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■ 2018-08-17(Fri)

[](50)ジェイムズ・ジョイス「室内楽」福田陸太郎:訳。 (50)ジェイムズ・ジョイス「室内楽」福田陸太郎:訳。 - ワニ狩り連絡帳 を含むブックマーク

 さて今日は、先日訳してみたジョイスの「室内楽」の「Strings in the earth and the air」の大御所の翻訳、先日届いた「世界名詩集大成」の「イギリス2」に載っていた、福田陸太郎氏のものを掲載してみます。
 福田陸太郎という人はWikipediaをみると英米文学の大御所で、ホイットマンの詩の翻訳などで「日本翻訳出版文化賞」を受賞されておられる。そもそもが詩人でもあられたようで、こうやってわたしが酷い翻訳をやってしまったあとにこの大御所の翻訳を載せるなどというのは、「赤面」どころの騒ぎではないというのが本心。

 それでは、読んでみましょう。

地と空の中の絃(げん)は
  音楽を美しくする。
絃は河辺(かわべ)に
  柳のすれ合うところに。

川ぞいに音楽がある、
  そこに愛の神がさまようから。
マントに青白い花をつけ、
頭髪に暗(くら)い葉をつけて。

真に静かにかなでながら、
  頭をその調べにうなだれ、
指はさまよう、
  楽器の上に。

うす闇は紫水晶の色から
  深い、さらに深い青色に変る。
ランプは淡い緑の輝きで
  大路(おうじ)の木々を満たす。

古いピアノが一曲を奏する、
  静かにゆっくりそして陽気に。
彼女は黄色い鍵盤にうつむき、
  彼女の頭はこちらへ向く。

はにかむ思いと深刻(しんこく)な広く開いた眼と
  思いのままにさまよう手―――
うす闇は更に暗い青に変る、
  紫水晶の光をもって。

 ‥‥もういちど、原詩を掲載しておきましょう。

Strings in the earth and the air
Make music sweet
Strings by the river
Where the willows meet

There's music along the river
For love wanders there
Pale flowers on his mantle
Dark leaves on his hair

All softly straying
With head to the music bent
And fingers playing
Upon an instrument

Twilight turns from amethyst
To deep and deeper blue
Lamps light with a pale green glow
The trees of the avenue

The old piano plays an air
Sedate and slow and gay
She bends upon the yellow keys
Her head inclines this way

Shy thoughts and grave wide eyes
And hands that wander as they list
Twilight turns a darker blue
With lights of amethyst.

 こうやって読むと、福田氏の翻訳はおどろくほどの対語訳になっていて、しかもそこに詩の美しさをあらわしていると思います。原詩のニュアンスを翻訳にも活かすということでは、やはりわたしのように無学でセンスのないものには適うものではありませんね。

 特にこの二節目の、「For love wanders there」というのが「そこに愛の神がさまようから」と訳されていたのに「眼からウロコが落ちた」というか、わたしなんか「彷徨う恋人のために」と訳したのはまさに「誤訳」。冒頭の「Make music sweet」をわたしは「甘美な音楽を産む」と、これはわかってて誤訳したんですけれどもね。あと、「Sedate and slow and gay」をわたしは「静かにゆっくりとやさしく」としたけれども、「gay」に「やさしく」という意味はないので、ここは「明るく」とすべきだった。

 ‥‥でもですね、わたしの訳もそんなにボロクソに酷いわけでもなく、それなりにいいところもあるように自負いたします。もういちどわたしの訳を引いておきましょう。

大地と大気の弦が 甘美な音楽を産む
河のそばの弦が 柳と出会うところにて

河に沿う音楽は 彷徨う恋人のために流れる
薄青い花は彼の外套に 暗い色の葉は彼の髪に

すべては柔らかに彷徨う 音楽の示す方角へと
そして指は奏でる 楽器の上を

たそがれは紫水晶の紫から 深く深い青へと変わりゆく
淡い緑の灯火が燃え 並木道の樹を照らす

古いピアノは旋律を奏でる 静かににゆっくりとやさしく
彼女は黄色のキーを弾き その頭を傾ける

内気な想いと沈痛に開かれた瞳 傾げられた手
たそがれはより暗い青になる 紫水晶の明かりとともに

 

■ 2018-08-14(Tue)

