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2008-11-30

[]松岡伶子バレエ団『眠れる森の美女』

日本芸術文化振興会 舞台芸術振興事業

松岡伶子バレエ団『眠れる森の美女』(プロローグ付3幕)

芸術監督:松岡伶子

振付:ナターリャ・ボリシャコーワ/ワジム・グリャーエフ

バレエミストレス:松岡璃映/田中舞/服部幸恵/河合佑香

オーロラ姫:大岩千恵子 デジーレ王子:碓氷悠太

カラボス:ワジム・グリャーエフ

ブルーバード:青木崇(大阪バレエカンパニー)

フロリナ王女:佐々部佳代

指揮:竹本泰蔵  演奏:セントラル愛知交響楽団

(2008年11月30日 愛知県芸術劇場大ホール)

主宰者の松岡伶子の平成19年度地域文化功労者文部大臣表彰受賞記念公演。しっかり踊れ、かつ個性豊かな団員を擁するバレエ団であるだけに、2日間公演において主役・ソリストはほぼすべてダブルキャストを組んでいる(観たのは2日目)。ナターリャ・ボリシャコーワ/ワジム・グリャーエフによる演出はマリインスキー劇場版に基づくもの。しかし、プロローグ・第1幕を続けて上演し第2幕・第3幕も休憩を入れずに続ける。休憩は1回、上演時間は2時間40分。長大なバレエをカットすることなくスムーズに上演した。第3幕のディヴェルティスマンでは、日本の団体の上演では滅多にみられない「人食い鬼」と「親指小僧」も登場。ジュニアの選抜されたメンバーたちが好演していた。オーロラの大岩は見ていて安心していられる。プリマらしいプリマでことに第3幕ではキラキラと輝いていた。デジーレ王子の碓氷は跳躍が美しくパを奇麗に決めていく。今年3月の新国立劇場バレエ団『カルメン』ホセ役を踊った際にも顕著であったが、観るものを次第に引きこんでいく磁力のようなものを持った得難い踊り手といえる。カラボス役を往年のキーロフの名プリンシパル、グリャーエフが演じて舞台に厚みをもたらしたのも特筆される。ブルーバードには碓氷らとともに若手男性バレエダンサーの注目株である青木崇が客演。テクニシャンぶりを発揮しつつ役柄も理解して、しなやかな踊りをみせた。フロリナ王女の佐々部は緩急を自在に操る抜群の音楽性を誇る。両者のかもしだす雰囲気もよく見応えがあった。近年の『眠り』の新演出ではドラマ性を高めるためのさまざまの改変・改訂もみられるけれども、今回は古典中の古典・華麗なる舞踊絵巻を原典に基づき踊りでしっかりと魅せるという王道を行く上演として充実していた。

2008-11-29

[]アンサンブル・ゾネ『Still Moving』

国際共同制作作品・芸術文化振興基金助成事業

アンサンブル・ゾネ『Still Moving』

構成・振付・演出:岡登志子

音楽監督:高瀬アキ(ライブ演奏)

出演:Annelise Soglio/垣尾優/伊藤愛/岡本早未/山岡美穂/井筒麻也/糸瀬公二/生駒里奈/岡崎愛/桑野聖子/高見智征/ノブタアイコ/樋口景/井澤佑治/岡登志子

(2008年11月29日 シアターχ)

空間や空気や呼吸を意識したダンスによってニュートラルな身体を追求することを信条としているのがアンサンブル・ゾネだ。今年は『Falken Schrei 鷹の声』も発表しており充実した活動を展開している。近年協同作業を進めるピアニスト高瀬アキがライブ演奏で参加、ダンサーたちの身を削るようなストイックなダンスと高瀬の奏でるずっしりと手ごたえのある音楽がせめぎ合う。これまでのゾネの舞台は混沌とした世界を紡ぎながらもじつに淡々としたパフォーマンスという印象だった。今回は高瀬の演奏がダンスと掛け算となり、ダンサー個々のボルテージも高い。ゾネの新境地を観る思いがした。

[]シュツットガルト・バレエ団『オネーギン』 

シュツットガルト・バレエ団『オネーギン』(全三幕)

