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2015-07-24

【マイナンバーQ&A】社員扶養家族の本人確認はどうしたらよいか

社員の扶養家族のマイナンバーの確認、本人確認はどのように行えばよいのでしょうか?

マイナンバー制度が始まると、会社は、社員だけではなく、社員の扶養家族のマイナンバーも取り扱います。

社員のマイナンバーを取得する際は、会社には本人確認義務がかかります。この点はご存知の方も多いと思います。

では社員の扶養家族のマイナンバーを取得する際の本人確認は、具体的にどのようにしたらよいでしょうか。

基本的パターンは、本人(扶養家族)の運転免許証ORパスポート+本人(扶養家族)の通知カードをもらえばよいと考えられます。

では、以下で詳しく解説していきます。


1. 本人確認義務とは何か

マイナンバーを取得するときは、本人確認義務が原則としてかかります(法16条)。

なぜなら、マイナンバーを悪用されると、別人になりすまして、所得をごまかしたり、給付を受けたりする人が出てくる恐れも考えられるからです。マイナンバーさえわかれば、本人確認なんていらないじゃないかと思う向きもあるかもしれませんが、なりすまし防止のために、本人確認を行うことが重要です。

では、本人確認とは何でしょうか。マイナンバー法では、実在確認と番号確認を行うことが求められます。

実在確認とは、その人がその人自身であることを確認することです(別人がなりすましていないかどうかのチェック)。

番号確認とは、その人が申告しているマイナンバーが正しかどうかを確認することです(マイナンバーが間違っていないかどうかのチェック)。


2. 本人確認義務がかかる場合はいつか

本人確認義務は、マイナンバーを本人又は代理人から直接取得する個人番号利用事務等実施者に対し求められます。

つまり、(1)個人番号利用事務等実施者に該当し、かつ(2)本人又は代理人から直接取得する場合でなければ、義務付けられません。

では、民間企業はこの(1)(2)の場合に当たるのでしょうか考えていきましょう。

まず(1)ですが、源泉徴収票を作成する会社、健康保険届出事務を実施する会社は、個人番号利用事務等実施者に該当します。市役所税務署も当然これに該当します。これに当たらない場合はごくごく例外ですので、会社の場合は、基本的に(1)に該当するものと思って準備したほうがよいでしょう。

次に(2)ですが、社員から社員のマイナンバーを紙に書いてもらって受け取るような場合は、まさに「本人から直接取得する場合」に当たりますので、本人確認が義務付けられます。

しかし、社員の扶養家族の場合はどうでしょうか。ここがややトリッキーです。結論から先にいうと、扶養家族のマイナンバーを社員を通して会社がもらう場合は、「本人又は代理人から直接取得する場合」に該当しない場合もありますし、該当する場合もあります。

ややこしいので、詳細に考えていきます。

まず、大本から考えると、なんで「本人又は代理人から直接取得する場合」にしか本人確認義務がかからないのでしょうか。それは別人を介してマイナンバーを取得する場合、本人確認を行うことが事実上難しいからです。法は不可能を強いないので(強いても、誰も守れない)、「本人又は代理人から直接取得する場合」にのみ本人確認義務がかかります。

例えば、健康保険組合は、会社を通して、社員(組合員)のマイナンバーを取得する場合が多いです。健康保険組合が直接組合員のマイナンバーを取得するのであれば、その際に本人確認をすればよいですが、会社を通してもらう場合、社員の本人確認を健康保険組合自身がやれと言われても、間に会社も入っているし、なかなか難しいと思われます。

そこで、このような場合は、直接もらっている会社が本人確認をすることになります。この場合の会社は、「個人番号関係事務実施者」になります。

扶養家族について考えてみると、これとパラレルなのです。会社は、社員扶養家族から直接マイナンバーをもらうわけではなく、間に社員が入っています。この場合は、間に入っている社員が本人確認をすることになります。いつそのような場合があるかというと、年末調整の際の扶養家族の確認、健康保険への加入の際などです。この場合の社員は、「個人番号関係事務実施者」になります。

この、間に入っている社員が本人確認をするというケースが圧倒的多数ですが、しかし例外があります。それは年金の3号被保険者の場合です。この場合、事象的には、扶養家族のマイナンバーを社員を通して会社がもらうことになるかとは思いますが、法律上は、扶養家族自身に届け出をする義務がかかっています。扶養家族は、本当は自分に届出義務があるけれども、社員に頼んで代わりにやってもらっているということになります。したがって、この場合の社員は「代理人」になります。ややこしいので詳細は割愛しますが、『やさしい番号法入門』(商事法務、2014年)87ページで解説しています。



国民年金法12条5項

第三号被保険者は、厚生労働省令の定めるところにより、その資格の取得及び喪失並びに種別の変更に関する事項並びに氏名及び住所の変更に関する事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。ただし、氏名及び住所の変更に関する事項であつて厚生労働省令で定めるものについては、この限りでない。



