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Crystaline [クリスタライン]

2008年07月16日

スチームパンクの意味とは?初心者向けスチームパンクファッション基礎知識

目次

スチームパンクとは

「スチーム(蒸気機関)」+「サイバーパンク(反ユートピア的ハイテクSF)」の造語。

端的に言ってしまえば、小説のジャンルの一つ。1980年代後半にSF作家のK・W・ジーター、ジェイムズ・P・ブレイロック、ティム・パワーズの3人が自身のヴィクトリア朝時代を背景としたファンタジー作品群に「サイバーパンクのようにジャンル分けしやすい名前を付けよう」とそのヴィクトリア朝時代に主流だったテクノロジーである"蒸気機関"を引き合いに出し、半ばおふざけで「サイバーパンク」を文字って名付けられたもの。

そのため、SFとはいっても「Science Fiction」というよりも「Sci-Fi(サイファイ)」と呼ばれることが多い。

※「サイファイ」とは…「Science Fiction」のように厳密な「科学」というものを意識させないように付けられた意味のない言葉。日本語で言う所の藤子F不二雄が提唱したSFの「少し不思議(Sukoshi Fushigi)」が近いかもしれない。

背景になった時代を指して「ヴィクトリアンSF」「アンティークSF」とも言われる。日本では近代に発表されたいわゆる「古典SF」が当てはまる。

そこからも分かるようにスチームパンクの「パンク」とはサイバーパンクの語感が由来であり、いわゆる「パンクロック」や「パンクスファッション」などのパンクとは関連性がない。また「スチーム」についても同様に、19世紀後半から20世紀後半にかけての時代を特徴づけたもので「蒸気」や「蒸気機関」に限られたものではなく、その時代の風俗に初期の電気を使った技術やガス、未知のテクノロジー(ファンタジーベースであれば魔法)なども動力として使用されうる世界観である。そのため19世紀や20世紀といった時代や地球のどこそこといったくくりに関係なく、その頃の文化レベルを世界観に持ったSFもスチームパンク作品に含まれる。
(例:デジタル機器が発明されずアナログコンピューターが発達した21世紀の月面居住区など)


ジュール・ヴェルヌ原作の映画『海底二万マイル (1954)』左
H・G・ウェルズ原作の映画『タイムマシン (1960)』右

19世紀当時のヴィクトリアンSFとしては『海底二万里』のジュール・ヴェルヌや『透明人間』のH・G・ウェルズ、日本の古典SFとしては『十八時の音楽浴』や少年少女向けの冒険SFで有名な海野十三 (うんのじゅうざ)や『ドグラ・マグラ』などで有名な夢野久作 (ゆめのきゅうさく)などが挙げられる。
古典SFの多くは青空文庫にて無料公開されているため必見。

※『海底二万マイル』は正しくは『海底二万里』もしくは『海底二万リーグ』だが、映画の邦題は「マイル」のためそれに準ずる。

スチームパンクの流行と変遷

現在世界的に広がっているスチームパンク(もしくはネオヴィクトリアン)の流行とは主にアメリカ・イギリスを中心とした、小説・映画・ゲーム・音楽・造形・ファッションなどを含む大きなムーブメントである。
19世紀後半から20世紀初頭までの時代(日本では明治から大正、昭和初期頃)をベースに「あり得なかった未来」の世界観を楽しむスタイルであり、後述する小説のジャンルであるスチームパンク特有の懐古SF的、懐古ファンタジー的な要素を取り入れたもの。
それ以前よりヴィクトリア朝時代の服装をベースにしたファッションやスチームパンクな造形作品が流行の兆しを見せていたが、2008年にアメリカのニューヨーク、イギリスのロンドン間で行われたヴィクトリア朝時代の発明品(という設定の)「テレクトロスコープ」イベントが世界に広くスチームパンクのファッションや造形を知らしめるきっかけになったと言われている。

テレクトロスコープ
ニューヨークとロンドン間でトンネルの向こう側とコミュニケーションが取れるという、19世紀の発明品を模したアート作品。

現在(執筆時2014年)ではアメリカ・イギリスにとどまらずヨーロッパ各国や遠く日本を含めたアジア諸国においても流行の兆しが見える。スチームパンクもしくはネオヴィクトリアンのファッションや造形の愛好者を「スチームパンカー」または「スチームパンクス」と呼ぶ。

