目を擦る女 / 小林泰三

「仮想現実」がテーマ。グロ要素もそんなになく、一番取っ付きやすいと思うので、小林泰三を読み始める人は本書がオススメです。この人はSFネタとホラーを結びつけるのが本当に上手で、人によってはトラウマになるんじゃないかっていうくらい怖いです。怖いんですが、日常を異世界に変えてくれるような新鮮さがあり、病み付きになります。緻密な論理でわけのわからない結論に追い立てられ、そんなのおかしいと愕然としつつも、でもひょっとしたらという疑念を払拭できない。生きた心地がしないという恐怖なら山ほどあるでしょうが、本書を読むと現実を生きている心地がしないという恐怖にくらくらできます。イーガンが書いたホラーともいうべき会心の短編集、興味ある人は是非読んでみてください。


目を擦る女

牧野修っぽい感じ。

超限探偵Σ

ミステリの中で一番笑った作品かもしれない。バカミス好きなら是非。

脳喰い

エグイ描写がありますがテーマは哲学的で素晴らしい。

空からの風が止む時

場違いなほど爽やかな作品。天才少女が世界の謎を解き明かすというSFの王道を邁進する小説なので、SF好きなら至福の時を過ごせるでしょう。

刻印

純愛小説。可愛いから好き・イケメンだから愛してる、というような相手の属性を愛するのではなく、相手の全人的なところを愛するからこそ純愛なんです。そんな純愛のハードルの高さを示した作品。一般人には無理です。バカSFでもあるんで笑えました。

未公開実験

タイムマシンもの。(奇妙なポーズをとりながら)ターイムマスィ──ン、という全く新しい形のタイムマシンをめぐる作品。アイディアも神業ですが、掛け合い漫才のような会話も面白い。

予め決定されている明日

算盤で仮想世界を計算する話。明日は決まっているのか、もし決まっているとしたらありとあらゆる努力はすでに織り込み済みで無駄ではないか、という恐怖が味わえます。確かに明日のことは分からないけれど、この宇宙がビッグバンというスイッチによって電源をonにされた一連の計算ならば、明日は予め決定されていると言えそうです。
これは日々のモチベーションをいたく損なう事実です。人によっては無気力な生活を全肯定してしまうような衝撃があるでしょう。そんな決定論者のためにいくつかアイディアを出します。
運命は存在するのか