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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2008-01-21

[]ベテランを侮るべからず〜堀内完など

師走に一通の案内状が舞い込んだ。「堀内完作品集の夕べ バレエモデルヌ」なる会のお知らせ。なんの接点もないはずだが時折そういうこともある。堀内は貝谷八百子に師事、ユニークバレエシアターを主宰し、堀内充、元、かおりを育てた人物。おそらく80歳にはなろうか。今回の会では彼が80年代から創作してきた作品群が並んだ。

『タンゴバレエ』『ジャズコンボとオーケストラの対話』など、ダンスクラシックをベースにジャズダンスなども織り交ぜた作品は趣深くはある。ローラン・プティが70年代にロックバンド、ピンク・フロイドの生演奏にあわせ「ピンク・フロイド・バレエ」を創作しているが(近年、牧阿佐美バレヱ団において新版が制作されている)、堀内も期を同じくしてピンク・フロイドの音楽を使ったり、ジャズの生演奏に合わせた創作を発表している。日本の創作バレエに新生面をもたらした人物として記憶されるであろう。貴重な作品をみることのできる、またとない機会だった(1月14日 セシオン杉並)。

このところバレエやモダンダンスで大ベテランの会が続いている。東京シティ・バレエ団では先日、石田種生の、創意に富んだ『白鳥の湖』を久々に大劇場で上演し、今後7月には石井清子の舞踊生活70周年記念公演も催す。「芸術祭男」の異名を取り、演劇的バレエを得意とした横井茂も2月に久々の、そして総決算ともいえるリサイタルを開催。例外的に息の長い活動を続ける佐多達枝は近年最大の傑作のひとつ『庭園』を初夏に再演する。老人力といえば失礼かもしれないが、いずれもベテランならではの老練な手腕と、余裕から生まれる瑞々しい感性の反映された会となりそうだ。

2008-01-11

[]国内コンテンポラリー/モダン/舞踏 編

印象に残る公演10点(公演日程順)

ダンスカンパニーカレイドスコープ[Project 07']

(2/17横浜赤レンガ倉庫1号館)

BATIK『ペンダントイヴ』

(3/28世田谷パブリックシアター)

黒沢美香&大阪ダンサーズ『jazzzzzzz-dance』

(4/13Art theater dB)

Noism07『PLAY 2 PLAY-干渉する次元』

(5/8シアター1010)

H・アール・カオス『Drop Dead Chaos』

(5/24世田谷パブリックシアター)

白井剛×川口隆夫×藤本隆行『true/本当のこと』

(9/1山口情報芸術センター、12/15横浜赤レンガ倉庫1号館)

東野祥子ソロダンス『E/G-EGO GEOMETRIA』

(9/15ザムザ阿佐ヶ谷)

金魚(鈴木ユキオ)『沈黙とはかりあえるほどに』

(10/13TEMPORARY CONTEMPORARY)

Roussewaltz『Bon appetit! -deluxe-』

(11/23 Super Deluxe)

MOKK LABO#「廃墟」

(12/16九段下パレス)

印象に残るダンサー10人(50音順)

井関佐和子(『PLAY 2 PLAY-干渉する次元』)

内田香(『Bon appetit! -deluxe-』ほか)

黒田育世(『ペンダントイヴ』『遊*ASOBU』)

白井剛(『しはに-subsoil』『true/本当のこと』)

佐東利穂子(『消息/substance』)

鈴木ユキオ(『沈黙とはかりあえるほどに』)

寺田みさこ(『愛音-AION』)

東野祥子(『E/G-EGO GEOMETRIA』『GEEEEEK』ほか)

平山素子(『Life Casting-型取られる生命』ほか)

矢内原美邦(『no direction。』ほか)


ここ数年、コンテンポラリー・ダンス界には、大型の新人が出てこなくなった。無論小スペースで地道に活動する若手やコンペで育った00年代世代も存在するが、毎年のように話題性のある逸材が出てきてそれを発見する喜びは失われたような気はする。トヨタコレオグラフィーアワードは隔年開催、オルタナティブな可能性を見出してきた東京コンペ#は休止となったこともその印象を強くする。「新しいもの探し」が一段落し、市場が成熟を迎えたともいえるだろう。しかし、それぞれの公演はそれぞれに面白く必ずしも停滞しているともいえないのが実際のところだろうか。横浜ダンスコレクションRのように海外や現代舞踊、バレエからの人材も吸収しての新展開にも注目したい。

