地震

弱い日本の強い円 日経プレミアシリーズ

弱い日本の強い円 日経プレミアシリーズ

  • 勉強しながら疑問に思っていた点にストライクな回答が見つかったのでうれしい。
  • 一部反論はあるけど、総じてよかったです。

pp.26-27
為替相場を分析する際に、もっとも気をつけなければならないのは、「通貨ペア毎」の分析を行う前に、「通貨ごと」の分析を行うと言うことである。

pp.39-40
世界的に株価が上昇するような市場環境で、世界の投資家や企業が積極的にリスクをとって対外投資を活発化させるような状況を想像していただきたい。もし、世界中の全ての企業や投資家が、自分の保有する資産の1%を対外投資に振り向けたら、どの通貨が売られるであろうか?答えは簡単である。それはお金を持っている投資家や企業が多くいる国の通貨である。世界中の人が同じ比率で対外投資をするなら、元々の投資資産をより多く持っている国の通貨が売られることになる。そして投資資金を多く持っている国は米国と日本。つまり、世界の投資家や企業が積極的にリスクをとって対外投資を活発化させるような状況で最も売られるのは、米ドルと円になるのである。だから世界景気が上向きな時は米ドルと円が弱くなるのだ。
一方、世界的に株価が下落するような市場環境、つまり世界の投資家や企業がリスクを回避しようと思う時は、投資資金を手元に引き戻そうとする。実際に資金を時刻に戻したり、投資していた外国債券を売却しなくても、為替リスクだけをヘッジするために外貨売り・自国通貨買いを行うかもしれない。この結果、景気が悪くなり、株価が下落し、投資家焼き魚のリスク回避志向が強まると、資本フローはお金を持っている投資家や企業が多くいる国に戻ってくる。つまり、米ドルと円が共に買われるのである。

pp48-49
顧客の資金を預かる責任のある等しかが、どこも投資する先がないといって消去法的に投資先を探すなどという行動をとるはずがない。リスク挙世弓道が低下した時に円が買われるのは、円を資本調達通貨として高金利通貨やエマージング市場に投資を行っていた投資家や企業が、リスクを避けるために海外投資を手仕舞い、円を買い戻しているからである。繰り返しになるが、この時、実際に投資した資産を売却する必要は無い。特にそれが債券投資であった場合、リスクを避けるために必要なのは為替リスクを避けることである。従って、この場合とられる行動は、外国債券の売却では無く、為替リスクをヘッジするためのギアか売り・自国通貨買いのみとなる場合もある。つまり、証券投資フローのデータに出てくるとは限らないのだ。

p.53
日本は既に世界最大の純債権国であるから、日本の投資家や企業が急激な景気の後退、市場の暴落等に直面した場合にとる手段は、海外へ資金を移すことでは無く、下記買いに投資している資産を国内に戻して、手元資金の減少を穴埋めすることである。つまり、前述したように、投資家のリスク回避敷くが強まった場合には、純債権国である日本にはお金が戻ってくるので円高になる。

pp.127
円は通常、世界や日本の景気が好調な時に売られる傾向が強い。これは、景気の良さを背景に、リスクテイク嗜好を強めた日本の投資家や企業が対外投資を活発化させるためである。こうした対外投資が貿易黒字に絡む円買いを上回った時に円は弱くなるのである。したがって、円を売って外貨を買う「理由」がある時に、円は下落するのである。円にとって必要なのは「買われる理由」では無く、「売られる理由」なのだ。

pp.127-129
米ドルには売られる理由など必要なく、必要なのは買われる理由である。いうまでも無く米国は世界最大の貿易赤字国である。(中略)世界中の輸出業者が米国への輸出で得た米ドルを毎日淡々と売っているのである。(中略)米ドルが買われる「理由」は主に2種類ある。1つは何らかの理由で世界の投資家が、為替リスクをとって米国に投資する時である。(中略)米ドルが買われるためのもう1つの理由は、何らかの理由で海外に投資を行っていた米国音投資家が国内に資金を回避させるためにドルを買い戻して、それが貿易赤字に絡むドル売りを上回る時である。

pp.142-144
メディアも含め、為替相場の動きを解説する必要のある人の多くは、すべてをマクロ経済的な理由で説明しなければならないと思っているように感じる。更に興味深いのは、こうした人の多くが、実は気づかないうちに、同じ主体の取引の片一方だけをマクロ経済に基づいた動きとして認め、もう一方の動きをマクロ経済に基づいていないとして認めないのである。米ドル・円相場の50銭程度の動きを、マクロ経済の要因で説明することを好む人の中には、「ポジション調整で相場が動いた」という解説を受け入れない人が多い。「ポジション調整」などという理由はマクロ経済の動きではないから、それでは相場が動いた理由にはならない、と言うわけである。その一方で、「米国の利上げが近いとの思惑から」とか、「金利差拡大見通しから」「日本の財務相が介入で支えるの期待から」米ドル・円が上昇した、という解説は喜んで受け入れるのである。しかし、実は「ポジション調整」も、「利上げが近いとの思惑」による取引も、全て同じような主体の一連の取引を解説しているだけなのである。(中略)マクロ経済に対する思惑に基づいて、投機的な取引を行った人々が、利益を確定したり、損失を最小限に抑えるためにとる行動が「ポジション調整」なのだ。一連の取引の片一方だけしか理由として受け入れないのでは、相場の流れを理解するのは困難である。

p.171
豪州の所得収支の赤字は、「世界の投資家」が同国への投資の配当やクーポンの支払いを受けていることを示している。豪ドル建ての配当やクーポンの支払いを受け取っている「世界の投資家」は、特にその投資の果実を自国で使う予定が無ければ、資源が今後も豊富に算出されると期待される豪州に追加的に投資するために、受け取った資金を再投資するケースが多いと考えられる。この場合、豪州の経常赤字(所得収支赤字)は豪ドル売りには繋がらない。