ロバのコラム

『ロバのティールーム 』 https://www.robanotearoom.com のコラムです。

オネアミス批評2

オネアミスの続きです。

シロツグは飛行機に乗ったことがなかったが、将軍の提案で空軍の飛行機を借りて飛行機に乗る。戦闘機の席から見る空の世界は憧れていた空の世界を想起させ、シロツグの宇宙旅行への想いを加速させてゆく。
 また、秘密裡に進められていたロケット建造の現場を目の当たりにして、他の宇宙軍士官たちの意識も徐々に変わり、皆が有人衛星打ち上げ計画に対して前向きに取り組むようになる。
 あるとき、シロツグが宇宙飛行士の訓練をしている最中に電話が鳴る。リンクニからの電話で、その尋常じゃない状況からシロツグはすぐさま彼女の元に急行するが、リンクニの家は電力会社の強制執行で取り壊されてしまう。シロツグはすぐにでも訴訟しよう、というが、彼女は自分の運命を受入れ、あきらめてしまう。
(この下りでも、原罪意識を持つ宗教の信者特有の描写が描かれている)。
 このようなリンクニの生き方と、有人衛星打ち上げ計画との間でシロツグは揺れる。

 さらにロケットの噴射ノズルの技術者であった博士の事故死により、シロツグは宇宙へ行くことの意味をさらに自分に問いかけるようになる。
宇宙軍本部の前では、デモ隊が「ロケット開発にかかる費用を橋の建設に回せ」だの、「貧困対策に回せ」だの、要求をしている。
自分のやっていることが果たして、このような多大な犠牲をはらってまですることなのか?シロツグは自問自答する。

 このあたりの葛藤がなかなか面白い。

 そんな中、ロケット発射台の建設場所が決まる。その場所とは、敵国との国境線のすぐ近く、「世界でもっともやっかいな場所」であった。なぜこの場所になったのか、それは政府がお荷物の宇宙軍を政治目的に利用しようとしたためだ。敵国の鼻先に敵国の欲しがるロケットを置いて、敵国にそれを奪わせ、敵国に対して「貸し」をつくる。敵国に優位に立てて、しかもお荷物の宇宙軍を潰すための口実にもなり一石二鳥。こう政府は考える。
 政府の決定にただ従うしかない宇宙軍。

 打ち上げの日がせまってきたある日、シロツグはリンクニのもとに向かう。その日の晩、リンクニが着替えているとき、シロツグはリンクニを押し倒す。しかし、リンクニのまっすぐな目を見てシロツグは我に返るが、その瞬間リンクニが花瓶でシロツグの頭を殴り、シロツグは気を失う。
 翌朝、出かけるリンクニをシロツグが追いかけ、「昨日はどうかしていた」とわびる。しかし、リンクニはそれに対してではなく、自分がシロツグを殴ってしまったことに罪の意識を感じている。彼女はどこまでも原罪意識の中で生きている。

彼女のもとから、本部に戻ると、打ち上げ準備のために次々と仲間たちが任地へと旅立ってゆく。仲間を見送った帰り、シロツグは暗殺者につけ回される。暗殺者は、ロケット計画を妨害する敵国が放ったものだった。町中を逃げ回るシロツグ。しかし、シロツグをひき殺そうと清掃車に乗った暗殺者に追い詰められたとき、シロツグは暗殺者に対して反撃に出て、暗殺者を刺し殺す。
 暗殺者に立ち向かったとき、シロツグは初めてこの計画の価値と真の意味を知る。このとき彼は迷いから解放され、宇宙へ向けてまっすぐに突き進む。

 シロツグが発射台に赴く。巨大なロケットと発射台を目の当たりにして、立ちつくす。
発射準備は着々と進み、発射当日を迎える。
同時に敵国がロケットを奪う計画が進行し、自国の政府も敵国に対して、発射時刻を故意に漏らす。宇宙軍将軍は、裏をかくために発射時刻を繰り上げるが、発射前に敵軍が国境線を越え、ロケットを奪いに侵攻し始める。
 発射台の人員に退避命令が出て、一度は発射をあきらめるが、ロケットに搭乗しているシロツグが将軍を説得し、ダメ元で発射を敢行する。
 発射台の目前まで戦闘が迫ってきたとき、ロケットは発射。両軍の戦闘員は、飛んでゆくロケットを目の当たりにして、戦闘を忘れて立ちつくす。
 ロケットは無事大気圏を脱出し、この惑星で初の有人人工衛星となる。
 シロツグは衛星の中から地上に向かって極超短波ラジオを使って、メッセージを送信する。もともとその放送内容は用意されていたのだが、彼はそれを語らず、自分の言葉で語りかける。
 人間はとうとうこの神の領域まで到達してしまったこと。そしてこの行為に対して、神に畏敬と感謝の念を表すこと。そして、この人間の飽くことのない欲望(自分たちの領域を広げていこうとする欲望)に対して、希望の光がいつまでもともっていてほしいこと。
 こんなことを彼は、地上に対する放送で語りかける。
 このあと、映画は人間が火を使い始めてから現代までの歴史の回想シーンをならべたててゆく。
そして最後に今日も街頭で布教ビラを配るリンクニを写し、そこから宇宙とカメラを引いていって、最後に大きな宇宙の取るに足らないある星の物語だといわんばかりにカメラを引いていきながらエンドロールへとつながる。

ほとんどあらすじを書いてしまったけど、こんな感じの映画です。
次回は、この映画をさらに分析します。
まだ、つづくよ。ほとんど自己満足だが。

                                                    • -

ロバのティールーム
http://www.k5.dion.ne.jp/~himar/