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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2008-08-30

[]志賀育恵が帰国

東京シティ・バレエ団のプリマ、志賀育恵さんが1年間の文化庁在外派遣研修(豪/オーストラリア・バレエ団)を終え帰国された。

私はもともと志賀さんの舞台を一観客として毎回楽しみに観ていた。その後、縁あって舞踊批評を書く機会に恵まれ、志賀さん主演舞台の評を度々書かせていただくことができた。しなやかな踊りで理想的なラインを描くことの出来る志賀さんは“踊る喜び”を誰よりもいきいきと伝えてくれる。彼女の踊りをみただけで落ち込んでいるときでも元気になれる。批評活動を始めたばかりの私にとってブレイクする時期の彼女の舞台をバレエ誌や専門紙に大きく書かせていただけたことは何物にも代え難い喜びだった。

志賀さんはこの1年の間にオーストラリアで100数回の舞台を踏んだらしい。古典からバランシンまで多くの作品に出演されたようだ。その経験が今後のステージにどう生かされるのか楽しみでならない。普段から歌舞伎を鑑賞するなど熱心に勉強を重ね、よりよい表現を探求する志賀さんのこと。よりスケールを増し、幅の広い表現をみせてくれることは想像に難くない。志賀さんの帰国後本格的な舞台の初となるのは10月に行われる東京シティ・バレエ団×東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団「オーケストラwithバレエ」の「動物たちのカーニバル」。

志賀さんの新たな出発を楽しみにしたい。

2008-08-26

[]牧阿佐美バレヱ団、イデビアン・クルー、東京バレエ団、小林紀子バレエ・シアター、高襟

日生劇場ファミリーフェスティバルに登場した牧阿佐美バレヱ団『ロメオとジュリエット』は寝室の場を省略する(※当初誤ってバルコニーの場と書いてしまいました訂正します)などのスペシャルカットバージョン。総監督・三谷恭三の解説付きでファミリー層に訴求する。伊藤友季子&逸見智彦主演日をみることができたがジュリエット役・伊藤友季子の稀有な音楽性の片鱗は堪能できた。

東京バレエ団『ドン・キホーテ』はポリーナ・セミオノワ&アンドレイ・ウヴァーロフと上野水香組の競演が話題だった。セミオノワは初役のためか序盤硬さがみられ期待したような爆発的な演技は観られなかったもののアダージョの情感をしっかりだせるのはさすが。モスクワ舞踊学校の大先輩・ウヴァーロフとの相性もなかなかだった。上野と高岸は演技面でツボを得た舞台さばきをみせ充実していた。

小林紀子バレエ・シアター『ラ・シルフィード』はデンマーク出身、ヨハン・コボーの演出。ブルノンヴィル振付を知りつくしたコボーの精緻きわまる演出は見事。コヴェントガーデン、ボリショイに続いての紹介は有難く質的に極めて高い仕上がり。「マクミラン・ダイヴァーツ」では気鋭・小野絢子が中村誠と組んで『ロメオとジュリエット』バルコニーのパ・ド・ドゥを演じて可憐かつ伸びやかな踊りで魅了させてくれた。『エリート・シンコペーションズ』よりを冨川直樹と踊った萱島みゆきもノーマークだったが実にいい踊り手だ。

イデビアン『排気口』はフォーサイス・カンパニーの安藤洋子を迎え、井手茂太自身も踊ったが昨年の『政治的』一昨年の『補欠』よりはインパクトは薄いか。深見章代率いる高襟の初自主公演は深見のやりたいことをブチこんだものだった。猥雑で騒がしくエネルギッシュ。ただ何を伝えたいのかが見え難い面もあってワルノリ気味にも映った。

2008-08-24

[]五井輝さんのこと

舞踏の五井輝さんが5月10日、63歳で亡くなられた。来る8月31日(日)15:00〜17:00に中野富士見町・planBにて偲ぶ会が行われるそうだ(会費3,000円)。

面識はなかったが、私が五井さんの舞台を最初に観たのは2001年の『蟲地』。die pratze企画の公演だった。薄暗い舞台のなかで得体の知れないような、だけれどもたしかな実存を感じさせる五井舞踏に魅了された。2004年の『音江山』は大好評を博したが不覚にも情報を入手できず見逃した。昨年秋の遺作『神居』もスケジュールの都合上パスしてしまったのが悔やまれる。ただ、加藤みや子らとともに企画・出演した藤井公・利子の現在『観覧車』(2006年)を観られたのはせめてもの幸いだった。

