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2009-02-28

[]酒井幸菜×ウィスット・ポンニミット『ダマンガス!!』

芸術文化振興基金助成事業

Beyond the Border Series Vol.1 ダンス―脱領域のクリエイション―

酒井幸菜(ダンス)×ウィスット・ポンニミット(マンガ)『ダマンガス!!』

出演:酒井幸菜、ウィスット・ポンニミット

(2009年2月28日 川崎市アートセンター アルテリオ小劇場)

[]イ・ユンテク演出『オセロー』

フェスティバル/トーキョー09春

『オセロー』

演出:李潤澤

作曲・音楽監督:元一

企画原案:宮城聰

原作:ウィリアム・シェイクスピア

謡曲台本:平川祐弘

間狂言翻訳:小田島雄志

台本韓訳:木村典子

(2009年2月28日 東京芸術劇場中ホール)

[]リミニ・プロトコル『カール・マルクス:資本論、第一巻』

フェスティバル/トーキョー09春

『カール・マルクス:資本論、第一巻』

コンセプト・演出:ヘルガルド・ハウグ&ダニエル・ヴェツェル(リミニ・プロトコル)

(2009年2月28日 にしすがも創造舎)

2009-02-27

[]能美健志&ダンステアトロ21『LINK』

芸術文化振興基金助成事業

能美健志&ダンステアトロ21『LINK』

構成・振付:能美健志

演奏:小笠原聖子

出演:軽部裕美、藤原智美、岡田桃園、渡辺由美、長濱加実、森まどか、 福田紗千、贄田麗帆、坂田守、能美健志

(2009年2月27日 ドイツ文化会館OAGホール)

※「オン・ステージ新聞」3月20日号に公演評を書きました。

2009-02-26

[]新宿芸術家協会「シェイクスピアを踊る」

新宿芸術家協会主催公演 The Dance Gathering Vol.13

「シェイクスピアを踊る」

第1部「フレッシュコンサート」

●土屋乃予『恋』

●山口紗陽『樹の雨』

●関あゆみ『二面鏡』

●佐藤かおり『海賊』よりグラン・パ・ド・ドゥ

●遠藤綾野『Mothers』

第2部「シェイクスピアを踊る」

●雑賀淑子『口上』

●庄司恵美子『デスデモーナの遺言』

●平田明子『ソネット12』

●山本寿美子『オフェリア』

●佐藤雅子『イノセンス』

●小林伴子『私の中のハムレット』

●鈴木恵子『梁祝』

●小林祥子『マクベス』

●大谷けい子『夏の夜の夢』

●池田端臣『あなた様はダレ!』

(2009年2月26日 四谷区民ホール)

新宿区在住・在勤の舞踊家の集う公演。バレエ、モダン、フラメンコ、さらにはインドのカタックや鳳仙功舞踊まで多彩なアーティストの競演だ。寄せ集めの合同公演ではなく、毎年お題を決めて行うのも特色である。以前は「古事記」「源氏物語」「モーツァルト」といったテーマに沿って創作した。今年は「シェイクスピア」がお題。「オセロ」「マクベス」「ハムレット」といった作品を題材に各々趣向を凝らした作品を発表していた。前座的ではあるが「フレッシュコンサート」と題し若い踊り手に作品発表の場を与えるのも特徴。私的に注目したのは遠藤綾野作品だった。遠藤は師事する佐多達枝作品のみならずコンテンポラリー・ダンスの神村恵らの作品にも出演する気鋭の若手である。5人の女性ダンサーを使って小品を振付けた。カジュアルないでたちの女の子たちによる気負いないパフォーマンス。そんななかにも彼女たちに潜在する女性性を巧みに描き出し手ごたえがあった。佐多作品を踊った踊り手からは多くの創り手が生まれている。堀登、足川欽也、坂本登喜彦らは振付家として一定の評価を受けているし、石井竜一、高部尚子も近年創作をはじめ注目を集めている。関口淳子も昨年から振付をはじめ既に秀作を発表。佐多作品を踊るには音楽性はもとよりステップへの高い意識を求められる。それはとりもなおさず振付家としての素養を養うことにつながっているように思う。佐多門下から羽ばたく創り手たちが日本の舞踊界に“佐多山脈”とでも呼ぶべき系譜を形成し、傑作を連打する日も遠くはないのでは、と期待が膨らむ。

2009-02-25

[]熊川哲也 Kバレエカンパニー『バレエ ピーターラビットと仲間たち』&『放蕩息子』

熊川哲也 Kバレエカンパニー

『バレエ ピーターラビットと仲間たち』&『放蕩息子』

芸術監督:熊川哲也

指揮:福田一雄、井田勝大

演奏:シアターオーケストラトーキョー

●フレデリック・アシュトン『バレエ ピーターラビットと仲間たち』

●ジョージ・バランシン『放蕩息子』

(2009年2月25日 Bunkamuraオーチャードホール)

2009-02-22

[]新進アーティストの発見inあいち「アーツ・チャレンジ 2009」舞踊部門公演

平成20年度文化庁芸術拠点形成事業

新進アーティストの発見inあいち

「アーツ・チャレンジ 2009」舞踊部門公演

講師:佐多達枝

●宝栄美希『Mole of Wrist』

講師:山崎広太

●竹之下亮『マトマトイス』

講師:平山素子

●服部哲郎『バイパスドルール』

講師:平山素子(選考委員特別推薦枠で指導)

●鈴村由紀『next to the □.』

(2009年2月22日 愛知県芸術劇場小ホール)