スチームパンクファッションとは

後述するスチームパンクやネオヴィクトリアンな世界観をベースにしたDIYファッションを源流にもつスタイル。主にSNS等を通じインターネットコミュニティを介して世界中に広まりつつある。
アンティーク調の色合いに冒険者風の革アクセサリーやヴィクトリアンSF的なガジェットやアクセサリーなどを用いる。「手作り感あふれるもの」や「少しくたびれた感じのもの」を合わせてあまりドレッシーにならずほんの少しのユーモアを感じさせるような雰囲気が特徴。
私たちがよく目にする海外のスチームパンクファッション写真の多くは、イベントやコンセプチュアルなポートレートが多いためイベントやコスプレだけと思われがちだが、大掛かりなプロップ(小道具)を身につけた「特別な日のための特別な衣装」だけでなく、他にそれらを除外した「日常着としてのスチームパンクファッション」がある。

日本でヴィクトリアンスタイルというとドレススタイルを想像しがちだが、実際にはヴィクトリア朝時代にはドレスやスーツばかりではなく職種・階級に応じて服装が異なるため、ズボンやオーバーオールなどのスタイルも存在する。また日本では馴染みが少ないが水兵(セーラー)服やナポレオンジャケットに代表されるミリタリーなエドワード朝時代のスタイル(エドワーディアンファッション)も含まれる。

日本ではその時代はまだ着物が主流だったためオーソドックスな和装や着物生地でドレスをあつらえた鹿鳴館スタイルや大正時代の袴スタイルを基本とするのが日本風のスチームパンクファッションとなるだろう。海外では「ドーリー系ファッション(ヨーロッパの民族衣装などアンティーク古着を用いたアンティーク調のガーリーファッション)」や「森ガールファッション(レースなどを多用した、くすんだ色合いでナチュラルな印象のガーリーファッション)」を「日本風のスチームパンクファッションだ」とする見方もある。

DIYファッションとは

DIYとは「Do It Yourself」の略語で日本語で言うなら「自作」のこと。アパレルメーカーが提示したスタイルではなく、ファストファッションブランド(UNIQLO、Forever21、H&M)などの安価な洋服に一手間加えて自分なりのオリジナリティを出すスタイル。ジッパーや安全ピン、ジュース等の缶のプルタブやペットボトルのキャップ、その他ワッシャーなど本来はアクセサリーパーツではない物を使ったアクセサリーを「DIY Jewelry (DIYアクセサリー)」などと呼ぶ。スチームパンクアクセサリーに歯車やネジ巻き等が使用されるのはこの流れを汲んでいるため。
※参考 「DIY fashion - Google画像検索

ネオヴィクトリアンとは

スチームパンクのファッションや造形に限って使われる代替語。ヴィクトリア朝時代そのもののファッションや造形ではなく現代において手に入るものや手に入る素材で独自のヴィクトリアンスタイルを構築する「現代風のヴィクトリアンスタイル」のこと。「コンテンポラリーヴィクトリアン」などとも呼ばれる。日本では「和モダン」がそれに近い。

特別な日のスチームパンクファッション

スチームパンクな結婚式
欧米ではスチームパンクファッションを取り扱うウェディングプランナーも登場するなど
パーティーや結婚式にも取り入れられつつある

スチームパンクファッションの種類

特に厳密なカテゴリ分けはないが、種類としては以下のようなものが挙げられる。
※各カテゴリに取り上げられている装飾品の例はあくまでもメインに使用されているもので、そのカテゴリでしか使用出来ないということはない。

スチームパンク (ヴィクトリアンスチームパンク)

スチームパンクファッションのカップル
Photo by Tara Tonini

ヴィクトリア朝時代風の服装を基本とした一番オーソドックスなスタイル。ロングスカート、コルセット、フロックコートテーラードジャケット、ステッキやトップハットなどを用いる。

カジュアルスチームパンク

カジュアルスチームパンク
Steampunk Coutureのモデルの女性

日常着のスチームパンクファッションとしては一番定番のスタイル。カジュアルなファッションに一部スチームパンクっぽさを取り入れたファッションで、多くのスチームパンカー・スチームパンクスの普段着。Steampunk Couture(スチームパンク・クチュール)のデザイナー兼モデルのKato(ケイト)さんが有名。

スチームパンクロリィタ、スチームロリ

Crystalineのスチームパンクロリィタコーディネート
ロングスカートではなくミドル丈のスカートを用いたスタイル
主に丈の短いスカートを用いたスチームパンクファッションの総称。海外で流行しているロリィタブランドではない物を使用してロリィタ風のコーディネートをするファッション、「オフブランドロリィタ」の一種。日本のロリィタファッションとは異なるが、海外ではクラシックロリィタに分類されている。パニエ、ミニスカート、クリノリンなどを用いる。
普段着としてスチームパンクロリィタを実践しているスチームパンカーとしては私、Crystaline (クリスタライン)の他にドイツの人気ブロガーruffle and steamのAyraLeona (アイラレオーナ)さんが有名。

