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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2010-01-31

[]『ジゼル』の現代版など

社団法人日本バレエ協会主催の「J・B・A ヤング・バレエ・フェスティバル」は春の恒例行事して定着し、今年で21回目を迎えました(1月29日 ゆうぽうとホール)。日本バレエの次代を担っていく若くて活きのいい感性に出会えるのが魅力的です。また、近年では新進振付者に創作発表の機会を与える人材育成の場としても注目されましょう。今年はおなじみの『パキータ』(古典)『卒業舞踏会』(近代バレエ)を挟んで金田あゆ子の新作『完璧なお城』が発表されました。ロマンティック・バレエの名作『ジゼル』に想を得たもので、夜の深い森のなかウィリたちがたくさん登場。橘るみ扮するジゼルを思わせるウィリの愛憎や悲しみといった感情が描かれ、橘は男に裏切られてもなお変わらぬピュアな愛を清冽なリリシズムをもって演じて印象に残りました。

『ジゼル』というバレエは、この世とあの世という二元世界を対比させた台本の見事さが際立っていて、随所に様々の謎が含まれ奥深いのは周知のとおり。古典版の上演は各団体が絶え間なく行ってます。しかし、『完璧なお城』のような『ジゼル』というバレエからインスピレーションを受けた創作がもっとあっていいのでは。海外のものでは、精神病院を舞台にしたマッツ・エックの改訂版や現代風ファンタジーに変えたマルシア・ハイデによる『ジゼルとウィリーたち』は有名で大当たりを取っています。国内では、エック、ハイデのもののような大作ではありませんが数年前に谷桃子バレエ団のクリエイティブ・パフォーマンスで発表された岩上純の『レクイエム』が、『ジゼル』の男女裏返し版の趣のあるドラマを展開したコンテンポラリーとして話題を呼びました。未見ながら西島千博らが出演した『ダンス・ギャラクシー/ジル』も『ジゼル』の現代版のようです。

創作のモチーフとして古典に材を得ることはひとつの見識でしょう。鉱脈にぶつかる可能性を秘めているだけに、日本人創作者のさらなる挑戦に期待したいものです。


ジゼルという名のバレエ (クラシックス・オン・ダンス)

ジゼルという名のバレエ (クラシックス・オン・ダンス)


2010-01-30

[]「横浜ダンスコレクションR」のショーケース情報

アジア最大級のコンテンポラリーダンスフェスティバル「横浜ダンスコレクションR」が2月4日から11日まで行われます。国内外の新進振付家を発掘・支援・育成することを目的として開催されるコンペティション「横浜Solo x Duo <Compétition> +」は決選が4日間にわたって催され新しい才能の登場が楽しみなところ。また、過去の受賞者による「受賞者公演」も行われます。ダンス関係者はこぞって横浜赤レンガ倉庫通いをすることになるでしょう。私もコンペを4日間のうち3日間の観覧を予定しています。

コンペおよび受賞者公演は有料ですが、それとは別に行われる「エクスチェンジ・プレゼンテーション」(要申し込み)、「ショーケース・ライブパフォーマンスプログラム」は無料で観覧できます。ダンス公演のチケットは決して安いものではないので、興味を持っている若い人、舞踊学徒等にとっては気安く足を運べるものではありません。このページでは無料あるいは安く観られる公演やショーケースの情報があれば折を見て紹介していきたいと思っています。今回も気軽にダンスに触れられるよい機会でしょう。

「ショーケース・ライブパフォーマンスプログラム」は、ダンスコレクションRに参加した経験のあるアーティストたちが作品発表します。2月7日(日)・11日(木・祝)のインプロセッションでは有志の振付家が赤レンガイベント広場や1号館館内などでパフォーマンスを行うようです。最新情報は随時公式blog「ダンコレ ブログ」にて更新される模様。

横浜ダンスコレクションR2010 コンテンポラリーダンス・ショーケース

http://ameblo.jp/ydcr/entry-10445693964.html

■日程:2010年2月4日(木)〜11日(木・祝) 11:00〜20:00(初日は16:00から最終日は16:00まで)

■会場:横浜赤レンガ倉庫1号館2Fスペース

■料金:入場無料

■お問合せ:横浜赤レンガ倉庫1号館 http://www.yokohama-akarenga.jp/


2/6(土)

18:00〜 Virva Talonens(フィンランド)

18:15〜 三東瑠璃

18:30〜 玉川さやか

18:45〜 杏奈

19:00〜 宇都縁

19:15〜 児玉孝文

19:30〜 Geon Hyauk Jin(韓国)

2/7(日)

12:00〜 インプロセッション@赤レンガ倉庫

12:45〜 江積志織

13:00〜 三東瑠璃

13:15〜 北川美和子

13:30〜 佐成哲夫

13:45〜 篠原藍

14:00〜 JOU

14:15〜 長内裕美

2/11(木・祝)

12:00〜 インプロセッション@赤レンガ倉庫

12:45〜 黒田なつ子

13:00〜 玉川さやか

13:15〜 松崎えり

13:30〜 北嶋宏子

13:45〜 笠井瑞丈

14:00〜 黒田なつ子

14:15〜 田中美沙子

14:30〜 lente.

14:45〜 幸内未帆

(予定)

2010-01-28

[]「ダンスマガジン」3月号

「ダンスマガジン」3月号が届きましたので早速拝読しました。

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2010年 03月号

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2010年 03月号

マリインスキー・バレエやギエム&カーン公演のレビューやインタビュー記事、パリ・オペラ座や英国ロイヤル・バレエ公演の現地レポートも載っていて充実しています。

私的にはナゴヤ・テアトル・ド・バレエの深川秀夫振付『くるみ割り人形』のレビューが大きく出ているのに注目。塚本洋子が主宰し、テアトル・ド・バレエ・カンパニーとして新たな展開を進めるカンパニーの公演です。この公演は観られませんでしたが、一昨年の『ドン・キホーテ』公演は観ることができました。音楽性豊かで独自の美意識に裏打ちされた創作を続ける深川を芸術監督に迎え、地域に根を下ろしつつプロフェッショナルな舞台活動を目指していこうとする姿勢は注目すべきものです。