公募選出の若手振付家が国内外で活躍する講師のアドバイスを得て創作を発表する企画(2年ぶり2回めの開催)。前回は20分程度の創作が課題であったが今回は30分から40分の時間が与えられた。アドバイスする講師も前回は2人を担当したが、今回はマンツーマンで指導あたる。宝栄‐佐多は東京で、竹之下‐山崎は熊本で、服部・鈴村‐平山は愛知において条件や期間はことなるが密度の濃い時間を過ごしたようだ。

宝栄作品は自作自演。後ろ向きのスロウな歩行からフロアの動きまでを駆使、照明や衣装にもアイデアがあってじつに魅力的なダンスに仕上がっていた。竹之下作品も自作ソロ。ダンス自体は弱いけれども客席から登場する冒頭からして観客を巻き込み、独特の雰囲気、空気感が生まれてはいた。服部作品は自身は振付に徹して男女6人が出演。男女の複雑な関係性をダンスによって浮き彫りにしようとした。鈴村作品は自作自演。他作品より上演時間は短いが、導入・展開の仕方、空間の使い方などオーソドックスでまとまっている。やや無骨ながら個性的なダンスも印象に残った。

若い作家は自分の方向性や個性を見極め、どう展開していくか悩む時期があると思う。壁を越えるにあたり百戦錬磨の講師たちのアドバイスは参考になろう。また、スタッフやダンサーとの協同作業に対する姿勢等についても学ぶことがあったようだ。アフタートークの最後に本企画のアドヴァイザーを務めた唐津絵理(愛知芸術文化センター主任学芸員)が今回の企画を“プロセスの一部“と強調した。ここで培った経験を今後に活かすのが大切。今回生まれた創作も練り上げ再演することで成長する。企画後のフォローは主催者の手を離れるが、アートには人の輪が欠かせない。講師や出演者同士でおのずと輪が生まれていくものだ。実際、初回参加者のあいだでは様々の出会いが次につながっているという。創る場、出会いの場として貴重、継続が望まれる。

2009-02-21

[]NBAバレエ団「Ballets Russes Gala」

平成20年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動重点支援事業)

NBAバレエ団「Ballets Russes Gala」

芸術総監督:安達哲冶

指揮:榊原徹 演奏:東京劇場管弦楽団

●『ショピニアーナ』

●『レ・ビッシュ(牝鹿)』

●『ポロヴェッツ人の踊り』

(2009年2月21日 ゆうぽうとホール)

バレエ・リュス誕生100年を記念、内外では様々の公演やイベントが行われている。ロシア・バレエの知られざる名作の復元等を行い成果をあげるNBAバレエ団がブロニスラワ・ニジンスカ振付『レ・ビッシュ(牝鹿)』を日本初演することは随分前から話題を集めてきた。ベルエポック期のパリのサロンを舞台とした一幕物。ニジンスカの振付はクラシックの動きを崩したものが多く、当時かなり斬新なものと受け止められたと想像される。現在の視点からみても音楽性、パの組みあわせは興味深い。プーランク音楽、マリー・ローランサンの美術・衣装という強力なスタッフを得ての協同作業は、バレエというものが現代芸術、総合芸術として認知されはじめた時期の幸福な果実といえる。バレエ・リュス作品も中期、後期の作品となると失われたか、滅多に上演されない。バレエ・リュスやその流れを汲む振付家による作品にもバランシン『放蕩息子』、D・リシーン『卒業記念舞踏会』のような古きよき時代の秀作やニジンスカの『結婚』等現在からみても斬新と評される創作も多々ある。そういった作品を鑑賞できる機会が増えてほしい。

[]江原朋子独舞展2009『百年はもう来ていたんだな』

主催:トモコエハラダンスカンパニー・シアターΧ提携公演

江原朋子独舞展2009『百年はもう来ていたんだな』

構成・演出・振付・出演:江原朋子

スペシャルゲスト:野々村明子

(2009年2月21日 シアターΧ)

日本におけるポストモダンの旗手・厚木凡人に師事したのち、ニューヨークやドイツでも自作自演を発表してきた江原朋子。ポストモダンの洗礼を受けつつ黒沢美香らアンダーグラウンドで活躍する面々とも交流、独自の舞踊世界を形成してきた。コアな観客が付いており、会場にはコンテンポラリー・ダンス関係者の姿も散見される。舞踊評論家の故・市川雅も江原のダンスを愛したひとりである。新作の公演タイトルは漱石「夢十夜」第一夜の主人公の言葉から取られているが内容は江原のオリジナル。“人間、生き物が抱える、秘められた願望や不安、恐怖など”をダンスで追求したという。音楽はバロック期のスラルラツティ、古典派のモーツァルトとピンク・フロイド、クイーンというロック音楽、さらには千野秀一の曲を織り交ぜている。江原の、肩の力の抜けた飄々としたダンスに、名古屋現代舞踊界の重鎮で存在感十分の野々村が絡む展開。江原は老いも何もかもありのままの自分を曝け出す。少女のように無垢な表情をみせる瞬間も。変幻自在の江原ワールドにハマると追って観続けたくなる。他に見逃せない公演もあったのだけれども迷うことなく足を運んだ。その甲斐ある充実のダンスを堪能した。

