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北の楽園大雪山日記

2010-07-29

7月29日 層雲峡 蝶採集記 その3

オーナーさんと妻が採らせてくれたオオイチモンジ♀、そして大雪のチョウたち

 7月13日のことだった。

 昨年の秋から、はや今年の夏の大雪湖におけるオオイチモンジ♀最終旅行を楽しみにしてきた。

しかし、この数日、インターネット上で「今年の大雪湖でのオオイチの発生個体数は異常に少ない」

とか、「近年まれに見る不作」など、次々と暗い情報を目にし、出発の19日が6日後に迫りながらも、すっかり気分は落ち込んでしまった。♂は例年よりもかなり早く7月8日に出た上に、数も少ない

という。そんなところに行って楽しいのだろうか?いっそのこと大雪採集旅行は、キャンセルしようかなぁ・・・。宿泊予定の「ペンション山の上」の高橋賢一オーナーさんに、予約キャンセルの電話を入れようと。電話の受話器をとった。

僕   「あの〜、インターネットとかで、今年の大雪のオオイチの発生個体数は異常に少ないと聞きまして・・・」

オーナー「あれぇ〜?どうしたのぉ?小林君、元気ないねぇ」

僕   「すみませんが、僕、予約をキャンセルしようかと思っているんです」

オーナー「ええっ!?やめちゃうのぉ?今日、ニセチャロで初めて3♀が採れたんだよぉ。うち1頭は黒化型だよ!小林君、心配すんなって!♀はこれからバンバン出てくるから。まず、大雪に来なきゃ、採れないんだけら、オオイチの♀は!予定前倒しにできないかい?今すぐ来れば採れるよ。何とかならない?飛行機とか、レンタカーを予約変更してさ。もう一度よく考えてごらん。それからまた電話ちょうだいよ」

 電話の後、仕事から帰ってきたカミさんに、インターネットでの情報やオーナーさんとの電話の

やりとりを伝えた。

僕の気持ちは、まだキャンセルにするか、しないか、揺れていた。

カミさんは、僕の肩に手を置いて、力強く言った。目は真剣だった。

 「インターネットの情報だか、なんだか、私は知らないけど・・・。あなたは今、完全に他人の

情報に踊らされているわよ。たかだか2〜3人の『今年のオオイチは少ない』というネット上での書き込みを信じるわけ?

 去年の秋から、あんなに『オオイチ、オオイチ!』と子供のように楽しみにしていたのに・・・。

暮もお正月もゴールデンウィークも休み返上で、この夏の大雪オオイチ♀採集のために頑張って、

働いて、貯金してきたのに・・・。それしきのことであきらめるの?

 あなたは『チョウ屋』という看板を掲げていながら、自分の目で実際に見てもいないことを、信じるわけ?他人の言うことを信じるの?そんなんだったら、いっそのこと『チョウ屋』の看板、取り下げたら?

 それにね、オオイチはね、インターネットの中を飛んでいるのではないのよッ!

 オオイチは大雪で飛んでいるのよッ!!!

だったら、今すぐ大雪まで行って、自分の目で確かめてきなさいッ!高橋オーナーさんだって、

『大丈夫だよ、早く来なさい』って言って下さっているんでしょ?まさに『時は今』よ!飛行機や

レンタカーの変更の手続きは、私がやるから、あなたは今からすぐに荷造りをしてッ!」

 ハッと目が覚めたような気がした。

「ここまで言われて行かなきゃ、男じゃないっ!」と、思った。

すぐさまオーナーさんに電話した。

僕  「やっぱり行きます。キャンセルはしません。すぐに行きます。明後日の15日に行きます。」

オーナー「ほらほら、そうこなくっつちゃ、小林君!待ってるよ〜」

 7月15日 (木)

 朝一番の便で旭川に着き、午前11時に「山の上」に到着、リンゴトラップを受け取って、大雪湖へ向かった。

 11時30分。ポイントにトラップを仕掛けた。「オオイチの♀、来るかなぁ」、ピーカンの青空を

見上げた。願いが通じたのか、しばらくすると、1頭の♀がひらひらとトラップに舞い降りてきた。ネットインすると、翅はピカピカ、お腹は膨れあがっていた。羽化したてだ!しかも特大サイズだ!