さて、個々のアーティストの仕事を振り返ってみよう。80年代から活動、日本のコンテンポラリー・ダンスの始祖たる勅使川原三郎(KARAS)を筆頭に90年代初期、半ばから活動する中堅は手堅い仕事を残している。勅使川原は新国立劇場においてグループワーク『消息/substance』、ソロ『ミロク MIROKU』と秀作を連打した。自主公演では久々の新作『Drop Dead Chaos』を発表した大島早紀子(H・アール・カオス)は男性陣も舞台に出演させ新境地。二期会のオペラ『ダフネ』の演出も好評だった。伊藤千枝(珍しいキノコ舞踊団)は『あなたの寝顔をなでてみる。』ではシンプルな舞台空間において純粋にダンスの面白さを追求。商業演劇の振付等で引く手あまたの井手茂太(イデビアン・クルー)も全編ダンサブルな興奮に充ちた『政治的』を発表し多くの観客の支持と高評を得た。ストイックに自己の舞踊世界を追求する北村明子(レニ・バッソ)は東京公演こそなかったものの長野で『パラダイスローグ』を上演。今春の東京公演が待たれる。近藤良平(コンドルズ)はますます社会的認知が広がりマルチな活動を展開している。米のベッシー賞受賞でファンを驚かせた山崎広太は西村未奈らと踊るデュオ『Rise:Rose』(未見)を発表。そんななか時代の寵児と持て囃される伊藤キムは自身の振付活動を休止し、後進の育成に乗り出しカンパニー・輝く未来を結成した。新展開が注目される。独自の路線をひた走る、コンテンポラリー・ダンスのゴッドマザーこと黒沢美香(黒沢美香&ダンサーズ)は新作『薔薇の人-登校』(未見)を発表したほか、夏に仲間たちとこまばアゴラ劇場を1週間借り切って「なんという寛容な肉」を展開し気勢をあげた。また、旧友木佐貫邦子(neo)とのデュオ『約束の船』は大きな話題を呼んだが、舞台成果に賛否は分かれた。神戸を拠点に活動する岡登志子(アンサンブル・ゾネ)は『光と風と灰と山』を発表し枯淡の境地ともいえる独自の作風を深めている。愛知芸術文化センターほかで上演されたピアノの高瀬アキとのデュオ(未見)も話題。坂本公成(Monochrome Circus)も関西はじめ各地で活動している。

00年代以降のダンスシーンを担ってきた世代の安定した仕事も散見された。ことに充実した活動を展開したのが白井剛(Abst) 。グルーピング作品として『しはに-subsoil』を発表したほか、野村誠らミュージシャンとのコラボレーション『THECO-ザコ』もあった。さらに、川口隆夫やダムタイプの藤本隆行らと組んだマルチメディアパフォーマンス『true/本当のこと』を山口、金沢、横浜で上演。関東圏の公演が12月のため批評家筋の回顧アンケート等では次年度扱いとなったが年間を代表する秀作として記しておきたい。白井と同じく伊藤キムの元で研鑽を積んだ黒田育世(BATIK)も国内では3年ぶりとなる新作『ペンダントイヴ』を発表した。生理的な感覚に富み、過剰なまでのエネルギーを発する作風に賛否両論はある。しかし、今回、旋回舞踊等も織り交ぜるなど表現の幅が増しているのは事実で、アンチもそれは認めざるをえないだろう。矢内原美邦(ニブロール)は『no direction。』を発表。多様な才能によるコラボレーションだが矢内原のソロと高橋啓祐の映像が優れていた。個人的にはコンテンポラリー・ダンスの分野に分類するのには抵抗あるが、金森穣(Noism)は久々の大作となる『PLAY 2 PLAY-干渉する次元』を発表。美術、音楽、そしてダンスが拮抗しスリリングな世界を展開した。前作『NINA-物質化する生け贄』の衝撃度には及ばないものの2007年を代表する舞踊作品といえる。砂連尾理とのコンビで各コンペを総なめにした寺田みさこは初のソロ作品『愛音-AION』に挑み美術の高嶺格との共同作業も注目された。

