松岡伶子バレエ団『眠れる森の美女』

日本芸術文化振興会 舞台芸術振興事業
松岡伶子バレエ団『眠れる森の美女』(プロローグ付3幕)
芸術監督:松岡伶子
振付:ナターリャ・ボリシャコーワ/ワジム・グリャーエフ
バレエミストレス:松岡璃映/田中舞/服部幸恵/河合佑香
オーロラ姫:大岩千恵子 デジーレ王子:碓氷悠太
カラボス:ワジム・グリャーエフ
ブルーバード:青木崇(大阪バレエカンパニー)
フロリナ王女:佐々部佳代
指揮:竹本泰蔵  演奏:セントラル愛知交響楽団
(2008年11月30日 愛知県芸術劇場大ホール)

主宰者の松岡伶子の平成19年度地域文化功労者文部大臣表彰受賞記念公演。しっかり踊れ、かつ個性豊かな団員を擁するバレエ団であるだけに、2日間公演において主役・ソリストはほぼすべてダブルキャストを組んでいる(観たのは2日目)。ナターリャ・ボリシャコーワ/ワジム・グリャーエフによる演出はマリインスキー劇場版に基づくもの。しかし、プロローグ・第1幕を続けて上演し第2幕・第3幕も休憩を入れずに続ける。休憩は1回、上演時間は2時間40分。長大なバレエをカットすることなくスムーズに上演した。第3幕のディヴェルティスマンでは、日本の団体の上演では滅多にみられない「人食い鬼」と「親指小僧」も登場。ジュニアの選抜されたメンバーたちが好演していた。オーロラの大岩は見ていて安心していられる。プリマらしいプリマでことに第3幕ではキラキラと輝いていた。デジーレ王子の碓氷は跳躍が美しくパを奇麗に決めていく。今年3月の新国立劇場バレエ団『カルメン』ホセ役を踊った際にも顕著であったが、観るものを次第に引きこんでいく磁力のようなものを持った得難い踊り手といえる。カラボス役を往年のキーロフの名プリンシパル、グリャーエフが演じて舞台に厚みをもたらしたのも特筆される。ブルーバードには碓氷らとともに若手男性バレエダンサーの注目株である青木崇が客演。テクニシャンぶりを発揮しつつ役柄も理解して、しなやかな踊りをみせた。フロリナ王女の佐々部は緩急を自在に操る抜群の音楽性を誇る。両者のかもしだす雰囲気もよく見応えがあった。近年の『眠り』の新演出ではドラマ性を高めるためのさまざまの改変・改訂もみられるけれども、今回は古典中の古典・華麗なる舞踊絵巻を原典に基づき踊りでしっかりと魅せるという王道を行く上演として充実していた。