モダンから出発し舞踏の異才として一生を駆け抜けた五井さんのご冥福を祈りたい。

2008-08-17

[]コンクール雑感

夏は公演、発表会とともにバレエのコンクールが全国で盛況を誇っている。東京や名古屋では連日なにかしら行われているといっていいくらい集中する時期も。先日行われれたさるコンクールのジュニア部門に中国勢が大挙して参加、賞を軒並みかっさらっていったように国際的な広がりもみせつつあるようだ。ちなみに現在、国内には30は下らない数のコンクールがあるとか。世界で一番コンクール熱心な国であるのは確実。

コンクールの功罪はいろいろいわれるけれども、出場者にとっては、自分の力量を確認し、同世代の踊り手の演技をみて刺激を受ける機会として貴重なのであろう。観客や関係者にとっては、各地の若い踊り手を見ることができ便利ではある。コンクールから巣立ってスターになった踊り手は枚挙にいとまがない。しかし当然ながら、ヴァリーションひとつの演技で、踊り手のすべてが分かるわけでも人生が決るわけでもない。伸び盛りの若手を公演、舞台で観る機会が増えていくのが望ましいだろう。若い踊り手にプロによる生のオーケストラ演奏付で本格的な舞台を踏ませるという公演も行われている。そういった機会がもっと増えていくのが好ましい。

近ごろ、コンクールや公演、発表会で若い踊り手を観ていると、テクニック一辺倒ではなく雰囲気、佇まいがなんともいい子や演技力のある子が出てきていていると感じる。5年後、10年後のシーンが楽しみになってくるが、若い芽を潰さず伸ばしていく土壌を育てることが大切だろう。結局のところ、バレエとは、振付やプロダクションも重要だけれども、ダンサーの魅力に負うもの。そもそもダンサーがいなければ舞台は成立しないのだから。若く才能あるダンサーを消費することなく育てる環境づくりを期待したい。

2008-08-09

[]Noismの歴史と今後

新潟を拠点とする日本初のレジデンシャル・ダンスカンパニー(←いまさらな紹介だが)Noismのホームグラウンド、りゅーとぴあでポスター&サイン展が行われている。2004年に活動開始、5年目となるカンパニーの歴史を振り返ることの出来る企画らしい。

http://www.ryutopia.or.jp/info.php#236

http://www.noism.jp/blog/2008/08/post_60.html

これは密かな自慢なのだが、Noismの本公演はすべて観ている。熱心なサポーターの方でそういう方は少なくないと思うけれども、ライター関連では多分ほとんど皆無に近いと思う。新潟のみで2回だけ上演され、ソフト化もされていない能楽堂公演(2006年)は記憶にのこる名舞台であったが(バレエ雑誌に批評を書くことが出来た)、評論家や記者の方々はほとんど誰も観ていなかったらしい。他にも新宿パークタワーホールで上演された第1回公演で仕掛け満載の『SHIKAKU』(2004年)、演劇性を取り入れた実験的なスタジオ公演『sence-datumu』(2006年)なども刺激的で忘れ難い。

そういえば、先日、Noismの活動期間延長が発表された。2013年8月までの活動が保証される。リリースによると“このたびの延長は発展的延長であり、一流の作品作りはもとより、今後はカンパニーの体制の強化、アウトリーチなどの充実も図っていきます”とのこと。メンバーの出入りもあり、また金森穣のミューズ、井関佐和子が次シーズンはミストレスになるなど体制に変化もみられるが、次回は代表作『NINA-物質化する生け贄』(2005年)を海外上演用にヴァージョンアップした「ver.black」を凱旋上演する。

Noismの新たな旅立ちが楽しみなところだ。

2008-08-02

[]輝く未来 試演会「0808」

伊藤キム率いる輝く未来 試演会「0808」を観る。輝く未来はコンテンポラリー・ダンス界の寵児、伊藤キムが自身で創作は手がけないものの後進を育てるという目的で結成。昨年2度の試演会のあと本公演を実施した。メンバーが各々創作を手がけつつ切磋琢磨、研鑽を重ねていくという試みが注目されている。今回は2年目初の会となった。

昨年は伊藤が踊り手としてメンバーの創作に出演したが今回それはなし。このカンパニーでは、創るということと踊るということが密接に絡みあって表現者としてのポテンシャルを高めようとしているように思える。稽古日誌を公開しているが、何を稽古したか、何を創ろうとしているのかを言語化することも自身を見つめ直す手段として有効だ。

とはいっても、創ることがすなわち踊り手にとってプラスになるとは必ずしも限らない。モダンの世界では比較的早くから自作自演でコンクールに出品したりするなど創作が奨励される。しかし、それらのコンクール等では、毎度毎度のありがちな、自身を客観視することなく既存の語彙・手法に安住しただけの虚しい生産物としてのダンスが連ねられることも少なくない。いっぽう、コンテの世界でもまだ技術的にも方法論的にもなにも確立していない未熟な身でありながら創作を手がけ、あまつさえワークショップまで開こうという厚顔無恥な輩が存在する。百害あって一利なし。その点、輝く未来は、伊藤という親方が睨みを利かしつつ、ダンサーたちが自発的に考え、自身を見つめ創作を生みつつ表現者として大きくなれるような場として期待される。