和装スチームパンク


アンティークの羽織と袴スカートの組み合わせ

もし明治期に洋服文化が広まり、今と違った進化をとげていたら、というファッション。主に着物や羽織、袴などの和服とコルセットなどを合わせた和洋折衷なスタイル。

和装スチームパンクといえばスチームパンククラスタにはおなじみのNatsukoさんが有名。

マルチカルチュアリズムスチームパンク (多国籍スチームパンク)

マルチカルチュアリズムスチームパンクファッションの提唱者Miss Kagashi
各国の民族衣装をスチームパンクに取り入れる
多国籍スチームパンクの先駆者Miss Kagashiさん

ドーリー系ファッションのように各国の民族衣装を取り入れた多国籍なスチームパンクファッション。主にターバンを用いたスタイルが多い。Miss Kagashi (ミス・カガシ)さんが提唱したスタイル。

スチームパンクゴシック、スチームゴス

スチームパンクゴシック(スチームゴス)ファッションの女性
Dracura Clothingの商品を身につけた女性

ゴシック寄りの黒を基調としたドレッシーなスタイル。アクセサリーやガジェットも手作り感の少ないスタイリッシュな物を用いる。各国のゴシック系アパレルブランドが取り組んでいる。

ディーゼルパンク

ディーゼルパンクファッションの女性
This pictures is taken by Andy Silvers

スチームパンクよりも時代が下がった第二次世界大戦時中をモチーフにしたミリタリースタイル。軍服をイメージさせるようなミリタリーファッションとSFの融合。宇宙に戦争を仕掛けていることが多い。動力源はディーゼルエンジン

アビエイター

アビエイターファッションの女性

飛行帽にミリタリーなディーゼルパンクファッションに含まれる飛行士スタイル。飛行機乗りの場合も飛行機械(ジェットパック)を背負っている場合もある。

スチームパンクウェスタン

スチームパンクウェスタンファッションのLeague Of S.T.E.A.M.

アメリカの西部開拓時代をモチーフにしたスタイル。西部劇とSFの融合。1999年公開の『ワイルド・ワイルド・ウェスト』がその世界観。
海外ドラマ「キャッスル」のスチームパンクスを巻き込んだ事件の回で衣装協力をした、西海岸を中心に活躍中のインディードラマチーム「League Of S.T.E.A.M. (リーグオブスチーム)」が有名。

スチームパンクサファリ

スチームパンクサファリファッションの女性

レトロな軍用ヘルメットを装着した冒険家スタイル。有名なサファリスタイルのスチームパンカーにコミカルなヒップホップで人気のミュージシャン、Professor Elemental (プロフェッサー・エレメンタル)さんがいる。

スチームパイレーツ、スカイパイレーツ

スチームパイレーツ、スカイパイレーツファッションの女性

空賊。海賊をモチーフにしたパイレーツファッションを取り入れたスタイル。海賊帽でお馴染みの三角帽(提督帽、トライコーンとも)やドクロなどを用いる。ガレオン船風の飛空艇や飛行船に乗ってやってくる。

スチームパンクベリーダンス

スチームパンクベリーダンスファッションの女性

ベリーダンスの衣装やベリーダンス風のアラビア風ファッションをスチームパンク化したもの。元来のコスチューム同様露出度は高め。アメリカで活躍する日本人ベリーダンサーのNatsumi Suzukiさんがスチームパンクファッションをベリーダンスに取り入れている。

クロックパンク

クロックパンクファッションの女性

「ネジ巻き」や「オートマタ(からくり)」をモチーフに取り入れたスタイル。ゼンマイ仕掛けで動いている。

スチームパンクサイバー

スチームサイバー

サイバーファッション(近未来SFをベースにしたファッション)にスチームパンクを取り入れたもの。本来のサイバーファッションで使用されるシルバーカラーやネオンカラーはメインに用いない。

スチームパンクコスプレ

Skirtzさんのスチームパンクピーチ姫
スチームパンクピーチ姫で有名なSkirtzさん

キャラクターのファッションを楽しむコスプレをスチームパンク化したもの。「アニメや童話、ゲームの舞台がもしスチームパンクだったら」というifを表したもの。スチームパンクのオリジナルコスプレを実践しているコスプレイヤーの中ではヤヤ・ハン (yaya han)さんが有名。

参考リンク

更新履歴

  • 2014.02.26 改訂
  • 2015.08.13 一部文章、写真追加