死神の精度 / 伊坂幸太郎

死神の人間観察記といった感じ。ごく普通の人間の姿をした死神がサラリーマンのごとく淡々と人間の死を処理する話です。文章は上手いですが淡白すぎて好みじゃありません。たいして美味くもないけど、なんとなく口にするすると入ってくる麺類のような、さらっとした文体です。登場人物のさり気無い描写は自然でよかったです。ちょっとした言葉遣いにも気を配っていて好印象。


たとえばチンピラ風の若者の食事シーンは

「これは」とフォークに刺した肉を頬張り、「やばいくらいに」と顎を動かし、「うますぎる」と飲み込んだ。

といった具合で、頭悪そうな感じがよく出ています。
こうした、ちょっとした表現の小粋さは評価できるんですが、ストーリーのほうは弱すぎじゃありませんか。軽い死生観が合いません。「死神と藤田」のオチはけっこうグッときましたが、それでもこの作家がどうしてここまで絶賛されているのか分かりませんでした。