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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2009-10-30

[]2010都民芸術フェスティバル参加作品について

毎年新春から春にかけて行われる都民芸術フェスティバル(主催:東京都、財団法人東京都歴史文化財団)。これは“都内で開催されるさまざまなジャンルの優れた舞台芸術公演に助成金を交付し、低廉な料金設定や関連企画を設けたり、日ごろ公演の機会が少ない地域へ展開していくことで、観客層の裾野を広げ、芸術文化の振興と普及を図るための文化事業”(HPより)です。2010年の洋踊の参加公演は4公演。

バレエは3つ。スターダンサーズ・バレエ団 『ジゼル』(1月23、24日 ゆうぽうとホール)は、ピーター・ライト版。ロマンティック・バレエの不朽の名作をリアリティ十分に描いたヴァージョンとして定評あります。ジゼルの死が自殺であるなど明確な舞台設定と緻密な演出は他の追随を許さないものがあります。東京シティ・バレエ団『カルメン』(2月6、7日 新国立劇場中劇場)は、古典作品とともに創作バレエに力を入れるカンパニー近年屈指の話題作の再演。中島伸欣/石井清子の手によるものですが、ビゼーのオペラで有名な物語を現代の東京を舞台に読み替え描く斬新な演出と才気に富む振付が光ります。志賀育恵&橘るみという、いまが見ごろのプリマが競演するのも見逃せません。日本バレエ協会『ジゼル』(3月27日、28日 東京文化会館)は、メアリー・スキーピング版。1841年パリ初演時の楽譜をほぼ全曲使用したものということで大いに興味をそそられます。そして、全国に組織を持つ協会ならではの贅を尽くした豪華キャスト3組に目が眩みます。ジゼル役を酒井はな(3/27)、永橋あゆみ(3/28 14:00)、島田衣子(3/28 18:30)、アルブレヒト役を青木崇(3/27)、法村圭緒(3/28 14:00)、秋元康臣(3/28 18:30)が競演。どの回も見逃せない顔ぶれといえるでしょう。

現代舞踊は1つ。 現代舞踊協会 「現代舞踊公演」(2月13、14日 東京芸術劇場中ホール)。現代舞踊の中心組織が中堅作家の創作トリプル・ビルを行います。稲葉厚子、小林容子、坂本秀子の作品を上演。同協会は、昨年の都民芸術フェスティバル参加公演では、内田香、蘭このみ、武元賀寿子という現代舞踊畑以外にも名の知れアピール度の高いアーティストの作品を並べ、今年の12月に行う文化庁芸術団体人材育成支援事業「現代舞踊公演」では、池田美佳、菊地尚子、加賀谷香という新鮮な感覚を持った新鋭をフィーチャーする思い切った企画を打ち出しています。それらに比べると、目新しさは薄いラインナップにも思えますが、今回は時流に流されずしっかりとした基礎を持った踊り手を配した、完成度の高い創作路線を狙っているのでしょう。

公演によっては学生席や廉価な席が用意されていたり、今年は不明ですが応募抽選による招待がある場合も。良質の舞踊作品に気軽に親しめる機会だけに、多方面から注目されてほしいですし、上演サイドにもより質の高い上演を期待したいと思います。

2010都民芸術フェスティバル参加公演一覧

http://www.geigeki.jp/fes_001.html

2009-10-28

[]フラメンコ舞踊の小島章司が文化功労者に

フラメンコ舞踊の第一人者小島章司さんが文化功労者に選ばれました。おめでとうございます。毎年のリサイタルを心待ちにする観客のひとりとしてうれしい限りです。

小島さんは1939(昭和14)年徳島県生まれ。武蔵野音楽大学声楽科を卒業し、声楽、ピアノ、クラシックバレエ、モダンダンスを学ぶうちにフラメンコに出会います。1966(昭和41)年にスペインへ渡り、本場で修業に励み、スペイン各地や海外にて第一線の舞踊手として活躍します。1976年に帰国後は、精神性の高いと評されるダンスを持ち味にしつつ毎年のように精力的に創作フラメンコを発表してきました。『瞋恚の炎』による芸術祭賞を皮切りに、河上鈴子スペイン舞踊賞、東京新聞舞踊芸術賞、芸術選奨文部大臣賞、徳島県文化賞、イサベル女王勲章オフィシアル十字型章、紫綬褒章、アンダルシア州政府顕彰、文民功労勲章エンコミエンダ章等受賞・受章を重ねています。

近年では、『鳥の歌』『FEDERICO』『戦下の詩人たち』の〈愛と平和三部作〉を完成させ、クリスティーナ・オヨスと共演した『邂逅 ENCUENTRO』、高野山真言宗総本山金剛峯寺の壇上伽藍・金堂にてのフラメンコ奉納公演『聖なるいのち 〜空海に捧ぐ〜』等を行っています。つい先日には、鍵田真由美・佐藤浩希プロデュース「小島章司 魂の贈り物」に特別ゲスト出演。後進にフラメンコの精髄を伝える感動的な舞台を繰り広げて熱狂を呼び、各紙誌でも大絶賛を浴びました。日本舞踊史の生ける伝説と呼べる巨匠中の巨匠です。来月末には新作『ラ・セレスティーナ 〜三人のパブロ〜』を発表。創作欲はとどまることをしりません。受章を機にさらなる活躍が期待されるところです。

ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ desnudo 小島章司

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フラメンコ・小島章司の世界 (Master of Art Series)

フラメンコ・小島章司の世界 (Master of Art Series)

2009-10-26

[]ベジャール・バレエのジュリアン・ファブロー写真展

今日送られてきた「オン・ステージ新聞」を読んでいて知ったのですが、ベジャール・バレエ・ローザンヌの中心ソリストであるジュリアン・ファブローが被写体の写真展「ジュリアン・ファブロー・イン・ザ・ミラー」なるものが行われるようですね。

『バレエ・フォー・ライフ』のフレディの名演で多くのベジャール・ファンの心を掴んだファブロー。写真家は1998年よりファブローの写真を撮り始め、今回は、2004年と2005年のニューカレドニア公演の楽屋の様子を捉えたモノクロ20点を展示するそうです。