そして、見逃せないのが三浦雅士氏とディアナ・ヴィシニョーワの対談でしょう。ヴィシニョーワの生まれ育ちからバレエ学校時代、そしてローザンヌ国際バレエコンクールに出場した際の様子にはじまり、ルジマートフやマラーホフとの公私にわたる交際が飾らない言葉で語られており貴重。私的にはヴィシニョーワが特別すごく好きというわけではないのですが、観るたびに踊るたびに新たな相貌をみせてくれる稀有な存在だというのは疑いなく、常に進化・深化するバレリーナだと注目しています。その魅力の一端を感じることのできるインタビューであり、じつに興味深いもの。一読に値します。

2010-01-27

[]ショパン生誕200年に関するダンス公演と展覧会

今年は前期ロマン派音楽を代表する作曲家フレデリック・ショパン(1810〜1849年)の生誕200年にあたっています。ショパンといえば、自らピアノを演奏する傍らピアノ独奏曲を数多く作りピアノの詩人ともよばれる音楽史上に燦然と輝く存在。しかしながら、生涯を通じて肺結核を患い、ロシア帝国に思うが侭にされる故国ポーランドへ思いはせながら後半生のほとんどをフランスですごすことになる苦悩の人でもあります。

ショパンの生誕200年を迎えるにあたって、それを記念してのバレエ・ダンス作品上演も。NBAバレエ団が、2月、ニジンスカ振付『ラ・フィユ・マル・ガルデ』日本初演と併せて安達哲冶振付『ラスト・コンサート』を上演します。「ピアノ・コンチェルト第2番」を用いた創作とのこと。東京小牧バレエ団は、3月に佐々保樹版『火の鳥』とともに『ショパン賛歌“憂愁”』を上演。これもショパンのピアノ曲を使った叙情的な白のバレエで李波が主演します。また、3月には、空間と動きの質感を巧みに操る異才・アレッシオ・シルベストリンが能楽師の津村禮次郎、ダンサーの中村恩恵、ピアニストの北川曉子とコラボレーションする「手の詩」という公演がセルリアンタワー能楽堂で行われます。これもショパン生誕200年記念作品と銘打たれています。いずれも楽しみな公演ですね。

ショパンをめぐるイベント企画はダンス界に限らず多々あるようですが、ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエを招聘してくれることで知られる民主音楽協会が管轄している民音音楽博物館では「ショパン生誕200年展」を開催しています。ショパンが愛用したものと同型のプレイエル・ピアノ(1837年製)や、直筆の楽譜(複製・初公開)などの展示に加え、ショパンと同時代を生きて縁の深かった人物にも焦点を当てたものとなっているようです。まだ足を運べていませんが、興味深いので訪れたいと思います。

民音音楽博物館「ショパン生誕200年展」

会場:民音音楽博物館企画展示室(民音文化センター2F)

期間:2010年1月1日〜7月11日(月曜休館・月曜日が祝日の場合は翌日休館)

11:00〜16:00(平日・土曜) 10:00〜17:00(日曜・祝日)

料金:無料

主催・お問合せ:民音音楽博物館 http://museum.min-on.or.jp/

概要:http://museum.min-on.or.jp/tenji/chopin10/index.html

ショパン (作曲家・人と作品シリーズ)

ショパン (作曲家・人と作品シリーズ)


2010-01-24

[]vol.5 志賀育恵(東京シティ・バレエ団)

現在、東京のバレエ・シーンにおいて活躍するプリマのなかで大きく注目されるひとりが志賀育恵(しが いくえ/東京シティ・バレエ団)です。評論活動を始める以前から東京シティ・バレエ団の公演には通っていましたが、志賀の踊りをみるのはいつも至福のひとときでした。何よりもラインが美しい。軸がしっかりしたうえで肩、背中、腰の使い方が実にしなやかで、彼女が舞うと、スッと周りの空間が拓けるかのよう。じつに爽快。踊る喜びがひしひしと感じられます。技術も精確なうえ、チャーミングな雰囲気も素敵。『コッペリア』のスワニルダ役はよくハマり最大の当たり役です。東京シティ・バレエ団は江東区と芸術提携を結び、地域に根ざした活動を続け、数ある在京バレエ団のなかでもいい意味で庶民的。質高いバレエを気軽にみせてくれるカンパニーとして独自の存在感を放っています。志賀はその中心として広く観客にも愛される存在でしょう。

略歴を記しましょう。福岡出身で7歳より小沼バレエアートにてバレエを始め、その後、名指導者として知られる田中千賀子に師事。ちなみに志賀と同世代で田中に習った人には息女の田中ルリ、貞松・浜田バレエ団の吉田朱里、ベルリン国立バレエ/Kバレエカンパニーの中村祥子ら一流どころが揃っています。1998年に東京シティ・バレエ団入団。その年から『くるみ割り人形』クララを踊り、2001年には『シンデレラ』にて古典全幕初主演。『コッペリア』『白鳥の湖』『ジゼル』等でも主演し、『真夏の夜の夢』ではハーミア役を好演するなど力をつけていきます。ボルテージの高い仕事をしたのが2006年。『カルメン』のタイトルロール、『白鳥の湖』オデット/オディール役に加え、野坂公夫振付のモダン『曲舞』に主演し、幅広い芸域を安定した技量で踊り「オン・ステージ新聞」新人舞踊家ベスト1などに選ばれました。志賀が大きく飛躍していったこれらの舞台について評・記事を書く幸運が重なったこともあり(依頼原稿しか書いたことがないため偶然が重なっただけですが・・・)、常に動向が気になっている踊り手です。

2007年夏から1年は文化庁在外研修員としてオーストラリア研修(オーストラリア・バレエ団)を行い、年間100ステージを超える舞台に出演してバランシン作品等も踊ったとか。帰国後も、2007年に加入した橘るみとともにバレエ団の看板プリマとして活躍しています。2009年には新制作された『ロミオとジュリエット』に主演しました。この舞台を観られなかったのは痛恨でしたが、好評を得たようで何より。2010年は2月に『カルメン』の再演が行われ主演が決定。舞台を現代に移した異色物語バレエであり、志賀のドラマティックな資質の更なる開花を楽しみに。7月『白鳥の湖』、12月『くるみ割り人形』のほか5月に行われる「ラフィネ・バレエコンサート」でも創作/コンテンポラリー作品の意欲作等が並びますので、そちらでも志賀の活躍を期待できそう。上半身の使い方が綺麗な踊りの魅力に加え、表現力・演技力のさらなる進化が加われば怖いものなし。一層の飛躍を心待ちにしたいところ。志賀にとっても勝負の年、一段とスケールと風格を増して大プリマになってもらいたいものです。よい結果を期待しましょう。


