くろうのだらオタ日記

だらけたオタクのだらけた駄々漏れ感想日記。基本的にネタバレです。

2014-01-06

[]シャカイ系としてのファンタジーの復権 01:49 シャカイ系としてのファンタジーの復権を含むブックマーク シャカイ系としてのファンタジーの復権のブックマークコメント

先日この日記で「ファンタジーは時代を写す鏡」みたいなことを書いたことから触発されて、昨今のファンタジー設定についていろいろ考えている。ちなみにのこの言葉は我が心の師、河合隼雄氏の受け売りなんだけれども。

実際に、最近流行っている作品のファンタジー設定には、どこか共通項がある。それも少し前までの作品とは空気感みたいなものが違う気がする。そう考えると、その本質を追求してみたくなった。

というか、既に昨年からオタクコンテンツの世界が大きく変わりつつあるという論を展開しているので、それを補強する意味合いでもあるのだけれど。

エヴァから始まったオタク期が終焉し、今はより一般層にオタクコンテンツが届く時代になっていると思っている。そして、一般層が望むものとして、物語の核となる部分が「個人の問題」を描くものから、「社会の問題」を描くものが受けつつあるのではないかと考えている。

エヴァ」は個人が世界から責められる話だ。どんなに世界が大変な事になっていても、物語の本質は主人公シンジ君の心の問題が全てと言っても良い。

しかし昨年メガヒットした「進撃の巨人」は少し違う。主人公の心の問題は確かにあるけれども、それ以上に問題とされているのが社会構造であり主人公はそれに翻弄される。巨人の出現自体も、どこかの誰かの社会に対する思惑が見え隠れしている。

他のメガヒットとして挙げられるのが「艦これ」だけれども、これらミリタリーコンテンツが持て囃されることも、現実にあるミリタリー、つまり近隣諸国との緊張とかを無意識下で意識しているからこそ、それを弄ぶ楽しみに繋がっていると思う。一つの社会の問題とリンクしている。

そして、よくよく考えてみると、その他の最近のファンタジーでも、これらの感覚との共通項があった。

「SAO」はある天才エンジニアによって仮想のファンタジーに閉じ込められ、基本的に抗うことが出来ない中で人生を紡ぐ人々を描いている。

ガッチャマン・クラウズ」みたいな作品でも、社会の問題を浮き彫りにする力とアジテーターの存在によって翻弄される様子が描かれている。

逆の視点の作品もある。「はたらく魔王さま」は、元魔王が現実世界での生活を望んでいるのに、元は世界平和の象徴であった教会・天界からの干渉を受けて翻弄される。

「勇しぶ。」についても、基本的には「魔王さま」と同じ構造。

ファンタジー世界に存在する人に害する社会を強く意識させ、それは人間の思惑によるものなのだけれども抗う術を持てず翻弄される話。もしくは、現実世界の社会を強く意識させ、それをファンタジーの力で害する者が居れば抑えようとする話。

敵が「ファンタジーの世界」の場合はそれに対抗できず、敵が現実世界を害する「ファンタジーの力持つ者」の場合はそれを抑え込む。どちらも、ファンタジーの設定を使っているにも関わらず、「社会」を強く意識させつつファンタジーを否定している。(「艦これ」等ミリタリーコンテンツはこの辺り若干微妙なのだけれども、兵器=社会にあるリアルを肯定し、ファンタジー的なモノが敵になるということで構造としては同じ。)

オタク期よりも前、80年代にファンタジーブームがあった。それの多くが、ファンタジー設定を使い、個人が世界に対する全能感を感じる事が出来るように構成されていた。

エヴァ以降のオタク期には、セカイ系と呼ばれるムーブメントがあった。ファンタジー設定をより進化させ、個人が世界そのものに対抗出来る力を持ってしまうほどの全能感を提示した。そういう、非常に矮小化された世界を設定としているため本当の世界では無い「=セカイ」系と名付けられた。

そのセカイ系ではセカイそのものがファンタジーだったので、現実セカイを舞台にして剣と魔法の「所謂ファンタジー」は廃れていった。とは言え、「ハルヒ」も「コードギアス」も、セカイを舞台にしたファンタジーと言えるだろう。

そして今、「個人の問題」を描くオタク期が終焉した後、「社会の問題」を題材とする作品の設定として「所謂ファンタジー」が上手く使われているように思う。

それは現実の社会そのものではない。しかし、ファンタジーに絡ませて架空の社会を設定し、ファンタジーを否定している。これは、セカイ系と対比させて「シャカイ系」とすればよいか。シャカイ系ファンタジー。

しかし、このシャカイ系ファンタジーはファンタジーでありながら、ファンタジーの力を否定するモノだったり、現実世界の闇を暗示させるものでもある。

これは、もしかしたら過去からあるファンタジーの一分類「風刺ファンタジー」に入るかもしれない。けれども、あくまでこういうライトファンタジーを受け取る若者世代の現実世界に対する理不尽さのみを抜き出して構築しているところが、一つのカテゴリーに成り得ているように思う。

今の御時世、個人で「個人の問題」を解決しているだけでは足りない。世間の空気はより悪くなり、否が応でも「社会の問題」を意識しなくてはならないし、それを元々意識している一般層も、丁度これらのコンテンツに目を向け始めている。

シャカイ系ファンタジー」はこれらの流れによって生まれた新たなカテゴリーであり、今後の世界を写し出す新しい視点のファンタジーとして、ファンタジーそのものも復権させつつあるように思う。

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