2009-02-20

[]牧阿佐美著「バレエに育てられて‐牧阿佐美 自伝」

バレエに育てられて―牧阿佐美自伝

バレエに育てられて―牧阿佐美自伝

昨秋文化功労者顕彰を受けた牧阿佐美(新国立劇場舞踊芸術監督・牧阿佐美バレヱ団主宰)の自伝「バレエに育てられて‐牧阿佐美 自伝」が刊行された。

牧は日本バレエの先駆者のひとり橘秋子の子女。本書では、その生い立ちから現在までが秘話も交えて平易な語り口で語られる。腰巻裏に惹句があるので、まず、それに沿って紹介しよう。“橘秋子と牧阿佐美のすべて”がわかり、“日本のバレエの流れをその場で体験”するかのように理解でき、“世界のバレエの流れがどんなふうであったか”がわかる。そして、“バレエ教育において重要なこと”がわかり、“バレエの核心である音楽性”がどういうものかが理解できるというもの。惹句に偽りはない。

橘秋子はバレエにおける早期教育を提唱した。優れたダンサーを育て、バレエ界に常に新たな息吹が吹き込まれることで日本バレエの底力がつくという考えである。牧は1954年アレクサンドラ・ダニロワに学ぶため渡米。これも橘が欧米の先端を行くバレエ教育を牧が身に着け、それが日本バレエ界へ広く還元されることを願ったからであった。母の死後、牧はバレエ団を引き継ぎ、橘バレヱ学校、日本児童バレヱ(現・日本ジュニアバレヱ)において児童教育に一層力を入れる。財団法人橘秋子記念財団を設立、バレエ界初の本格的顕彰となる橘秋子賞も設立した。日本の各団体のスターの集う「日本バレエフェスティバル」も開催。日本バレエの発展を願う無私の考えによるものである。さらには母の仕事を受け、日本を題材にしたバレエを創作、自身の名を冠し手塩にかけて児童を育てるAMスチューデントも創立した。八面六腑の大活躍である。

本書プロローグは題して「バレエの申し子」。たしかに、牧は若き日から現在に至るまで日本バレエの歴史を背負ってきたといっていい。ダンサー、教育者、振付家として第一線で活躍してきた牧の語る歴史は貴重だ。生徒を指導するに際して、ひとつの動きの反復でなくアンシェヌマンを重視することで音楽性が育まれ、均整の取れたプロポーションを生み維持できるという考えは、いまでは当然と考えられるが、牧は早くからそれに基づき指導したという。牧がダニロワの元で学び、その成果を持ち帰り普及に勤しまなければ、日本のバレエの発展は10年、20年は遅れていたかもしれない。

日本のバレエの発展に身を捧げた母娘の歴史を知ることは、日本バレエの来し方を知り、そして、その現在、未来を考えるうえでも示唆に富む。本書はバレエ関係者・ファンのみならず日本のバレエの歴史を知りたい人にとっても有益ではないだろうか。

2009-02-19

[]大駱駝艦 麿赤兒公演『シンフォニー・M』

平成20年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動重点支援事業)

大駱駝艦 麿赤兒公演『シンフォニー・M』

振鋳・鋳態:麿赤兒

鋳態:村松卓矢、向 雲太郎、田村一行、松田篤史、塩谷智司、奥山ばらば、渡邉達也、湯山大一郎、若羽幸平、仲林勝司、橋本まつり、市本雅上、小田直哉、小林優太

(2009年2月19日 世田谷パブリックシアター)

2009-02-18

[]ジョン・ノイマイヤー/ハンブルク・バレエ『椿姫』

ジョン・ノイマイヤー/ハンブルク・バレエ『椿姫』

音楽:フレデリック・ショパン

演出・振付:ジョン・ノイマイヤー

舞台美術・衣装:ユルゲン・ローゼ

アルマン・デュヴァール:アレクサンドル・リアブコ

マルグリット・ゴーチェ:ジョエル・ブーローニュ

老紳士デュバール:カーステン・ユング

(2009年2月18日 神奈川県民ホール)

言わずと知れた物語バレエの名作。19世紀パリを舞台に、ショパンのピアノ曲を用いて、狂おしいまでの愛の物語が展開される。ヴェルディ曲のオペラとは違ってデュマ・フィスの小説に忠実な作りだ。劇中劇で上演されるバレエ「マノン」と重ね合わせることで主人公たちの悲劇を強調する構成も卓越している。全篇すばらしいけれども、やはりマルグリットとアルマンの踊る3つのパ・ド・ドゥに尽きる。所見日の主演はブーローニュとリアブコ。両者は既に2006年「世界バレエフェスティバル」において第3幕「黒衣のパ・ド・ドゥ」を披露している。ブーローニュの踊るマルグリットの繊細な叙情、リアブコ扮するアルマンの胸に秘めた熱い情熱に心揺さぶられた。待望の全幕上演においても、第1幕での、マルグリットがアルマンに惹かれ身を委ねるパ・ド・ドゥ、第2幕、互いの愛を確認しあう甘美なパ・ド・ドゥ含めて、ふたりの演技からは微細な感情の揺れが手に取るように伝わってくる。ノイマイヤーの『椿姫』は、ガラ・コンサートの定番のひとつであり、パ・ド・ドゥのみ上演されることは多い。近年、パリ・オペラ座バレエやミラノ・スカラ座バレエのレパートリーにもなった。しかし、本家の、巨匠の指導の行き届いたカンパニーの全幕上演に接するのは貴重な機会。アンサンブルの隅々にいたるまでノイマイヤーの振付や演出意図を知り尽くしている。至高の名演に酔わされた一夕だった。

↓ノイマイヤー版中心にバレエ「椿姫」について多角的に論じた特集掲載

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2008年 12月号 [雑誌]

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2008年 12月号 [雑誌]