関連記事

公演予告 東京シティ・バレエ団『カルメン』全2幕 (動画予告編付)

http://www.kk-video.co.jp/schedule/2010/0206t_city/index.html


Clara 2009年08月号 特集 FEATURES巻頭対談 志賀育恵×キム・ボヨン

Clara (クララ) 2009年 08月号 [雑誌]

Clara (クララ) 2009年 08月号 [雑誌]

関連LINK

志賀育恵 オフィシャルWEBサイト「IKUE GARDEN」

http://www.ikue-garden.net/

東京シティ・バレエ団

http://www.tokyocityballet.org/

今後の出演予定舞台

芸術文化振興基金助成事業・2010都民芸術フェスティバル参加公演

東京シティ・バレエ団『カルメン』(全2幕)

●2010年2月6日18:30、7日14:00/新国立劇場中劇場

【主演】カルメン役(6日)、共演は黄凱。

2010-01-22

[]異色の話題作『シャネル&ストラヴィンスキー』

第62回カンヌ国際映画祭クロージング作品として話題を集めた映画『シャネル&ストラヴィンスキー(原題:Coco Chanel & Igor Stravinsky)』が1月16日に公開されました。稀代のデザイナーであったココ・シャネルと作曲家イーゴル・ストラヴィンスキーという、20世紀初頭のベル・エポック期に活躍した天才の秘められた愛を描く異色作です。

シャネルとストラヴィンスキーをつなげるのがストラヴィンスキーが書き、センセーションを巻き起こしたバレエ音楽「春の祭典」。1913年、パリのシャンゼリゼ劇場で行われたバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)公演に遭遇し衝撃を受けたシャネルが7年後、ストラヴィンスキーに出会う。そして、家族とともに路頭に迷う彼に資金援助とパリ郊外の別荘を提供することによって両者の関係はただならぬものへと進展していく――。

シャネルのモデルを務めるアナ・ムグラリスがシャネル役を演じ、衣装デザインをカール・ラガーフェルドが担当したシャネル公認作品。単なる伝記作品ではなく、虚実織り交ぜつつ天才作曲家ストラヴィンスキーを愛する女性、そしてパトロンとしての側面からシャネルを描きます。背徳の恋が核になっているのに、よくシャネルが公認したなと驚かされます。繊細な芸術家のストラヴィンスキー、恋にも仕事にも強い女性のシャネルのあいだの機微と葛藤に加え、病弱なストラヴィンスキーの妻との三角関係やシャネルの代名詞といえる香水「No.5」誕生のエピソードも盛り込まれ飽かせません。

バレエ・ファンとしては、1913年のバレエ・リュス公演の模様が再現されているのがうれしい。前衛的な音楽と振付に嘲笑と野次がおこって場内は混乱状態に陥っていくさまが手に取るように伝わってきます。舞台袖では振付者のニジンスキー自らが拍子を数えてダンサーたちに合図。話題を巻き起こしご満悦な興行師のディアギレフ、不評の渦に互いの仕事を罵りあうストラヴィンスキーとニジンスキーらの姿が短い場面とはいえ人間味たっぷりに描かれています。別のシーンではマシーンも登場します。

この映画の存在を昨年5月に知って以来、公開を心待ちにしていました。監督はパンクな映像が鮮烈なカルトアクション『ドーベルマン』(1997年)で知られるヤン・クーネンというので、どんな映画に仕上がっているのか少々不安もあったのですが、シックで落ち着いた色彩と奥行きあるカメラワークが見事でした。音楽はガブリエル・ヤレド。ローラン・プティのバレエ音楽も手がける映画音楽の巨匠ですが、プティといえば、初期にバレエ・リュスと仕事をともにしたジャン・コクトーと公私共に交流あったことで知られます。連綿と続き交差する芸術家たちの系譜に思いをはせざるを得ません。

映画「シャネル&ストラヴィンスキー」公式サイト

http://www.chanel-movie.com/



D

2010-01-21

[]上野水香の新境地

東京バレエ団のピエール・ラコット版『ラ・シルフィード』(1月19日 東京文化会館)のタイトル・ロールを踊った上野水香がすばらしい。こんなにアメージングでワンダフルな演技に接せられる体験は稀なもので、鑑賞者として感謝。観劇後、夢見るような気分がずっと続いています。まさかここまで感動するとは自分でも思っていなくて、かなり驚き。

「肩は引き気味に身体を前傾させる」といった、ロマンティック・バレエならではの所作もきっちりこなしつつ強靭なテクニックを巧みにコントロールして妖精らしい浮揚感を表現。そして、持ち前のプロポーションのよさを最大限に活かしてポーズの美しさが映える。新境地というよりも元来の資質が最良の形で反映されたというべきかも。ジェイムズ役のレオニード・サラファーノフとの息もぴったり。エフィー役を踊った西村真由美は元々踊りのうまさは際立ってはいましたが、上野の好演が相乗効果を生んだのか、彼女のポテンシャルをも最大限引き出したように思います。ラコット版ならではの「オンブル」と呼ばれるシルフィード、ジェイムズ、エフィーとのパ・ド・トロワも素晴らしいできばえ。見せ場ではあるけれども、ややもすれば情感たっぷり過ぎたり、妙にベトベト触れ合って人間臭さが出てしまったりする恐れもあるのに、そうは感じさせない。

もっとも、腰が安定しないのか上半身の動きがギクシャクして見える場があったり、アレグロになるとパが曖昧気味な箇所も。でも、瑕疵に過ぎない。このところ『ジゼル』のタイトル・ロール、『ラ・バヤデール』ニキヤと次々とさまざまの役柄に挑み、踊るたび、あらたな相貌を見せる上野は、やはり見逃せない存在。昨今、卒なく無難に上手く踊るプリマならばそれなりに出てきていますが、見るたびに新鮮な刺激を与えてくれる、マジックを感じさせる踊り手はそうはいません。また、自分が輝くだけでなく、バレエ団・アンサンブルを輝かせるというのも真の主役たる大切な資質だと思います。その点に関しても「東バの上野」といえる存在感が出てくるようになったのではないでしょうか。


上野水香―バレリーナ・スピリット

上野水香―バレリーナ・スピリット

2010-01-19

[]長谷川寧の打ち出す越境という試み〜[EKKKYO-!]