台本・振付・演出:ジョン・クランコ

オネーギン:ジェイソン・レイリー

タチヤーナ:スー・ジン・カン

レンスキー:マリイン・ラドメーカー

(2008年11月29日 東京文化会館)

2008-11-28

[]アルディッティ弦楽四重奏団+ケージ+白井剛「アパートメントハウス1776」

アルディッティ弦楽四重奏団+ケージ+白井剛「アパートメントハウス1776」

J.クラーク:弦楽四重奏曲(2003-03)

B.ファーニホウ:ドゥム・トランシセットI-IV(2006)

西村 朗:弦楽四重奏曲 第4番「ヌルシンハ(人獅子)」(2007)

演奏:アルディッティ弦楽四重奏団

J.ケージ/I.アルディッティ編曲:44のハーモニー(ダンスヴァージョン)〜アパートメントハウス1776より(1976/99)

演奏:アルディッティ弦楽四重奏団 演出・振付・映像・ダンス:白井剛 

照明:岩村原太

(2008年11月28日 津田ホール)

2008-11-27

[]未國『稀人マロウド』/KUROKAMI★BALLET『禍』

未國『稀人マロウド』/KUROKAMI★BALLET『禍』

第一部

未國『稀人』(マロウド)

出演:箆津弘順、平田沙織

第二部

『KUROKAMI★BALLET -禍-』

出演:高部尚子/前田新奈/白井麻子/二瓶野枝/工藤丈輝/大村未童/はたけやま裕

楽隊:宗原伸貴(声)/深井三実(声)/大久保智子(謡/三絃)/大部仁(尺八)/林Linn邦樹(太鼓)/森拓也(太鼓)/土方雅哉(太鼓)

演出:前川十之朗 稀人・振付:前田新奈

(2008年11月27日 吉祥寺シアター)

2008-11-26

[]CAVA『罠』

CAVA(さば)『罠』

作・演出:丸山和彰

出演:黒田高秋/藤代博之/細身慎之介(劇団上田)/田中優希子/丸山和彰

(2008年11月26日 神楽坂die pratze)

マイムとダンスの融合した新感覚の舞台『空白に落ちた男』(演出・振付:小野寺修二)に出演、異彩を放っていた丸山和彰が所属するグループの公演ということで楽しみにしていた。マイムを主体とした身体表現を通して機知に富んだ舞台を創り続けているようだ。今回の『罠』は演劇畑からのゲストも招聘。男女のあいだでドラマやサスペンスが繰り広げられる。言葉ではあらわせないような人と人の間に生じる微細な感情の揺れ動きをシニカルにしかしユーモアを忘れずに描くあたりは心憎い。ダンサブルな場もあるし、展開にメリハリあって飽きさせない。マイムというしっかりとしたスキルを武器にしているだけに軽やかな演技のなかにも強度があるように感じた。

2008-11-24

[]本間祥公舞踊生活45周年記念公演

本間祥公舞踊生活45周年記念公演

『クララと花園』振付:本間祥公 監修:うらわまこと

『To each, his own』振付:山口華子

『ヒマラヤの狐』振付:藤井公・利子

『Light』振付:本間祥公

(2008年11月24日 メルパルクホール)

藤井公・利子門下屈指の名ダンサーとしてモダンダンスの枠を越え活躍してきた本間の舞踊生活45周年記念公演が行われた。日本のモダンのパイオニアのひとりであり当時としては異色の存在であった小森敏の弟子である藤井夫妻の創作は従来の浅薄な社会性を打ち出したり想念の殻に閉じこもったモダンとは一線を画するものだったようだ。その弟子筋にはポストモダンやアングラの影響をうけた人も少なくなく、コンテンポラリー・ダンスの流れとも決して無縁ではない。藤井夫妻が本間のために28年前に振付けたソロ『ヒマラヤの狐』の再演が話題だったが、丁寧にていねいに動きを積みあげ繊細な世界観を構築していくさまは新鮮でなかなか興味深いものだった。

