ワニ狩り連絡帳 このページをアンテナに追加 RSSフィード

       

■ 2018-12-17(Mon)

[]「櫻桃」太宰治:著(太宰治全集10 小説9より) 「櫻桃」太宰治:著(太宰治全集10 小説9より)を含むブックマーク

 10ページに満たない短篇。この全集本で、そういう短いのはぜんぶすっ飛ばして読まないで来たのだけれども、太宰の命日は「桜桃忌」ともいわれているわけだし、ちょっと読んでみた。作者の名、「太宰」が実名で出てくるし、フィクションというよりもノンフィクションに近いのだろう。自分の家族、妻と三人の子どもたちのこと。その冒頭は「子供より親が大事、と思いたい」と始まる。家族全員揃っての食事のとき、妻は「お父さんは、お鼻に一ばん汗をおかきになるやうね」といい、太宰が「それぢや、お前はどこだ」と聞くと、「この、お乳とお乳のあひだに、‥‥涙の谷、‥‥」と答えるのだ。これはじっさいに太宰の妻がそのようなことばを発したのだろう。「涙の谷」という、どこか聖書的な言葉がこの短篇のキーワードになる。太宰は、「さう言はれて、夫は、ひがんだ」と書く。仕事にかこつけて家を出て、飲みに行く。そこで櫻桃が出されるのである。ウチの子どもは櫻桃など食べたことないだろうと思うのだが、ここんところはもうちょっとうまく書けばよかっただろうと思う。でも、「涙の谷」は、いい。


 

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