パナソニック アジア富裕層囲い込み…「エコナビ」海外展開

お家芸」技術…中韓企業と差別化図る

 パナソニックが自動的に消費電力を節約する独自機能「エコナビ」を搭載した白物家電を海外展開するのは、新興国で「ボリュームゾーン」と呼ばれる中間所得層の急増に伴い、富裕層も増えているからだ。日本メーカーの「お家芸」である省エネ機能を前面に押し出し、韓国や中国企業との差別化を図る。

通商白書によると、中国や東南アジアなどの11か国・地域では、世帯当たりの年間可処分所得が5000〜3万5000ドル(40万〜280万円)の中間層が、20年には現在の約2倍の20億人に増える。それ以上の富裕層も約4倍の2億3000万人に拡大する。

 パナソニック白物家電の基本的な機能や商品設計は世界共通にして開発や生産の効率改善を進めている。日本市場では、高機能を追求してきた従来路線を変更し、普及価格帯では中国で販売している洗濯機など新興国向けを逆輸入する。

 反対に、日本向けだったエコナビなどの高い機能は、海外に展開し、富裕層へと移行する層の囲い込みに活用する。高機能商品と、価格を抑えた商品との「挟み撃ち」により、新興国市場での販売拡大につなげる。

 過去にも日本の高機能品をアジア市場に輸出したことはあるが、現地の需要と合わず、受け入れられなかった。だが今回は、各国政府が省エネ対策や環境規制を強化する中で、手軽に節電ができるエコナビ商品が支持されると考えた。

 価格は所得水準に合わせてきめ細かく設定し、生活実態に応じて、搭載する機能にメリハリを付ける。例えば、年内にアジアで投入するエアコンは、日本向けに比べるとセンサーの種類を絞り、低価格化する。

 パナソニックの大坪文雄社長は「地球規模で最大の課題は環境問題で、大きなビジネスチャンスを与えてくれている」と強調する。

 2018年までに省エネ性能などが業界トップの環境配慮型商品を全体の15%から30%に増やす目標を掲げ、売上高も10兆円以上に伸ばす計画だ。エコナビの海外展開は、環境貢献と事業成長の両立を目指すパナソニックの取り組みの成否を占う試金石にもなる。

省エネ機能 世界で需要…高見和徳常務

パナソニック白物家電事業を統括する高見和徳常務は読売新聞のインタビューで、エコナビ機能を取り入れた商品をアジアの新興国など海外展開する戦略を語った。主なやりとりは以下の通り。

 ――エコナビを海外展開する狙いは。

 「省エネは世界共通で必要とされる機能だ。特に新興国では電力や水の不足が深刻だ。インドネシアでは節電しないとブレーカーが落ちたり機器がショートする。経済成長で購買層が広がっており、品ぞろえを充実させる」

 ――発売の時期は。

 「年末にインドネシア、マレーシアなどアジアでエアコンを売り出す。来年以降は冷蔵庫や洗濯機にも拡大する。将来は中国やブラジル、欧州にも広げる」

 ――中韓勢が追いついてくるのでは。

 「省エネ機能は、生産設備を導入すれば開発できるものではなく、そう簡単には追いつかれない。エコナビを活用し、世界でパナソニック=エコというイメージ作りを進める」

 エコナビ センサーで人間が居る場所や使用状況などを調べ、消費電力を自動的に節約する機能。2009年度から日本向け家電製品に搭載している。白物家電のほか、薄型テレビや携帯電話などにも活用されている。

(2010年10月16日 読売新聞)
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