ジュリアン・ファブロー写真展「ジュリアン・ファブロー・イン・ザ・ミラー」

開催期間:11月2日(月)〜14日(土)10:00〜19:00(最終日16:00まで・日曜休み)

会場:渋谷・NANDAR

2009-10-24

[]東京シティ・バレエ団がキミホ・ハルバート作品上演

東京シティ・バレエ団の発行するニュースレター「TCB NewsLeter」(公演等で配布)の最新号となる2009.10 vol.11/12号がこのほど発行されました。

来年2月に上演される『カルメン』再演の話題や新制作されて話題となった『ロミオとジュリエット』等今年に入っての公演を振り返るニュースで盛りだくさんですが、今後の公演情報の欄を眺めていると、驚きのニュースが!なんと来年の5月に行われる「ラフィネ・バレエコンサート」においてキミホ・ハルバート振付作品が上演されるようです。

キミホは、ダンサーとして活動する傍ら創作を続け、多方面から評価される存在。主宰するユニット・キミホ公演のほか日本バレエ協会公演等でも作品発表しています。ステップと音楽の掛け合わせに非凡なセンスをみせ、ことにパ・ド・ドゥの造形は卓越。繊細な感受性を反映した“キミホ・ワールド”と呼び得る独自の世界観に満たされた創作に熱狂的なファンも少なくありません。タイトル未定と出ているので新作になるのかも。

東京シティ・バレエ団は、1968年の創設以来、古典作品の上演とともに創作作品の発表に力を入れてきた貴重なカンパニーです。石田種生、石井清子という創設以来のメンバーや中島伸欣ら団員の創作を積極的に発表してきました。近年では外部委嘱にも積極的。毎年恒例の「ラフィネ・バレエコンサート」では、ジャズダンスのウメダヒサコやブルガリアのブラドゥミール・アンジェロフらの作品を上演しました。これまで2回行われた「東京シティ・バレエ団meetsコンテンポラリーダンス」では、山田せつ子、富野幸緒、鈴木ユキオ、大橋可也といったわが国のコンテンポラリー・ダンスの一線の作家の新作を踊っています。キミホ作品導入もその延長線上のものとして自然に受け止められますが、首都圏の著名カンパニーが、しがらみにとらわれずに同時代のダンスシーンで活躍する振付者に声を掛けるということは、やはり得難いといえるでしょう。

わが国のバレエ界は、優れた踊り手を無数に輩出し、海外でも多くの人が活躍しています。しかし、国際水準で通用する創作は正直どれ位あるでしょうか。創作というクリエイティブ面において世界に貢献してこそ日本は世界に誇るバレエ大国といえるのは論を待ちません。フリーランスの、立場の弱い振付家に優れたダンサーと作品発表の機会を提供することは、わが国の創作水準を向上させる原動力となるでしょう。東京シティ・バレエ団の英断は注目されます。まだ先の話ですが成功に期待しましょう。

2009-10-22

[]上野水香&高岸直樹が「An Evening with Paloma Herrera」に出演

ご存知の方も少なくないと思いますが、来る26日、27日にシンガポールのEsplanade Theater Shingapore にて行われるバレエ・ガラ公演「An Evening with Paloma Herrera」に東京バレエ団の上野水香と高岸直樹が参加するようです。両日とも『カルメン』 パ・ド・ドゥ(アロンソ版)、『眠れる森の美女』グラン・パ・ド・ドゥを踊る予定。

アメリカン・バレエ・シアターの人気プリンシパルであるパロマ・ヘレーラを中心とした公演ですが、上野らの他には、アジアの名花ヤンヤン・タンや今夏の「世界バレエフェステバル」で人気を博したヤーナ・サレンコ、先日のNBAバレエ団「ゴールデン・バレエ・コー・スター」でロビンズの『アザー・ダンス』を好演しニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)の来日公演でも中軸として活躍したアシュレイ・ボーダーらが参加します。

上野は東京バレエ団の海外ツアーのほか、近年はベルリン国立バレエ団のウラジーミル・マラーホフ プロデュース「マラーホフ&フレンズ」、ニューヨークの「ユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)」のガラ公演等に客演して欧米でも活躍の場が増えていますが、今回は東南アジアでの公演への参加。さらなる飛躍が楽しみなところですね。

「An Evening with Paloma Herrera」概要

http://www.esplanade.com/whats_on/programme_info/an_evening_with_paloma_herrera/index.jsp

2009-10-20

[]vol.3 法村珠里(法村友井バレエ団)

大阪が誇る超名門大手バレエカンパニーが法村友井バレエ団です。創設は1937年。初代団長の法村康之、二代目団長の友井唯起子夫妻による創設期・発展期を経て1983年より法村牧緒が三代目団長を務めています。日本人としてはじめてレニングラードバレエ学校(ワガノワ・バレエ・アカデミー)に学んだ牧緒は、ペテルブルク派の精髄を知り尽くし日本におけるロシア・バレエの正統的な継承者として揺るぎない地位を誇っています。ベルギーや旧ソ連でも踊った経験を持つ名プリマ宮本東代子と公私共にパートナーとなり、ふたりの子女をもうけました。ひとり目がノーブルダンサーとして知られる長男の法村圭緒。その妹が今回ご紹介する法村珠里(ほうむら じゅり)です。

名門舞踊一家の三代目として陽の当る道を歩んでいますが、ロシア留学を経て法村友井バレエ団に入団して以後、着実にステップを踏んで今日に至ります。今年春には東京新聞主催全国舞踊コンクールのパ・ド・ドゥ部門にて第1位。予選から厳しい審査が行われ創作作品も審査対象とされる全日本バレエコンクールにおいても2年連続上位入賞を果たすなど実力は折り紙つき。近年は日本バレエ協会本部主催公演でもソリスト役を踊っています。両親から受け継いだ優れた容姿と柔軟な身体に恵まれ、バレエを踊る、主役を踊るに相応しい条件を生まれながらにして備えている逸材です。