[]ナチョ・ドゥアト スペイン国立ダンスカンパニー『ロミオとジュリエット』

平成20年度文化庁芸術拠点形成支援事業

ナチョ・ドゥアト スペイン国立ダンスカンパニー

『ロミオとジュリエット』

音楽:セルゲイ・プロコフィエフ

振付:ナチョ・ドゥアト

出演:スペイン国立ダンスカンパニー

(2008年11月24日 彩の国さいたま芸術劇場大ホール)

ナチョ・ドゥアト唯一の長編物語バレエ(1998年初演)。何よりもプロコフィエフの音楽の曲想を大切にしているのが特徴だろう。そしてシェイクスピアの原作にもほとんど忠実。マイムを排して徹底してダンスで、振付で登場人物の感情の機微を描きつくした雄渾の力作だとはいえる。振付に関して言えば音楽と物語の制約があるためか『レマンゾ』や『バッハへのオマージュ』でみせた、めくるめくような奔放な振付――意想外のフォルムの連続と緩急の絶妙の変化――はさほど感じられない。その点を期待すれば肩透かしにあう。ドゥアト自身もプログラム所載のインタビューで応えているように、彼の興味の方向性は既に別のところにあり、『ロミオとジュリエット』はかっての例外的な試みと捉えていいのだろう。物語バレエを創るにあたりダンスの凄みでみせた極北に位置する作品なのは確か。好みは分かれる気もするが、数あるダンス版『ロミオとジュリエット』のなかでも見応えのあるもののひとつといってもよいとは思う。

2008-11-23

[]シュツットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』

シュツットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』(全幕)

演出・振付:マリシア・ハイデ

オーロラ姫:アリシア・アマトリアイン

王子:フィリップ・バランキエヴィッチ

カラボス:ジェイソン・レイリー

(2008年11月23日ソワレ 東京文化会館)

[]シュツットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』

シュツットガルト・バレエ団『眠れる森の美女』(全幕)

演出・振付:マリシア・ハイデ

オーロラ姫:マリア・アイシュヴァルト

王子:フリーデマン・フォーゲル

カラボス:ジェイソン・レイリー

(2008年11月23日マチネ 東京文化会館)

2008-11-22

[]「エリアナ・パブロワを偲んで」

「エリアナ・パブロワを偲んで〜バレエの名曲集/パキータ」

関内ホール・横浜開港150周年記念プレ・バレエ公演

第1部 パブロワが踊った小品集を集めて

『ワルツ「春の声」』振付:新井雅子

『ペルシャの市場』振付:小倉礼子

『ハンガリア舞曲』振付:木村公香

『枯葉と詩人』振付:横井 茂

『瀕死の白鳥』振付:ミハイル・フォーキン 指導:木村公香

トーク「エリアナ・パブロワについて」薄井憲二

第2部『パキータ』 

振付:マリウス・プティパ 再振付:丸岡浩

(11月22日 関内ホール)

日本バレエの母と称されるエリアナ・パブロバを偲ぶプログラム。第一部ではパブロバの踊った演目が踊られた。『瀕死の白鳥』はアンナ・パブロワの映像が有名だが、今回斎藤友佳理が踊った振付はボリショイ経由、ガリーナ・ウラーノワに由来するものだったようだ。日本バレエ協会会長である薄井憲二氏によるトークでは氏が若き日に触れたパブロワの舞台の印象にはじまり、パブロバの経歴について最近の研究調査を踏まえたうえでの解説がなされ興味深かった。第二部の『パキータ』は小林洋壱と友利知可子という東京シティ・バレエ団の若手がプリンシパルを務め懸命に踊っていた。

2008-11-21

[]ナゴヤ・テアトル・ド・バレエ『ドン・キホーテ

芸術文化振興基金助成事業

ナゴヤ・テアトル・ド・バレエ『ドン・キホーテ』(全幕)

芸術監督・演出・振付:深川秀夫

出演:青木里英子/山崎有紗/セルゲイ・サボチェンコ/大寺資二/高宮直秀/森充生/窪田弘樹ほか

(2008年11月21日 愛知県芸術劇場大ホール)

