ダンスマガジン編『上野水香 バレリーナ・スピリット』

東京バレエ団プリンシパル上野水香を取り上げた『上野水香 バレリーナ・スピリット』が新書館より刊行されました。2003年に同じ版元から『MIZUKA―バレリーナ上野水香のすべて』と題された本が出ており、それに続く単行本出版となります。


上野水香―バレリーナ・スピリット

上野水香―バレリーナ・スピリット

白鳥の湖』『ジゼル』そして『カルメン』『ボレロ』といった作品を踊る姿を撮ったカラーの舞台写真、牧阿佐美バレヱ団から東京バレエ団に移籍してからの5年間やプリマとして過ごす日々を語ったロング・インタビュー、リハーサル風景などが収められています。縦に長い版型なのは、舞台写真が映えるようにとの配慮からでしょう。
日本人離れしたプロポーションを活かしたダイナミックな踊りと輝きを増し続けるオーラによって多くの観客を魅了する上野ですが、華やかな舞台の裏には、日々の血のにじむような苦労があることも率直に語っています。その言葉に嫌味なところはなく、恵まれた資質を持ちながらも人一倍の努力を惜しまない姿は、清々しさすら感じさせます。
“自分は成長が遅い”と語るという上野。しかし、近年はベジャール作品に新たな息吹を吹き込み、ロマンティック・バレエの名作『ジゼル』のタイトルロールでは強靭なテクニックを活かした精緻かつ透明感溢れる踊りに加えドラマティックな資質も開花させるなど進境目覚しいものがあります。『白鳥の湖』のオデット/オディールなど踊りこんでいる役柄でも演じるたび新境地を拓いています。踊るたびに新たな表情をみせ、つねに進化して観るものを惹きつけ刺激を与えることこそ、上野を目の離せない存在足らしめている最大の要因でしょう。そんな上野の魅力の詰まった一冊といえます。