技術の精確さに加え優美さ際立つ身体コントロールが特長。高々と脚を上げる際にも、無理に骨盤をずらしたりすることなく脚の奥からのびやかに繰り出す――しなやかで美しい体づかいにほれぼれさせられます。法村友井バレエ団は厳格なワガノワ・メソッドによる訓練が徹底されています。しかし、珠里の留学先は意外にもボリショイ・バレエ傘下のモスクワ舞踊学校。優美さを重んじるワガノワ・メソッドと力強さを誇るモスクワ派のメソッドの最良の精華を学んだ貴重な存在ということも特筆されるでしょう。

ソリスト・デビューは2005年初夏の『シンデレラ』夏の精。小気味よい踊りと清潔感溢れる演技に惹かれ、すぐさまプログラムの配役表を確認した覚えがあります。2007年秋に踊った『海賊』のグルナーラ役では、スケールの大きな演技を披露して急成長を遂げました。2008年初夏には『眠れる森の美女』オーロラを踊ります。幕を追うごとに精彩を増し、大変なスタミナを要求される大作を安定感十分に踊って底力を示しました。大舞台であるほど輝きを増し、実力を発揮する勝負強さ・舞台度胸の良さも大変に魅力的です。バレエ団公演のほとんどにおいて主役もしくは主要なソリスト役を踊っていますが、ロシア色の強いバレエ団ならではのレパートリー『騎兵隊の休息』主役や『シンデレラ』のタイトル・ロールで披露したはつらつとした表情豊かな演技は、上り調子の勢い・若さが相俟って爽やかな印象を残しました。技術だけではない心の感じられるバレエを踊る踊り手の多いバレエ団ですが珠里も例外ではありません。

このところはドラマティックな表現力が求められる役柄にも挑んでいます。先日亡くなったアンドレ・プロコフスキーの大作『アンナ・カレーニナ』のタイトル・ロールを今年1月、東京・新国立劇場(地域招聘公演)にて披露しました。悲劇のヒロインを体当たりで演じて評判となったため記憶に新しいかと思います。この作品のパ(ステップ)の組み立て自体はオーソドックスなものですが、パとパの間に感情をこめる余白があるのが振付の特徴。並みのプリマが踊れば単調な踊りと演技に終始し隙間風が吹いてしまう危険をはらみます。しかし、珠里は初挑戦ながらも熱演して健闘をみせました。芸術性と娯楽性を兼ね備えたロシア流ドラマティック・バレエの秀作ということもあり、キャリアを重ねていくに際して折にふれて踊っていくことが楽しみなレパートリーといえます。

今秋には大作『エスメラルダ』のタイトル・ロールに挑みます。ブルメイステル版を基に独自の版として磨き上げ再演を重ねてきた団の代表的なレパートリー(文化庁芸術祭大賞受賞作)。エスメラルダ役は、中村美佳、西田佑子という歴代のプリマが演じてきた役どころです。『アンナ・カレーニナ』も含め、若くして演劇性の強い作品に挑めるのは得がたいこと。父や母はじめかつて主役を踊った団員やキャラクター・ダンスを得意とする団員(日本のバレエ団としては例外的とも言えるくらいにキャラクター・ダンスの水準が高い)が脇を固め、しっかり支えるという布陣あってこそです。老舗ならではの長年の伝統を踏まえ、そこに清新なエネルギーが注入される刺激的な舞台となりそう。珠里にとってプリマとして一層の飛躍を占う上での試金石となりますが、近頃大役を重ねて踊り経験を積んでいること、大舞台に強いことからして成功が望めるはず。日本バレエの次代を担うホープたる彼女の快進撃はまだ始まったばかりです。(敬称略)

今後の出演舞台予定

法村友井バレエ団『エスメラルダ』

2009年11月5日(木)18:30/大阪厚生年金会館大ホール

※【主役】エスメラルダ役(共演:ワディム・ソロマハ)

2009-10-17

[]「横浜ソロ×デュオ<Compétition+」出場者決定

新進振付家の登竜門である「横浜ソロ×デュオ<Compétition+」2010年度(2月3日〜6日横浜赤レンガ倉庫1号館)のファイナリストが決定したようです。

荒木志水、Zyda Marie Baaya、Lee Dong Won、Baek Howool、Geon Hyauk Jin、岩渕貞太、笠井瑞丈、きたまり、松崎えり、南弓子、 三東瑠璃 / 小暮香帆 / 篠ヶ谷美穂<japonica-ponica>、長内裕美、関典子、宇都縁、山崎 麻衣子 / 渡辺久美子<パギ>

「トヨタコレオグラフィーアワード2008」オーディエンス賞受賞者きたまり、昨年度の「横浜ソロ×デュオ<Compétition+」審査員賞受賞の長内裕美というコンペ受賞歴のある人たちも出てきました。中村恩恵らと活動しカンパニーnoonを主宰する松崎えりは、2006年度に選出されたキミホ・ハルバートに続くバレエ/コンテンポラリー畑からの選出となりますね。海外勢含めて面白そうな人たちが出ており楽しみなところです。

プレスリリース(PDF形式)

http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/jp/images/HPydc10Pressrelease2.pdf

横浜ダンスコレクションR公式ホームページ

http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/

2009-10-16

[]「ダンス・アンソロジー〜身体の煌めき〜」概略

“ダンスに纏わる多彩な企画をとおして、日本を代表する舞踊家たちの鍛えられた身体、そこから広がるオリジナリティー溢れるダンスの最前線に迫る”という「ダンス・アンソロジー〜身体の煌めき〜」が愛知芸術文化センターにて行われます。

「ダンス・アンソロジー」では、複合文化施設である愛知芸術文化センターの小ホールやリハーサル室、公共スペースなどでの公演、ワークショップを行うほか、アートスペースにおいての展示なども催されます。地元出身の平山素子新作ソロダンスは、昨年度の『春の祭典』によって芸術選奨文部科学大臣新人賞および江口隆哉賞をダブル受賞して飛ぶ鳥を落とす勢いの平山にとっても初の本格的単独ソロ公演。要注目でしょう。他にNoismの新作公演や康本雅子(ダンス)&DJ吉沢dynamaite.jp(音楽)によるセッション、ニブロール映像インスタレーションも行われます。