塚本洋子バレエ団主催のナゴヤ・テアトル・ド・バレエはオーディションも行い、愛知バレエ界の力を集めた公演。深川秀夫版の『ドン・キホーテ』はプロローグから大団円までキューピッドが狂言回しとして活躍する。キトリとバジルの恋物語とドン・キホーテ主従の物語のバランスも取れ、洒落ていてスピーディな展開で楽しませる。バジルはセルゲイ・サボチェンコ。決して大きな身体ではないけれども舞台上では大きく見える。豪快に踊って見せ場を創った。サポートの丁寧さにも感心させられる。キトリはテクニックに強い青木里英子、ドルシネア姫は若さに似合わぬ品のある雰囲気をみせた山崎有紗。エスパーダの大寺資二、ガマーシュの高宮直秀ら男性陣の演技も充実していた。

2008-11-20

[]NISSAY OPERA2008・東京二期会オペラ劇場『マクロプロス家の事』

平成20年度文化庁芸術創造活動重点支援事業

東京二期会オペラ劇場『マクロプロス家の事』

NISSAY OPERA2008 日生劇場/東京二期会オペラ劇場主催

オペラ全3幕、字幕付原語(チェコ語)上演

作曲・台本:レオシュ・ヤナーチェク(カレル・チャペックの同名の戯曲より) 

指揮:クリスティアン・アルミンク

演出:鈴木敬介

管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

合唱:二期会合唱団

(2008年11月20日 日生劇場)

ヤナーチェクのオペラ『マクロプロス家の事』が日本初演された(ステージ形式では)。アリアのない珍しいスタイル。秘薬によって300年も若さを保つ女性を主人公に錯綜するドラマが展開される。最近は日本でもヤナーチェクオペラが上演されるようで、今夏は長野のサイトウキネンフェスティバルにて小澤征爾指揮『利口な女狐の物語』が上演されている。金森穣らコンテンポラリー・ダンスのダンサーも出演して話題を呼んだ。個人的にもヤナーチェクの音楽に関心があったこともあり今回の上演は楽しめた。

[]新国立劇場バレエ団『アラジン』

新国立劇場バレエ団『デヴィッド・ビントレーのアラジン』(全幕)

振付:デヴィッド・ビントレー

作曲:カール・デイヴィス

アラジン:八幡顕光

プリンセス:小野絢子

(2008年11月20日 新国立劇場オペラパレス)

2008-11-19

[]Nibroll『Small Island』

芸術文化振興基金助成事業

Nibroll『Small Island』

振付・演出:矢内原美邦

映像:高橋啓祐

衣装:矢内原充志

音楽:スカンク

照明:滝之入海

美術:久野啓太郎

制作:伊藤剛

(2008年11月19日 ZAIM 4F)

ニブロールの新作公演/展示。 メンバーそれぞれによる表現分野(ダンス、映像、照明、音楽、ファション)ごとにワンフロアにある5つの小部屋を遣ってのプレゼンテーションだった。ダンスパフォーマンスは最初、照明とファッションの展示室で30分ほど同時多発的に行われ、その後休憩を挟んでホールで45分の公演が行われた。

2008-11-16

[]山路瑠美子バレエ新人の会『白鳥の湖』

第44回山路瑠美子バレエ新人の会

『白鳥の湖』(全幕)

芸術監督・振付:山路瑠美子 振付・演出:呉竹伸之

王子ジークフリード:鈴木裕 王妃:黒澤明子

オデット:山田歌子 オディール:山本みさ

悪魔ロットバルト:佐藤雄基 道化:宮崎康臣

(2008年11月16日 メルパルクホール)

[]スターダンサーズ・バレエ団『セレナーデ』『リラの園』『火の鳥』

平成20年度文化庁芸術創造活動重点支援事業

スターダンサーズ・バレエ団11月公演

『セレナーデ』

振付:ジョージ・バランシン

『リラの園』

振付:アントニー・チューダー

『火の鳥』

振付:遠藤康行(遠藤善久の原振付に基づく)

(2008年11月16日 ゆうぽうとホール)

2008-11-15

[]シアターアイスショー『眠れる森の美女』

シアターアイスショー『眠れる森の美女』

出演:The Imperial Ice Stars(インペリアル・アイス・スターズ)

