「ねらわれた学園」初日舞台挨拶 新宿ピカデリー スクリーン1

花澤香菜の顔を拝みに(^^)。
いや、最近のはなざーさんはなんだかとってもお淑やかだなあ。丁寧な受け答えで、映画の魅力を語っていた。この回は取材も入っていたから、詳細は記録で残るのかな。
で、映画の方の感想はというと・・・

非常に美しい作品だった。アニメの映像美に満ちていた。この光と色使いは、言ってしまえば新海誠的。
以前、彼の色使いを、個人的に「写実的心象派」として、新しい流れだという記事を書いたことがあるのだけれども(新海誠という「流れ」 〜アニメにおける写実的心象派の誕生〜)、この映画は正にその流れの「結実」とも言える映像だった。
人は、デジタルとか、新しいツールを手に入れることによって、より高度な映像に向かう事ができる。特にアニメなど自由度の高い映像は、そういった力が強い。その証拠とも言える映像だろう。
けれども・・・
脚本構成が、ほぼめちゃくちゃ。なんとも残念な映画になっている。
ネタバレ全開で、少しその構成について書いておく。
何が一番駄目なのかというと、それはやはり主格が不明瞭な事だろう。感情移入先のキャラが途中で誰だか分からなくなり、興味が途切れてしまう。これが致命的。
冒頭、男の子ケンジの語りから始まる。彼が主人公なのは間違いないことだ。しかし、話が進むにつれて、彼の心に付いていけなくなる。彼には設定的に秘密があり、ある種、人を超越した存在であることが分ってくるのだけれども、それを彼がどう受け止めているかが全く不明で、その行動が理解できなくなる。
ただ、実はこのような流れを作る事は、決してタブーでは無い。観客が感情移入しているキャラがどんどん大きな存在になっていって、観客の心を振り切るというのは、一つの構成の手。しかし、その場合、別の新たな「主人公」となるべき存在がいないとだめ。つまり、彼の事を見守り続けている存在として、ヒロインなどがその役に着く場合が多い。
しかし、この映画で最も致命的な欠陥が、このヒロインが全くヒロインとして機能していない事。
ケンジの幼馴染みナツキがヒロインとしての役割を与えられているのだけれども、実は、このナツキよりも、観客が感情移入してしまう存在が、カオリというケンジが片思いしている少女。ナツキよりも先にケンジとの関係について説明されているし、その登場時間も圧倒的にナツキより多い。このシオリは敵となる京極に片思いするのだけれども、その結果この物語に最も深くかかわっていて、有る意味ケンジよりも主人公らしい存在と成っている。
ナツキはというと、物語の核心である事件に触れたと思ったら、その後からまったく登場しなくなって、事件をどう考えているのか分からなくなる。それなのに、最終的には、主人公ケンジが遠い存在になったときに、それを受け止める存在として機能させられていて、つまり、二人ともよく分からない存在なのに、その二人を主軸として物語が推移するから、はっきり言って物語がどうでも良くなってくる。最悪の展開。
他にも問題点は多いのだけれども、あと二つばかり構成について難を挙げておくとすると、一つは、主人公ケンジの秘密の設定がいきなり現れて、全く説明不足なこと。
この設定は、さっきも書いたけれども、主人公である存在を、一種上位の存在にして観客の心を振り払う設定として、上手く機能させれば実に良い設定なのだけれども、全く未消化のままだった。残念。
で、もう一つは、これはとても大きな事なのだけれども、題である「ねらわれた学園」となった学園占拠事件の推移が、これまた全く未消化なこと。
学園がどうなってしまい、各学生がどう思っていたのか。なんとなく分らなくも無いけれども、もともと無理な事が起きているのだから、説明不足だと矛盾点が山ほど有るように感じてしまう。この部分は、有る意味物語の最大の見せ場なのだから、本当に致命的な描写不足と言えるだろう。
物語の滑り出しは、結構良い。学生生活の丁寧な描写が続き、わくわくされられる。けれども、実際に事件が起きて物語を動かし始めると、その学生生活、淡い恋心、三角関係、敵味方を超えた友情、などの魅力的な素材が、未消化なSF設定と衝突し、物語自体がこんがらがって、めちゃくちゃななってしまう。本当に残念な作品だ。
アニメ映画は、なにより映像を作る事に物凄い労力がかかる。なので、そこに力を入れるのは当然だろう。しかし、その映像が乗っているのは、物語。観客は、素晴らしい映像に魅了されるかもしれないが、それは心に届く物語があってこそ、その映像も心に届く。もし物語がまるで観客の心に届かなければ、どんなに労力を払った映像であっても、最初から観客の心には届かない。その労力は、まるで無駄になってしまう。
アニメ作家は、画を作る事にかけては素晴らしいものを持っているだろう。しかし、同時に物語を創造し構成する能力を持っている人は稀だ。素晴らしい映像が、しかし全く心に届かない物語の上に乗っているという悲しいアニメ作品があまりにも多い。
この「ねらわれた学園」という作品も、そういった残念な作品の一つとなってしまっている。
あと、映像の面でも一つ注文が。キャラクターのアニメートが自由すぎる部分がある。きっと、アニメーターが好き勝手に表現したのだろうけれども、そして、作画マニアとかが喜んだりするのかも知れないけれども、実際には実に軽薄だ。「カリオストロの城」のパロ的な描写とかもあったりして、残念すぎる。勢いは必要だけれども、映画とかより広い層に見てもらいたい作品を作る際は、もっとブロ意識を持ってもらいたいものだ。
良い点として、まゆゆの演技がとても良かったのだけれども、それも、物語の構成上はなざーさんに喰われてたりして、これも残念な要素だった。折角、他の分野のスターが来てくれて、きちっとした仕事してくれたのに、それを活かしきれていないのでは、申し訳なさ過ぎる。

ねらわれた学園 (講談社文庫)

ねらわれた学園 (講談社文庫)

七森中♪うたがっせん Blu-ray&DVD発売記念 大坪由佳さん1日店長 AKIHABARAゲーマーズ本店 5F

顔を見に(^^)。
ほんの一瞬だけれども、彼女の声はよく通るなあ、と改めて感心。