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2010-06-30

[]英国ロイヤル・バレエ『ロミオとジュリエット』

今年の一大イベントのひとつ英国ロイヤル・バレエ来日公演の最終演目のケネス・マクミラン振付『ロミオとジュリエット』は、スケジュールの都合上、リャーン・ベンジャミン&エドワード・ワトソン、吉田都&スティーブン・マックレーの2組で観ることになった。

大ベテランであるベンジャミン&演技派のワトソンの舞台はマクミラン版「ロミジュリ」とはかくあるべしと思わせるもの。ベンジャミンは、初心な少女が恋に目覚め大人の“女性”へと変わりゆくさまを、ワトソンは、熱情的なロミオを余すことなく演じ切った。若手ダンサーとは一味違った滋味あふれる演技でありながら、疾走感あふれるマクミラン版ならではのドラマティックな展開の魅力を堪能させてくれた。同日のマキューシオ役を日本人ソリストの蔵健太が務めたのも話題に。蔵は闊達な演技と踊りを披露して喝采を浴びていた。蔵の出身地・北海道の関係者も会場に詰めかけていたようだ。

東京公演最終日は吉田都のロイヤルでの最終舞台となるため大入満員。テレビカメラも何台も入って開場前からホールは熱気に満ちていた。そんな喧騒とは裏腹に、都さんは、これで最後だからといった気負い等はいささかもみぜずにストイックに役に入り込んでのプロフェッショナルな演技姿勢を最後まで貫いたと思う。都さんは、ドラマを牽引するタイトル・ロールであっても、自分が自分がと押し出すことはなく自然体で演じるという、作品に対する常なる献身の姿勢を持ち味とする。それが、アシュトンやマクミラン、ド・ヴァロワといった英国バレエの珠玉の作品を誰よりも輝かせた大きな要因だろう。同時に作品が輝くことによって都さんもいぶし銀の存在感を放つ。舞台の中心に収まり、オーラを発することは、天与の資質や不断の努力に加え、人々に愛される人間性の素晴らしさがなければ成し遂げられないだろう。カーテンコールでも、観客の万雷の拍手に応え、劇場関係者や同僚からの花束を受け取りつつ、間を置かず舞台後ろに居並ぶ団員たちに感謝のレべランスを深々と捧げる。都さんの謙虚な素晴らしい人間性をあらためて目の当たりにし、深い感動を覚え帰路に就いたのであった。


吉田都 終わりのない旅

吉田都 終わりのない旅


2010-06-29

[]今夏以後のブルノンヴィル関連のセミナー・公演

オーギュスト・ブルノンヴィル(August Bournonville 1805〜1879)は、19世紀前半のロマンティック・バレエ最盛期に活躍したデンマークのバレエマスター・振付家。その作品に特徴的な技術体系や思想をブルノンヴィル・スタイルとよぶのはよく知られよう。ブルノンヴィル振付といえば、ダイナミックな跳躍や軽やかな足さばきがちりばめられ、美技をスパスパ決めるのを見ていると実に爽快だが、踊り手泣かせといえる。バレエ=舞踊劇として捉えたロマンティック・バレエならではの演劇性の高い作風のなかに独自の美学を織り込んだ『ナポリ』『ラ・シルフィード』等は不朽の名作として知られよう。

夏以降ブルノンヴィル絡みのセミナー・公演が続くのでピックアップしておく。

まずは、8月に井上バレエ団が日本バレエ協会との共催により「第1回 ブルノンヴィル・サマー・セミナー in 東京 」を開催する。

http://www.inoueballet.net/information/index.html#info_2

これは、本場デンマークからフランク・アンダーソン、エヴァ・クロボーグらブルノンヴィル・スタイルに習熟した指導者を招いてスタイルの基本を身につけて踊れるようにするための講座。クラス、レパートリー、マイムクラス、ブルノンヴィル・バー、講義を受けることができるようだ。『ラ・シルフィード』全幕のほか『ゼンツァーノの花祭り』『ナポリ』の抜粋や『コンセルヴァトワール』といったブルノンヴィル作品を上演し、ブルノンヴィル・バレエの総本山であるデンマーク・ロイヤル・バレエと長年にわたって交流を深めてきたバレエ団ならではの企画といえる。2年前には大阪芸術大学でもブルノンヴィル・スタイル普及セミナーが行われ、井上バレエ団が協力しているが、所属を問わず広く門戸を開いてブルノンヴィル・スタイルを普及させて行こうとする姿勢は高く評価されていい。