中部地区はバレエに関しては熱心な地域ですが、コンテンポラリー・ダンスに関しては関東や関西に比べるとアーティストも少なく地味な印象。とはいえ、「ダンスオペラ」シリーズをはじめとする一連の愛知芸術文化センターの企画は、全国的注目を集め、また、地域のダンスを活性化させてもいます。今回、より多角的な視点からダンスの魅力を伝えるイベントとして貴重なものになるのではないかと期待したいと思います。

主催:愛知芸術文化センター企画事業実行委員会(愛知芸術文化センター・中日新聞・東海テレビ放送)

「ダンス・アンソロジー〜身体の煌めき〜」

2009年11月20日(金)〜12月27日(日/愛知芸術文化センター

◆平山素子新作ソロダンス公演『After the lunar eclipse/月食のあと』:12.19(土)19:00、20(日)14:00・18:00

◆Noism1見世物小屋第2弾『Nameless Poison〜黒衣の僧』:12.23(水・祝)19:00、24(木)18:30

◆フォーラム・セッション:康本雅子(ダンス)&DJ吉沢dynamaite.jp(音楽) 『当日仕入れ弁』:12.5(土)

◆パフォーミングアーツ・ガーデン:12.5(土)

◆平山素子ダンス・ワークショップ:11.20(金)

◆Noism舞台写真展レジデンシャルカンパニーNoism 5年の軌跡

〜同時上映:ダンス・アンソロジー関連上映会:12.1(火)〜27(日)

◆ニブロール映像インスタレーション:12.15(火)〜20(日)

2009-10-14

[BALLET]わが国におけるJ・ロビンズ作品の受容について

ニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)5年ぶりの東京公演が盛況のうちに幕を閉じたようです。A・B・C3つのプログラムが組まれ、お家芸のジョージ・バランシン&ジェローム・ロビンズ作品のほか、アレクセイ・ラトマンスキー、クリストファー・ウィールドンらの近作も上演。スケジュールの都合上、A・Cプロしか観られなかったのですが、5年前とは顔ぶれも変わり、清新で洗練されたパフォーマンスを楽しむことができました。

今回、客席を見渡して気づいたのが、年配のバレエ関係者の姿をいつになく目にしたこと。1958年のニューヨーク・シティ・バレエ初来日は、前年のボリショイ・バレエ初来日とともに日本のバレエ人に与えた影響は大と言われ、懐旧の念が強いのかもしれません。また、ジェローム・ロビンズ作品が上演されたことも大きいのでは。

戦中派世代のわが国のバレエ人が戦後、モーリス・ベジャールやジョン・クランコと並んで大きな影響を受けた海外振付家はロビンズでしょう。音楽の友別冊「バレエの本」1987年夏号の座談会「創るということ」を読むと、バレエ界のリーダー的存在の牧阿佐美とわが国を代表する振付者の佐多達枝が異口同音に興味のある海外振付家としてロビンズを挙げています。批評家の故・市川雅が1960年代後半に当時の世界三大振付家としてベジャール、高橋彪と並んでロビンズを指名したこともありました。

ロビンズ作品は、バレエにとらわれず多様なダンス・スタイルが活かされているのが特徴。プロットレスが基本ながら、現代音楽やジャズに振付けた機知に富んだものから、クラシック曲に振付けた抒情豊かなものまで多彩です。今回のNYCB来日公演で上演された2つのロビンズ作品はことに日本のバレエ人に影響を与えたものでしょう。

Aプロで上演された『ウエスト・サイド・ストーリー組曲』(1995年初演)は、ロビンズが振付を手がけた名作ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』から名シーンを選りすぐって構成されたもの。前述の座談会の佐多の発言によると、ミュージカル版を東京宝塚劇場で見て興奮したようです。ロバート・ワイズとの共同監督による映画版ふくめ、音楽と振付とダンサーの踊りが掛け合わさって、えもいわれぬ一体感を生み出すロビンズ・マジックに当時のバレエ人が受けた衝撃を想像するに難くありません。

Cプロで上演された『ダンシズ・アット・ア・ギャザリング』(1969年初演)はショパンのピアノ曲18曲に振付けられたもの。男女10名が織りなす人生模様が胸に沁みる逸品であり、初演から空前の大成功を収めたロビンズの代表作です。今回日本初演ですが、在外研修等で現地を訪れていた日本のバレエ人をも感化したようです。手元に資料がありませんが、そういう挿話を以前読んだ記憶が。実際、今回の公演当日、当時現地で本作を見て感動したという、さる関係者の熱のこもった話を聞くことが出来ました。

わが国においてロビンズ作品上演は少なく、国内団体ではスターダンサーズ・バレエ団が、かつて『牧神の午後』等を上演していたくらい。著作権や上演料の問題等の事情もあるのでしょうが本格的な上演はあまり目にすることができません。今夏にNBAバレエ団「ゴールデン・バレエ・コー・スター」に客演し『アザー・ダンス』を踊ったアシュレイ・ボーダー(NYCBプリンシパル)らの名演とともに、今回のNYCBのロビンズ作品上演は貴重なもの。ロビンズ作品がわが国の振付者に及ぼした影響に関しての具体的な考察や証言を集める等の研究がなされてもいいのでは、と思わせられもしました。

New York City Ballet's Megan Fairchild on Dances at a Gathering

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2009-10-13

[]Noism、『NINA』台湾ツアー出発&新体制発足

金森穣率いる新潟りゅーとぴあ専属ダンスカンパニーNoismが代表作『NINA〜物質化する生け贄』を携え台湾ツアーに出発したようです。公演は10月16日〜18日の3回を予定。会場は観光地として知られる中正紀念堂の國家戯劇院。

http://www.noism.jp/blog/2009/10/nina_8.html


NINA materialize sacrifice [DVD]

