Hatena::ブログ(Diary)

ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006010203040506070809101112
2007010203040506070809101112
2008010203040506070809101112
2009010203040506070809101112
2010010203040506070809101112
2011010203040506070809101112
20120102030405060708091112
201301020304050607091011
20140102040508
201506070809

2007-03-25

dance3002007-03-25

[]ユニット・キミホ「Garden of Visions」

二十世紀バレエ団などで活躍したアンソニー・ハルバートと岸辺光代の間に生まれたキミホ・ハルバート。ダンサーとして踊るかたわら合同公演・発表会等での創作を手掛けてきた。05年には日本バレエ協会「バレエフェスティバル」において『Eve's Silma』を上演。コンテンポラリー・ダンスのコンクール登竜門・横浜ダンスコレクションRにも出品するなど精力的に活動している。今回は、旧作と新作を並べた初の自主公演。

ハルバートはバレエ作家の系譜に位置づけられよう。しかし、その感性は柔軟。バレエを軸に欧州のコンテンポラリーの流れも吸収、独自の舞踊世界を探求している。今回の上演作は、哲学的、内省的な主題を扱いながらもソフトで無駄のない動きが印象深い。『VISION OF ENERGY』や『Branches of Sorrow and Love』は大人数を用いた創作。前者では人と人の触れあいから生まれるエネルギーを浮上させ、後者では人間誰しもが向き合う生と死を形象化した。多くのメンバーが登場する場の間に挿入されるデュオやトリオが優れて詩的、叙情的。主要メンバー11名が出演した新作『Garden of Visions』では、舞台中央に花々をあしらった大木のオブジェを配し、庭園のなかでうつろいゆく人間模様を丁寧に描き出していく。

宮内真理子のソロ『La-La Land』は白眉のひとつ。舞台下手から白い花びらが舞い、舞台奥のスクリーンにはスピリチュアルな映像が流される。宮内は深く、しなやかに、そして激しく動く。ひとりの女性の内なる精神を浮き彫りにしている。コンテンテンポラリー系の若手作家・ダンサーの陥りやすい自己陶酔的な表出には留まっていないのはさすがだ。ハルバートと佐藤洋介のデュオ『skin to skin』は男と女の過去と現在の情景をスリリングに浮かびあがらせる。『INBETWEEN REALITIES』も仕上がりはいい。男ふたり(柳本雅寛、横関雄一郎)と女(島田衣子)の三人の関係性が主題。演劇的アプローチに依存せず、あくまでのムーヴメントを重視しつつ描いた点に作家の本領があると思う。

踊り手の水準は国内トップレベル。新国立劇場のプリマ(宮内)、井上バレエ団のプリマ(島田)、元・法村友井バレエ団のプリマ(西田佑子)が一堂に会するほか、札幌舞踊会出身の作間草、ハルバートの盟友・森田真希ら正真正銘の実力者が揃う。男性に関しても、武石光嗣、今津雅晴、横関雄一郎など豪華な面々。ほかにこのクラスのダンサーをそろえられるのは個人では佐多達枝くらいのものだろう。

日本において本格的な女性バレエ作家は少ない。孤高の境地に達した佐多達枝を筆頭に何人かが息の長い活動を続けているものの、後に続く存在がほしいところだ。ハルバートにかかる期待は大きい。西洋と日本、両方の血を引く彼女は、「日本人がバレエを踊るということ」への意識も強いはず。日本のバレエの未来を切り開く存在として今後も注目される。

(2007年3月18日 世田谷パブリックシアター)

2007-03-11

[]東京シティ・バレエ団meetsコンテンポラリーダンス

東京シティ・バレエ団の若手ダンサーに、オーディションにより選ばれたコンテンポラリー・ダンス気鋭の振付家が振り付けるという企画。ティアラこうとう内のさまざまな場所を巡演しながら行う公演形式も興味を惹いた。

真島恵理振付『死んだ男』(出演:古藤舞)は大ホール入り口の回転ドアや小道具として設置したドアを用い行われたソロ、最後に男は自殺する。同じく真島振付『生きている女』(出演:五十嵐妙子、小林洋壱)は大ホールロビーで行われ、観客のすぐ目前でいきを呑むようにスリリングなデュオが展開された。楠原竜也振付『かじったかじつかじる』(出演:山口華奈、堤淳)は、三枚目キャラの楠原が自身のカンパニーAPEなどで演じる、コミカル、ユーモラスなキャラを二枚目の堤が演じ楽しい。階段落ちやマイクを使ったパフォーマンスもあった。バレエダンサーを使って遊び、バレエという枠組みをからかう面白さがある。白井麻子振付『2にんげん』(出演:友利知可子、采あさみ)は野外で踊られた。観客はガラス越しに施設内から鑑賞。モダンの創り手らしい、よく錬られたムーヴメントの妙を堪能できる。ふたりがガラス面に激しくぶつかり踊る場面は迫力満点だ。

この日の出色だったのが、舞踏出身・鈴木ユキオ振付『犬の静脈』(出演:嶋田和香子、三好麻沙美、福地真理絵)。三人は地下駐車場、コンクリートのむき出しの地面で素足のまま踊る。腰を前傾させ、長い髪を貞子風にたらす。からだを痙攣させるダンサーも・・・。鈴木は彼女たちが幼少より鍛え上げたバレエ的体使いをリセットし、身体そのものから立ち上がる存在感に焦点をあてた。とはいえ単なるノン・ダンスや「バレエダンサーに舞踏を踊らせました」というものとは違う。彼女たちにしか踊れ得ない表現として定着させることに成功していた。バレエダンサーの持つ身体能力、要求に対する適応力の高さには鈴木も舌を巻いたという。両者にとって幸せな出会いとなったようだ。

ティアラこうとうが主催、JCDNが企画協力したことで今回のイベントが実現した。創設以来、古典とともに創作に力を入れ、進取の精神で知られるシティ・バレエにふさわしい企画でもある。バレエとコンテンポラリー・ダンス――ジャンルの壁を軽々と乗り越え、親しみやすいアートとして魅せることに成功していた。機会があれば形を変え今後も続けて欲しい企画である。

(2007年3月9日 ティアラこうとう館内各所)