秋には牧阿佐美バレヱ団が『ラ・シルフィード』を11年ぶりに再演する。

http://www.ambt.jp/schedule.html

若手プリマの競演も楽しみだが、同時にジョージ・バランシンの『セレナーデ』を上演するというのがなんとも心憎い趣向だ。デンマーク・ロイヤル・バレエでも特別なときにのみ上演されるプログラムである。20世紀バレエの巨匠と称されるバランシンも、もとはといえばクラシック・バレエ様式を極めたマリウス・プティパの系譜を受け継ぐロシア・マリインスキー劇場出身。ロシア・バレエはフランスとともにデンマークからの影響も多々受けて発展してきた。バランシン作品にみられる繊細なポアントさばきはブルノンヴィル作品とも相通じる。しかし、ドラマ性を非常に重視するブルノンヴィル作品と物語性を極力排除したアブストラクト・バレエで知られるバランシン作品の作品様式は大きく異なる。具象と抽象というものは、あらゆる芸術表現にみられる両極であるが、バレエ芸術においてそれを見事に体現するのがブルノンヴィルとバランシンといえる。牧バレエの今秋の公演は、両者のバレエの精髄、バレエの多様性を知るにはうってつけといえよう。

なお、ブルノンヴィルとバランシンのバレエに関しては、バレエ史研究の第一人者・鈴木晶氏の「ブルノンヴィルとバランシン」(新国立劇場「ラ・シルフィード」プログラム 2000年6月)が詳しくて有益、大変参考になる。ネット上でも閲覧できる。

http://www.shosbar.com/works/dance-articles/bournonville.html


ナポリ 全3幕 [DVD]

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2010-06-26

[]2010年7月

★注意事項★

■原則首都圏の洋舞(バレエ、コンテンポラリー・ダンス、フラメンコ、現代舞踊等)の主なる&見逃せない公演をフォロー。不注意でスルーしてしまうことはお許しください。恣意的な選択ではないですが、興味関心や守備範囲によって若干の偏り等が出ることもあるかと思いますが、お許しください。ミュージカルや演劇等の周辺ジャンルは折々独断と偏見で掲載。

■ジュニア・児童公演、新人公演・勉強会的公演、発表会やそれに類するものは教育上の配慮や諸事情から原則取りあげません。また、子ども向け公演や全国ツアー都心での公演のないもの・少ないもの等はとりあげないことも。チラシ等配布も少なく一般観客に対して公演告知、情報公開の少ない公演等も同様に後手に。

■首都圏以外の公演は、基本的に公共施設・団体の主催する公演やblog管理者が定期的に実見している、状況把握のできているもののみ原則掲載。

■情報の誤り等による被害等に関しては責任を追いかねます。悪しからずご了承ください。HPリンクを極力貼っておりますので一次情報の確認を願います。

■随時追加・修正等行う予定です。ご了承ください。

【来日バレエ】

「バレエの真髄」

●7/8(木)18:30、7/10(土)15:00、7/11(日)15:00/文京シビックホール大ホール

●7/15(木)18:30/新宿文化センター大ホール

\14,000〜5,000

http://www.koransha.com/

ファルフ・ルジマートフ、吉田都、岩田守弘、ロバート・テューズリー、エレーナ・フィリピエワらスターが揃うガラ。ルジマートフの当たり役のひとつ『シェヘラザード』金の奴隷役は一度は見ておきたい。岩田が振付けルジマートフが踊る『阿修羅』は精神性の高い独特な傑作。岩田の踊る日本発披露となる『侍』に注目。