2009-02-16

[]新国立劇場バレエ団『ライモンダ』

新国立劇場バレエ団『ライモンダ』

振付:マリウス・プティパ

改訂振付・振付:牧阿佐美

ライモンダ:川村真樹

ジャン・ド・ブリエンヌ:碓氷悠太(松岡伶子バレエ団)

アブデラクマン:冨川祐樹

(2009年2月15日 新国立劇場オペラ劇場)

男性ノーブルダンサーの不在を嘆く声は少なからずあるが、ここ数年、逸材が次々に出てきている。なかでもしっかりしたテクニックを備え、かつスター性もあるという点では、名古屋を拠点に活動する碓氷悠太が現在次代を担うエトワール有力候補に思う。

4,5年前、私用で名古屋を訪れた際に運よく観られたさる公演にて、眉目秀麗にして端正な技量を誇る青年に思わず目が行った。それが碓氷との出会い。07年松岡伶子バレエ団『くるみ割り人形』王子役で初主役を務めた後、08年新国立劇場バレエ団『カルメンby石井潤』ホセ、松岡伶子バレエ団『眠れる森の美女』王子役と主演を重ね、その舞台を追って観続けることができた。たたずまいに独特の風情があって、決して派手な技巧をみせたり、大仰な芝居をしなくても観るものの目を自然と惹きつける磁力のようなものを持つ得難い踊り手。今回も長年のコール・ド・バレエ経験を経て大輪の花を咲かせつつある川村真樹とともにフレッシュかつ完成度の高い演技をみせ主役の任を無事に果たした。気負いなく跳躍や回転技を決め、サポートも向上。何よりも表現力に秀でている。第一幕、夢の場において川村演じるライモンダの腕にそっと口づけをして、思い立ち難くとも後ずさりしていく所など細かな所作にも誠意がこもり胸打たれた。

碓氷と川村にはある共通項がある。碓氷は名古屋の松岡伶子(大寺資二や大岩千恵子らを輩出)、川村は盛岡の黒沢智子(英国ロイヤル・バレエ ファーストソリストの佐々木陽平らを育成)の門下。そして、松岡、黒沢は谷桃子の門下であり、初期谷桃子バレエ団において活動をともにした。すなわち碓氷・川村は谷の孫弟子に当る。谷は言わずと知れた、日本バレエ界が生んだ最大のプリマのひとりであり、先日米寿を祝う会が行われた。その席で、Kバレエカンパニー主宰の熊川哲也が祝辞を贈った際、谷が日本バレエの第一世代であれば自分は第三世代であると述べていた。日本バレエのパイオニアのひとり谷の孫弟子が、同じく日本バレエ黎明期からの功労者・橘秋子の子女であり、古くから谷と親しく交流してきたという牧阿佐美の演出・振付による『ライモンダ』の主役を“バレエ人の夢”であった国立オペラハウスの公演において務めるという回り逢わせには感慨深いものがある(ちなみに会場には谷が姿を見せ牧と並び観劇していた)。日本バレエの歴史は連綿と続き、現在も新たな一頁が記されていく。

2009-02-15

[]都民芸術フェスティバル助成「現代舞踊公演」

2009 都民芸術フェスティバル助成公演

都民芸術フェスティバル助成「現代舞踊公演」

●内田香『Evocation』

●蘭このみ『ボレロ

●武元賀寿子『LIFE SCRAMBLED』

(2009年2月14日 新国立劇場中劇場)

H・アール・カオスでも踊ったことのあるカリスマ・内田、元宝塚でフラメンコと和のテイストを融合させて評価の高い蘭、黒沢美香との共演も行いコンテ、バレエと他ジャンルのダンサーと交流する武元の揃い踏みは清新なラインアップ。モダンの枠を越えて訴求するのではないだろうか。内田作品は故・池野成が遺した打楽器、マリンバ、トロンボーンによる現代音楽に合わせ、内田と冴子、渕沢寛子が身体の内に秘めた魂の叫びを痛切に踊るもの。燃焼度の高いダンスの応酬によって飽かせなかった。蘭作品は蘭と貞松・浜田バレエ団出身で欧州や南米等のカンパニーでの経験も豊富な俊英・中田一史(作舞も担当)のデュオとコロス的な役割を果たす群舞によるもの。死の国から蘇えった男(中田)と愛し合う女(蘭)をラヴェルの名曲「ボレロ」を用いて描いた。最後、男はふたたび黄泉の国へと消えていく。「オルフェオとエウリディーチェ」の裏返し版のようだ。あらゆる身体部位をしなやかに躍動させて踊る中田のソロは瞠目すべきもので新鮮な驚きに満ちている。蘭と絡んでのリフト等も見応えがあった。武元作品は渋谷のスクランブル交差点を行き交う人々がテーマとのこと。コンテやバレエでも活躍するダンサーも多数出ており、彼らの個性も活かし縦横無尽、無秩序的に演者が入り乱れる。ただ、それらを通して何を伝えようとしているのかがいまひとつよくわからなかった。

[]初期型『Dumb!』

助成:全国税理士共栄会文化財団

初期型『Dumb!』

振付:カワムラアツノリ

出演:垣内友香里、草野たかこ、工藤牧、兼盛雅幸、重森一、須加めぐみ、根岸由季、平澤瑤、深見章代、松崎淳、カワムラアツノリ

(2009年2月14日 アサヒ・アートスクエア)