今回は5作が発表された。『○〇○  ユー』(振付:新宅一平、出演:井上大輔、森将雄、山下彩子)、『隣のむすこ』(振付:三輪亜希子、塩野入一代、出演:伊藤歌織、塩野入一代、新宅一平、三輪亜希子、山下彩子)、『FUJIYAMA』(振付:塩野入一代、出演:メンバー全員)、『コエカラス』(振付:森将雄、出演:伊藤歌織、井上大輔、新宅一平、平良麻由子、三輪亜希子)、『ジェンカジェンカ』(振付:平良麻由子、出演:メンバー全員)。いずれもまだ習作の趣はあるものもクリシェでおざなりに踊るような代物はひとつもない。踊り手の身体にフォーカスをあて、そこから何かを引き出そうとしているのに好感を持てる。『隣のむすこ』などダンサー個々の関係性や存在感をよく引き出していて惹きつけられた。今年は底力のあるメンバーが集っている。伊藤の叱咤激励のもと、11月の試演会、翌年3月の本公演が楽しみだ。伊藤の仲間からは、遠田誠、白井剛、岡本真理子、黒田育世、森下真樹ら逸材が出ている。それに続く存在の誕生を心待ちにしたい。

(2008年8月1日 桜美林大学PRUNUS HALL)

2008-08-01

[]埼玉全国舞踊コンクール クラシックバレエ1部(成人の部)決選

埼玉県舞踊協会主催、埼玉全国舞踊コンクール クラシックバレエ1部(成人の部)決選の部を観にいく。コンクールを観る際、同じ曲のヴァリエーションでも振付が微妙に違ったりしてその相違がおもしろかったりもするし、何よりもそれまで知らなかった踊り手を知る機会になるのが楽しみだ。審査するわけではないが、技術、表現力(役柄に対する)、音楽性を軸にあと演技のマナー、品格に注目して観覧してみた。

他よりも抜きん出ていると感じたのが、廣岡奈美(海賊のV、貞松・浜田バレエ団)と茂木恵一郎(バジルのV、山本禮子バレエ団)。廣岡は平均点が高く、プロとして魅せる踊りだった。演技にスケールが出ればよりいいようには思うが。茂木はテクニックでは圧倒的に抜きん出ていて文句なし。演技の品格に欠けるのは気になるが、若くて勢いがあるのはいいこと。結果、廣岡が第1位、茂木が第2位の2となった。入賞5・埼玉県舞踊協会奨励賞に入った小島沙耶香(海賊のV、松岡伶子バレエ団)も印象に残った。小島は当初固さもみられたが元気な踊りで観るものを楽しませる。第2位の1に入った半井聡子(海賊のV、貞松・浜田バレエ団)も堅実。半井は先日の東京新聞全国舞踊コンクールでも入賞しているが手堅くまとめる力もプロには大切だ。男性陣では技術、アピール力で茂木に及ばないが、第3位の3に入った牧村直紀(パキータの男性V、ゆかりバレエ)、第3位の3に入った塚本士朗(白鳥の王子のV、貞松・浜田バレエ団)、入賞3に入った有水俊介(海賊のV、ミノリバレエ)、第3位の1に入った渡邊峻郁(海賊の男性V、バレエスタジオPLANE)、第3位の2に入った井植翔太(アルブレヒトのV、法村友井バレエ学校)ら将来性のある人たちが続く。女性で他に気になる人はいたが、プロ活動を本格的にしていないような人だろうから名をあげるのは控えておく。

必ず上位入賞するだろうと思った人を◎、入賞が有力だろうと思う人を○、入賞の可能性はあると思う人を△、個人的に積極的にいいとは思わないが入賞してもおかしくないと思う人を▽としたら、入賞者23名のうち大半はなにかしらチェックを入れた人が入っていた(とはいっても分母60人なのでそうそう外しようもないわけだが…)。今回の審査は偏差値制が導入されていることもあってか比較的バランスの取れた結果が出ていたようには思う。いずれにせよ、コンクールは修行の場。出場者には、結果が良くても悪くても糧にしてステージで大きく羽ばたいてもらいたい。

※出場者の紹介は出演番号の若い順

結果は↓のページでみられる。

http://www.saitamaken-buyoukyokai.jp/2008_CONTEST/

(2008年7月30日 さいたま市文化センター大ホール)