2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

バブリング創世記 / 筒井康隆

SF

ブラックユーモアが好きな人にオススメです。この中では「死にかた」が好きです。職場に鬼が乱入してきて同僚を一人ずつ殺していくという不条理なストーリー。ってそんな話のどこが面白いんだよと思うでしょうが、事件に対して人々がどんなリアクションを取…

果しなき流れの果に / 小松左京

SF

小松左京の代表作。永遠に砂の落ち続ける砂時計を太古の地層から発見した主人公が、何十億年もの時空を超えた戦いに巻き込まれるというストーリー。宇宙になぜ人間のような知的生命体がいるのか、という問いに挑んだ作品。アシモフ「永遠の終わり」を豪勢に…

死神の精度 / 伊坂幸太郎

死神の人間観察記といった感じ。ごく普通の人間の姿をした死神がサラリーマンのごとく淡々と人間の死を処理する話です。文章は上手いですが淡白すぎて好みじゃありません。たいして美味くもないけど、なんとなく口にするすると入ってくる麺類のような、さら…

OUT / 桐野夏生

パート仲間が殺した夫の死体をみんなで協力して解体する話。と書くとキチガイが主人公のサイコサスペンスかと誤解されそうですが、登場人物たちはみな「あの真面目でおとなしそうだった人がなぜ……」と近所のおばちゃんにワイドショーでコメントされてしまう…

タイタンの妖女 / カート・ヴォネガット

SF

カート・ヴォネガットの代表作。過去・現在・未来にあまねく存在するようになった男の予言と陰謀がある一家を翻弄する話。ストーリーやディティールなんかは荒唐無稽なんですが、その馬鹿らしさを自ら人類への皮肉と冷笑によって茶化しています。全体的に筆…

ジャガーになった男 / 佐藤賢一

ここ300冊くらいで一番泣いた本です。佐藤賢一のデビュー作。日本人がスペインや新大陸を舞台に活躍するという逆「ラストサムライ」な内容です。かといって国を救う英雄譚というわけではなく、武士として生きたい一人の戦バカの泥臭くて奔放な話です。ドン・…

安徳天皇漂海記 / 宇月原晴明

宇月原晴明の歴史小説。かなりファンタジーも入っているので伝奇小説ってやつかもしれません。前半は、鎌倉時代の将軍・源実朝をめぐる古文調の物語で、後半はモンゴル帝国・元に仕えたマルコ・ポーロを中心とした口語調の物語です。古文や日本史・世界史に…

あるいは酒でいっぱいの海 / 筒井康隆

SF

初期ショートショート集。「底流」は今でも読む価値のある佳作です。テレパシー能力を持った若いエリートがある職場に赴任してくる話。前任者のおっさんは苦労して得たポストを追われることになるので、主人公のエリートにたいして敵意を抱きます。そこで自…

ドラえもんは実現可能か

ドラえもんみたいに、まるで人間のように考え、行動し、反応するロボットは原理的に作れるのか、という話。根本的に無理なのか、それとも努力次第では可能なのかを考察します。映画の予告編ばりにキャッチーに言うなら、ロボットに心はあるのか・ロボットは…

火星のコッペリア / 山田正紀

SF

ロボットはどこまで人間に近づけるのか、というテーマのSF。この企画では一番読みやすく、エンタメしてるなあと思いました。傑作です。SFネタのほうも面白い。ドラえもんやアトムのような、まるで人間みたいなロボットは作れるのか、という話です。解説はこ…

SPECIALエッセイ「宇宙と文学」序論 / 小松左京

SF作家がどのようにSFを肯定し、そこに価値を見出しているか、という話です。論文というよりも意気込みなので、これだけじゃなんとも言えません。やはり素晴らしい作品があってこそ、SF賛歌はSF賛歌たりえるのでしょう。

八月の博物館 / 瀬名秀明

SF

あらゆる時代と場所へ、時空を超えて移動することが可能な博物館を冒険する少年の物語。「パラサイト・イヴ」みたいなのを期待すると確実にずっこけます。これは筒井康隆「朝のガスパール」のようなメタフィクションです。うーん、でもなんか微妙でした。も…

ライン / 村上龍

村上龍の描写系の短編集。お互いに無関係な変人の話を無機的にくっつけて一本のラインにつなげただけの小説です。どこが面白いんだよそんな本、と呆れる人もいると思いますし、私もそんなんじゃ小説として成立しないと思います。でもなぜか面白かったです。…

宇宙を決定しているのは人間だった!?― 猫でもわかる「ビットからイット」理論

情報工学の巨匠ジョン・ホイーラーが提唱したこの理論は、世界のありとあらゆるものは情報であり、その情報(bit)を観測することによって存在(it)が生まれる、というものです。まあ、これだけでは何を言っているのか全く分からないでしょう。あまりにも突飛す…

どちらかが彼女を殺した / 東野圭吾

書名そのまんまのフーダニットです。容疑者は二人、どちらが被害者を殺したのか? 本文中には犯人を明かす記述がないため、読者は散りばめられた伏線を自分で回収して、犯人を推理しなくてはいけません。まるで自分が探偵になったかのような知的ゲームを楽し…