NINA materialize sacrifice [DVD]


それに先立ってNoismの新体制が発表されています。

http://www.noism.jp/blog/2009/10/noism.html

10月7日に新潟で行われた記者会見では、新体制設立の経緯、最新作『Nameless Poison‐黒衣の僧』について、メインカンパニーNoism1と研修生カンパニーNoism2の今後の展開等について話されたとか。今後の動向にも注目が集まるところです。

Noism1&Noism2 2009/2010シーズン メンバー↓

http://www.noism.jp/members/

2009-10-12

[]貞松・浜田バレエ団特別公演「創作リサイタル21」

ジョージ・バランシン『セレナーデ』、オハッド・ナハリン『BLACK MILK』、イリ・キリアン『6 DANCES』という近現代の巨匠振付家作品を一挙上演(併演:長尾良子『セ・シ・ボン』。関西のみならず東京でもお目にかかれない意欲的なプログラムであり、地元のバレエ関係者はもちろんのこと東京からも評論家はじめ関係者が何人も来場していました。「創作リサイタル」抜きに日本のバレエ・シーンを語れないといっても過言ではないほどであり、わが国のバレエ界における重要な定例公演となった感すらあります。

総じて水準の高い上演でしたが、ことに『BLACK MILK』(再演)の出来ばえに唸らされました。ポール・スマドベックのマリンバ曲にのせ、上半身を露にした5人の男性舞踊手が秘儀思わせる営みを行います。順々にバケツからすくう泥を顔になすりつけていく場など鮮烈な印象を残しました。振付は緩急織り交ぜられつつトーンを保たねばならないハードなもの。バレエダンサーが踊ると硬くなりがちなところを、貞松正一郎以下のダンサーたちはしなやかさ・滑らかさと強度を兼ね備えた卓抜したダンスを繰り広げました。初演時の好演によって文化庁芸術祭新人賞を得た武藤天華は前回感じられた肉感性こそ影を潜めたものの成熟が加わり、今回新に踊った堤悠輔は欧州のコンテンポラリー・ダンスの前線で踊ってきたキャリアを誇るだけに卓越した技量を発揮していました。海外作品の受容として掛け値なしに群を抜く完成度だったと思います。

キリアンの日本初演作品『6 DANCES』は、巨匠の膨大な作品群のなかにおいて『シンフォニー・イン・D』『舞踊学校』『バースデイ』等の系譜に連なるものであり、喜劇性の強い作品。モーツァルト「6つのドイツ舞曲」に振付けられた異色作です。女性4名、男性4名が顔を白塗りにしたり、かつらを被ったりして踊ったり、果ては巨大な黒のスカートを着けて現れたりと意表をつく展開。振付もダンス・クラシックをベースにしつつかなり崩したものであり機知に富んでいます。コミカルな動きやデフォルメされた衣装・空間設定が目を惹きますが、諧謔味ある演舞と表裏一体のところに人生の哀しさや厳しさを秘めた奥の深さが魅力的。そのニュアンスは十分に伝わってきました。客席は爆笑の連続でノリがよかったですが、初見ということもあってか奇抜な意匠や展開に過剰に反応していた感も。これは回を重ねて上演していけば、より作品の奥深さが伝わっていくのではないでしょうか。団の名刺代わりのレパートリーのひとつとなるかもしれません。

バランシン『セレナーデ』は昨年春にバレエ団初演して以来の再演。バランシンのアメリカ第一作であり、バレエ学校の生徒のための創作でしたが、以後のバランシン・スタイルを内包し、オフ・バランスや緩急の切り替え等は現代のバレエ作品への萌芽を感じさせます。古典と現代バレエの分水嶺的作品。古典作品に加え、キリアン、ナハリンのほかユーリ・ン、スタントン・ウェルチ、ティエリー・マランダイン、森優貴といった現代第一級の振付者の作品を取り上げている貞松・浜田バレエ団が上演する意義は大変に深いものがあるのでは。同作は首都圏の大手バレエ団がほぼ軒並み上演していますが、振付指導のほとんどはパトリシア・ニアリー。貞松・浜田バレエ団では、バランシン・トラストからジュディス・フューゲイトを招いて取り組んでいるのが注目されます。今回の再演にはフューゲイトは来日できなかったそうで、仕上がりを心配していましたが、杞憂に終わりました。主軸を踊った瀬島五月は踊りに関して前回よりも安定感が増し音も取れ、正木志保、竹中優花は初演時同様隙のない踊り。群舞も整然と揃っていました。日本の団体の上演では、群舞はよく揃い振付も見事に再現されてはいても淡々として物足りなく感じることも(例外として牧阿佐美バレヱ団の上演を挙げておきます)。その点、今回は、女性三人と男性二人のソリストたちの踊りから色濃くドラマが浮き彫りになる点、群舞が緩急の切り替えをしっかり行っていた点が長所に感じました。感度の高い踊り手が揃うだけのことはある。今後、あらためて指導者を迎え細部の表現を磨き上げ、オーケストラ付での上演も実現すればと夢が膨らみます。

巨匠三作品の陰に隠れがちですが幕開けに上演された『セ・シ・ボン』(再演)が今回ことのほか面白く感じられました。「セ・シ・ボン」や「幸福を売る男」といったシャンソンの名曲メドレーにのせ、若手団員を中心とした踊り手の個性や踊る喜びが手に取るように伝わってくる佳品です。でんぐり返りをしたり、お尻を振ったり、バタバタ走ったり、腰を落として人形ぶりをしたりといったアンサンブルの動きが楽しく目が離せません。いっぽうで「さくらんぼの実る頃」にのせ竹中優花と弓場亮太の踊る情感豊かにして清澄な美しさのあるアダージョが人生の哀歓を見事に語ります。「創作リサイタル」スタート時は、団員の創作を上演するのが主なる目的であり、また観客と今という時間を共有したいという願いがこめられていたとのこと。世界的振付者の創作を踊りこなすに至る絶頂期を迎え、栄耀栄華を誇りながらも、団員による優れた創作を発信し、観客にダンスを観る喜び楽しさを伝える――原点を忘れない姿勢をしっかり打ち出すところに、主催者の一途なまでのバレエへの情熱が強く感じられるといえるのではないでしょうか。

