えていて、(すべてにピントが合い過ぎかと思うけれども)よかったと思う。

 それでフェルメールの8点だけれども、わたしはまず、小さな「赤い帽子の娘」の色っぽさが好きだ。帽子の陰になって逆光気味の顔の肌の色、そこにわずかに直接外光の当った頬、鼻先、そして唇。その半開きの唇に「ちゃっ」と描かれた白いポイントで、何というのか、「艶かしさ」というものが伝わって来るのだけれども、よく観るとその唇の白いポイントは、彼女の瞳の中にも「ぽつん」と置かれているし、それと鼻の頭の「ぽつん」とで、この女性の顔の中に三つのポイントをつくっているわけで、さらにその「白」という色彩は彼女の襟元の服、彼女の着ている紺の衣服の光の反射にもつながっている。「見事だなあ」と、見惚れてしまう作品だ。「この8点の中でどれかあげるよ」と、もしも気前のいい神さまがわたしに語りかけるようなことがあるとすれば、わたしは迷わずこの「赤い帽子の娘」を選ぶことだろう。

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 そしてやはり、「牛乳を注ぐ女」の色調の美しさ。これはやはり、現物を目にしてこそ意識する美しさで、彼女のまとう紺色のスカート(?)、その上の黄色い衣服、その袖の部分のくすんだ緑色とが、彼女の持つ茶色の壷の色彩とマッチしている。というか、この作品全体の色彩、光と影との調和には見惚れるしかない。

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 ‥‥いろいろとアレだよね、といいたくなる展覧会だったかもしれないけれども、ミュージアムショップで売られていた絵ハガキは、色彩、色調の再現度が高く、妙な画集で観るよりもいい。そう、売られていた図録は3000円とそこまで高額でもなく、けっこう充実した図録ではなかったかと思う(わたしは買わなかったけれども)。


 

[]二〇一八年十一月のおさらい 二〇一八年十一月のおさらいを含むブックマーク

美術:
●「マルセル・デュシャンと日本美術」@上野・東京国立博物館
●「1968年 激動の時代の芸術」@千葉・千葉市美術館
●「霧の抵抗 中谷芙二子」@水戸・水戸芸術館現代美術ギャラリー
●「フェルメール展」@上野・上野の森美術館

映画:
●「ア・ゴースト・ストーリー」デヴィッド・ロウリー:脚本・監督
●「ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪」リサ・インモルディーノ・ヴリーランド:監督

読書:
●「ジェイン・オースティンの読書会」カレン・ジョイ・ファウラー:著 矢倉尚子:訳
●唐草物語より「鳥と少女」澁澤龍彦:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●唐草物語より「空飛ぶ大納言」澁澤龍彦:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●唐草物語より「火山に死す」澁澤龍彦:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●唐草物語より「女体消滅」澁澤龍彦:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●唐草物語より「三つの髑髏」澁澤龍彦:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●唐草物語より「金色堂異聞」澁澤龍彦:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●ねむり姫より「ねむり姫」澁澤龍彦:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●ねむり姫より「狐媚記」澁澤龍彦:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●ねむり姫より「ぼろんじ」澁澤龍彦:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●「時間のパラドックスについて」澁澤龍彦:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●「サド侯爵 その生涯の最後の恋」澁澤龍彦:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●「黒鳥譚」中井英夫:著(「昭和文学全集」第31巻より)
●「マルセル・デュシャン 人と作品」(マルセル・デュシャン展図録)マシュー・アフロン:著 中尾拓哉:監訳 奈良博:翻訳
●「空家」A・ブラックウッド:著 小山太一:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)
●「八月の炎暑」W・F・ハーヴィ:著 宮本朋子:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)
●「信号手」C・ディケンズ:著 柴田元幸:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)
●「豪州からの客」L・P・ハートリー:著 小山太一:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)
●「十三本目の木」R・H・モールデン:著 宮本朋子:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)
●「死体泥棒」R・L・スティーヴンスン:著 柴田元幸:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)
●「大理石の軀(からだ)」E・ネズビット:著 宮本朋子:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)
●「判事の家」B・ストーカー:著 小山太一:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)
●「亡霊の影」T・フッド:著 小山太一:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)
●「猿の手」W・W・ジェイコブズ:著 柴田元幸:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)
●「夢の女」W・コリンズ:著 柴田元幸:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)
●「古代文字の秘法」M・R・ジェイムズ:著 宮本朋子:訳(「エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談 憑かれた鏡」より)

DVD/ヴィデオ:
●「東風」(1970) ジャン=リュック・ゴダール、ダニエル・コーン=ベンディット、セルジオ・パッツィーニ:脚本 ジガ・ヴェルドフ集団:監督
●「シェルタリング・スカイ」(1990) ポール・ボウルズ:原作 ヴィットリオ・ストラーロ:撮影 ベルナルド・ベルトリッチ:監督


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