[EKKKYO-!](1月14日〜17日 東京芸術劇場小ホール1)という催しを観ました。冨士山アネットのproduce公演。これは、演劇やダンス、パフォーマンスといった枠を超えて、いま、注目されるエッジーな団体やアーティストを企画・構成の長谷川寧みずからセレクトして並べたイベントです。一昨年の9月、下北沢ザ・スズナリでの公演に告ぐ第二回目。前回は、業界ネタや紙芝居コントで笑わせてくれた夙川アトムや「妙ージカル」を標榜した異色パフォーマンスを行うFUKAIPRODUCE羽衣、ポスト・チェルフィッチュの代表格といえる演劇制作チーム快快(faifai)らの登場もあって盛り上がりました。

今回の出演は、モモンガ・コンプレックス、ライン京急、ままごと、CASTAYA Project、岡崎藝術座、冨士山アネットという6組。ダンスありマイクパフォーマンスありネタバレ厳禁の仕掛けものありと総じて楽しめました(すべてが好みというわけではなかったですが・・・)。演劇、ダンスといった枠を越え内外で積極的に活動している冨士山アネットのプロデュース企画ですが、主宰の長谷川自身が興味を持ち、自身の創作とも重なる“ボーダレスな感覚”を持っていると感じているものを集めたブレない姿勢は頼もしい。

コンテンポラリー・ダンス界ではコンペティションが減少したり、かつてとは方向性の違う性質のものに変容しています。演劇界では若手を紹介・育成するフェスティバル等が減ってしまいました。劇場やプロデューサー主導によるショーケースのようなものはあるにはありますが、アーティスト側が観客に活きのいいパフォーマンスを披露し、新たな出会いが可能になる場を生み出しているのは新鮮です。ジャンルにとらわれない越境する表現を気負わずに楽しめる場を提供する長谷川のフットワークの良さと発信力は注目されていいでしょう。厳しい御時世だからこそ、出会いや活動の場は自分たちで探し、求めていかなければいけないのも事実。楽しくも示唆に富むイベントでした。

2010-01-18

[]今年は「ラ・フィユ・マル・ガルデ」の当たり年

バレエ関係者との会話の際話題にのぼったのですが、今年は「ラ・フィユ・マル・ガルデ」(1789年にフランスにて初演)が相次いで上演される珍しい事態が発生します。

現在上演される全幕バレエのなかでも『ジゼル』とともに最古の部類にはいる田園バレエであり、ジャン・ドーベルヴァルによって振付けられた最初の演出は失われたものジョン・ランチベリー編曲によるアシュトン版はじめ世界各地でさまざまの演出が上演されています。6月に、英国ロイヤル・バレエ団が来日し、アシュトン版『リーズの結婚』を上演。同時期に谷桃子バレエ団が十八番のひとつ『リゼット』公演を行います。そして来る2月にはNBAバレエ団がアメリカン・バレエ・シアター経由のニジンスカ版『ラ・フィユ・マル・ガルデ』を日本初演するのが早春のバレエ界の大きな話題のひとつ。

コミカルで楽しめる演劇的なバレエであり、演者の力量も問われます。しかし、初心者にも入りやすいだけに、上演の機会が増えてもいいレパートリーでしょう。今年は趣の異なる版に直に接することのできるまたとない機会。見比べが楽しみなところです。


2010-01-17

[]東京バレエ団が展開する「マイ・キャスト シリーズ」

東京バレエ団『ラ・シルフィード』(1/17-19)公演プログラムに寄稿しました。

上野水香とマリインスキー・バレエのレオニード・サラファーノフの共演が話題ですが、その合間に行われる若手公演「マイ・キャスト シリーズ」主演の高木綾と柄本弾について紹介した記事です。「マイ・キャスト シリーズ」については、昨年11月の佐伯知香&松下裕次の主演『くるみ割り人形』のプログラムにも寄稿しました。前回は、佐伯と松下のキャリアに触れつつコメントをつけるという感じだったのですが、今回は短いスペースながらダンサー論っぽく仕上げたつもりです。足を運ばれる方はご高覧ください。

「マイ・キャスト シリーズ」公演は、3月の『シルヴィア』でも行われ、田中結子がベテランの木村和夫とともに主演。世代交代、若手育成の場として注目されます。そして、観客にとっても魅力的な場。海外からのスターダンサーやトッププリマの公演と新人のデビューの回のチケット料金が同じというのは、観客の立場からすると辛い面も。その点、オーケストラ付きのうえ割安で観られる「マイ・キャスト シリーズ」なら気軽に足を運べます。若手の飛躍を気持ちよく後押しできる場として貴重ではないでしょうか。

2010-01-16

[]東京バレエ団『オネーギン』の予定キャスト発表

東京バレエ団が来る5月に導入する『オネーギン』の主要キャストが発表されました。

タチヤーナを踊るのは斎藤友佳理、吉岡美佳というベテラン名花に加え、舞台度胸抜群な田中結子。オネーギンはベテラン3人が分け合いました。オリガは皆、実力者なので安心して観ていられるでしょう。レンスキーには若手が。個人的には首藤康之がいたら彼にピッタリだと思うのですが・・・。グレーミンは演技派の平野玲のほか若手に。

日本人キャスト・オンリーでクランコのドラマティック・バレエの名作をどこまで踊り演じこなせるのか!?今年のバレエ界の大きな話題になるのではないでしょうか。

東京バレエ団「オネーギン」予定キャスト&公演概要決定

http://www.nbs.or.jp/blog/news/contents/topmenu/post-173.html

■公演日程&予定キャスト(於:東京文化会館)

5月14日(金) 7:00p.m.

