ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器』

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

影響力の武器[第二版]―なぜ、人は動かされるのか

アマゾンのおすすめに出てきて買ってしまった一冊。
著者は変わった人で、何が人に決断を促すのか、という研究をするため、いろいろな販売会社に身分を隠して働いて、ノウハウを学んだ、という。訪問販売している教授。人類学みたいなアプローチ。しかし、こういうアプローチで本を書くなら、ヴェンカテッシュ『ヤバい社会学』の方がよほどおもしろかった。現場に眠っている知恵を起こしきれていないね。

んで、じゃあ何が書いてあるのかというと、学術実験/調査で得られた知見の紹介に大部分が充てられている。例えばこんな感じ。

・ヘビー級チャンピオン戦の放送後は殺人発生率が高まる(暴力への欲望を喚起する)
・自殺の記事がメディアに掲載されたあとは、自殺ないし自殺っぽい事故が増える(自己破壊衝動を喚起する)
・地位が高まると、でかく見える(同一人物でも、助手として紹介されるか、教授として紹介されるかで身長の見積られ方が異なる - この実験では、1.5cm/一ランク)
・二歳児での実験によると、幼児は障害があると燃える(男児は特に物理的障害の先にあるおもちゃで遊びたがる;女児は大人に抑止されるとそのおもちゃで遊びたがる)

などなど。ふーん。トリビアとしてはおもしろいが、特に印象に残らない一冊。こんなんで武器は身に付かないだろう。なぜアマゾンはおれにこれを進めたのだろうか。おれはアマゾンの「影響力」にやられた。

ヤバい社会学

ヤバい社会学