コンペティション世代でも着実に自主公演やコラボレーションを続ける者もいる。東野祥子(BABY-Q)は、多くのセッションやワークショップ等をこなしつつ中原昌也らミュージシャンとのコラボレーションによる『E/G-EGO GEOMETRIA』、カンパニー作品『GEEEEEK』を発表。踊り手としての天才性と作家として卓越した構成力を発揮した。舞踏出身の鈴木ユキオ(金魚)も飛躍の一年となった。春には「東京シティ・バレエ団meetsコンテンポラリー・ダンス」に出品し『犬の静脈』を発表、バレエダンサーの身体から新たな可能性を引きだし好評。秋にはカンパニー作品として『沈黙とはかりあえるほどに』を小スペースで公演、そのストイックな舞台創りは若手世代では際立っている。「ハードコアダンス」を標榜する大橋可也(大橋可也&ダンサーズ)は『CLOSURES』を発表し独自路線を歩む。山田うん(Co.山田うん)はdeep blueとの共作『ひび』を発表。岩淵多喜子(Dance Theatre LUDENS)は『Moments '07』を再演した。

若手の自主公演は難しいがコンペ、ショーケースでの発表に安住してほしくはない。神村恵(神村恵カンパニー)『山脈』はポストモダンの脱構築というラインの戦略性から評価されたようだ。玉内集子( P’Lush)も活動を活発化。踊れるダンサーたちの活きのいいパフォーマンスには期待が持てる。伊丹アイホールでの公演が話題を集めたボヴェ太郎も年末に東京で会を持った。活動休止中の水と油の高橋淳によるじゅんじゅんSCIENCE「サイエンスフィクション」も催された。上村なおかもソロ公演を行っている(未見)。今年自主公演をはじめて開く女性三人組ピンクに期待を寄せる関係者、ファンも多い。愛媛のyummydance、山口のちくはも東京公演を行った。「アジアダンス会議」も行われ、JCDN「踊りに行くぜ!!」にもアジアの出演者が参加。インドネシアのアグン・グナワン&鈴木一琥『Water Dimension水の面』も記憶に残る。

「モダン=コンテンポラリー」なる概念がネット上等で散見されたが、モダンや大学ダンス、そして舞踏からも新たな息吹が生まれようとしており、それは歓迎すべきことである。新国立劇場で『Life Casting-型取られる生命』を発表、朝日舞台芸術賞を得た平山素子には各方面から一層注目が集まっている。新作3本立て等積極的に活動する二見一幸(ダンスカンパニーカレイドスコープ)、モダンの会に新作を出したほかクラブで旧作やメンバーの小品を発表した内田香(Roussewaltz)らの動向からも目が離せない。ことに彼らの作品にでる若手ダンサー――大竹千春所夏海らは技量に恵まれたうえ、自身の創作にもモダンの殻を破るものが感じられ注目される。笠井叡作品に出演する横田佳奈子、「踊りに行くぜ!!」や横浜ダンスコレクションRに出品する白井麻子(KAPPA-TE)の活動も目を惹く。大学ダンス出身では「場」にこだわって異色の活動を続けるMOKKの活動が面白い。舞踏は管見だが大野一雄 百歳の年 ガラ公演『百花繚乱』はまさに眼福。室伏鴻(Ko&Edge co.)は黒田育世とのデュオ『ミミ』も話題を集めた。若手では大倉摩矢子の巧みな身体制御術に唸らされたほか、東野祥子と共演した目黒大路も印象に残る。麿赤兒の大駱駝艦は創立35周年を迎え記念公演(未見)のほか壷中天公演を行っている。田中泯岩名雅記の映画も公開された。自主公演中心に触れたため漏れたアーティスト、ダンサーは多数いる。また、小スペースの公演にはあまり足を運べなくなっているので課題としてクリアしていきたい。

市場の拡大に伴って「なんでもあり」、宴会芸の延長のような代物やおのれの感覚のみに依存する脆弱なパフォーマンスも横行したが、それらは淘汰され地道に活動するアーティストが残りつつある。公的支援はいうまでもなく必要。民間の施設や小屋でも、真にアーティストと観客を結びつける優れた活動をするものが多いのは頼もしい。が、アートをダシにアーティストから搾取し肥え太るものもいるにはいる。関係者の見識、責任感も問われる。また言説空間や現場レベルで各ジャンル間のさまざまな障壁が存在するが、次世代のアーティスト、観客の実りとなるためにも可能な限りの建設的議論と歩み寄りを行い、ダンス芸術の一層の発展を目指していくことを望みたいものだ。

2008-01-02

[]国内バレエ編

舞台成果、公演数、多くの観客への訴求という点で熊川哲也Kバレエカンパニーが突出した活動をみせた。吉田都の加入で注目を浴びた『白鳥の湖』に続く5月公演・新制作『海賊』では物語や音楽に大幅な改編を施し、波乱万丈のスペクタクルロマンに仕上げた。同公演中、アリ役で出演の熊川が負傷に襲われるという危機に襲われながらも夏の『ドン・キホーテ』、秋の『白鳥の湖』「トリプル・ビル」と清水健太、橋本直樹はじめ新加入や若手の男性陣が健闘し活力ある舞台を展開した。

