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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2009-10-07

[]vol.2 伊藤友季子(牧阿佐美バレヱ団)

日本バレエ界きっての超名門大手・牧阿佐美バレヱ団の若きプリマとして活躍をみせるのが伊藤友季子(いとう ゆきこ)です。イギリスにて5歳からバレエを始め、帰国して橘バレヱ学校入学。同時に第22期AMステューデンツに選抜されています。新国立劇場バレエ研修所第1期生研修生となり、2003年同研修所を修了。橘バレヱ学校も卒業し牧阿佐美バレヱ団に入団します。2004年10月には『リーズの結婚』主役に抜擢され、以後、同バレエ団を代表するダンサーとして注目されてきました。華奢な身体を誇り、美しいラインの映える新鋭です。チャイコフスキー三大バレエを中心に全幕主演を重ねるほか、プリセツキー/牧版『ロメオとジュリエット』では、悲劇のヒロイン、ジュリエットを哀切に演じて涙を誘いました。2007年には橘秋子賞スワン新人賞を受賞。

伊藤の魅力としてまず指摘できるのは抜群の音楽性です。音楽にあわせて踊るのではなく、身体を楽器のように用いて音楽を奏でるかのように踊る。まさに歌う身体を持った稀有な才能の持ち主。一音一音を無駄にすることなくフレーズを大切にしつつ優れた音楽解釈を行います。新国立劇場バレエ研修所修了公演で踊った際の自作ソロでは、早くも抜きん出た音楽センスを発揮し、玄人筋や熱心なバレエ・ファンの間において、もはや伝説となっているほど。古典作品でもその資質を発揮していますが、現代作品、ことにダラー振付『コンスタンチア』、三谷恭三の佳作『ガーシュウィンズ・ドリーム』、さらには小島章司フラメンコ『ロマンセ』客演等における、音楽性に富み洗練された踊りは忘れられません。恐縮ですが以下、拙評を引用しておきます。

次代を担うSTARLETたちの魅力が弾けたのが公演の棹尾を飾る『ガーシュウィンズ・ドリーム』(初演:一九九七年)。「サマータイム」ほかガーシュウィンの名曲にのせ若い男女の恋模様を明るくお洒落に描く。ここでは大器として注目される伊藤友季子の稀有な音楽性を堪能できた。赤のロングドレスに身を包み、粋に、艶やかに踊る。上半身を伸びやかに、脚先を滑らかに用い身体そのものから流麗に音楽を奏でるかのよう。そこはかとなく漂う詩情もいい。

「ダンス・ヴァンテアン11」評 /オン・ステージ新聞 2007年11月16日号より抜粋

また、マイムを中心とした演技の巧みさにおいても、わが国の若手プリマのなかでは一頭地を抜く存在といえるのでは。その好例といえるのが『リーズの結婚』のリーズ役です。今年3月、英国ロイヤル・バレエのイヴァン・プトロフと共演した際の伊藤の演技には、作為めいたものはいささかも感じられず、ナチュラルさが際立っていました。マイムが板につかない日本人ダンサーのなかにおいて例外といえます。今夏初めて挑んだ『ジゼル』のタイトルロールにおいても、第一幕が特に絶品。初役とは思えぬ落ちついた舞台さばきが光り、マイムもこなれドラマティックな演技を披露しました。

音楽性・演技力に秀でているのに加え、少なからぬ人が伊藤の舞台に深く魅了されるのは、踊り心に富んだ詩的な表現力にあるように思います。とにもかくにも踊りが流麗。パとパの流れがスムースに流れるようであり、構築的なダンスというよりも淀みなくサッと舞い上げる感じの踊りに特に才能を発揮します。前記した現代作品や『ドン・キホーテ』街の踊り子&キトリの友人等でみせた、サラっと清流のように淀みなく踊り上げる舞踊センスには、観ていて快感を覚えたほど。ある評論家の方が伊藤を“舞い上手”と評しましたが同感です。無論、その詩的で流麗なダンス表現に関しては、最初に挙げた高度な音楽性と分かち難く結びついていることはいうまでもないでしょう。

近年、牧バレエ団では、旧来上演してきた古典全幕を総監督・三谷恭三が新たに改定演出・振付する作業を進めています。昨秋の『ライモンダ』、今年夏の『ジゼル』、そして今秋上演される『白鳥の湖』。一昨年、創立50周年記念公演シリーズを終えたあとの公演展開をみると、古典の王道を行くプログラムをしっかり上演し、若い踊り手を育て団を活性化する三谷の揺るぎない方針が見て取れましょう。その中核を同世代の逸材・青山季可とともに担うのが伊藤であり、期待に応える好演をみせています。今後、古典作品での揺るぎない評価を確立しつつ、同バレエ団の誇る貴重なレパートリー――プティをはじめバランシン、アシュトン、ドゥアトらの現代作品においての活躍も楽しみにしたいところ。無限の可能性を秘めたプリマとして今後も動向が注目されます。(敬称略)

表紙を飾った「ダンスマガジン」↓


DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2007年 09月号 [雑誌]

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2007年 09月号 [雑誌]

関連LINK

牧阿佐美バレヱ団公式ホームページ

http://www.ambt.jp/

今後の出演舞台予定

牧阿佐美バレヱ団『白鳥の湖』全幕

2009年10月24日(土)14:30、25日(日)14:30/ゆうぽうとホール

【主役】オデット/オディール(24日) 王子役:逸見智彦

牧阿佐美バレヱ団・藤沢公演『白鳥の湖』全幕

2009年11月28日(土)15:00/藤沢市民会館大ホール

【主役】オデット/オディール役 王子役:菊地研

牧阿佐美バレヱ団『くるみ割り人形』全幕

2009年12月11日(金)19:00、12日(土)14:00&18:30、13日(日)14:00/ゆうぽうとホール

【主役】金平糖の精(20日) 王子役:京當侑一籠 雪の女王:青山季可

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