カワムラアツノリが主宰する初期型の自主公演。dumbとは、口の利けない、あるいは馬鹿な、マヌケなといった意味を持つが、「黙ってないでとにかく身体で動け、スパークしろ!」というあたりがカワムラの意図するところであろう。内外のロックの名曲にあわせ異色メンバーがアクティヴなパフォーマンスを繰り広げた。ずしりとした手ごたえのある存在感が魅力の垣内、ブサ可愛いキャラを演じて(←ココ重要)絶品の須加、ノリにノッて若々しく踊る深見、女装姿の踊りがキモくて(←褒め言葉)なんだかグルーヴィーな兼盛らが織りなす少々痛くても誰しも覚えのあるような青春群像。腋という身体部位に注目して身体における階層的落差を批評的に捉えた快作『ワキのニオイをワキガという』、男性陣が全裸になり、女性陣が男性たちの局部を手で隠しながら皆で跳ねたりふざけた動きを繰り出すラストが鮮烈な『MELEE』に比べるとインパクトに欠けるけれども、メンバーの個性を活かし見せ場を上手く配するという点では回を重ね充実してきた。このグループの特徴は、演者がなによりもエンジョイして踊っており、そして、それが観客にも伝わってくること。多様化したといわれつつ一部の売れ線のみが取り上げられることも多い日本のコンテンポラリー・ダンスであるが、唯我独尊、独自の道を歩み、観客をも楽しませようとする初期型の活動には貴重なものがあるように思う。

2009-02-13

[]「ハンブルク・バレエ ジョン・ノイマイヤーを迎えて」

「ハンブルク・バレエ ジョン・ノイマイヤーを迎えて」

ダンスビデオ上映とディスカッション

ゲスト:三浦雅士

主催:ドイツ文化センター

協力:財団法人民主音楽協会

映像上映(抜粋)

●『椿姫』

●『マタイ受難曲』

●『ベニスに死す』

(2009年2月13日 東京ドイツ文化センター)


↓三浦雅士氏のノイマイヤー論や三浦氏とノイマイヤーの対談等による特集

2009-02-12

[]ジョン・ノイマイヤー/ハンブルク・バレエ『人魚姫』

民音創立45周年記念/ジョン・ノイマイヤー芸術監督就任35周年記念

ジョン・ノイマイヤー/ハンブルク・バレエ『人魚姫』(全2幕)

演出・振付・舞台装置・照明・衣装:ジョン・ノイマイヤー

音楽:レーラ・アウエルバッハ

指揮:サイモン・ヒューウェット 演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

ヴァイオリン:アントン・バラコフスキー

テルミン:カロリーナ・エイク

詩人:イヴァン・ウルバン

人魚姫/詩人の創造物:シルヴィア・アッツオーニ

エドヴァート/王子:カーステン:ユング

ヘンリエッテ/王女:エレーヌ・ブシェ

海の魔法使い:オットー・ブべニチェク

(2009年2月12日 NHKホール)

2009年バレエ界最大の話題になること間違いなしのジョン・ノイマイヤー/ハンブルク・バレエ来日公演が開幕した。東京公演の初日は『人魚姫』である。2005年にデンマーク・ロイヤル・バレエにて初演、2007年に改訂されハンブルク初演が行われた。アンデルセンの童話に基づきつつ独自の着想を織り込み新しい世界を創造している。

まず注目されるのは、アンデルセンその人を思わせる詩人を登場させたこと。冒頭、詩人は船上にて愛するエドヴァートと花嫁ヘンリエッテの結婚式を思い浮かる。悲しみの涙は海へと流れていく。エドヴァートへの憧憬の想いが海底で人魚姫へと変わる。詩人と人魚姫の悲しみが一体となり物語が進行する。近年明らかになった、アンデルセン自身の苦悩の愛が創作に反映されたという事実をモチーフにしているようだ。

ノイマイヤーといえば今回の来日公演でも上演される不朽の名作『椿姫』のように人間心理の綾を微妙繊細に描き出す手腕にかけて定評のあるところ。人魚姫の叶わぬ愛の哀しみや魔法使いたちに尾ひれをはぎとられる際の痛切さはとても舞台上の出来事とは思えない。ことにタイトルロールを踊ったアッツオーニがとびきりの名演で、海底の場面における水色の長袴を自在に捌いての踊りは見物である。昨年度ブノワ賞の最優秀女性舞踊手賞を獲得したというのも頷ける圧巻の出来ばえだった。憂いを帯びた詩人役のウルバンや歌舞伎の隈取をほどこしたようなメイク姿の海の魔法使いを快演したブべニチェクの健在もファンには嬉しい。ノイマイヤー作品を観るたびに、振付の良さはいうまでもないが、それを生かすも殺すもダンサー次第ということを痛感させられる。

人魚姫のものをはじめ多彩なコスチューム、波間をあらわした息をのむように美しい照明など細部に至るまでの緻密で揺るぎない仕上がりにも感嘆させられた。音楽もオリジナルで、テルミンも用いられる刺激に富んだもの。バレエは総合芸術といわれるが、優れた振付家とよばれるには同時に卓越した演出家でもあることがもはや必要条件といえる時代だ。独自の世界観を構築し、それをどう魅せるかが問われる。その意味において、ノイマイヤーは巨匠にして先端を走っている存在といえるのではないか。

奥深く、様々の見方、解釈が出来るのも特長だ。長袴の衣装などノイマイヤーと交流がり同じく日本文化に造詣の深かったベジャールの「ザ・カブキ」などの延長上に捉えるとより斬新な使い方をしており興味深い。詩人と同姓の愛人、その妻という三角関係はアンデルセンのそれだけでなく、ノイマイヤーの敬愛するニジンスキーを愛したディアギレフのそれを想起させたりもする。バレエ史の記憶も随所に感じさせる。とはいえ高尚な、バレエ愛好家や文学愛好家向けのバレエでは決してない。人魚姫の報われない愛や詩人の苦悩には誰しもが共感するだろう。観るものの思考を促し、同時に感情に激しく揺さぶりをかけるのがノイマイヤー芸術の魅力。一見に値する秀作である。