 あまりの美しさ、ド迫力の大きさに、興奮で心臓もバクバクいってる。久々に感動を味わった。

その直後もう1頭の♀が、別のトラップに降りてきた。ネットインに成功。こちらもピカピカで大型

の♀だった。

 「オーナーさんとカミさんが言ったことを信じて本当に良かった」、と心から思った。

 その後、オオイチの♀は7月23日まで17♀も採れた。ペンション山の上に泊まった他のお客さんも、僕と同じぐらい、多いい方は、一日で25頭、合計40頭近くも採集された方もいらした。

 確かにインターネット等からの情報は、迅速で便利かもしれないけど、それに頼りすぎたり、振り回されてはいけない、ということを痛感した。やはり、オーナーさんとカミさんが言うように自分の目で事実を見ることが大事たと思った。

 一方、他のチョウでは、大雪湖が一日中雨だった7月19日は、オーナーさんのお勧めもあって、天気がよい留辺蘂方面に向かい、ゴマシジミ、フタスジチョウを満喫した。ゴマシジミは♂の発生半ばだった。ネットに入れ、縁毛がびっしりついている完品の♂と♀を、選んで採集した。フタスジも鮮度の良い個体を選んで採集した。ゴマシジミの青さは格別だったし、白帯が太いフタスジは見事だった。とっても楽しい時間であった。これら2種の北海道産の個体初ネットだったので、嬉しい。

 7月21日は、オオイチ♀が飛ばなくなった正午から、クモマベニヒカゲに転戦した。斜面上部にいると聞いたが、たまたま、天候のせいか、時間帯のせいか、クモベニは斜面下に多数降りてきていて、斜面を登らずとも容易に採れた。オオイチ♀とクモベニは発生時期が重なるので、どちらか一方をあきらめて、選択しないと採れないのだが、今回は運が味方してくれて、オオイチ♀、クモベニの両方が採れてとてもラッキーだった。

 7月23日は、ベニヒカゲ採集で好成果を得た。

 これでオオイチ♀、ゴマシジミ、クモベニ、フタスジ、ベニヒカゲと、5種全て採ることができた。毎日が興奮の連続だった。

 「本当に、層雲峡に来て良かった!」と心の底からそう思った。

 色々な種がたくさん採れたけど、僕には、7月15日、到着と同時に採れたオオイチ2♀た最も強く印象に残っている。鮮度、大きさが抜群だったことももちろん嬉しかったけど・・、この2頭を標本にしたら、標本を見つめる度に、きっと高橋オーナーさんと、カミさんの言葉を思い出すだろう。

 オーナーさんの「まず大雪に来なきゃ、採れないんだから、オオイチは!」というお言葉。

 そして、カミさんの「『チョウ屋』の看板掲げるなら、情報などに惑わされず、現地に行って、自分の目で見て、事実を確かめなさいッ!」という強烈なカツ。

オーナーさんとカミさんからとっても、大切なことを教えて頂いた。その結果?幸いにも、『チョウ屋』の看板も下ろさずに済んだ(笑)。

 だから、僕は、このオオイチ2♀は、オーナーさんとカミさんが採らせてくれたものだと信じている。そして、ゴマシジミや、フタスジチョウ、クモマベニヒカゲ、ベニヒカゲ…。旬なチョウを存分に楽しませてくれたのも、オーナーさんとカミさんが「今、すぐ層雲峡へ行きなさいッ!」と言ってくれたおかげだと思っている。

 高橋オーナーさん、今回、層雲峡にお招き頂き、本当にありがとうございました。おかげさまで、オオイチ♀はもちろん、色々なチョウを楽しめました。心から感謝申し上げます。そして、また、来年も層雲峡に来たいです(笑)!

文/小林隆

 

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