MBA受験生は必読――ふろむだ「人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている」

非常に面白かった。欧州のトップスクールに留学していると、キャンパスビジット対応で「MBAに来ると、どんないいことがあるのか?」と聞かれることが多い。「MBAでどれだけスキルが磨けるのか? そもそも、どれだけ優秀な人ならMBAに来れるのか?」といった問いもよく聞かれる。
就活ランキング上位の大手企業の方が、就活生のようなフレッシュさで目を輝かせながら質問してくるので、ついつい、こちらもドヤ顔でアピールしてしまう。
しかし、本音を言えば、MBAなんて「ぱっと見なんかスゴそうな奴が、ぱっと見なんかスゴそうなキャリアアップをするための、転職予備校」に過ぎないと思う。
基本的にみんなグローバル企業出身で、何か国語も喋れて、性格もナイスガイなエリートなので、最初会うと「おー!すげー!」と圧倒されるが、いざ一緒にグループワークしてみると「……ん? こんなガバガバな詰め方でいいのかこれ?」と首を傾げることも多かった。
StrategyもFinanceも、講義で得られる知識は、翻訳されている書籍を読めば十分だし、いくらクラスやグループワークの議論で鍛えられるとはいえ、ものすごく実力が伸びるわけではない。しかし、そんなことはお構いなしに、みんないいところからオファーもらっているのだった。

ハロー効果、錯覚資産

本書によれば、こうした事態はすべて脳のバイアスによって説明できる。企業の採用担当者は、ある人のポジションへの適性・実力を適正に判断しているつもりでも、学歴(MBA含む)・職歴・第一印象といった論理的な結びつきのない属性から判断してしまいがちなのだという。簡単に言うと、真の実力なんてものはよくわからないので、わかりやすい肩書に引っ張られて、「ぱっと見なんかスゴそうな奴は、たぶんこのポジションでも良いパフォーマンス発揮するだろ。ぱっと見なんかスゴそうだし」と無意識に結論づけてしまうのだ。これをハロー効果という。
こうした"錯覚"の"資産的価値"は半端ない。実力を伸ばす地道で律儀な努力よりも、はるかにROI(投資によって得られる効果)が高い。

ハロー効果を積み重ねていく運ゲー

とはいえ、MBAはその選抜の段階から「ぱっと見なんかスゴそうな奴チャンピオンシップ」だ。アプライする時点で、それなりにキラキラしたCV(履歴書)を用意しないといけないし、エッセイでも、わかりやすくて一貫性のある印象的な人生のストーリーを語らないといけない。初めの取っ掛かりは、どうすればいいのだろう。

まずは、いろんなことに、小さく賭ける。ハロー効果が得られそうな仕事や役割に手を上げ、いろいろチャレンジしてみる。チャレンジして成功するかどうかなんて、運次第だから、たくさんチャレンジするしかない。サイコロで当たりを出すのに一番効果的な方法は、たくさんの回数、サイコロを振ることだからだ。
(中略)
ミソは、これは運ゲーだけど、「当たると、当たる確率が上がる運ゲー」だというところだ。だから、いきなり大きく賭けるのは、損なのだ。どうせ大きく賭けるなら、当たりが出て、確変が入ったときに、大きく賭けたほうが、はるかに勝率が高くなる。


実力さえ磨けば自ずと成功すると信じている人は、技術さえ磨けば自ずと商品が売れると信じている日系メーカーに似ている。
評価されるかどうかも運ゲーなところがあるので、とにかく試行回数を増やすしかない、という局面もある。また、自分を評価する立場の人の意思決定プロセスは、実はどうしようもなくバイアスがかかっており、それをうまく利用するマーケティングの方が、ズルいようだけどROIが高かったりするのだ。