タチヤーナ:吉岡美佳/オネーギン:高岸直樹 

オリガ:小出領子/レンスキー:長瀬直義 

グレーミン:柄本武尊

5月15日(土) 6:00p.m.

タチヤーナ:斎藤友佳理/オネーギン:木村和夫 

オリガ:高村順子/ レンスキー:井上良太 

グレーミン:平野玲

5月16日(日) 3:00p.m.

タチヤーナ:田中結子/オネーギン:後藤晴雄 

オリガ:佐伯知香/レンスキー:長瀬直義 

グレーミン:森川茉央

[]新国立劇場 2010/2011シーズンラインアップ

新国立劇場 2010/2011シーズンラインアップが1月15日付で発表されました。

2010/2011シーズンラインアップ:バレエ

http://www.nntt.jac.go.jp/cgi-bin/cms/kouen_list02.cgi#season2

2010/2011シーズンラインアップ:コンテンポラリーダンス

http://www.nntt.jac.go.jp/cgi-bin/cms/kouen_list03.cgi#season2

バレエに関しては一部先行して演目が発表されていました。ビントレー、アシュトン、マクミランという英国の香り漂うラインアップ。そちらはバレエ・フリークの間でさまざまに話題になるでしょう。ここで触れておきたいのがコンテンポラリーダンス部門です。「ストラヴィンスキー・イブニング」(平山素子「兵士の物語」「春の祭典」)、井手茂太イデビアン・クルー、バレエ団と現代舞踊のコラボレーション「DANCE to the Future 2011」のほかオープニングに「DANCE PLATFORM 2010」という新企画が予定されています。

これは、それまでの「DANCE EXHIBITION」「舞姫と牧神達の午後」に続く若手アーティストを起用する場であり、C/Ompany 大植真太郎・柳本雅寛・平原慎太郎、菊池尚子、松崎えり、高瀬譜希子、大岩淑子、原田みのる、池田美佳、山口華子の作品を上演予定。“新たなアーティストの発掘を目指す新企画がスタート”という触れ込みであり、いずれも新国立劇場に初めて作品を発表するアーティストが並びます。最初期には現代舞踊の大家や中堅が作品発表、その後、勅使川原三郎や伊藤キム、山崎広太、内田香、平山素子らの登場を経て、さらに新たな世代の登場です。20代半ばから30代半ばくらいまでの若手が揃う。バレエやコンテンポラリー系と目されるアーティストもいますが、モダン=コンテンポラリーという文脈で注目される人が多く出ているのも特徴。

“若いアーティスト達には流行を追うのではなく、しっかりと身体と向き合い作品創りをすることが求められます。次のステップへと繋げるために「先ずこのプラットフォームに立つ」機会を与え、新たなアーティストの発掘を目指します”という企画意図が反映された印象です。個々に対しては触れませんが、なるほど、しっかりとした技量を持ったうえで才気あふれる創作を打ち出しつつある人たちを選んだ感。ただ、創作歴をみれば、まだ数作品、しかも6〜7分くらいのものや15分程度の長さのものを数本創ったといだけという人も少なくありません。従来からすれば異例の大抜擢。未知数な部分もなくはないでしょうが、逆にいえば、大きく伸びる可能性のある人を選んだということでしょう。

コンテンポラリー・ダンスといってもさまざまなライン・文脈があり(ことにわが国では)、そもそもコンテンポラリーという定義や境界自体揺れています。ビッグネームやコンテンポラリー・ダンス界のマーケットでブレイクした若手の起用とは違ったラインを打ち出しているのは明白。変化を出すには思い切った改変が必要なのかもしれません。話題性に流れない独自の方向性を探ろうとしているのは確かでしょう。

2010-01-15

[]「世界バレエフェスティバル」の歴史データについて

昨夏で12回目迎えたバレエの祭典「世界バレエフェスティバル」。その際の公演プログラムに東洋大学教授・舞踊評論家の海野敏氏の寄稿された「輝ける世界バレエフェスティバルの歴史〜データで読むダンサーと作品の変遷〜」という記事がありました。

バレエフェスの歴史を振り返るに際し、出場ダンサーと上演作品をカウントすることによってバレエ界の潮流が浮びあがる仕組みです。第1回(1976年)から第11回(2006年)までに行われた108回のガラ公演すべてについて、海野さんがデータを集計。108回のガラ公演には189人のダンサーが出演し、のべ1588演目が上演されたそうです。

プログラム寄稿記事本文は掲載されていませんが、海野さんの集計したデータに関しては、表1.世界バレエフェスティバルの歴史、表2.ダンサーの出演ランキング、表3.振付家上演ランキング として海野さんのオフィシャルホームページからのリンク「海野敏 の ダンス評論活動」内に載っています。労作。バレエ・ファンにとって貴重な資料となるでしょう。海野さんの了解も得た上でご紹介しておきます。

輝ける世界バレエフェスティバルの歴史

〜データで読むダンサーと作品の変遷〜

http://bibliognost.net/umino/dance/200907prg.html


世界バレエフェスティバル写真集

世界バレエフェスティバル写真集

2010-01-14

[]『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』新文芸坐で上映

暗黒舞踏の始祖・土方巽の出演したカルトシネマ『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(監督:石井輝男)が1月16日(土)22:30〜新文芸坐のオールナイト上映「新春シャンソン歌手ナイト 高英男×美輪明宏」で上映されます。昨年4月に次ぐ同劇場での上映。

本作は1969年に東映の制作・配給した「異常性愛路線」のプログラムピクチャーとして製作されたもの。『孤島の鬼』『パノラマ島奇談』など江戸川乱歩作品を寄せ集めた怪奇色の強い作品。内容過激、いわゆるグロ映画なため成人映画指定され、いまに至るまで地上波未放送です。長年ソフト化もされず名画座・ミニシアターでの上映をチェックするしかありませんでした。誰にでも薦められるという性質ではないカルトムービーですが、土方ファンや研究者で未見ならば観ておいたほうがいいかもしれません。

