鼠と竜のゲーム / コードウェイナー・スミス

言葉の一つ一つが実に詩情豊かで、雰囲気が秀逸な短編集です。いくつか例に取ると、地球政府=人類補完機構、宇宙船の操縦士=あまたの世界のつなぎ手、太陽帆船の女操縦士=星の海に魂の帆をかけた少女、こんな具合です。この作品を今評価するとしたら、アニメやゲームに与えた影響を考えるとよいかもしれません。エヴァンゲリオン人類補完計画なんてそのまんまだし、クロノクロスにも「星の海に魂の帆をかけた少女」へのオマージュが見られます。どちらも強烈なインパクトとイメージを持った作品ですが、そんな作品のイメージに引きずられながら本作を読むと、感慨深い。ああ、これが元ネタか、と。
この楽しみ方は本来の作品を味わう上では邪道かもしれない。でもスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」でSFにはまりクラークの原作を読む、という行為と本質的には変わらない気がします。
なんでこんなことを書いたかというと私自身が、そうだからです。クロノクロスが大好きで、「星の海に魂の帆をかけた少女」も限りなくプラスの先入観をもって読みました。冷静にみたら佳作程度の出来なんですが、読んでいる時は感極まってちょっとほろりとしました。不覚にも。