時間的無限大 / スティーヴン・バクスター

スティーヴン・バクスターで一番面白い。ワームホールを利用したタイムトンネルを通して未来から、未来人と宇宙人がやってくる話。と書くとなんとも幼稚なプロットに聞こえますが、とんでもない。ハードSF的な肉付けが半端じゃなく、茫漠としたスケールのデカさを前にして思わず感動しました。作中で登場するタイムマシンは原理的に可能です。この「エキゾチックな負の物質」と「負のエネルギー」を利用したタイムマシンは、物理学者キップ・ソーンによって考案されました。「負のエネルギー」自体はカシミール効果によって存在が実証されてすらいます。とはいえ、量が不足すぎてタイムマシンを作るのは現実的に無理だそうです。

また、メインアイディアのひとつに「ウィグナーの友人」という思考実験が使われています。これが抜群に面白い。《ウィグナーの友人》と名乗るカルト教団が出てくるんですが、彼らの突飛な思想と行動は一理ありますよ。*1
まあ、何を言ってるか全くわからないと思うので解説をどうぞ。
コペンハーゲン解釈は間違い!?― 猫でもわかる「ウィグナーの友人」

*1:清涼院流水「コズミック」の密室卿は彼らを見習うべき。どうせやるならここまで本格的にやってほしいものです。