これに対し、年末調整の扶養家族の確認の際は、扶養家族自身に届出をする義務がかかっているわけではありません。「個人番号関係事務実施者」たる社員に届出義務がかかっています。

つまり、マイナンバー取得の際に、間に誰かが入っている場合に、間の人が本人確認をするのか、最終的に受け取る人が本人確認をするのかは、間の人が「個人番号関係事務実施者」に該当するのか「代理人」に該当するのかによって、左右されるということになります。「代理人」に該当する場合は、間の人が本人確認をするのではなく、代理人からマイナンバーを受け取る人が本人確認をするということになります。

ちょっと話はずれますが、ここで注意を要するのは、本人確認をしたくない場合に、間に誰かをかませばよいというわけではありません。例えば、どこかの委託先を間にかませば、会社は本人確認をしなくてよいというわけではありません。

会社が社員からマイナンバーを集める際に、会社と社員の間に委託先を入れるとしましょう。この場合、委託先も「個人番号関係事務実施者」に該当し、「代理人」ではないと考えられますので、委託先が本人確認を行うことになりますが、しかし委託元には委託先を監督する義務がありますので、委託先に本人確認を丸投げしてなんら責任を負わないということはできません。

話を元に戻すと、会社が社員を通して社員扶養家族のマイナンバーを取得する場合は、

(A)基本的には扶養家族の本人確認は社員がやる

(B)ただし年金の3号被保険者のように、扶養家族自身に届出義務がかかっている場合は、扶養家族の本人確認は会社がやる

ということになります。

法律上はこのように整理できますが、実際の実務上、このように場合分けするのは大変ですね。そこで実務上考えられるのは、社員が扶養家族の本人確認をやる場合、つまり(A)でも、会社が扶養家族の本人確認を合わせて行うということです。本人確認義務がかかっていない人が本人確認をすることも許されますので、実務上は、対応を統一して、会社は、社員扶養家族の本人確認をやると決めた方が、実務上混乱が少ないように思われます。


3.社員扶養家族の本人確認方法は具体的にどうすればよいか

では、社員扶養家族の本人確認を会社が行う際、具体的にどのようにすればよいでしょうか。

これもややこしいですが、社員が代理人なのか個人番号関係事務実施者なのかで、論理上は対応が分かれます。


(A)社員が代理人の場合(例外パターン)

まず、社員が代理人の場合、つまり例外的場合ですが、会社に本人確認義務がかかる場合から考えます。

代理人からマイナンバーを取得する際は、(1)代理権の確認(2)代理人の実在確認(3)本人の番号確認が必要です(法16条、施行令12条2項)。


(1)代理権の確認書類として、何が必要でしょうか。いろいろ種類があります。

普通は委任状です(法16条、施行令12条2項1号、施行規則6条1項2号)。誰が誰に対し何を委任するかを書いたフリーフォーマットの文書です。何を委任するかというと、「税・社会保障手続のための届出(このためのマイナンバーの取扱いを含む。)」です。なお、委任状にはマイナンバーの記載は不要です。

委任状を書かせたり受け取るのはちょっとしんどいなという場合は、「代理人であることを証明する適当と認められるもの」(施行規則6条1項3号)でOKです。とはいっても、「適当と認められるもの」って、そんな抽象的なことを言われても困りますね。そこで税の手続については、何が適当か、国税庁告示が出されています。国税庁告示では、

()本人(扶養家族)の押印・氏名・住所(住所の代わりに生年月日でも可)、代理人(社員)の押印・氏名・住所(住所の代わりに生年月日でも可)がある書類

()本人(扶養家族)の個人番号カード、運転免許証パスポート、健康保険証等

が挙げられています(国税庁告示12)。

()は委任状を簡単にした感じですね。

()は本人しか持っていないものです。これを代理人が持っているんだから、「あなたに託します」ということの証明になるという考え方ですね。


次に、(2)代理人の実在確認として、何が必要でしょうか。

これは、代理人が社員の場合は、雇用時に本人確認を行っていて、ほかの人が目で見れば人違いでないとわかっている場合は、不要です(施行規則9条4項)。

したがって、通常は不要ですが、もし書類を確認したいという場合は、代理人(社員)の個人番号カードか運転免許証が必要です(施行令12条2項2号、施行規則7条1項1号、1条1項1号)。

その他、運転経歴証明書(交付年月日が平成二十四年四月一日以降のものに限る。)、パスポート身体障害者手帳精神障害者保健福祉手帳療育手帳在留カード又は特別永住者証明書でも可です。

