雨降り

せっかくの日曜が雨降りだったので、おとなしく家で読書タイム。
◆「現代英文法講義」安藤貞雄著、開拓社
以前から欲しかったものの、宝の持ち腐れになりそうだなあ、と長い間躊躇しつつ数か月前にやっと買った本。自分は英語にかかわり、それを活用する実践者であっても解剖する研究者ではないので、この本の1ページ目からノートをとりながら内容を吟味咀嚼していく、という気はさらさらないけれど、開いて読み始めると、ああ、そういうことか、と、胸の中に隠れていた英語に関する疑問が氷解する一瞬が味わえる。こういう風にリスペクトできる書物と出会えるのは、やっぱり嬉しい。英語と関わる際の支柱として、これからもそばに置いておきたい一冊。
◆「理科系の作文技術」木下是雄著、中公新書
技術系文書を書く際の作法について詳細に書かれている。30年以上も読み継がれているのも驚異的だが、コピーや企画書を書くときにもかなり役立つのではないかと思った。そういえば、僕自身は無頓着に受動態を多用してきたけれど(そちらの方が客観的だと思っていたから)、むしろ逆で、それは責任回避的だ、という指摘には思わずピリッと来た。まあ、自分が物書きとして無自覚だったということになるわけだが…。
◆「女のいない男たち」村上春樹著、文芸春秋
短編集なので、週末ごとに、1編ずつ読み進めた。やっぱり村上春樹だなあ、それもかなりソフィスティケートされた。「ドライブ・マイ・カー」は月刊文芸春秋に掲載してあったときにすでに読んでいたけれど、渡利みさきみたいな女性が友達でいたらいいのに、と思った。車の運転が素晴らしくうまく、おまけにすべてを俯瞰し、端然と理解していて、男が迷ったときにさりげなく的確にアドバイスする。実際には世の中にいないのかもしれないが、そういうマリア的な存在を自分も待ち望んでいるのかもしれない。
印象に残った、というより、その感触がねっとりと張り付いてくるような読後感が「木野」で、異世界が日常の中にゆらりと現れるリアリティがなんとも言えなかった。未知なるものは常識的世界の中に前触れもなく訪れる、それも、そうと気づく人間の前だけに。そういうリアリティが描かれている。


夕方になったら雨が上がり、青空も垣間見えたのでカメラを片手に自転車で表に出た。空気はひんやりしていて、とても気持ちいい。ゆっくりと漕ぐ自転車のスピードが、肌に当たる風の状態をちょうど良くしてくれている。普段だと道沿いにカーブするところを、そこから枝分かれする小道に入ってみたら、急に上り坂になっていて、いきなり街全体が見渡せる場所に躍り出た。これも、異世界へのちょっとした入り口なのかもしれない。

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