レアな作品でしたが2007年にアメリカでDVDが発売され、輸入版が大手レコード店やネットで購入できるようになりました。とはいえスクリーンで観たい猛者!?は、ぜひ。

新文芸坐オールナイトスケジュール

http://www.shin-bungeiza.com/allnight.html


土方の出演した映画は結構ありますが、映像として残された最後の公演を記録したものを紹介しておきます。1973年に京都大学西部講堂で上演された伝説の舞台です。


2010-01-13

[]「江口隆哉 河上鈴子 メモリアル・フェスタ」

昨年2009年は現代舞踊の発展に尽くした江口隆哉の33回忌、そして今年2010年はわが国のスペイン舞踊のパイオニアである河上鈴子の23回忌にあたります。それを機会に、日本の舞踊界の礎を築いたふたりの功績を讃えて「江口隆哉 河上鈴子 メモリアル・フェスタ モダンダンスとスペイン舞踊による特別記念公演」という公演イベントが2日間にわたって盛大に行われました(1月10、11日 日暮里サニーホール)。

故人の業績を記念して制定された江口隆哉賞、河上鈴子記念スペイン舞踊賞、河上鈴子記念スペイン舞踊新人賞、河上鈴子記念フェスティバル優秀賞を獲得した大御所から気鋭まで33名の作品が上演されました。そのラインアップは過去に例を見ないくらい豪華なものです。チケットは両日完売。評論家筋もかなり多数来場していました。

世間一般の多くの人には普段、現代舞踊の公演に接する機会はなかなかありません。コンテンポラリーに比べメディアでとりあげられる機会も多くないという声も聞きます。合同公演等は盛んですが自主公演もかつてより少ない傾向にある気も。より新たな表現スタイルを模索し、時代と向き合い共振する創作と公演展開が望まれます。しかし、踊り手たちの長年の修練に裏打ちされた確かな技量と繊細な表現力を尊重する向きも。その点、今回は、斯界の一線級が出ており、総じて見ごたえはありました。

モダン・フラメンコともにベテランに圧倒されました。大御所であるほど自由奔放。弟子で斯界の次代を担うべく存在の平山素子と踊った若松美黄や近年は江原朋子作品への客演でも知られる名古屋の大ベテラン野々村明子らの破天荒・意想外のブッ飛んだ演技にはただただ呆気にとられるしかありません。大変に刺激的。アキコ・カンダの驚異的集中力を持ったダンス、能藤玲子のスローモーな動きながら手ごたえ十分な創作も忘れられません。透徹した踊りをみせた加藤みや子、ワールドクラスの技量と身体能力を誇る娘・譜希子と静と動の対称が鮮やかなダンスを見せた高瀬多佳子らも強い印象を残しました。フラメンコでも巨匠の凄みを実感。昨秋、文化功労者になった小島章司や大御所の岡田正巳、河上の内弟子だった山田恵子らは入魂の踊りにして自在の境地を示します。中堅・若手では、河上鈴子記念スペイン舞踊新人賞受賞者同士、末木三四郎・工藤朋子のパッションあふれる踊り等に興奮。また、各日、モダンと現代舞踊の上演の合間には、江口・河上と交流のあった人中心とした座談会(司会:山野博大)が行われ、先達の遺した秘話がどんどん飛び出し貴重な時間となりました。

コンテンポラリーなダンスの境界がゆれるなか、現代舞踊はどう変わっていくのでしょうか。今回の公演や清新さが話題になり3回公演が完売したという昨年末の池田美佳、菊地尚子、加賀谷香というような、玄人筋やダンス・ファンをそそるラインナップを打ち出すようになってはいます。その上で一層いまの観客に訴求できる表現・売り方を模索すれば、より多くの観客・社会にアピールしていけるかも。兆しは感じられる。今後、現代舞踊界がどのように時代と向き合い歩みを進めるのか興味深いところです。


モダンダンス江口隆哉と芸術年代史

モダンダンス江口隆哉と芸術年代史


舞踊創作法 (1961年)

舞踊創作法 (1961年)

2010-01-11

[]首藤康之の現在

東京バレエ団特別団員であり、ダンサー/俳優として広く活躍している首藤康之が舞踊家・振付家の中村恩恵 とのコラボレーション『時の庭』(世界初演)に出演しました(1月7〜12日 神奈川県民ホール ギャラリー)。これは「日常 場違い」展という展覧会にあわせたアートコンプレックスの企画の一環であり、オランダ在住の美術作家・佐藤恵子のインスタレーションを用いて行われるライブ・パフォーマンスです。

首藤は2004年春以降、服部有吉や小野寺修二の作品に出てきました。ことに小野寺が演出・振付を手がけた『空白に落ちた男』(2008年)は、マイムやダンスといったジャンルを越境してのスリリングな舞台に仕上がり、その中心で触媒のように演者やスタッフから化学反応を引き起こしていたのが首藤の磁力ある存在感でした。振付家、演出家の世界観にスッと染まり、浸透して、そのうえで作品に欠かせない要となるのが首藤の特長。『時の庭』では、佐藤の生んだ、大きな切り株をたくさん用いた自然と人工が入り混じり時空を超越したような不思議空間において男・首藤と女・中村、それに影である青木尚哉のパフォーマンスが展開されます。首藤と中村の朗読したテキストが流され、オープンな空間において生と動が交錯するダンスが繰り広げられました。

百数十人も入れば一杯の会場とはいえ安くはない料金なのに前売券・追加席が完売。追加公演まで行われる首藤人気は大したもの。強烈に個を押し出すことはありませんが人目を引くサムシングを備え、動向が常に気になる表現者です。昨夏には封印していたベジャール振付『ボレロ』を踊るなどバレエ・ダンサーとしての活躍に加え、コンテンポラリー・ダンスや演劇での活動に一層注目が集まります。シディ・ラルビ・シエルカウイと組んで世界ツアーも行った『アポクリフ』の来日公演も期待したいところ。

当方も寄稿した“首藤のすべて” 見事な編集で首藤の魅力に多角的に迫る


prints (プリンツ) 21 2006年冬号 特集・首藤康之[雑誌]

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2月発売予定のレッスンDVD


Ballet Work 首藤康之の美しくなるバレエ [DVD]

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2010-01-09

[]Noism1に新メンバー・中川賢が加入!

