「蟲師」。うごく絵ができるそれまでの話をちょっと。(いや、たくさん?) ロフトプラスワン

そのイベント名からして、なにやら力の入っていそうな気配がプンプンするイベント。普通は「公開打ち上げ」とかだろう。それが「うごく絵ができるそれまで」なんて技術的な事を臭わせる題を真正面から持って来るあたり、本気でこの作品を語りたがっているとしか思えない。そして正に想像どおりだった。
流暢な片岡プロデューサーの司会のもと、長濱監督が真剣に語っていた。企画書に「この作品をやれたら死んでもいい」と書いたとか、脚本は原作の絵をそのまま文章にする事だけ心掛けて文字数は気にしないでよいとか、原作そのままを絵にするのだから美術設定はいらない(実際に1枚も無い)とか、普通のテレビシリーズを作る時の常識を完全に逸脱していたらしい事がよく分かった。
参加してくれたスタッフも多く、作画監督馬越嘉彦こそ他の用事で来ていなかったが、ギンコ役の中野裕斗や演出のそーとめこういちろうの登壇をはじめ、各分野のスタッフが揃っていた。そしてなにより、アートランド社長、石黒昇監督が登場。まさかこんな所であの石黒監督から「絵コンテを描く際の心得」の講義を受ける事が出来ようとは。到底信じられない展開に感動してしまった。
その石黒監督(この作品には一切係わっていないらしいのだが、どうしても監督と呼んでしまう)にして、この作品を「奇跡の作品」と評しており、全スタッフもその評をてらい無く受けとめる自負を持っているらしい雰囲気を感じとれたのは、なんとも爽快だった。観客として参加した者としても、参加出来た事が嬉しくなるようなイベントだった。