Hatena::ブログ(Diary)

ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006010203040506070809101112
2007010203040506070809101112
2008010203040506070809101112
2009010203040506070809101112
2010010203040506070809101112
2011010203040506070809101112
20120102030405060708091112
201301020304050607091011
20140102040508
201506070809

2007-04-23

[]P’Lush『Headanche アタマガイタイ』

P’Lushは、深谷正子門下の玉内集子らのユニット(衣装の田口敏子も第一回から参加)。96年に結成、メンバーを入れ替えつつショーケース公演中心に活動行い今回が初の自主公演だという(出演:玉内集子、鵜野久子、藤本理子、玉内類子)。深谷は、日本現代舞踊のパイオニアのひとり小森敏の流れを汲む藤井公・利子門下。現代舞踊系に位置づけられようがその枠にとらわれない活動をしている。主宰する「ダンスの犬」ではパフォーマンスに傾いたステージを展開している。玉内は二世ダンサーであり、笠井叡の振付作品に出たり、JCDN「踊りに行くぜ!!」などに出るほか活動の幅は広い。

今回の作品は、深谷の振付・演出。4人で踊る場が多く、時折ソロなども挟まれる。最初は、独特のアンニュイな空気感に惹かれた。あまり動かないシーンもあるが、腕立て伏せをするような動きや飛んだり跳ねたりといった、日常的(とされる)動きも取り入れた場が続く。とはいえ、昨今、一部で流行の、ろくに身体訓練も受けていない人間が児戯の如く暴れるだけの舞台とは違う。身体から粗雑なものを削ぎ落とし集中力をもってコントロールすることに重きを置いているのは疑いない。

最大の関心は、玉内のソロ。昨秋「踊りに行くぜ!!」のソロは、往時の山田せつ子を思わせる力線の出方に惹かれた。今回は自作自演ではないのでそれはあまり感じられない。パワフルでよく身体が動く、いいダンサーなのは間違いないが。

終盤、ミスチルの「フェイク」にあわせた群舞は若さと躍動感に溢れている。ただ、出だしのユニゾンがあまりに普通のダンス、他のシーケンスとのバランスを考えると違和感を持ちはした。今後は、動きの良質さに加え、作品としての魅せ方を深め、ユニットとしての個性を打ち出していけばさらに面白くなるだろう。

会場では、舞踏評論の大御所、現代舞踊評論の重鎮らの姿を目にした。なるほど、小さな会ではあるが、現代舞踊、コンテンポラリー、舞踏に関心のあるものとしては抑えておきたいものではある。観客・批評家はダンサーや公演を安易にジャンルわけしてしまう傾向があるが、アーティスト間ではそれほど意識していない面もあるようだ。このユニットの、枠に囚われない活動姿勢には好感が持てる。常日頃、「ダンスは何でもあり」とうそぶきつつ、カテゴリー/ジャンルに縛られているのは、ダンス雀ではないだろうか、そう反省させられる一夕であった。

(2007年4月23日 神楽坂die pratze)

2007-04-20

[]稲本渡 アーティスティックライヴ

クラリネット奏者・稲本渡のライブ、ティアラ140+ #18 「WATARU INAMOTO Artistic Live 稲本渡 アーティスティックライヴ」を聴いた。

父の耕一はクラリネット奏者、兄・響はピアニストという音楽一家に生まれた稲本は、内外で活躍する気鋭の若手。今回、“スタイリッシュでストイックな中にある温かさ”をテーマに公演を行った。第一部は、クラシックのレパートリー中心。「無伴奏チェロ組曲第2番」(バッハ)、「3つの小品」(ストラヴィンスキー)、「ラルゴ」(ヘンデル)、「クラリネットソナタOp.120-2」(ブラームス)のほか、父・耕一の作曲した「Esperanzas」を演奏。まずは、クラリネット独特の温かみのある響きを心ゆくまで味あわせるという趣向だ。

休憩挟んで第二部では、音楽・踊り・映像の三者のコラボレーションが展開される。「無伴奏チェロ組曲第一番」「ガヴォット」(バッハ)、兄・響による「思いやり」「海の上のピアニスト」をへてピアソラの「リベルタンゴ」で締めた。トシ・オオタの撮り下ろした映像と、画家・及川キーダが描き下ろした作品を足立典生のVJワークでミックスしたものがバックのスクリーンに投影される。“温かさ”というコンセプトは映像からも感じられた。上山千奈(東京シティ・バレエ団ソリスト)による自作自演のダンスも絡む。上山は、美しい容姿の持ち主、清楚で白のよく似合うバレリーナである。その魅力を活かしたパートもあったが、ピアソラ曲に合わせた、赤の衣装・ハイヒールで踊るダンスが面白かった。奇を衒わない素直な振付。小ホールの狭い空間での踊りであったが、開放感があっていい。ピアノの横山貴子の演奏もアンサンブルとして場を心得ており好感を持った。

アンコールの二曲目では、フィギュアスケートの浅田真央が今シーズン用いたことで知られるモンティ作曲「チャルダッシュ」を稲本が演奏、上山がそれにあわせ踊った。最後は、くるくる回るグラン・フェッテ。狭い舞台のためヒヤヒヤさせられはしたがきれいにきめて満場の喝采を浴びていた。アートを身近なものとして提供するティアラ140+シリーズらしい、楽しくみどころの多いステージだった。

(2007年4月20日 ティアラこうとう小ホール)