年明けに朝日舞台芸術賞を得たチャイコフスキー記念東京バレエ団は、新制作こそなかったものの年間を通し安定した実力を発揮した。先日惜しくも逝去したモーリス・ベジャールの傘寿を祝しての『ザ・カブキ』「ベジャールのアジア」を新春に上演。4月にはセミオノワ&フォーゲルを招いての『白鳥の湖』とバレエ団キャストによる『ドン・キホーテ』、6月には『ラ・シルフィード』、9月には「ニジンスキーの伝説」と題し「ニジンスキー・プロ」『ジゼル』を上演。年末にはギエムを招き全国縦断公演を行った。ベジャール、キリアン作品など現代作品の完成度ではやはり他の団体を圧している。

創立50周年を迎えた名門・牧阿佐美バレヱ団も精力的に活動を行った。『眠れる森の美女』『ロメオとジュリエット』では、青山季可、伊藤友季子という若手のフレッシュなプリマを主役に抜擢し世代交代、新世代への未来図を示した。秋の「ダンス・ヴァンテアンXI〜スターレット」では青山、伊藤、清瀧千晴ら若手・新人たち中心に総監督・三谷恭三の作品を上演。男性含め粒ぞろいの若手たちが大活躍をみせ将来を期待させた。また、夏に上演された『ア ビアント』は故・高円宮殿下の追悼作品の再演であり、時空を超えて展開される深遠な世界を可視化したスペクタクル。主役のカナヤを演じたベテラン・田中祐子の熱演が特筆される。

日本のバレエの中心たるべき新国立劇場バレエ団。今年はドミニク・ウォルシュ振付『オルフェオとエウリディーチェ』、芸術監督・牧阿佐美振付の『椿姫』と全幕2作品を世界初演し成果を挙げた。特に後者は劇場開設10周年を記念したもの。これまでに蓄積してきたクラシック・バレエをきっちり踊れる団体としての力を活かしつつ著名な題材をグランド・バレエとして多くの観客層に届けるという狙いは成功していた。他にもプティの『コッペリア』を導入し盛況。コール・ド・バレエの水準は群を抜いている。年間を通じ、劇場キャストの主演する回が増えて行く点が期待されるところだ。

今年創立60周年を迎える松山バレエ団は森下洋子&清水哲太郎の主演による舞台を上演。ことに5月公演『ロミオとジュリエット』では森下が永遠のイノセンスを示し感動を誘った。20世紀バレエの名作や邦人の創作を上演し続けてきたスターダンサーズ・バレエ団は横浜や東京近郊、そして中国で『ジゼル』を上演したが、大きな自主公演は12月のみ。創設者・太刀川瑠璃子の80歳を祝した公演を行った。

江東区と芸術提携する東京シティ・バレエ団は、本拠・ティアラこうとうが補修のため半年間閉館したが、前半に「東京シティ・バレエ団meets コンテンポラリー・ダンス」、『コッペリア』を上演。前者はバレエ、モダン、コンテの壁を取り払おうという試みであり、異ジャンルの才能とのコラボレーションが成功していた。ダンサーでは志賀育恵と黄凱。創立40年を迎え、今後も地域に根づきつつ質の高い上演活動が期待される。

老舗・谷桃子バレエ団は古典全幕のほか団員の創作作品の発表に力を入れ、成果を挙げつつある。一昨年日本バレエ界の草分け・小牧正英を亡くした東京小牧バレエ団はその追悼公演として秋に『白鳥の湖』を上演。英国バレエの移入を進める小林紀子バレエ・シアターはド・ヴァロワの『ザ・レイクス・プログレス』を日本初演。井上バレエ団は急遽代役でゲストに招いたエマニュエル・ティボーと絶頂期にはいった島田衣子主演による『眠りの森の美女』を成功させた。

八王子に本拠を置くバレエシャンブルウエストは地元のほか、都内でも公演を行う。注目されるのが18回目を数えた「清里フィールドバレエ」。山梨県・清里での野外バレエであり、2週間にも上る長丁場を複数のプログラムでもって日替わり上演。地元住民および全国からの観光客にも広く親しまれ、全国紙の1面を飾る夏の風物詩となった。草の根運動的な活動が広く地域に、全国に浸透していった例として学ぶ意義がある。