(2008年11月15日 東京厚生年金会館)

フィギュアスケートのグランプリシリーズが行われ氷の上で熱戦が繰り広げられている。そんななかシングルやペア、アイスダンスの元メダリストを多数擁してバレエの演目をスケートで表現し人気を集めるインペリアル・アイス・スターズの来日公演を観た。2幕構成、100年の眠りに就いたオーロラ姫を助けるために王子だけでなくリラの精とカタラビュットが大活躍するという趣向がおもしろい。ストーリー展開も明快でジャンプやスピンといった技も随所に織り込まれ迫力があって楽しめた。フィギュアスケートは芸術スポーツとよばれバレエとの関係は深い。ロシア・バレエの名花、ニーナ・アナニアシヴィリは元フィギュアスケートの選手であったし、逆にフィギュアスケート選手も体を鍛え柔軟性を高めるためにバレエを習うことも多いようだ。日本でも氷上のバレリーナと評される太田由希奈や浅田舞、真央姉妹などは早くからバレエのレッスンを受けていたのはよく知られる。シアターアイスショーは芸術スポーツをより深め総合芸術としてまたエンターテインメントとして多くの可能性を秘めているように思われた。

[]木佐貫邦子×平山素子「古楽とストラヴィンスキー」

新国立劇場2008/2009シーズン2008/2009 Season Contemporary Dance

ダンステアトロンNo.16「古楽とストラヴィンスキー」

『キャラバン』

振付:木佐貫邦子

『春の祭典』

振付・出演:平山素子/柳本雅寛

ピアノ演奏:土田英介/篠田昌伸

(2008年11月15日 新国立劇場中劇場)

木佐貫邦子と平山素子。共通項はいくつかある。まずともに現代舞踊畑の出身であること、そして木佐貫が桜美林大、平山が筑波大で教職に就いていることが挙げられる。木佐貫は80年代に、平山は90年代に本格デビューしているが90年代以降のコンテンポラリー・ダンスのブームの高まりのなか現代舞踊系出身でありながら上手く時代に適応する創作を発表し今日のポジションを築いているのは見逃せない。卓越した才能と努力の賜物であろうが、時代を読む確かな目とセルフプロデュース力も兼ね備えていたからであろう。コンテンポラリー・ダンスならOK、現代舞踊ならダメ――レッテルひとつで場合によってはアーティストの作品評価や舞踊人生が大きくかわってしまうこともなくはない現代日本のダンスシーンにおいて後進のモダン/コンテのダンサーは彼女たちの歩んだ道から受ける示唆は大きなものがあるのではと感じさせられる。

2008-11-14

[]日本バレエ協会「バレエ・フェスティバル」

平成20年度文化庁芸術団体人材育成支援事業

日本バレエ協会第47回「バレエ・フェスティバル」

『A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM』

振付:キミホ・ハルバート

『SONG OF THE EARTH』

振付:岩上純

『旅芸人』

振付:松崎すみ子

(2008年11月14日 メルパルクホール)

日本バレエ協会の催しのなかでもっとも長く続き47回目を迎える「バレエ・フェスティバル」。創作バレエの発表の場として貴重であり、近年では若い世代の振付家の抜擢が目立つ。キミホ、岩上は、いま売り出し中。キミホはコンテンポラリーな感覚あふれる振付が持ち味でバレエコンクールでの創作振付の担当としても引く手あまただ。岩上は谷桃子バレエ団等で創作を発表しているが若手のなかでは確固とした構想力を持った創り手のひとりといえる。ベテランの松崎はこの会で18年前に初演された代表作を再演。わが国では創作作品を上演できてもなかなか再演は難しい。手直しし、場合によってはキャストも変わることで作品は成長する。新作のみならず優れたものであれば再演にも一層支援が向けられるようになるのが好ましいとあらためて感じさせられた。

