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2014-11-23

森の惨劇

 ベトナム戦争で心に深い傷を負ったリー・モラヴィアンは帰国後、人里離れた森の中でマリファナ栽培しながら静に暮らしていた。戦争の後遺症から、現実と戦闘中の記憶が混乱するようになっていたため、家族らに危害を加えることを恐れたためだ。その森の中に、人気作家ケルシーとその妻や愛人を含んだ複雑な人間関係でつながる6人がキャンプに訪れる。彼らが偶然リーのマリファナ畑を見つけたことから、森の惨劇が始まった。
以下ネタバレありの感想


















































































 ケッチャムはこれまで『隣の家の少女』、『黒い夏』、『オフシーズン』と読んできたんだけど、これが抜群に面白い。ケッチャムに求められている『隣の〜』に代表されるような容赦ない残虐描写や、後味の悪さなんだろう。そういう観点からするとこの小説は退屈なものなのかもしれない。
ただケッチャムという作家は、グロテスクでおどろおどろしいだけじゃなく文章もうまいし、人々の心の機微も巧みにとららえている。読者を驚かすだけでなく、テーマの基になっている実在の事件がある。社会派という表現はあまり好きではないのだけど、『森の惨劇』はケルシーら文明を代表する人々の複雑な心理、リーの側で描かれる戦争の傷が、徐々に緊張感を増していくスリルの中に溶け込まされている。
 解説ではアフガン帰還兵のケアに触れ、よりこの小説の意義が問われるという記述がある。もちろんそういったニーズもあるのだろうけど、極上の小説としてオススメしたい。

森の惨劇 (扶桑社ミステリー)

森の惨劇 (扶桑社ミステリー)

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