ウィーン産ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』

7月4日からミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』が上演されています(帝国劇場で八月末まで上演)。脚本・歌詞を空前の大ヒット作『エリザベート』のミヒャエル・クンツェが担当したウィーン産ミュージカル。原作は「チャイナタウン」「テス」「戦場のピアニスト」を撮った名匠ロマン・ポランスキー監督の映画「吸血鬼」(1967年)で、ウィーン初演(1997年)ではポランスキーが演出を手がけています。日本では東宝が2006年夏に初演、尻上がりに人気が出て大きな話題となりました。今回3年ぶりの再演です。
舞台は十九世紀、ルーマニアトランシルバニア地方。彼の地の寒村や古城を舞台にしたホラー・コメディであり、ヴァンパイアハンターのアブロンシウスウス教授と若き助手アルフレートの冒険を軸に描かれます。文明を叡智で救う正義漢のアブロンシウス教授とクロロック伯爵=ヴァンパイアとの対決、アルフレートと宿屋の娘サラとの恋。教授と助手は果たしてヴァンパイアの恐怖に立ち向かい勝利を収めることができるのか…。
このミュージカルはダンス的要素が満載。ヴァンパイアたちによる群舞が何度も出てきます。1980年代は『レ・ミゼラブル』をはじめとした歌唱中心のミュージカルが世界を席巻しましたが、近年、日本では劇団四季が上演した『コンタクト』(2000年/スーザン・ストローマン演出・振付)あたりからダンスが存在感を示すミュージカルが息を吹き返したのは周知の通り。『ダンス オブ ヴァンパイア』もその流れのなかで捉えられるでしょう。本公演のプログラムに演劇・舞踊ジャーナリストの岩城京子さんがそのあたりを深く考察された一文が載っているので詳しくはそちらを参照いただければと思います。
ダンス オブ ヴァンパイア』日本版振付は上島雪夫。退廃美世界を表現するのを得意とし、商業舞台の振付・演出のかたわらコンテンポラリー系の公演でも作品発表しています。ヴァンパイア・ダンサー=伯爵の化身は前回に引き続いての新上裕也と今回新たに挑む森山開次というダブルキャスト。ジャンル問わず精力的に活動する異能の踊り手たちです。群舞のダンサーたちもショーイベントやモダン、コンテンポラリーなど幅広い舞台を経験している実力者揃い。アートシーン、ショービジネスといった壁を越えて積極的に踊るダンサーたちの活動に一層光が当るようになってほしいところです。