2008-11-12

[]財団法人せたがや文化財団『友達』

平成20年度文化庁芸術拠点形成事業

財団法人せたがや文化財団『友達』

作:安部公房 演出:岡田利規

出演:小林十市/麿赤兒/若松武史/木野花/今井朋彦/剱持たまき/加藤啓/ともさと衣/柄本時生/呉キリコ/塩田倫/泉陽二/麻生絵里子/有山尚宏

ポストパフォーマンストーク:岡田利規×野村萬斎

(2008年11月12日 シアタートラム)

演劇、ダンス、文学界で注目を集める岡田利規(チェルフィッチュ主宰)。自劇団の舞台では、若者言葉を脈絡なく垂れ流したような“超リアル日本語”と独特の身振りを特徴とする独自のメソッドを確立している。だが今回、安部公房の代表作を演出するにあたってチェルフィッチュでの方法論は使わなかった。『友達』は、ある平凡な男とその部屋に闖入し居座る9人家族の姿をシュールかつブラックに描いている。元ベジャール・バレエの小林、舞踏の麿はじめダンス、新劇、アングラ・小劇場演劇と多様な出自を持つパフォーマーたちの個性を尊重、彼らの発する言葉と動きが安部作品に新たな息吹を吹き込む。かってこの作品を某新劇団の公演で観たことがあるけれども、その際よりも抜群におもしろい。2時間半近くの長丁場ながら最後まで緊張が途切れなかった。

2008-11-09

[]コンドルズ『アンタッチャブル

日本芸術文化振興会 舞台芸術振興事業

コンドルズ 日本縦断大激戦ツアー2008秋

『UNTOUCHABLES アンタッチャブル』

構成・映像・振付:近藤良平

(2008年11月9日 シアターアプル)

コンドルズが2001年から公演を行っている新宿・歌舞伎町のシアターアプルは今年の12月31日をもって閉館となる(同ビル内のコマ劇場やコマ東宝も同様)。アプルでの最終公演ということで支配人もコンドルズのメンバーとともに舞台に立ちパフォーマンスに参加、カーテンコールではコンドルズとの想い出を笑いと涙のうちに語っていた。この劇場では演劇やミュージカルの上演が多かったが、堀内元らによるニューヨーク・シティ・バレエのダンサーのグループ公演やタップダンスの公演が行われてきたことでも知られる。客席の段差が十分にあって観易い劇場であったこともあり閉館は残念だ。

[]ラ ダンス コントラステ『真夏の夜の幻(ゆめ)』

芸術文化振興基金助成事業

ラ ダンス コントラステ『真夏の夜の幻(ゆめ)』

構成・演出・振付:佐藤宏 

タイターニア:酒井はな オーベロン:西島千博

ハーミア:依田久美子 ライサンダー:武石光嗣

ヘレナ:山口智子 デメトリアス:増田真也

パック:岩沢彩・堀内麻未子 ボトム:石井竜一

(2008年11月9日 吉祥寺シアター)

クラシックバレエをベースにコンテンポラリーな振付を駆使、古典の読み替え等を行っているのがラ ダンス コントラステだ。今回の公演は“女優バレリーナ”酒井はなとマスコミでおなじみの西島千博という当代きってのスーパースターが出演するため話題を集めていた。西島ファンと思しき女性たちが詰めかけ客席は熱気ムンムン。シェイクスピアの『真夏の夜の夢』をスタイリッシュに脚色、上演時間は70分あまりと無駄のない、しまった構成が特徴で多様な観客層の興味をつなぎとめることに成功していた。

2008-11-08

[]<日本の現代ダンス・フェスティヴァル>Program B

平成20年度文化庁芸術拠点形成事業

LIFE with DANCE 2008<日本の現代ダンス・フェスティヴァル>

Program B・萩谷京子DANCE EXPERIMENT『空の章〜隻翼の天使たち〜』

演出・振付:萩谷京子

出演:萩谷紀衣 向山有輝(Violin) 岡田紗弓(Violin) 森山朋(Viola) 袴田容(Cello)

(2008年11月8日 水戸芸術館ACM劇場)