ブラフマンの埋葬 / 小川洋子

小川洋子の中編。変な小動物を飼う話。ペットの可愛さに癒されたいけど実際に飼うのは面倒くさいという層をターゲットにした作品です。一方、癒し系の名の下に濫造される粗品の数々を苦々しく思っている人は、こういうの受け付けないでしょう。乳白色のよう…

時をかける少女

原作とほとんど別の話になっており、「耳をすませば」SF版みたいな爽やか青春ラヴストーリーです。泣けると評判だったので見ましたが、あー、まあいい話だなあ、という程度で終わりました。映像美は素晴らしかったです。ただ個人的には「パプリカ」のような…

時をかける少女 / 筒井康隆

SF

筒井康隆のジュヴナイル。映画「時をかける少女」の原作なんでその線で読む人が多いと思うんですが、正直それほど面白くありません。SF黎明期に書かれた子供向けのポップな作品なんで、今さら読まなくてもいいよなあ、という感じ。「シナリオ・時をかける少…

野ブタ。をプロデュース / 白岩玄

白岩玄のデビュー作。イジメられっ子転校生を人気者にすべく、プロデュースする話。学校という誰もが馴染み深い舞台をけっこうリアルに描写しているので面白いです。プロデュースときくとなにやら大げさですが、要はキャラを作る、ということです。「空気読…

ブラッド・ミュージック / グレッグ・ベア

SF

グレッグ・ベアの代表作。クラーク「幼年期の終わり」と「寄生獣」と「犬神」*1を足して3で割ったような話。細胞を極限まで進化させるというバイオホラーな感じ。古典として語り継がれるだけの価値はあります。細胞というのは想像も出来ないくらいミクロな存…

天使の自立 / シドニィ・シェルダン

シドニィ・シェルダンの初期の作品。陰謀にはめられた美人女性弁護士が主人公のサスペンス。まあハリウッド映画にありそうな安直なストーリーなんですが、やはり王道は王道なりに面白い。平易な文章と分かりやすい筋立てでサクサク読んでいけるので普段あま…

オウエンのために祈りを / ジョン・アーヴィング

親友オウエンのために祈りを捧げるようになった主人公の半生を描いたストーリー。スリルやサスペンスに飽きてきたので、現代アメリカ文学の旗手として名高いアーヴィングでも読んでおこうかと思って手に取ったんですが、これだからブンガクってヤツは! と愚…

アナザヘヴン / 飯田譲治・梓河人

飯田譲治・梓河人の合作。被害者の遺体を食べるという猟奇殺人事件に挑むサイコサスペンス。難しい話もなく、さくっと読めるエンタメです。あらすじから、ねちょねちょした腐臭のごときグロさを想像していたのですが、それほどでもなかったので安心です。身…

悪魔のパス 天使のゴール / 村上龍

村上龍のサッカー小説。中田英寿っぽいサッカー選手と村上龍っぽい作家が登場します。この2人のサッカー観をまんま小説化したって感じです。中田英寿との対談本を出すくらいなんで、この本もほとんどヒデのノベライズなんじゃないかって勢いです。試合の描写…

戦闘妖精・雪風(改) / 神林長平

SF

戦闘機のパイロットが謎の異星人の侵攻と戦うというストーリー。しかし血沸き肉踊る冒険譚ではなく、戦争を通して人間と機械のあり方に思いをめぐらすという思弁的な内容でした。登場人物のほとんどが軍人のせいか会話や描写が実にそっけなかったです。機械…

アンパンマンほど哲学的なアニメはない

「僕の顔を食べなよ」 これほど深遠な哲学を内包したセリフはないでしょう。

つぐみとひばり / 瀬名秀明

SF

「パラサイト・イヴ」で手に取り、「BRAIN VALLEY」で興奮し、「八月の図書館」で失望した人はけっこういると思うんですが、私もその口です。グレッグ・イーガン「祈りの海」の解説でも「ぼくになることを」よりも「祈りの海」の方を評価するようになったと…

笑う闇 / 堀晃

SF

模範的な短編でした。ロボットと漫才する芸人の話。お笑いをテーマにしたSFというのは、牧野修「或る芸人の記録」(「楽園の知恵 -あるいはヒステリーの歴史」収録) もそうですが、テーマに反して妙な哀愁がありますね。なんでこんなに切ないんだ。なんか泣…

MAZE / 恩田陸

幻想的な舞台設定とキャラの立った登場人物が織り成す不思議ミステリ。いったん中に入ると、戻ってこない人間が数多くいると伝えられている謎の迷宮に挑むという話。暇つぶしにはもってこいという程度の作品です。でも読んでて不快感を感じるとか、気持ち悪…

永遠の出口 / 森絵都

どこにでもいる普通の少女の成長物語。 本当に普通の話なんですが、卑近なリアリティがあるので面白い。劇的なことは何も起きないんですが、延々と続く日常の中のちょっとしたイイ事に元気付けられる人もいるでしょう。ただちょっと冗長なのが残念。