2009-02-11

[]東京バレエ団「ベジャール・ガラ」

平成20年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動重点支援事業) 

モーリス・ベジャール追悼公演V/東京バレエ団創立45周年記念公演II

チャイコフスキー記念東京バレエ団「ベジャール・ガラ」

振付:モーリス・ベジャール 振付指導:ジル・ロマン、小林十市

●『ギリシャの踊り』

●『中国の不思議な役人』

●『ボレロ

(2009年2月11日 ゆうぽうとホール)

『ギリシャの踊り』は再演を重ねてすっかりベジャール作品らしくなったと思う。地中海の潮風を感じさせるような爽やかな佳編である。ソロは初役の長瀬直義。音楽性豊かで、かつしっかりと意志のある踊りを魅せて喝采を浴びていた。上半身が美しい。ノーブルダンサーとして知られた父、長瀬信夫の血を引く毛並みよさが感じられる。東京バレエ団の若手男性ダンサーのなかでも将来を嘱望される逸材のひとりだ。

『中国の不思議な役人』は無頼漢の首領:平野玲、娘:首藤康之、中国の役人:中島周のキャストだった。ことさら倒錯美を強調するではないが艶やかな首藤、凄みがもう少し欲しいが芝居の上手さの光る平野、過剰さを排し役になり切った中島。私事で恐縮であるが以前、首藤を特集した雑誌(「プリンツ21」)に「首藤康之に続く、次世代の表現者たち」と題して大嶋正樹(元団員)、古川和則(現・新国立劇場バレエ団ソリスト)、中島周について首藤と絡めての原稿を寄せたことがある。時を経て今回、特別団員となった首藤とその後継者として躍進をみせる中島の共演には感慨深いものがあった。

この日の『ボレロ』の主演は後藤晴雄。04年、08年の欧州ツアーでは踊っているものの今回の公演が東京での初披露となる。明るく健康的で程好く色気のある“メロディ”だった。東京バレエ団ダンサー(男性)の踊る『ボレロ』の系譜において先輩の高岸直樹とも首藤とも味わいは違う。今後踊り込めばその魅力がいや増すだろう。

※なお、本公演のプログラムに紹介記事を寄稿しました。

prints (プリンツ) 21 2006年冬号 特集・首藤康之[雑誌]

prints (プリンツ) 21 2006年冬号 特集・首藤康之[雑誌]

2009-02-10

[]モナコ公国モンテカルロ・バレエ「ミックスプロ」

モナコ公国モンテカルロ・バレエ「ミックスプロ」

振付:ジャン=クリストフ・マイヨー

●『Altro Canto(アルトロ・カント)1』

●『Altro Canto(アルトロ・カント)2』

(2009年2月10日 Bunkamuraオーチャードホール)

2009-02-09

[]新国立劇場ダンスプラネットNo.29「森山開次作品集」

新国立劇場ダンスプラネットNo.29「森山開次作品集」

演出・振付・美術:森山開次

●『OKINA』

出演:森山開次、津村禮次郎

音楽:種子田郷

●『弱法師 花想観』

出演:森山開次、加賀谷香、津村禮次郎

音楽:笠松泰洋

フルート生演奏:木ノ脇道元

●『狂ひそうろふ(くるいそうろう)』

出演:森山開次

音楽・パーカッション:YAS-KAZ

声の出演:津村禮次郎

(2009年2月9日 新国立劇場小劇場)

2009-02-08

[]貞松・浜田バレエ団『眠れる森の美女』

主催:明石市立市民会館(指定管理者 神戸新聞・神戸国際会館共同事業体)

後援:(株)明石ケーブルテレビ

貞松・浜田バレエ団『眠れる森の美女』

演出・振付:浜田蓉子、貞松正一郎

芸術監督:貞松融

オーロラ姫:竹中優花

デジレ王子:武藤天華

リラの精:山口益加

妖精カラボス:貞松正一郎

(2009年2月8日 明石市立市民会館(アワーズホール)大ホール)

貞松・浜田バレエ団は自主公演のほか兵庫県助成による県民芸術劇場や尼崎アルカイックホール共催・文化庁助成のアルカイック定期公演等によって良質の舞台を多くの観客に提供、バレエの普及に努めてきた。今回も自主公演ではなく明石市立市民会館主催の買取公演。普及公演としての色合いが強いがなかなかどうして総力を結集しての質の高い上演だった。団長の貞松融による恒例のマイム教室とアナウンスによるあらすじの説明が終わると幕が開く。テープ演奏ではあるものの装置も照明も本格的だ。プロローグと第1幕の後にそれぞれ休憩が入り、第2幕、第3幕は続けて上演される。第2幕は冒頭から王子に長いソロを踊らせ見せ場をつくりつつパノラマの景へとスムースに進める。王子とカラボスによる決闘もなく、王子のキスによってオーロラが100年の眠りから醒めると、カラボス一味はすごすご退散するという展開だ。振付はチャイコフスキーの曲想・曲調を大切にしており、一音一音を無駄にせず丁寧に振付けられている。そして要所ではマイムをしっかりと。プロローグ、カラボスが呪いの予言をかける場や第1幕、オーロラが紡ぎ糸に刺さり息絶える場での所作は特に説得力がある。