新興ながら企画性の高さの光るNBAバレエ団は積極的に活動を展開した。ゲストにラスタ・トーマスを招きフォーキン作品を集めた「バレエ・リュスの夕べ」を行ったほかトワイラ・サープ作品を導入。2年に1度のガラ公演「ゴールデン・バレエ・コー・スター」も開催した。所沢を拠点に海外交流に力を入れているのも注目される。

東京近郊ということでは、各スタジオの集合体の公演も少なくない。バレエTAMAは「プティパの夕べ」を開催し、ロシア・バレエの隠れた秀作を上演した。多摩シティ・バレエ団は、酒井はな&李波を招いて『くるみ割り人形』を上演。世田谷クラシックバレエ連盟調布洋舞家協会も会を催している。日本バレエ協会埼玉ブロックは『ドン・キホーテ』、神奈川ブロックは『眠れる森の美女』を上演している。長年、定期的な公演を行うグループの活動としては山路瑠美子の新人の会公演『シンデレラ』ほか、小林恭バレエ団『バフチサライの泉』、早川惠美子・博子バレエスタジオ『ジゼル』ほか、松崎すみ子のバレエ団ピッコロ『シンデレラ』、橋本陽子エコールド・バレエ『白鳥の湖』、マンナ・バレエ団『シンデレラ』、角屋満季子バレエ団『星座』ほかがあげられる。新興では埼玉のアクリ・堀本バレエアカデミー金田・こうのバレエアカデミー、江戸川区の佐藤崇有貴&平塚由紀子主宰によるTYバレエが躍進。

創作作品の発表の機会は少なく成果もやや寂しいが、日本バレエ協会(2月に『ジゼル』3月に『ヤング・バレエ・フェスティバル』夏に「全国合同バレエの夕べ」を開催)秋の「バレエフェスティバル」には例年に増して若い作家の創作が並び注目された。ことに石井竜一振付『シャコンヌ』の確かな構成力と清新な動きの造形が注目される。大ベテランながら毎年継続的に活動を続ける佐多達枝の存在は驚異というか舞踊界の奇跡であり、希望とさえいえる。今年の佐多達枝バレエ公演では新旧作品を上演。ことに高部尚子に振付けた新作ソロ『わたしが一番きれいだったとき』では、主題とモチーフ、新鮮な動きの造形とも優れ、有無をいわさぬ感動をもたらした。『a fig leaf』への熱烈な賞賛も散見された。新潟を拠点にしたレジデンシャルカンパニーNoismは芸術監督・金森穣の大作『PLAY 2 PLAY-干渉する次元』を発表、秋に中村恩恵、安藤洋子を招聘して「W-view」を行うなど精力的に活動している。元ハンブルク・バレエ団、現在は北米で活躍する服部有吉が帰国し大劇場で『ラプソディ・イン・ブルー』を発表し抜群の音楽センスを披露、将来を嘱望される。ユニット・キミホ率いるキミホ・ハルバートが新旧作を織り交ぜた初の自主公演「Garden of Visions」を行い各方面から熱い支持を集めた。

首都圏以外でも活発な活動が続いている。北海道では、札幌舞踊会が定期公演として「坂本登喜彦の世界」を行ったほか、佐藤俊子が師にあたるオリガ・サファイアの生誕100周年を祝した行った記念公演もメディアで報じられた。東北では左右木健一・くみバレエスクールが10周年記念の会を行い豪華なゲスト陣もあいまって評判。

中京地区は首都圏に次ぐバレエ王国であり多様な公演が行われている。大岩千恵子、大寺資二らを中心に多くの優秀なダンサーを要する名門・松岡伶子バレエ団は本公演において大作『ラ・バヤデール』を上演したほか、アトリエ公演において気鋭・島崎徹振付による刺激的なコンテンポラリー『RUN』を上演し高い成果を上げた。海外交流も盛んで名古屋の雄として名を馳せる越智インターナショナルバレエは『海賊』全幕のほかバランシンの『アポロ』を初演。佐々智恵子バレエ団松本道子バレエ団など老舗は小規模の公演を行うに留まっているなか中堅、新興団体の活動が目を惹く。川口節子バレエ団は年末にオーケストラ付による『眠れる森の美女』全幕の上演を成功させた。川口はまた、岡田純奈バレエ団との合同によるバレエグループあすなろ公演において『サロメ』を振付。自由な発想と卓抜した動きの造形のセンスが光る。後藤千花ステップワークスバレエは中島伸欣を招き『ロミオとジュリエット』を上演し好評が伝えられる。ゆかりバレエは望月則彦を招き『サロメ』を上演。豊田市に拠点を置く豊田シティバレエ団も文化庁の芸術創造活動重点支援事業の指定を受け活発に公演活動を行う。名古屋洋舞家協議会による「コンテンポラリーな公演」など合同公演も目につくが、公立施設・愛知芸術文化センターの主催による、あいちダンスの饗宴「トリプル・ガラ」は全国的注目を浴びた。ダンス・オペラ『ハムレット〜幻鏡のオフィーリア』、地元の深川秀夫による『ガーシュイン・モナムール』を軸に、多くの観客にアピールすることに成功した。公立施設主導で「ダンス王国・愛知」発信するという試みであり、今後も意欲的な活動が期待される。