金森穣率いるNoism1に、新メンバーが加入したそうです。中川賢です。

6歳から現代舞踊を和田朝子に師事しており、Noismの本拠・新潟の隣県である富山出身。関東国際高校演劇科でクラシックバレエを後藤早知子に師事。日本大学芸術学部演劇学科洋舞コースを卒業しています。数多くの振付家の作品に出ていますが、現代舞踊協会がスロヴァキアのヤーン・デュロヴチーク*1を招聘して上演した『火の鳥』(2004年)に主演したのが本格デビューでしょう。鮮烈な印象を残しました。平山素子作品への出演が多く、平山とデュオで共演するほか『Life Casting〜型取られる生命』(2007、2009年)にも出演。大型気鋭ダンサーの加入に注目が集まります。

Noism1新メンバーのご紹介

http://www.noism.jp/blog/2010/01/noism1_1.html

*1:東京国際芸術祭2004にも招かれて自身のカンパニーによる『ロメオ+ジュリエット』(1998年)を上演。コンテンポラリー・ダンス関係者の評価も高い。

2010-01-08

[]上野水香の挑戦

東京バレエ団のラコット版『ラ・シルフィード』公演(1月17〜19日 東京文化会館)を控え、ジェイムズ役でゲスト出演するレオニード・サラファーノフが来日したようです。

新着情報 レオニード・サラファーノフ到着!(01/07)

http://www.thetokyoballet.com/blog/index.php?id=281

シルフィードを踊るのは上野水香。初役です。一昨年秋、上野が『ジゼル』のタイトル・ロールをはじめて踊る際には“ジゼル・デビュー”として話題になりました。それまでに踊った役柄からするとイメージがわきにくい感じもあったのですが、一幕の村娘役ではマイムもこなれ演技をナチュラルにこなしヴァリエーションはほぼ完璧、二幕では強靭なテクニックを抑制して用いることで浮遊感や霊的な質感をよく出ていました。当方は公演チラシおよびネット上に公演への期待をこめた文章を寄稿したので、正直ホッとした覚えがあります。同じくロマンティック・バレエの名作である『ラ・シルフィード』も以前『ドン・キホーテ』で組んで息もぴったりなサラファーノフとの共演だけに期待できそう。踊るたびに新たな顔をみせてくれる刺激的でアメージングな存在であることこそ上野を観る楽しみ・歓びといえるのでは。そういう踊り手は意外に少ないものです。

2008年6月『ジゼル』共演:フリーデマン・フォーゲルのDVD(新書館)[rakuten:forestplus:10079672:detail]

2010-01-06

[]地域からの発信の時代へ〜アジアへ、世界へ

コンテンポラリー・ダンスにおいてコンペからフェスティバルへ、そして各地から世界ことにアジアへという流れが加速しています。乗越たかお氏らが指摘してきましたがこのところのイベントからしてそれが顕著に。世界各国からのディレクターが集い海外参加アーティストも増えた「横浜ダンスコレクションR」(コンペ部門もありますが)、福岡で行われる西日本中心とした各地のアーティストと韓国の最新ダンスを上演する「福岡ダンスフリンジフェスティバル」が2月上旬、同時期に行われます。神戸ではDANCE BOXほかが主催する「KOBE-Asia Contemporary dance Festival #01」が1月末まで開催中。各地のスペース間やアジアのアーティストと連携を深めるJCDNのほか愛知芸術文化センターや山口情報芸術センターといった公共施設も活発に活動しています。東京に偏ってきた日本のダンス・シーン&マーケットが変わりつつあるのが実感できます。

無論、アジアや世界に目を向けた発信には地域での文化活動の促進が不可欠。「事業仕分け」によって文化予算の削減が取りざたされていますが、文化庁関連の各種助成も地域文化の振興・発展に寄与しています。各地のホール等で上演される良質のプログラムに「地域文化芸術振興プラン」が採択されたり、青少年はじめとした観客にアートの魅力を伝える「舞台芸術の魅力発見事業」は定着しつつあります。民間財団も地方自治体による公的助成も。赤字補填であったり様々の制約あったりとすべてが理想的ではない面はあるにせよ一定の機能は果たしているのではないでしょうか。

とはいえ、そういった活動や助成が地域からのアーティストが生まれ、観客も育てることにどれだけ貢献したかを単純に数値化はできません。即効性のあるものでもありません。まだ途上、はじまったばかり。ゆっくりと見守っていきたいところです。いずれにせよ、今後、地域からの発信がより大きなポイントとなるのは間違いないでしょう。

2010-01-05

[]現存する最古の巨匠 ローラン・プティ作品の魅力

新年の幕開けを飾る新国立劇場「ニューイヤーオペラパレス ガラ」が今年も行われました。バレエガラとオペラガラの二部構成による公演であり、すっかり定着してきた感があります。今年、バレエ部門で上演されたのが新制作『グラン・パ・ド・フィアンセ』(振付:ジャック・カーター、ステージング:牧阿佐美)に加え『こうもり』より《グラン・カフェ》(振付:ローラン・プティ)でした。『こうもりは』一昨年の同ガラでも抜粋が上演されています。ヨハン・シュトラウス二世の、心浮き立たせてくれるような音楽が新春気分を盛り上げてくれます。オペラ・ファンにも親しみやすいバレエではないでしょうか。

『こうもり』といえば新国立劇場が2002年に新制作。まさに同時期にアメリカン・バレエ・シアターが来日して『メリー・ウィドウ』を上演していましたが、それに劣らない華やかで充実した公演だったことが思い出されます。2006年の再演を含めると、アレッサンドラ・フェリ、草刈民代、湯川麻美子、真忠久美子の主演で観ました。それぞれ妖艶で嫋嫋たる色香を振りまいて魅力的でしたし、再演時のウルリック役に小嶋直也が急遽登板した際のサプライズとその見事な演技(美しすぎる脚先!)は今なお忘れることができません。新国立劇場ではその後プティの『コッペリア』をレパートリー化して早くも昨年再演していますが、『こうもり』の全幕上演も期待したいところです。