オーロラ姫の竹中は均整のとれたプロポーションを身上に古典・創作ともに活躍する実力者である。楚々とした風情がオーロラにぴったり。ナチュラル、透明感のある演技で観るものを惹き込んでいく。デジレ王子の武藤はナハリンの『BLACK MILK』(2006年)でみせた肉感的かつ繊細なダンスが忘れ難いが、このところノーブルダンサーとして一段と風格が増してきたように思う。公私共にパートナーに当る両者をあたたかかく見守る雰囲気が客席にまで伝わって来てなんとも微笑ましい。リラの精の山口はベテランらしく手堅く、カラボスの貞松正一郎は快演で赤のマントをひるがえす姿が色気十分。妖精には上村未香、正木志保という看板プリマや新鋭の安原梨乃らも加わるなんとも贅沢な布陣だ。フロリナ王女の廣岡奈美、青い鳥の弓場亮太をはじめとして第三幕ディヴェルティスマンでは演者が楽しみながら踊っているのが客席にも伝わってくる。

そして、もっとも感心させられたのは貴族や女官、小姓といったアンサンブルの隅々までが気を抜くことなく演じていること。日本のバレエは技術面に関してはレベルが高く、上手く踊る人は無数にいる。勤勉で練習熱心、上手く踊れるからこそ全国津々浦々にバレエエスタジオや研究所が点在し、“バレエ団”も無数に存在するわけだ。しかし、上演芸術としてのバレエを考えると、特に古典では、作品や役柄を理解したうえで演じるということをちゃんと考えなければいけない(むしろ技術よりも大切)。そこが出来るかできないかが芸術的感銘を与えるか否かの境目であり、やはり海外の著名、実力派カンパニーとの差は如何ともし難い。その意味において、チャイコフスキー三大バレエを中心に長年古典の研究に勤しんでいる貞松・浜田バレエ団は、古典を“魅せるバレエ”として上演できる貴重な団体だというのが持論である(『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』[特に「お菓子の国バージョン」]などは極めて完成度が高く団員の演技も錬れている)。今回の公演もその考えを十二分に実証してくれるもので大変な満足を覚えた。

2009-02-07

[]モナコ公国モンテカルロ・バレエ『La Belle〜眠れる森の美女〜』

モナコ公国モンテカルロ・バレエ『La Belle〜眠れる森の美女〜』

振付:ジャン=クリストフ・マイヨー

ラ・ベル(オーロラ姫):ベルニス・コピエテルス

若者/王子:クリス・ローラント

リラの精:小池ミモザ

(2009年2月7日 Bunkamuraオーチャードホール)

[]カンパニー マリー・シュイナール『オルフェウス&エウリディケ』

カンパニー マリー・シュイナール『オルフェウス&エウリディケ』

振付・演出:マリー・シュイナール

出演:リリアーナ・バロス、マーク・エデン=トール、今津雅晴、カーラ・マルーカ、ルーシー・モングレイン、キャロル・プリウール、マニュエル・ロケ、ドロテア・サイカリー、ジェームス・ヴィヴェイロス、ダニー・デジャルダン

(2009年2月7日 シアター1010)

カナダ・ケベックを拠点に活動、世界的名声を誇るカンパニー マリー・シュイナールの3回目となる来日公演。シュイナール作品の、奇態なフォルムが特徴の振付、プリミティブなエロスにあふれたテイストにコアなファンが多い。今回の公演チラシに推薦のコメントを寄せているなかにはコンテンポラリー・ダンス界の著名ダンサーや振付家の名が散見される。実際、客席にもダンサーや振付家の姿が数多く観られた。シュイナールはまさに奇才であり、誰かの模倣ではなく突然変異に出現した才能。それが生まれたのはケベックという土地、環境があってのことだろう。昨年、日本でもケベック学会というものが立ち上げられたようだ。ケベックダンスに関するカンファレンスも行われた。刺激的なダンスの生まれる土壌、文化について考察していくことも大切だろう。

※「オン・ステージ新聞」に評を書きました。

2009-02-06

[]東京バレエ団「ベジャール・ガラ」

平成20年度文化芸術振興費補助金(芸術創造活動重点支援事業) 

モーリス・ベジャール追悼公演V/東京バレエ団創立45周年記念公演II

チャイコフスキー記念東京バレエ団「ベジャール・ガラ」

振付:モーリス・ベジャール 振付指導:ジル・ロマン、小林十市

●『ペトルーシュカ』

●『ドン・ジョヴァンニ』

●『ボレロ

(2009年2月6日 ゆうぽうとホール)

この日はシルヴィ・ギエム(『ボレロ』)、首藤康之(『ペトルーシュカ』)、上野水香(『ドン・ジョバンニ』)というスターの揃い踏みが話題だったが、当日リハーサル中に首藤が足を痛めたためペトルーシュカ役は後藤晴雄に変更(首藤は9日からの別プロ『中国の不思議な役人』には出演予定との掲示)。ベジャール版『ペトルーシュカ』は仮面や鏡を効果的に用いつつ行き場のない迷宮に彷徨いこんだ青年の悲劇を描く。後藤は抑制された演技のなかにそこはかとない哀しさをにじませた。『ドン・ジョヴァンニ』はベジャール作品には数少ない、女性ダンサーの愛らしさを引き出した佳作。軽やかな動きとのびやかな身体のラインをみせた佐伯知香が抜群の出来ばえだった。奈良春夏も楚々とした雰囲気をみせ踊りも隙がない。上野はこのところ成熟した演技をみせ進境を示しているが、ここではチャーミングな魅力が全開した。ギエムがベジャール追悼のため封印を解いた『ボレロ』には会場総立ち。理想的なプロポーション、完璧な脚線美は相変わらず見事だが、さらに踊りに力強さと鋭さが加わっている。プリエやアティチュードひとつとっても動きの無駄のなさ精密さに感嘆。以前はそのストイックな演技にクール過ぎる印象も受けたが、今回は明晰で力強く、かつ優雅で凄絶なまでに美しい“メロディ”だった。