関西地区でもまた大手、中堅団体がしのぎを削り積極的に活動を展開している。創立70周年を迎えた大阪の名門・法村友井バレエ団は6月の『ジゼル』『ボレロ』上演に続き秋の新制作、16作目の全幕バレエ『海賊』が大成功を収めた。日本屈指のノーブルダンサー・法村圭緒、プリマ級に堤本麻紀子、高田万里、法村珠里、室尾由紀子らを擁し今後、一層華やかな舞台が期待される。神戸の貞松・浜田バレエ団は好調を維持。8月には東京での「ローザンヌ・ガラ」に招聘されナハリン振付『DANCE』を披露し話題をさらった。9月には『白鳥の湖』を本公演で久々に取り上げた。秋恒例の「創作リサイタル19」では石井潤の秀作『泥棒詩人ヴィヨン』、芸術祭新人賞を得た同団出身・森優貴振付『羽の鎖』ほかを発表した。若手プリマでは全国的に注目を浴びる瀬島五月のほか竹中優花、吉田朱里らが活躍。京都の有馬龍子バレエ団はカール・パケットらを招いた『白鳥の湖』を上演。宮下靖子バレエ団は「深川秀夫の世界」などを、桧垣バレエ団は『椿姫』などを上演している。大阪では、野間バレエ団が高岸直樹版『ドン・キホーテ』をオーケストラ付で再演し芸術祭優秀賞を獲得。大阪バレエカンパニーは『海賊』、佐々木美智子バレエ団が下村由理恵&佐々木大主演『白鳥の湖』を、バレエスタジオミューズは下村由理恵&清水健太主演『シンデレラ』を、アートバレエ難波津バレエ団は『くるみ割り人形』を上演。倉永美紗らの出演した地主薫バレエ団や矢上恵子ら矢上三姉妹によるK★バレエスタジオも公演を行っている。驚異的なテクニックを持ったジュニアを多く育てる北山大西バレエ団、元松山バレエ団出身の主宰者による田中俊行バレエ団ジュニアバレエ団も会を行った。MRBを主宰する松田敏子は関西の夏の風物詩となったガラ「バレエスーパーガラ」をプロデュースするほか、大阪市主催・青少年のためのバレエ公演『コッペリア』も実現成功させたようだ。兵庫では兵庫県洋舞家協会のほか馬場美智子アカデミ・ド・バレエ波多野澄子バレエ研究所なども会を持っている。脇塚力によるカンパニーでこぼこも注目される。バレエ協会関西支部ではバレエ芸術劇場『バヤデルカ』を新春に上演。

九州では田中ルリ、中村祥子、志賀育恵らを輩出した田中千賀子バレエ団、熊本の熊本バレエ劇場など。沖縄ではバレエ協会沖縄支部が定期的に活動。四国では樋笠バレエ清水洋子バレエスクールなどが会を持っている。

ここであげたものはごく一部にすぎず、各地で各団体が旺盛な公演を続けている。そのほぼすべてが民間、個人の主催、主宰するものであり、バレエへの情熱とその成果の高さには頭が下がる。が、今後、プロの団体として多数の観客に訴求する活動や地域に根付いた充実した活動を展開する団体が生き残っていくだろう。モダン、コンテンポラリーとのジャンルの壁や、各団体間での垣根を現場レベルで利害抜きに取り払っていくことで新たな展開も期待したい。踊り手の踊る環境の整備や社会的地位の向上は急務。創作に関しても地道に活動する力量ある作家を支援、才気ある若手により機会を与えるよう各方面の一層の努力と観客の支持が求められる。