2007-04-16

dance3002007-04-16

[]ウミヒコヤマヒコマイヒコ

昨年秋の『透体脱落』を最後に、劇場での公演を休止、各地で「場踊り」を行っている田中泯。近年は、山田洋次監督『たそがれ清兵衛』、犬童一心監督『メゾン・ド・ヒミコ』など映画にも出演、話題を集めている。その田中の主演する映画が今年初夏、公開される。といっても、劇映画ではない。『ウミヒコヤマヒコマイヒコ―田中泯ダンスロードインドネシア』。2004年11月から12月にかけて45日間にわたり、インドネシアの農村や漁村を独舞行した記録をまとめたものだ。製作は『乱』『始皇帝暗殺』などで知られる井関惺、監督はデザインディレクターとしてパッケージや広告を手掛ける油谷勝海 。

私は踊っている気なんですが、そう見えないかもしれません”田中自身ナレーションするように、インドネシアのさまざまな島を訪ねながら、道端でごろごろ転がったり、寝そべったり、ただフラフラ立っていたりと、足の向くまま気の向くままの独舞行である。スラウェシ島、スンバ島、カンゲアン諸島、マドゥラ島、ジャワ島、バリ島――島々をめぐる6つの旅。田中は、大地や海、川を背景・借景にするのではなく、野生に溶けこみ息づくかのように“踊る”。島民たちは、それを見てわらわらと集まる。インドネシアでは、舞踊とは儀式であり芸能だ。労働や遊びも密接に関わってくる。職業は百姓と言い切る田中も、生活者として地に足の着いた踊りを追及してきた。劇場空間で踊られる舞台芸術としての舞踊よりも、おのれの衝動をいささかも装うことのない身体こそ田中の志向するダンスなのだろう。このインドネシア独舞行は、自身の舞踊観を確認し、その後の活動を定める転換点となったという。田中のダンスの真髄が詰まった120分。

熱帯特有のからりとした気候、のどかな田園地帯、万物の生命たる水のきらめき、原始的な手作業による田植え、島民たちによる盛大な結婚式――現地の景色・風景を余さずフィルムに定着させている点も魅力的。その緩やかな時間の流れは、日々忙しく、せわしない生活を送る都会人にとってなんとも贅沢なものだ。田中の身体を通じ、観るものの心もしばし野生へと思いをめぐらせる。じわじわ身体に効いてくる、なんとも不思議な魅力をもったダンスロードムービーである。

(2007年4月9日 映画美学校第2試写室)

6月2日より、シアターN渋谷にてロードショー(配給:タラコンテンツ)

公式HP:http://www.maihiko.com/

田中泯 公式HP:http://www.min-tanaka.com/

※画像は公式HPより転載。

※当記事は桜座発行・甲府コミュニティマガジン「桜座スクエア」に転載されました。

2007-04-14

[]黒沢美香&大阪ダンサーズ『jazzzzzzz-dance』

強行スケジュールで観てきた。その価値のある、スリリングな舞台。横浜や東京のダンサーが踊るのも悪くないが、関西ならではのノリとパワーには圧倒される。

一応段取りはあるものの即興ベース、ジャズやクレイジーケンバンドの曲にのせ、関西の個性派女子ダンサーたちの個性が炸裂した。セクシーで猥雑で破壊力バツグン。ことにハイヒールを踏み鳴らしての群舞は圧巻。女性はすごい、怖い。種として、細胞として。あっというまの上演時間、久々に身体がスウィングするような高揚感を味わう。もはやダンスかどうかどうでもいい、と思える久々の体験だった。コンテンポラリー・ダンスをみる楽しみを久方ぶりに体感。

ダンサーでは、まず、きたまりに魅かれた。エロくブキミでカワイイ。関西ダンサーの姉御的存在・文も存在感がスゴい。しげやんこと北村成美はほとんど踊らなかったが、オメデタ(かなりお腹大きかった)のためのようだ。会場は立見まででる大盛況。面白いものには目がないのもさすが関西人だ。

(2007年4月13日 Art Theather dB)

2007-04-08

[]バレエシャンブルウエスト『ブランカ』『フェアリーテイルズ』

初夏から春まで怒涛の公演ラッシュが続き、4月に入るとグッと公演数が減るのは例年通り。新年度、新学期の忙しい時期でもある。とはいえ、この時期に意欲的に公演を打つカンパニーもないわけではない。

バレエシャンブルウエストは第53回定期公演として『ブランカ』『フェアリーテイルズ』を日替わり上演。昨秋初演されたばかりの『ブランカ』は手直しもいれているようだ。“絶対零度の至上の愛”がテーマである。全編白を基調にした、清潔感のある舞台。台本が錬られており、ストーリーバレエとしてよくまとまっている。川口ゆり子と今村博明は若々しさと年輪が同居するすぐれたパフォーマンスをみせた。他に特筆すべきは“白い亡霊”を演じた佐藤崇有貴。その圧倒的な存在感により舞台を引き締め、作品の品格を高めてる。日本のバレエダンサーでは数少ない芝居巧者のひとり。『フェアリーテイルズ』は老画家(今村博明)が自身の青春を回顧するという筋書きはあるものの踊りをみせる要素が強い。迷える青年画家は、森のなかで妖精に出会う。沢の精(川口ゆり子)はじめ妖精たちのメルヘンチックな踊りが見ものである。

両作品とも振付・舞台作法ともクラシックの規範を守っている。踊りの一つひとつはもちろん選曲・編曲から照明、装置ふくめ丁寧な仕事ぶりが光る。多くの若手ダンサーに適材適所で踊る機会をあたえていたことも好印象だった。

(2007年4月6、7日 新国立劇場中劇場)