トッププリマの上村未香、ラインの美しさ際立つ吉田朱里が今回お休みであったものの『セレナーデ』『6 DANCES』の瀬島、『セ・シ・ボン』『セレナーデ』の竹中を中心に相変わらずの団員の層の高さを見せ付けました。作品ごとに多彩な貌をみせ多くの観客の目を惹くドラマティック・バレリーナ瀬島は“神戸のヴィシニョーワ”。研ぎ澄まされ淀みない流麗なダンスと高い表現力を持ち味とする竹中は“神戸のロパートキナ”。勝手にそう形容していますが、それはさておいて、両者は好対照ながらともに実力者であり、しかもまだ若いだけに、さらなる飛躍が期待されます。さらに、それに負けじとベテランプリマの正木、進境目覚しい廣岡奈美がしっかり存在感を示しました。男性陣もベテランから若手まで適材適所の配役。既存の優れた現代作品には少人数での上演のものが少なくなく、人材豊富なカンパニーとしては悩ましい問題でしょう。今後も新旧さまざまの創作を上演しつつ層の厚い人材を余すことなく使い切っての公演活動が望まれます。また、東京公演も期待したいところ。2002年、2007年には、こどもの城・青山劇場の招聘によってユーリ・ン『眠れぬ森の美女』、ナハリン『DANCE』を上演しています。近い将来、再び東京の観客の前で作品上演してほしいと願わずにいられません。

(2009年10月10日 神戸文化中ホール)

2009-10-09

[]この秋、フラメンコ舞踊の話題公演が続々と

この秋はフラメンコ舞踊が熱い!

現代屈指といわれるフラメンコの女王で、亡きピナ・バウシュや「リービング・ラスベガス」などで知られる映画監督マイク・フィギスらが熱烈に支持するエバ・ジェルバブエナが3年ぶりに来日し『Santo y Seña(サント・イ・セーニャ)』『Yerbabuena (ジェルバブエナ) 』を上演(10月20-21日 於:Bunkamuraオーチャードホール)するのが話題ですが、日本の創作フラメンコも負けてはいません。わが国は本場スペインに次いでフラメンコ舞踊が盛んといわれます。黎明期の河上鈴子を経て、小松原庸子、小島章司といったパイオニアが芸術舞踊として深め社会的地位を向上させました。そして現在、次世代の俊英がどんどん台頭しています。今秋は芸術祭シーズンということもあって公演が目白押し。そのなかから次代を大きく担うアーティストによる公演を紹介しておきましょう。

まず最初に挙げておきたいのが鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団・desnudo Flamenco live Vol.4『愛と犠牲』(10月28、29日 於:代々木上原ムジカーサ)。この団体はフラメンコの原点たる力強くエネルギーに満ちた踊りを持ち味としています。『ARTE Y SOLERA 歓喜』では文化庁芸術祭大賞を獲得。プロデュース・作詩:阿木耀子&音楽監督・作曲:宇崎竜童による『FLAMENCO曽根崎心中』は、大・中劇場において再演を重ね多くの観客を動員してきました。desnudo Flamenco live は、座席数80席の小スペースにおいてフラメンコ熱を体感できる貴重な企画です。先日は日本フラメンコ界の至宝・小島章司を招いて男性舞踊手五人による「小島章司 魂の贈り物」を開催して話題を呼びました。今回の『愛と犠牲』は、2007年に劇場公演されたものをJAZZ界で活躍する近藤和彦のオリジナル音楽をライブ版に再構成したものということ。パッションに溢れた踊りを間近で堪能できるまたとない機会であり楽しみなところです。

10月の公演のなかでも女性アーティストの活動が目につきます。なかでも注目されるのが日本のフラメンコ界のエリート中のエリートによる公演。公演日順に2つご紹介しておきましょう。最初は入交恒子 CONCIERTO FLAMENCO Vol.11『La Luna de Andalucia(アンダルシアの月)』(10月24日 草月ホール)。入交は小島章司に師事したのち、小松原庸子の舞踊団に入り活躍しました。現在の日本のフラメンコ舞踊手のなかでも超一線級に入る、という関係者の声もちらほらと。2006年、2007年には連続して文化庁芸術祭優秀賞を獲得しており、それ以来2年ぶりとなる公演となるだけに大いに注目されます。石井智子フラメンコ公演『EL COMPAS エル・コンパス』(10月29日 新宿文化センター大ホール)も話題の舞台。石井は名門・小松原庸子スペイン舞踊団の第一舞踊手として長年活躍しました。独立後も古巣に客演する実力者にして日本フラメンコ舞踊界の華といえる存在です。2008年には舞踊批評家協会賞新人賞を受賞しました。今回はコンパスの魔術師ディエゴ・カラスコ、スペイン屈指の若手バイレのエル・フンコを招聘する熱の入れようだけに、充実の内容が期待できそう。

新生なったアントニオ・ガデス舞踊団やクリスティーナ・オヨスといった一時代を画した巨星、先に触れたエバ・ジェルバブエナやホアキン・コルテスらスターの来日も楽しみですが、日本のフラメンコ・アーティストの水準も高く、創作力や機動力に優れた意欲溢れる公演が続きます。前記のdesnudo Flamenco live のvol.5(12月8、9日 於:代々木上原ムジカーサ)では、ヨーロッパで注目を集めるダンサー/サーカスアーチストで、奇才シディ・ラルビ・シェルカウイ作品にも出演するAli Thabet(アリ・タベ)を招聘し、フラメンコの枠を越える新たなステージを展開するとか。コンテンポラリー・ダンスのファン/関係者にとっても見逃せない公演となること必至でしょう。多様な刺激的な公演が続いているので、ぜひ多くの人々に日本のフラメンコ舞踊に接してほしいと思います。

