2010年の来日公演

まだ先で気が早いですが、来年度(2010年)の来日バレエ/ダンスのラインアップが明らかになりつつあります。世界的な経済不況といわれながらビッグカンパニーが続々来日するのは楽しみなところ。目についたものを挙げておきましょう。
1月には前年12月からツアー中のレニングラード国立バレエの公演において、ファルフ・ルジマートフが当たり役のひとつ『バヤデルカ』ソロル役を踊り収めるというのが大きな話題です。3月にはパリ・オペラ座バレエが2年ぶりに来日します。『ジゼル』&『シンデレラ』を上演。『ジゼル』では、華やかなオペラ座エトワールたちの競演が注目されます。『シンデレラ』はヌレエフ版。舞台はハリウッドに移し、映画スターの誕生をシンデレラストーリーとして描く読み替え版です。同じく3月にはニーナ・アナニアシヴィリ&グルジア国立バレエが来日、『白鳥の湖』『ロミオとジュリエット』を上演。ニーナのほかにアンドレイ・ウヴァーロフや岩田守弘も出演するようですね。
4月にはモスクワ音楽劇場バレエが来日、『エスメラルダ』『白鳥の湖』を上演。『エスメラルダ』は、わが国の団体でもいくつかがレパートリーにもってはいますが滅多にお目にかかれない作品なので注目されます。5月には2年に1度のお楽しみマラーホフの贈り物」が開催されます。少人数ながら精鋭揃いで満足できるガラ・シリーズ。マラーホフが芸術監督を務めるベルリン国立バレエでも「マラーホフ&フレンズ」というガラが好評を博しているようですが、わが国ではずいぶん前からマラーホフ企画のガラを楽しめていたわけであり、恵まれたバレエ鑑賞環境だと思わずにはいられません。
6月も注目の公演が続きます。英国ロイヤル・バレエが3演目を携え来日。上演されるのは『ロミオとジュリエット』『うたかたの恋(マイヤリング)』『リーズの結婚』。前二者はケネス・マクミラン、後者はフレデリック・アシュトンの代表作であり、ロイヤルのお家芸だけに好演が期待できます。先日急逝したピナ・バウシュが芸術監督を務めたピナ・バウシュ&ヴッパタール舞踊団が1977年初演『Komm tanz mit mir』を上演。死の直前にピナ自身も出演したという遺作も見て見たいところですが、もはや叶わぬことなのでしょうか。マシュー・ボーン白鳥の湖も話題の舞台。2003年に日本初演された際はソールドアウト続出で公演期間が延長されるという人気ぶりでした。その後ニュー・アドヴェンチャーズによるボーン作品は相次いで日本に紹介されましたが、ここ数年は来日が途絶えていただけに、ボーン・ファンならずともうれしい来日。7月には3回目となる「エトワール・ガラ」パリ・オペラ座プリンシパルを中心メンバーとして行われます。パリ・オペファンには応えられない年となりそうですね。毎回楽しみな現代作品の紹介にも期待したいところ。
10月にはオーストラリア・バレエ団が3年ぶりに来日。前回公演で大好評を博したグレアム・マーフィー版『白鳥の湖』と同じくマーフィー演出・振り付けによる『くるみ割り人形』を上演します。大人の鑑賞に耐えうる演出センスと批評性を備えた古典作品の新解釈は見逃せないところ。11月にはモーリス・ベジャール・バレエ団が来日します。2007年秋のベジャール逝去後初の来日となり、上演されるのは遺作『80分世界一周』。DVDが既に発売されていますが、巨匠の名作の数々も引用されたものでコアなベジャール・ファンからビギナーまでベジャールの舞踊宇宙に浸れるはずです。
これ以外にも夏から秋にかけていくつか企画があるでしょうし、コンテンポラリー・ダンス系の来日も相当数あると思われます。東京公演中心とはいえ、居ながらにして多彩なラインナップを味わえる日本の観客は幸せだと思わずにはいられません。