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国立がんセンター vs JT


>yoccyannさま
9/7付エントリーのコメント、遅れてしまい、たいへん申し訳ありません!ご確認ください。


受動喫煙が肺がんの「確実」なリスクになるという発表を国立がんセンターが8/31に出したのだが、すぐさま、つまり同日のうちに日本たばこ(JT)は反論コメント「受動喫煙と肺がんに関わる国立がん研究センター発表に対するJTコメント」を公表した。
JT側は、がんセンターは9つの論文を恣意的に選んでいるとか、実際は受動喫煙者と非受動喫煙者の罹患数に大差ない(受動喫煙の罹患者46、非受動喫煙は42)などの例を挙げつつ、センターの報告は「統計学的に有意ではない」「科学的に説得力のある形で結論付けられていない」と主張した。
すると今度は9/28にがんセンター側がJT発表に対するコメント「受動喫煙と肺がんに関するJTコメントへの見解」を公開し、現在ツイッターなどで話題になっている。おそらくはJTががんセンターの研究の科学的信頼性を真っ向から否定したがために、研究機関として反論せずにはいられなかったのだろう。その結果、期せずしてJTのコメントがいかにとんちんかんなのかが公になってしまった。
センターによる9の論文の抽出はメタアナリシスの正しい手続きに沿ったものであることや、JT側が出した罹患者数こそ最もリスクの少ない論文の恣意的抽出であること、などが書かれている。

(JTコメント)
受動喫煙については、周囲の方々、特にたばこを吸われない方々にとっては迷惑なものとなることがあることから、JTは、周囲の方々への気配り、思いやりを示していただけるよう、たばこを吸われる方々にお願いしています。

(国立がん研究センターの見解)
受動喫煙は「迷惑」や「気配り、思いやり」の問題ではなく、「健康被害」「他者危害」の問題である。健康被害・他者危害があるという科学的事実に基づいて、公共の場および職場での喫煙を法律で規制するなど、たばこ規制枠組み条約で推奨されている受動喫煙防止策を実施することが必要である。


最後の結論部分が象徴的だ。JTのコメントは、すべてを喫煙者のマナーの問題に還元しているが、それに対してがんセンター側は、健康被害」「他者危害」の問題であるとはっきり断じている。がんセンターは立派だと思う。加害者は個々の喫煙者ではなくて、利益を上げている製造販売の主体であろう。さて、これで国が動いてくれるとよいのだけれど、利権があってそれを妨げたい政治家がたくさんいそうだ。
日本の場合は公共性の強いJT一社がたばこ製造と販売を独占的に担っているので、その業は深い。公共企業体である日本専売公社が前身であるため、おそらく国との癒着も強く、いかなる批判も受けにくい巨大組織になっていると思われる。ついでにいうと、JTが販売している精製塩もたばこと並ぶ大きな健康被害の根源なのだが、これも手付かずだ。


なお、センターの報告のなかに、受動喫煙の所見が見られるのに、受動喫煙なし、と回答する調査対象者が少なくないことが挙げられている。たぶん私もこの中に入るかもしれない。自分の肺が汚れている理由をよくよく考えてみたら、生まれてから十代半ばまで、ずっと父が家でたばこを吸っていた。日曜日などは一日中居間にいてゴルフや相撲を見ていたわけだから、子どもたちも相当煙を吸い込んでいたに違いない。当時の私のアトピーや弟の喘息もそのせいだったかもしれない。