なお、ここには、(1)のための書類に書いてある氏名・住所か氏名・生年月日が載っていないといけません(施行令12条2項2号)。


そして最後に(3)本人の番号確認として、何が必要でしょうか。

本人(扶養家族)の個人番号カードか通知カードが基本です(施行令12条2項3号)。

それ以外に認められるのは、本人(扶養家族)のマイナンバーが載った住民票の写し又は住民票記載事項証明書です(施行令12条2項3号)。

これ以外の方法も一応あります(施行規則9条5項4号、国税庁告示18)が、あまりお勧めはできないでしょう。


つまり、いろいろとバリエーションはありますが、多く想定されるのは、次のものではないでしょうか。

・ 委任状+本人(扶養家族)の通知カード

・ 本人(扶養家族)の運転免許証+本人(扶養家族)の通知カード

・ 本人(扶養家族)の健康保険証+本人(扶養家族)の通知カード

・ 本人(扶養家族)のパスポート+本人(扶養家族)の通知カード

・ 本人(扶養家族)の個人番号カードのみ


(B)社員が個人番号関係事務実施者の場合(圧倒的多数の場合)

解説が長くなってきましたが、以上は社員が代理人のパターンの時、すなわち会社に本人確認義務がかかる場合の本人確認書類でした。

社員が個人番号関係事務実施者の場合、つまり圧倒的多数の場合であって、会社に本人確認義務がかからない場合の本人確認書類としては何がよいでしょうか。

この場合は、基本は、(1)扶養家族の実在確認、(2)扶養家族の番号確認です。

(1)は運転免許証、(2)は通知カード等が考えられます。

ということで、社員が代理人パターンの時と同じ書類にできるわけです。

ただし、本当のところは、(1)については社員が目で見て(知覚)で確認し、(2)は通知カード等で確認することになり、それを会社に社員が持参する必要はありません。しかし、そういうことをいうと、社員が代理人のパターンとの場合分けを厳密にしないと、会社の実務が混乱しますので、実務上は、社員扶養家族のマイナンバーを社員から取得するときは、社員が代理人であろうがなかろうが、本人(扶養家族)の運転免許証+本人(扶養家族)の通知カードを受け取るのがよいでしょう。

なお、(1)については運転免許証パスポートを扶養家族が持っていない場合に、若干の問題があります。運転免許証パスポートもないと写真なしのもの2種類(健康保険証+公共料金の領収証書等)か、会社が送り付けた書類への返送によって、実在確認をします。公共料金の領収証書等も、扶養家族名義でない場合もありますから、厳密に考え出すと悩ましいところで、会社が送り付けた書類返送が一番いい気もします。

しかし、このパターンの場合は、本人確認義務は社員自体にかかっていますので、(1)をチェックする義務は会社にはないわけであり、免許証かパスポートがない場合も、健康保険証のみでいい気がします。

ということで長くなりましたが、まとめると、社員扶養家族の本人確認は、

・ 本人(扶養家族)の運転免許証+本人(扶養家族)の通知カード

・ 本人(扶養家族)のパスポート+本人(扶養家族)の通知カード

・ 本人(扶養家族)の個人番号カードのみ

がよいと思います。

なお、本記事は、国税庁告示を元にして作成しているため、健康保険・介護保険社会保障分野で求められる本人確認書類は異なる場合があります。ただそうはいっても、現時点で厚労省告示が出ておらず、おそらく厚労省告示国税庁告示と大幅に異なる可能性はそれほどはないのではないかと思われます。ただ安全側に倒すとしたら、告示で許されるパターンをとらずに、委任状みたいに、かっちりしたやり方をやっておくということがよいかもしれません。

また、本記事は、あくまでブログ用にぱーっと書いたものですので、実際に本人確認方法を決定する際は、法律施行令施行規則告示原本に当たってください。当職は責任を負うことができませんので、どうぞよろしくお願いいたします。

(備考)

本人から直接受け取る際の法律解説。

法16:仝朕揚峭罐ード1枚、通知カード+α(施行規則落ち)、その他(政令落ち)

通知カード+αの「α」とは何か

雇用関係等で明らかな場合は不要(施行規則3条5項)

運転免許証運転経歴証明書(交付年月日が平成二十四年四月一日以降のものに限る。)、旅券、身体障害者手帳精神障害者保健福祉手帳療育手帳在留カード又は特別永住者証明書(施行規則1条1項1号)

・適当なもの(施行規則1条1項2号) ←国税庁告示1だと、税理士証票、写真付学生証、写真付社員証、会社が送り付けた書類を返送したもの

・次のうちの2つ以上

健康保険証等*1国民年金手帳、児童扶養手当証書又は特別児童扶養手当証書、適当なもの(施行規則1条1項3号イロ) ←国税庁告示2だと、写真なし身分証明書、印鑑登録証明書、源泉徴収票税金領収証書、社会保険料領収証書、公共料金領収証書等

・税務大臣等特例(施行規則1条3項)

その他とは何か → 時間があったら追って記載予定

*1国民健康保険、健康保険、船員保険後期高齢者医療若しくは介護保険の被保険者証、健康保険日雇特例被保険者手帳、国家公務員共済組合若しくは地方公務員共済組合の組合員証、私立学校教職員共済制度の加入者証

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