2009-10-07

[]vol.2 伊藤友季子(牧阿佐美バレヱ団)

日本バレエ界きっての超名門大手・牧阿佐美バレヱ団の若きプリマとして活躍をみせるのが伊藤友季子(いとう ゆきこ)です。イギリスにて5歳からバレエを始め、帰国して橘バレヱ学校入学。同時に第22期AMステューデンツに選抜されています。新国立劇場バレエ研修所第1期生研修生となり、2003年同研修所を修了。橘バレヱ学校も卒業し牧阿佐美バレヱ団に入団します。2004年10月には『リーズの結婚』主役に抜擢され、以後、同バレエ団を代表するダンサーとして注目されてきました。華奢な身体を誇り、美しいラインの映える新鋭です。チャイコフスキー三大バレエを中心に全幕主演を重ねるほか、プリセツキー/牧版『ロメオとジュリエット』では、悲劇のヒロイン、ジュリエットを哀切に演じて涙を誘いました。2007年には橘秋子賞スワン新人賞を受賞。

伊藤の魅力としてまず指摘できるのは抜群の音楽性です。音楽にあわせて踊るのではなく、身体を楽器のように用いて音楽を奏でるかのように踊る。まさに歌う身体を持った稀有な才能の持ち主。一音一音を無駄にすることなくフレーズを大切にしつつ優れた音楽解釈を行います。新国立劇場バレエ研修所修了公演で踊った際の自作ソロでは、早くも抜きん出た音楽センスを発揮し、玄人筋や熱心なバレエ・ファンの間において、もはや伝説となっているほど。古典作品でもその資質を発揮していますが、現代作品、ことにダラー振付『コンスタンチア』、三谷恭三の佳作『ガーシュウィンズ・ドリーム』、さらには小島章司フラメンコ『ロマンセ』客演等における、音楽性に富み洗練された踊りは忘れられません。恐縮ですが以下、拙評を引用しておきます。

次代を担うSTARLETたちの魅力が弾けたのが公演の棹尾を飾る『ガーシュウィンズ・ドリーム』(初演:一九九七年)。「サマータイム」ほかガーシュウィンの名曲にのせ若い男女の恋模様を明るくお洒落に描く。ここでは大器として注目される伊藤友季子の稀有な音楽性を堪能できた。赤のロングドレスに身を包み、粋に、艶やかに踊る。上半身を伸びやかに、脚先を滑らかに用い身体そのものから流麗に音楽を奏でるかのよう。そこはかとなく漂う詩情もいい。

「ダンス・ヴァンテアン11」評 /オン・ステージ新聞 2007年11月16日号より抜粋

また、マイムを中心とした演技の巧みさにおいても、わが国の若手プリマのなかでは一頭地を抜く存在といえるのでは。その好例といえるのが『リーズの結婚』のリーズ役です。今年3月、英国ロイヤル・バレエのイヴァン・プトロフと共演した際の伊藤の演技には、作為めいたものはいささかも感じられず、ナチュラルさが際立っていました。マイムが板につかない日本人ダンサーのなかにおいて例外といえます。今夏初めて挑んだ『ジゼル』のタイトルロールにおいても、第一幕が特に絶品。初役とは思えぬ落ちついた舞台さばきが光り、マイムもこなれドラマティックな演技を披露しました。

音楽性・演技力に秀でているのに加え、少なからぬ人が伊藤の舞台に深く魅了されるのは、踊り心に富んだ詩的な表現力にあるように思います。とにもかくにも踊りが流麗。パとパの流れがスムースに流れるようであり、構築的なダンスというよりも淀みなくサッと舞い上げる感じの踊りに特に才能を発揮します。前記した現代作品や『ドン・キホーテ』街の踊り子&キトリの友人等でみせた、サラっと清流のように淀みなく踊り上げる舞踊センスには、観ていて快感を覚えたほど。ある評論家の方が伊藤を“舞い上手”と評しましたが同感です。無論、その詩的で流麗なダンス表現に関しては、最初に挙げた高度な音楽性と分かち難く結びついていることはいうまでもないでしょう。

近年、牧バレエ団では、旧来上演してきた古典全幕を総監督・三谷恭三が新たに改定演出・振付する作業を進めています。昨秋の『ライモンダ』、今年夏の『ジゼル』、そして今秋上演される『白鳥の湖』。一昨年、創立50周年記念公演シリーズを終えたあとの公演展開をみると、古典の王道を行くプログラムをしっかり上演し、若い踊り手を育て団を活性化する三谷の揺るぎない方針が見て取れましょう。その中核を同世代の逸材・青山季可とともに担うのが伊藤であり、期待に応える好演をみせています。今後、古典作品での揺るぎない評価を確立しつつ、同バレエ団の誇る貴重なレパートリー――プティをはじめバランシン、アシュトン、ドゥアトらの現代作品においての活躍も楽しみにしたいところ。無限の可能性を秘めたプリマとして今後も動向が注目されます。(敬称略)

表紙を飾った「ダンスマガジン」↓


DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2007年 09月号 [雑誌]

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2007年 09月号 [雑誌]

関連LINK

牧阿佐美バレヱ団公式ホームページ

http://www.ambt.jp/

今後の出演舞台予定

牧阿佐美バレヱ団『白鳥の湖』全幕

2009年10月24日(土)14:30、25日(日)14:30/ゆうぽうとホール

【主役】オデット/オディール(24日) 王子役:逸見智彦

牧阿佐美バレヱ団・藤沢公演『白鳥の湖』全幕

2009年11月28日(土)15:00/藤沢市民会館大ホール

【主役】オデット/オディール役 王子役:菊地研

牧阿佐美バレヱ団『くるみ割り人形』全幕

2009年12月11日(金)19:00、12日(土)14:00&18:30、13日(日)14:00/ゆうぽうとホール

【主役】金平糖の精(20日) 王子役:京當侑一籠 雪の女王:青山季可

2009-10-03

[]パフォーマンスキッズトーキョー『からから、だんだら、からだ山』、酒井幸菜『スピカ』、神戸ビエンナーレ2009・近畿大学「群舞」

舞踊に限らずパフォーミングアーツのチケット代は決して安くありません。幸い、最近では、学生料金やエコノミー席といったものを設けるバレエ・ダンス公演が増えているのはいい兆候。インターネット中心としたチケット販売会社による割引システムや特チケも定着しつつあります。とはいえ、安くていいものを観たい、また評価の定まらないものを気軽にチェックしたい場合、無料公演があれば観客としてはうれしい。そんなわけで、ここ最近観ることのできた入場無料のイベントを振り返ってみました。