[](49)ちょっと中断して、ジェイムズ・ジョイスのことを(またも無謀な試み)。 (49)ちょっと中断して、ジェイムズ・ジョイスのことを(またも無謀な試み)。 - ワニ狩り連絡帳 を含むブックマーク

 先日書いたように、こうやってIncredible String Bandの曲を聴いて、歌詞を訳したりしているとやはり古いイギリス詩(とりわけウィリアム・ブレイクとか)読み返したくなってしまい、そういうところでは「これしかない!」という平凡社の「世界名詩集大成」のイギリスの巻を注文したのですが、その巻の「1」だけでいいや、と思っていたところが「2」もいっしょに買ってしまうことになり、20世紀前半までの(ディラン・トマスまでの)イギリス詩を一気に読めることになりまして、そうするとその巻の「2」にはジェイムズ・ジョイスのデビュー作(最初に活字になった作品)の詩集「室内楽(Chamber Music)」(1907年刊)の全訳も含まれているわけ。するとロビン・ウィリアムソンはそのソロアルバム「Myrrh」(1972)の中で、そのジョイスの「室内楽」から「Strings in the earth and air」という詩に曲をつけたものを歌っているわけで(作曲はロビンではなく、Incredible String Bandの「おとうと弟子」バンドともいわれたDr. Strangely Strangeのメンバー、Ivan Pawleによるものだけれども)、やはりその曲を思い出してしまう。

 ‥‥そのジョイスの詩の原文はわかるわけで、その訳詩が載っているであろう「世界名詩集大成」もおそらくは明日あさってには届くことだろうけれども、その前に、その「Strings in the earth and air」を翻訳してみて、まあ、いかに自分の翻訳がヒドいものであるかという例証ですね。そういう恥さらしなことをやってみましょうということです。
 本が届いたらそこに掲載された訳詩をココに載せ、「いかにわたしの翻訳が酷いか」ということをやってみましょう。

 まずは、その「名曲」であるといってもいいだろう、Robin Williamsonによる、美しい「Strings in the earth and air」を聴いていただきましょう。ここでRobinはマルチレコーディングでヴァイオリンとフルート、マンドリンとベースを演奏していて、この当時のIncredible String Bandのマネージャーだった(相棒のMikeの彼女だった!)Susie W-Tがフルートのソロを、そしてこのときRobinと結婚したばかりだったJanet Williamsonがオルガンでレコーディングに参加しています。

  D

 ‥‥さて、訳してみましょう。まず原詩。

Strings in the earth and the air
Make music sweet
Strings by the river
Where the willows meet

There's music along the river
For love wanders there
Pale flowers on his mantle
Dark leaves on his hair

All softly straying
With head to the music bent
And fingers playing
Upon an instrument

Twilight turns from amethyst
To deep and deeper blue
Lamps light with a pale green glow
The trees of the avenue

The old piano plays an air
Sedate and slow and gay
She bends upon the yellow keys
Her head inclines this way

Shy thoughts and grave wide eyes
And hands that wander as they list
Twilight turns a darker blue
With lights of amethyst.

 ‥‥翻訳。

大地と大気の弦が 甘美な音楽を産む
河のそばの弦が 柳と出会うところにて

河に沿う音楽は 彷徨う恋人のために流れる
薄青い花は彼の外套に 暗い色の葉は彼の髪に

すべては柔らかに彷徨う 音楽の示す方角へと
そして指は奏でる 楽器の上を

たそがれは紫水晶の紫から 深く深い青へと変わりゆく
淡い緑の灯火が燃え 並木道の樹を照らす

古いピアノは旋律を奏でる 静かににゆっくりとやさしく
彼女は黄色のキーを弾き その頭を傾ける

内気な想いと沈痛に開かれた瞳 傾げられた手
たそがれはより暗い青になる 紫水晶の明かりとともに

 

■ 2018-08-05(Sun)

[](48)アルバム「The Hangman's Beautiful Daughter」(8) (48)アルバム「The Hangman's Beautiful Daughter」(8) - ワニ狩り連絡帳 を含むブックマーク