第23回国民文化祭・いばらき2008 広域文化交流事業「水戸ルネッサンス文化の祭典」の一環である<日本の現代ダンス・フェスティヴァル>のProgram Bを観ることができた。ソロダンスと生演奏のコラボレーション。片翼の天使のはかない一瞬の夢を描いたものだという。ダンサー、音楽家は芸大の学生たち。若く繊細な感性を持ったアーティストたちによるパフォーマンスが展開された。気張らずに、でも熱のこもった踊り・演奏をみせた出演者たちに客席から惜しみない拍手が贈られていた。

2008-11-07

[]東京バレエ団・ベジャール振付『くるみ割り人形』

平成20年度文化庁芸術創造活動重点支援事業

東京バレエ団・ベジャール振付『くるみ割り人形』

演出:振付:モーリス・ベジャール

ビム:高橋竜太 母:吉岡美佳 フェリックス:松下裕次 M...:首藤康之

グラン・パ・ド・ドゥ:小出領子&木村和夫 ほか東京バレエ団

(2008年11月7日 東京文化会館)

ベジャールが逝去してからはや1年近くが経つ。稀代の天才を喪った衝撃はいまなお大きなものがある。東京バレエ団では5月に続く追悼特別公演として『くるみ割り人形』を上演した。ベジャール自身の幼年時代を回顧した作品であり、母への強い思慕がこめられている。初演したのはベジャール・バレエであるが、元は東京バレエ団のために構想されたものだ。ジョン・ノイマイヤー『時節の色』も作者の抱く深い母性愛が露であったことから「東京バレエ団はコレオグラファーに母親を思い起こさせる」と言ったのは三浦雅士氏であるが、たしかに振付家がここまで自身のルーツ、創作の源泉を語ったものはないだろう。ベジャール自身であるビム、そして母、メフィストでありまた父でありそしてマリウス・プティパでもあるという異能の存在M...らの織りなす美しく懐かしい物語である。特別団員であり久々にM...を踊った首藤康之はじめ東京バレエ団の団員たちはベジャールの遺した遺産を受け継いで心のこもった演技を披露。ベジャール芸術の魔力に魅了され、その偉大さをあらためてかみ締めた一夕だった。

2008-11-03

[]JCDN『踊りに行くぜ !!』in前橋vol.9前橋プラザ元気21ダンス巡行

平成20年度文化庁芸術団体人材育成支援事業

JCDN『踊りに行くぜ !!』in前橋vol.9前橋プラザ元気21ダンス巡行

Abe"M"ARIA(東京)『―――』

きたむらしげみとまえばしのおどるこどもたち『おどるこどもたちおどる』(大阪/群馬)

百田彩乃・高山力造(福岡)『spare』

金魚(東京)『沈黙とはかりあえるほどに』

先導:前橋芸術週間ダンス部/恩田香+山賀ざくろ(群馬)

(2008年11月3日 前橋プラザ元気21)

JCDN「踊りに行くぜ!!」今年唯一の関東公演(主催:前橋芸術週間)。前橋では1度お休みはあったもののvol.1から開催しており、毎回「場」の魅力にこだわって劇場ではない場所で公演を行っている。今年はかって大手百貨店の入っていたビルを改装、昨年12月に文化施設としてオープンした前橋プラザ元気21が舞台だった(入場無料・カンパ制)。1階ロビーでガイドの恩田と着ぐるみをきた山賀の前座・前説にはじまりAbeの奔放な即興ソロが始まる。子どもとじゃれあったり、車椅子の女性と踊った美しい「デュオ」を展開したりなどしてロビーに居合わせた人びとまでをも巻き込んでいく。2階の「前橋こども図書館」に誘われると北村と地元の小学生によるワークショップの成果が発表された(トヨタ・子どもとアーティストの出会い in 群馬:公開ワークショップ)。本棚の間から姿をあらわした児童たち。彼らが体を動かすことの楽しさを謳歌しているのは微笑ましい。同じく2階のホワイエで行われた百田・高山作品は親密さと距離感を身体の交感を持って描き出す。3階ホールで行われた金魚(鈴木ユキオ)による同作を観るのは4回目だがストイックな装いのなかに潜む狂気や凶暴性が異様なまでの緊迫感をともなって差し迫ってくる。集会所のような場のため空間が広すぎるという不利な条件ながらもダンサーの身体の強度が増しており密度は薄れなかった。アフタートーク(司会:武藤大祐)も充実。出演者全員が簡潔に自己紹介を行ったあと、観客との質疑応答を交えつつ「自身にとってダンスとは何か」という問題を衒いなく真摯に話し印象に残る。

