東海道戦争 / 筒井康隆

筒井康隆の処女短編集。初期の作品だけあって勢いとパワーがあります。筒井康隆というのはなんというか形容しがたい作家で、だれそれに似てるとか言えませんね。かろうじてR・A・ラファティっぽいと言えなくもありませんが、よりスラップスティックで戯画的かつ風刺的であり、毒と笑いの含有量は途方もなく、実験的でもあるという作風です。これでも筒井康隆について紹介しきったとはとても言えません。とにかく個性の塊のような作家なので、まだ読んだこと無い人は是非読んでみてください。とりあえず新潮社から出ている自選短編集から手を出してみるのをオススメします。

で、本書はどうかというと、いやあ面白いです。40年前の作品ですから、普通そんなに昔の小説だったら古臭くて読めないものなんですが、今読んでもその馬鹿馬鹿しさと風刺の鋭さには驚かされます。

表題作は、東京と大阪で戦争が起きるという話ですが、まず戦争が始まった理由もよくわからないという状況です。それなのに戦争にこぞって参加する大衆たち(なかにはどこと戦っているのかすら知らない人さえいる)。マスコミに煽られる大衆というのはいつの時代でもよくあることですが、その捏造されたお祭りが戦争という血生臭いものだというのが面白いです。その悲惨さを実感できずにほいほい戦争に参加する民衆が、戦場で不条理にも簡単に殺されていく、というのはその光景自体がシュールで笑えます。しかし単なるブラックユーモアにとどまらず、この「マスコミに煽られて架空のお祭りを創り出してしまう」構図というのは実に風刺がきいていていいですね。侵略戦争の場合、得をするのが一部の人たちで、大衆の多くは兵士として戦場で死と向き合わなければなりません。大衆にとっては害悪でしかない戦争ですが、そんな大衆がなぜ戦争へと駆り立てられるのか。本書を読むと考えさせられます。ドタバタとギャグだけに目を向けがちな筒井作品ですがその裏に隠された毒と風刺は今なお新鮮さを失いません。

三崎亜記「となり町戦争」もついでにどうぞ。

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