東京バレエ団がジョン・ノイマイヤー版『ロミオとジュリエット』をレパートリーに

「バレエの祭典」30周年の特別シリーズのラインナップが発表された。
http://www.nbs.or.jp/saiten2010/index.html
ギエムやマラーホフ、ルグリらに関連したもの等バレエ・フリークの間で話題になる公演も少なくないが、個人的には東京バレエ団が2012年1月にジョン・ノイマイヤー版『ロミオとジュリエット』をレパートリー化するのに注目したい。巨匠としては若書きにあたるが、ジョン・クランコやケネス・マクミランの影響も受けつつ独自のものにまとめた版で、昨年のデンマーク・ロイヤル・バレエ団来日公演で紹介されたのは記憶に新しい。
東京バレエ団は、昨秋にナタリア・マカロワ版『ラ・バヤデール』、今年2月のフレデリック・アシュトン振付『シルヴィア』を新制作しており、来る5月には、クランコ振付『オネーギン』を日本のカンパニーとして初上演する。いずれも超一級の名作や名バージョンであり、世界有数のビッグ・カンパニーが上演しているものだ。さらにそのうえ、ノイマイヤーの『ロミオとジュリエット』ときた。これまででは考えられない怒涛の勢いである。
派手な展開に見えるが、実力・実績それに人脈がなければ到底かなわないことであり、時期を得た導入。浮き足立ったところは感じられない。国際水準のレパートリーが揃い、版権を継続さえできれば、海外からの折々のスター・ダンサーを呼んでの定期的な公演が可能になる。世界のバレエ・マーケットの主要地である日本で、こういったレパートリーを保有しているということは、とてつもないアドバンテージになろう。自団キャストでの上演もあろうから、魅力的なレパートリーを踊りたいというダンサーは後を絶たないだろう。おのずから団員にも優れた人材が集まりやすくなる。国際競争力をさらに増し、他団との差異を打ち出す――将来ヘ向けての周到な布石といえよう。
クランコの『オネーギン』上演が成功し、ノイマイヤーの『ロミオとジュリエット』導入を経た先では、ノイマイヤー至高の名作『椿姫』の上演すら夢ではなくなるかもしれない。さすがにハードルは高いかもしれないが、今後の展開が楽しみなところだ。