2008-11-02

[]ジェローム・ベル&ピチェ・クランチェン『ピチェ・クランチェンと私』

横浜トリエンナーレ2008参加公演

ジェローム・ベル&ピチェ・クランチェン『ピチェ・クランチェンと私』

出演:ピチェ・クランチェン&ジェローム・ベル

(2008年11月2日 横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール)

横浜トリエンナーレ2008内の無料イベントとしてジェローム・ベル&ピチェ・クランチェン『ピチェ・クランチェンと私』が上演された(2日間2回、定員各80名・先着順)。ベルは気鋭のフランス人アーティストであり、パリ・オペラ座バレエに提供した『ヴェロニク・ドワノー』によってバレエファンにも知られる。クランチェンはタイ人で宮廷舞踊「コーン」のダンサー。コンテンポラリーな作風のダンスも創作している。本作では、東西の異なる文化背景を持つアーティスト同士が対話と身体表現を通して各々のアイデンティティを再確認することによって差異と相通じるものを浮き彫りにする。昨年の新春日本でも上演されて反響を呼んだアクラム・カーン&シディ・ラルビ・シェルカウイ『ゼロ度』とも共通する主題もはらんでいるが、本作は演劇的でドキュメンタリー風な構成が特徴だった。

2008-11-01

[]東京小牧バレエ団公演「新たな旅立ち」

平成20年度文化庁芸術創造活動重点支援事業

平成20年度文化庁芸術祭参加公演

東京小牧バレエ団公演「新たな旅立ち」  

出演:アルタンフヤグ・ドゥガラー/関根かなみ/李波/周東早苗/原田秀彦/長者完奈ほか

演奏:東京ニューシティ管弦楽団 合唱:東京合唱協会 指揮:内藤彰

『レ・シルフィード』

振付:小牧正英 再現振付:酒井正光

『マタハリ』

振付:菊池宗 補佐:酒井正光

『イゴール公』

振付:小牧正英・佐々保樹

(2008年11月1日 新宿文化センター大ホール)

東京小牧バレエ団は昨年の小牧正英追悼公演『白鳥の湖』を終え、団長の菊池宗のもと新生・小牧バレエ団として「新たな旅立ち」と銘打った公演を行った。同団が大切にしてきた上海バレエリュスの遺産であるレパートリーを継承し、来年(2009年)のバレエリュス誕生100年に寄せるという意図もあるようだ。幕開けの『レ・シルフィード』はフォーキンの傑作にしてアブストラクト・バレエの嚆矢のひとつ。今回は小牧正英による日本初演版の復元であり、古きよき味わいのある演出である。創作バレエ『マタハリ』は菊池宗のオリジナル作品であり、スパイの容疑にかけられ悲運の生涯を終えた舞姫マタハリの生と死のバレエ化だ。バレエリュスが一大センセーションを巻き起こした要因としてベル・エポックの芸術思潮を見逃すわけにはいかない。その時代に材を得た『マタハリ』を上演するのも腑に落ちる。カフェバー・マキシムにおいてのカンカンダンスなどパリの華やかな繁栄を伝える場もあって楽しめた。『イゴール公』はバレエリュスの旗揚げ公演で上演されたものであり、オリエンタリズムと男性舞踊手の力感溢れる踊りに当時パリの観客は熱狂したと伝えられる。小牧版は昨年のモンゴルでの親善公演で好評を博したというが、明るくなかなかエネルギッシュな舞台ではあった。

[]『高橋悠治のピアノによる笠井瑞丈と横田佳奈子のダンス』

『高橋悠治のピアノによる笠井瑞丈と横田佳奈子のダンス』

振付:笠井叡

ピアノ:高橋悠治

ダンス:笠井瑞丈、横田佳奈子

(2008年11月1日 セッションハウス)