パフォーマンスキッズトーキョー『からから、だんだら、からだ山』

東京文化発信プロジェクト・パフォーマンスキッズトーキョー『からから、だんだら、からだ山』は、NPO法人芸術家と子どもたち&財団法人武蔵野文化事業団の共催。振付・構成:福留麻里(ダンサー・振付家)、音楽・出演:即興からめーる団(音楽ユニット)がワークショップに参加した小学校3〜6年生の子どもたちと楽しい舞台をつくり上げました。鍵盤ハーモニカなどのほかガラクタやおもちゃのような小道具を楽器として使った即興演奏にあわせ、子どもたちはのびのび・ゆるゆると踊り、観るものを和ませます。体を動かし戯れることの楽しさが無邪気に伝わってきました。アーティストは自身の芸術活動を行う際、社会から有形無形のサポートを受けています。それをこういったワークショップ等によって社会に還元することも大切。その点、福留は有意義な仕事をしました。

(2009年8月21日 吉祥寺シアター)

酒井幸菜『スピカ』

現在、国立新美術館にて開催中の「光 松本陽子/野口里佳」展 関連イベントとしてダンスパフォーマンス『スピカ』が行われました。振付・出演:酒井幸菜、出演:中村未来 。抽象絵画と写真を手がけるアーティストを取り上げ「光」という表現に迫った企画展にインスピレーションを受けて酒井が作品発表するというイベントです。酒井は2006年のJCDN「踊りに行くぜ!!」に選出され注目を浴びた新進。恵まれた容姿としっかりしたテクニックを持ったコンテンポラリーダンサーとして活躍しています。 今年2月に行われた『ダマンガス!!』では、タイのマンガ家 ウィスット・ポンニミットとのコラボーレーションを行い才気煥発ぶりを発揮し、さらなるブレイクを予感させました。今回は国立新美術館のロビーの一角でのパフォーマンス。青・緑・赤の蛍光灯を縦にして並べたオブジェを背後に、中村とソロ、デュオを織り交ぜてダンスを展開します。蛍光灯の照明の変化とも呼応しつつ光と空間とダンスが緻密にせめぎあう濃密な時空間を生んでいました。空間を上手く使うことに関して酒井は、とびきりの才能の持ち主では。コンテンポラリー界の寵児KENTARO!!らの作品で踊る機会も増えていますが、作家タイプの人だと思うので、それらと並行しつつ、より自身のパフォーマンスを深めてほしいと感じました。

(2009年9月18日 国立新美術館)

神戸ビエンナーレ2009・近畿大学「群舞」

神戸ビエンナーレの一環として行われている「人と人とアートと人と〜三宮・元町アートプロジェクト〜」。ミナト神戸の中心街・三宮〜元町にかけて各種イベント・展示が行われていますが、地元を代表する芸術文化団体であり、わが国最高水準の公演を行うバレエカンパニーのひとつ貞松・浜田バレエ団『ジゼル』尼崎公演の拝見に伺った際にタイミングが合い、近畿大学「群舞」というパフォーマンスを観ることができました。中華街で知られる元町商店街西寄りの大通りで行われたダンスと和太鼓のコラボレーション。5、6人のグループごとに色とりどりのシャツを着た30名程のダンサーが力強く踊ります。休日にまったりショッピングを楽しみながら往来を行く人々の前に突如として現れた大学生の群舞集団。ときに激しくときにゆったりと緩急織り交ぜてのダンスを30分にわたって展開しました。日常になかに祝祭空間を生み、街や人々を活性化させる意欲的な取り組み。近畿大学文芸学部教授の碓井節子やDANCE BOX代表の大谷燠らが中心となって行ったそうですが、こういった企画はぜひ続いてほしいと思います。

(2009年9月27日 神戸・元町商店街4丁目〜6丁目)

2009-10-01

[BALLET]「アエラ AERA」10/5号(最新号)に上野水香の記事

「アエラ AERA」2009年10月5日号に「東京が育んだ日本発のプリマ〜世界一のバレエ都市」と題して、東京バレエ団プリンシパル上野水香の特集記事が掲載されています。今夏行われた「世界バレエフェスティバル」に参加した際のリポートを中心に、世界へと羽ばたくプリマの現在を、カラー写真入り2ページで大きく紹介しています。

上野は、今回のバレエフェスのガラ公演においてデヴィッド・マッカテリとともにトリを務めました。踊ったのは、ヌレエフ版『ドン・キホーテ』のグラン・パ・ド・ドゥ。振付・編曲に独特の趣あるヴァージョンとして知られますが、上野は、こけおどしの超絶技巧や、これ見よがしの自己顕示を極力控え、一つひとつのパを丁寧に、ていねいに魅せていきます。落ち着いた舞台さばきは見事なものでした。世界の大スターたちが居並ぶなか、日本代表的なポジションとして堂々たる存在感を示したように思います。

今回、上野が、世界の一線級と比肩してガラの掉尾を飾るという大役を十分こなしたことは賞賛されるべき。東京という都市は、欧米からの一流ダンサー/カンパニーの来日を居ながらに享受できる幸運な場所です。とはいえ、バレエ・ファンの一人ひとりが自国のアーティストをより応援していくことは、日本が真の意味でのバレエ大国となるために欠かせません。「アエラ AERA」の記事は、そういった巨視的な視点から上野の活躍ひいては日本バレエの可能性を示唆、広く伝えるものとして貴重に感じました。

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