プティといえば、バレエ&ダンス界において現存する数少ない巨匠と呼べる存在。同じフランス人で好ライバルであったモーリス・ベジャールやピナ・バウシュ、マース・カニングハムも鬼籍に入りました。近年、大きなプロジェクトの話は聞きませんが2006年秋には草刈民代に新作を振付けたりもしています。10年ほど前では、パリ・オペラ座バレエ団 に『クラヴィーゴ』、ボリショイ・バレエに『スペードの女王』、牧阿佐美バレヱ団に『デューク・エリントン・バレエ』という風に大作を連打、健在を示していました。

プティ作品は、ベジャール作品などに比べ時に「軽い」とも評されますし、プティは天才肌の器用な才人、職人タイプとも思われがちです。でも、初期の『若者と死』や『アルルの女』のような実存的で美と死を主題としたものから音符が踊りだすようにスウィングするダンスが魅力的な『デューク・エリントン・バレエ』まで、テーマの深さや音楽性の豊かさは得がたいものがあります。現代のバレエはとかく難解であったり、間口の狭いものも少なくありません。劇場・ミュージックホールといった劇場文化を知り尽くし、観客を楽しませる術に長け、かつ人生の機微をさり気なく気づかせてくれるプティの存在は貴重。以前は牧阿佐美バレヱ団が頻繁に上演してくれていましたが(『ピンク・フロイド・バレエ』『ノートルダム・ド・パリ』等)、また多くのプティ作品を堪能させてほしいものです。


パリ・オペラ座バレエ団 「クラヴィーゴ」全幕 [DVD]

パリ・オペラ座バレエ団 「クラヴィーゴ」全幕 [DVD]

→音楽はガブリエル・ヤレド。「ベティ・ブルー」「イングリッシュ・ペイシェント」等の映画音楽で知られる。ちなみに映画音楽の作曲で巨匠といえるアーティストと組んだものとして代表作『ノートルダム・ド・パリ』を挙げられる。「アラビアのロレンス」などの映画音楽で著名なモーリス・ジャールとのコラボレーション。


→著者のひとりジェラール・マノニはいわずと知れたフランスを代表する舞踊評論家。草刈民代がプティ作品で固めた「ソワレ」というガラをパリで行った際の評を日本の「ダンスマガジン」に寄稿している。訳者の前田氏はヌーヴェル・ダンス研究・評論の第一人者で、ベジャールの伝記等の翻訳でも知られる。新国立劇場がプティの「コッペリア」を上演した際に公演プログラムに寄稿している。

2010-01-04

[]「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」DVDが発売

昨年、ピナ・バウシュやマース・カニングハムという二十世紀舞踊の革新者が相次いで亡くなったのはコンテンポラリー・ダンスファンや舞踊関係者にとって痛手でした。でも、より広範な人々やさまざまなジャンルのダンスを踊っているアーティストにとってショックだったのが“キング・オブ・ポップ”ことマイケル・ジャクソンの死ではないでしょうか。

現在発売中の「週刊文春」(12/31・1/7新年特大号)には、作家・井上篤夫氏による特別読物としてマイケルと姉と弟のように深い交流を重ねたリズこと往年の大女優エリザベス・テーラーとの純粋で無償の愛を綴った名文章が載っており、涙を誘わずにはいられませんでした。生ける伝説だったマイケルは、死後も不滅の伝説となるでしょう。

マイケルの死後公開されたドキュメンタリー映画「マイケル・ジャクソン THIS IS IT」はコンサート「ディス・イズ・イット」のリハーサル映像を収めたものであり、短期間公開ながら世界中でヒットしました。興行収入の割合でみると、日本でのヒットが顕著。わが国のファンのマイケル熱を証明しているのでは。現在も一部映画館で再上映中です。

今月下旬にはDVD等が発売されますが、某大手レンタルビデオチェーン店では、今のところレンタルは無しとのこと。店頭ではそう表示されていました。まだ一部劇場とはいえ上映中ですので、今からでもスクリーンで観るか、あるいはネットや店頭で予約して割安でDVDかブルーレイ(それぞれさまざまの特典付)かを入手したいところ。


2010-01-03

[]謹賀新年 2010

明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

2009年は経済不況を感じさせないくらいに内外のさまざまの公演が続き盛況でした。今年もため息の出そうな豪華ラインアップが続きます。

3月のパリ・オペラ座バレエ、6月の英国ロイヤル・バレエの来日公演はどのキャストで観ようかとバレエ・ファンは皆悩ましい…吉田都さんが今回の来日公演を最後にロイヤル・バレエを退団することも大きなニュースとなっています。彼女の踊るジュリエットはなんとしても観たい!ボリショイ・バレエ×マリインスキー・バレエの合同ガラもビッグ・イベント。ベジャール・バレエやヴッパタール舞踊団もきますね。「エトワール・ガラ」もあります。コンテンポラリーでも、愛知トリエンナーレ関連も含めローザスが各地で3演目を上演しますし、熱狂的なファンの多いバットシェバ舞踊団も2年ぶりに来日するので超楽しみ。マシュー・ボーンの『白鳥の湖』も久々に来るのでフォローしたいですね。

国内バレエでは、東京バレエ団によるクランコ振付『オネーギン』初演が最大の話題を集めること必至でしょう。西洋の生んだドラマティック・バレエ不朽の名作をどこまでこなせるか…開幕が待ち遠しい思い。いっぽう日本人の創る日本発の物語バレエにも大いに期待したいところ。昨秋のロシア公演の凱旋となる新国立劇場バレエ団『牧阿佐美の椿姫』、現代に舞台を移した異色作である東京シティ・バレエ団『カルメン』、ファンタスティックでファミリー層にも訴求できるバレエシャンブルウエスト『おやゆび姫』はそれぞれ再演ですが、一層の練り上げが楽しみです。バレエ・モダン系のコンテンポラリーとしては、金森穣や平山素子の新作を昨年末に観る機会に恵まれ、どちらも大変刺激的だったので、彼らの新展開を楽しみに。他にも個人的に目をつけている若手気鋭振付家たちも活躍してくれることと願っています。

充実した1年となるように。