※なお、本公演の公演プログラムに紹介記事を寄稿しました。

2009-02-05

[]横浜ダンスコレクションR「横浜ソロ×デュオ<Compétition>+」

芸術文化振興基金助成事業

横浜ダンスコレクションR「横浜ソロ×デュオ<Compétition>+」

第1日【グループ部門】

●ペッテル・ヤコブソン/トーマス・ケイリー『UNTITLED PARTNER』

●古家優里『てまえ悶絶〜3000円くらいの自己肯定〜』

●クレア・パーションス『MOUSE A ROKOKO TALE』

●江積志織『情動』

(2009年2月5日 横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール)

今年も横浜ダンスコレクションRがはじまった(12日まで)。コンペ部門「横浜ソロ×デュオ<Compétition>+」を中心に過去受賞者による公演やシンポジウム、ショーケースなどを展開、コンテンポラリー・ダンスの祭典として定着している。2005年のリニューアル以降国際的なダンスマーケットを志向、コンペには海外からの参加者も増えてきた(今回は14カ国192組の応募)。国内組に関しても、バレエ、モダンダンス、大学ダンスを出自とするアーティストの選出も目立つ。昨今一部で称揚される“なんでもあり”なコンテンポラリー・ダンスとは距離を置き、じっくり身体と向き合う創り手に光をあてる場として貴重だ。今回の「横浜ソロ×デュオ<Compétition>+」第1日、グループ部門の参加者を見てもスウェーデンのからの2組、大学ダンス出身でJCDN主催「踊りに行くぜ!!」等でも注目されたプロジェクト大山(古家優里)、藤井公・利子門下で黒沢美香&ダンサーズでの舞台経験もある江積志織と顔ぶれは多彩。横浜を発信地、中継点に内外の気鋭アーティストが羽ばたき、ダンス界が活性化していくことを期待したい。

横浜ダンスコレクションR HP

http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/

ダンコレブログ

http://ameblo.jp/ydcr/

2009-02-01

[]埼玉県舞踊協会「2009 バレエ&モダンダンス 早春コンサート」

埼玉県舞踊協会「2009 バレエ&モダンダンス 早春コンサート」

第1部:自由作品

●由井カナコ『パ・ド・サンク』

●新野正代『安宅関』

●野呂修平『Colour Variation』

第2部:埼玉県舞踊協会委嘱作品

●堀登『5 VS 5』

第3部:「DNA さいたま動物の謝肉祭」

●文月玲『カマキリ』

●山口弓貴子『飛べない鳥』

●青木りえ『月落ちて、楽園は漆黒の闇となり』

●山崎麻矢『家猫狂騒曲』

●原島マヤ『変化』

●田中ひとみ『宇宙カメ参上!』

●谷乃梨絵『クローン計画の誤算』

●吉田久木子 作・関口淳子 振付『人』

(2009年2月1日 埼玉会館大ホール)

協会の設立・発展に多大な貢献を果たした名誉会長の藤井公を昨年末に喪った埼玉県舞踊協会であるが、会員およびゲスト振付家を招いての公演を滞りなく行った。第1部では協会員の大ベテランたちが登場。由井、野呂作品は早春にふさわしい明るく華やかな踊りを散りばめ、新野作品は和のテイストも入れた洋舞版「勧進帳」の趣だ。第2部では堀の代表作を再演した。かって音楽新聞のベスト3に入ったものであり、そうした話題作で時代を経ても古びないものであれば再演すべきだろう。第3部は「動物の謝肉祭」と銘打って8組が毛色の違う創作を披露して観るものを楽しませていた。

[]ユニット・キミホVol.2『White Fields』

芸術文化振興基金助成事業

ユニット・キミホvol.2『White Fields』

振付・演出:キミホ・ハルバート

出演:菊池いつか、作間草、西田佑子、森田真希、矢島みなみ、石橋和也、大貫勇輔、芝崎健太、平原慎太郎、キミホ・ハルバート

(2009年2月1日 青山円形劇場)

若手バレエ系振付家のトップランナーのひとりキミホ・ハルバートの主宰するユニット第2回公演。前回は旧作再演+新作による小品集だったが今回は2部構成の大作だ。“人をテーマとして、人に対する思いやり、自然に対する思いやりをコンセプトに”創作したという。衣装や舞台装置も白、銀世界のなかで展開されるパフォーマンス。群舞やデュオを織り交ぜ情景を連ねていくが、緩と急、動と静を効果的に用い長時間を飽かせない。ペルトやJ.S.バッハによる聞き慣れた曲を用いているけれども、音楽の情緒に安易に依存することもない。女性陣はクラシックバレエを長年踊っているメンバーが多いが、男性はコンテやストリート系の舞台を踏んできた人が多く、振付もオーソドックスなバレエのパを崩したコンテンポラリーなもの中心。スタイリッシュでセンスの良い作風はバレエファンのみならずコンテンポラリー・ダンスの観客にも訴求するだろう。