松山バレエ団・森下洋子の踊る『ロミオとジュリエット』
ゴールデンウィークのバレエといえば松山バレエ団恒例の5月公演。会場はいつもどおりBunkamuraオーチャードホール。今年は『ロミオとジュリエット』全幕だった。
構想・構成・台本・演出・振付を手がける清水哲太郎は、再演のたびに手直しを加え、作品をより良きものにしようと心がける。オペラ同様バレエでも古典を中心とした全幕バレエの新演出が問われる時代だが、清水は、わが国のコレオグラファーのなかでも先んじて独自のプランに基づく演出を手がけてきた第一人者として記憶されよう。
数ある清水演出の作品のなかでも力が入り、日本バレエの至宝・森下洋子の“踊る女優”ぶりを存分に引き出したのが『ロミオとジュリエット』ではないだろうか。個人的には、『くるみ割り人形』『シンデレラ』と並ぶ清水=森下コンビの極め付けといえるレパートリーだと思う。初心な少女が恋に目覚め大人びていくさまを繊細に演じ、肉体の極限と闘いながら役を生き抜く森下の芸術家魂には、毎度のことながら感心させられる。
日本のバレエの大きな課題のひとつは、森下を超えるとはいわなくとも、それに匹敵する、あるいは迫るプリマの誕生であろう。欧米での実績・名声、それに国内での幅広い支持、ともに後進の誰しもが遠く及んでいない。森下ほどの巨星が出なくとも同時多発的に優れたプリマが出てシーンを盛り上げてくれるといいのだが…。現況を顧みるに、森下の存在の重さ・すごさをあらためて感じずにはいられないのが実際のところだ。
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