 さて、Andy Robertsの批評文のようやっとの最終回*1。もうたいへんです。一気に行きましょう。

 さてアメリカでも、負けず劣らずの好評価。New York Magazineのリチャード・ゴールドスタイン(Richard Goldstein)は、頭をかきむしっている。「ロビンの声は、古代の岩石からしみ出す水のような、甲高い囁き声だ」と。読者に「Hangman」のレコードを買うことを強く薦め、「それがあなたの地域で最初の宇宙教会の魔術の崇拝者となることになるだろう」と。さあ、もうちょっと、ゴールドスタインの書くことを読んでみよう。それはほとんどアルバムそのものぐらいいいんだから。どんなかっていうと:「それぞれの曲は金細工で刻まれたような音響詩であり、繊細でしかも力強い。すべての曲の詩は聖歌とわらべ歌との完全な調和である」

 ‥‥むむむ、これで一気に最後まで訳してしまおうと思ったが、やはり疲れてしまった。翻訳という作業は何と骨折れることであることか。世の中の翻訳に携わる方々を敬服いたします!(中には、「それって、機械翻訳でやらしてるだけでしょ!」みたいなのもありますが*2)。


 

*1:ではありませんでした!

*2:例えば、国内盤インクレディブル・ストリング・バンド紙ジャケ版の訳詩ね! これがスゴいんだ!

■ 2018-07-31(Tue)

[](47)中休みで、こんな曲などを。 (47)中休みで、こんな曲などを。 - ワニ狩り連絡帳 を含むブックマーク

 ずっとヘタクソな翻訳を続けているAndy Robertsの批評文は、もう一回分ぐらい残っているのだけれども、ちょっとお休みして、特別にバンドの別の曲を聴きましょう。

 今、火星と地球が大接近していて、この7月31日の夜には最接近するということ。それだけ大きく明るく見えるわけですが、わたしは夜に外に出るということがほとんどないので、そんな火星のすがたも見られないでしょう。それで、インクレディブル・ストリング・バンドがそんな「明るい星」のことが歌詞に出て来る曲を聴きましょうか、ということです。
 曲は「Air」という曲で、今続けて書いている「The Hangman's Beautiful Daughter」に続いて、同じ1968年にリリースされた2枚組アルバム、「Wee Tam and the Big Huge」に収録されていたもの。作詞作曲はマイク・ヘロンで、マイクのギターとオルガン、ロビンのフルート、そしてローズとリコリスの清浄なコーラスが聴かれます。
 曲はいかにもマイク・ヘロンらしくもピュアな感性のあふれる美しい曲で、わたしも大好きな曲。まさに「Air(空気)」のことを歌った曲で、空気というものがわたしたち生命を育むというさまが、美しく歌われます。

      D

Breathing, all creatures are
Brighter than that brightest star
You are by far
You come right inside of me
Close as you can be
You kiss my blood
And my blood kiss me

息をしている、すべての生き物らは
あなたはあの、いちばん輝く星よりも輝いている
さらに遥かに輝いている
あなたはまっすぐにわたしの中に入ってくる
どこまでもわたしのそばに
あなたはわたしの血に口づけをする
そして、わたしの血はわたしに口づける

 むむむ、誰にでもわかる簡単な英語だけに、「詩」っぽく訳そうとすると難しい。わたしは、ロビンの書いた詩の方が訳しやすいと感じることが多い。


 

■ 2018-07-30(Mon)

[](46)アルバム「The Hangman's Beautiful Daughter」(7) (46)アルバム「The Hangman's Beautiful Daughter」(7) - ワニ狩り連絡帳 を含むブックマーク

 その、ずっと続いている(難儀している)Andy Robertsという人のエッセイ、あともう少しあるのだけれども、いい加減疲れたので今日は中休み。考えてみたらこのアルバムを全曲聴いてみましょう、ということをやっていなかったので、今日はYouTubeからアルバム全曲を聴きましょう(途中に広告が入ってウザイのですが)。

      D

 曲目は以下の通り。

1. "Koeeoaddi There" 0:00
2. "The Minotaur's Song" 4:50
3. "Witches Hat" 8:12
4. "A Very Cellular Song" 10:48
5. "Mercy I Cry City" 24:02
6. "Waltz of the New Moon" 26:50
7. "The Water Song" 32:00
8. "Three Is a Green Crown" 34:54
9. "Swift As the Wind" 42:44
10. "Nightfall" 47:38


 

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