「エトワール・ガラ2010」

Aプロ

●7/28(水)19:00、7/29(木)19:00、8/1(日)14:00/Bunkamuraオーチャードホール

Bプロ

●7/30(金)19:00、7/31(土)14:00/Bunkamuraオーチャードホール

\14,000〜8,000

http://www.bunkamura.co.jp/

パリ・オペラ座バレエ団のエトワールを中心とした、人気ダンサーたちによるセルフプロデュースのガラ。3回目だが、現代作品も多くセンスのよいプログラムが特徴。昨年の「世界バレエフェスティバル」には来日しなかったハンブルク・バレエのシルヴィア・アッツォーニ&アレクサンドル・リアブコの出演がファンにはうれしい。


【来日ダンス】


トリニティ・アイリッシュ・ダンス

●7/17(土)14:00&19:00、7/18(日)12:30、7/19(月・祝)12:30/Bunkamuraオーチャードホール

\10,500〜6,000

http://www.trinity-irishdance.jp/

アイリッシュ・アメリカンの気鋭グループ。3度目の来日。


【国内バレエ】


新国立劇場バレエ団『牧阿佐美の椿姫』

●6/29(火)19:00スヴェトラーナ・ザハーロワ&デニス・マトヴィエンコ、6/30(水)19:00 酒井はな&山本隆之、7/1(木)19:00 スヴェトラーナ・ザハーロワ&デニス・マトヴィエンコ、7/1(金)19:00 本島美和/ロバート・テューズリー、7/3 (土)16:00日スヴェトラーナ・ザハーロワ/デニス・マトヴィエンコ、7/4(日)14:00 堀口純/山本隆之/新国立劇場オペラ劇場

\12,600〜3,150(Z席\1,500あり)

http://www.nntt.jac.go.jp/

今シーズンをもって芸術監督を退任する牧阿佐美が2007年に振付けたオリジナル・グランド・バレエの再演。古典の風格と日本人らしい繊細な感性を備えた力作として評価された。ゲストのザハーロワのほか酒井、本島、堀口と日本人キャストが競演するが、昨年のモスクワ公演で主役デビューした堀口が注目される。


東京シティ・バレエ団『白鳥の湖』

●7/17(土)18:00(志賀育恵&黄凱)、7/18(日)15:00(橘るみ&小林洋壱)/ティアラこうとう大ホール

\7,000〜3,000

http://www.tokyocityballet.org/

江東区と芸術提携を結ぶ地域密着型バレエ団。主演4人はバレエ団の顔でいずれも魅力ある踊り手。石田種生版はドラマティックな力作で、コール・ド・バレエの扱い方にもひねりがあって見応えがある。チケット代が比較的安価なのもいい。


井上バレエ団『コッペリア』

●7/17(土)18:00(宮嵜万央里&エマニュエル・ティボー)、7/18(日)15:00(田中りな&エマニュエル・ティボー)/文京シビックホール大ホール

\9,000〜3,000(ペア席S席\16,000・親子席\10,000・学生席\2,000あり)

http://www.inoueballet.net/

パリ・オペラ座から日本にファンも多いティボーのほか重鎮シリル・アタナソフ(コッペリウス役)を迎える。パリオペファン注目。このバレエの日本初演から関わる関直人の振付は音楽性豊かで、ピーター・ファーマーの美術はロマンティックで美しい。


松岡伶子バレエ団「アトリエ公演」

●7/19(月・祝)18:00/中京大学市民文化会館プルニエホール

\4,000〜3,000(当日券\500増)

http://www.rm-ballet.com/

東海地区/名古屋の最大手といえるバレエ団。内外で活躍するトップ・ダンサーを多数輩出し団員の層は厚い。男性ダンサーも豊富。「アトリエ公演」はジュニアから団員まで出る会だが、ゲスト振付家を招いての創作は毎回レベルが高く、わが国の創作バレエを語るには欠かせないものになっている。今年はトロント・ダンス・シアターで踊り活躍し、振付も手がけてきた新鋭・井上勇一郎の作品を上演。


新国立劇場・こどものためのバレエ劇場「しらゆき姫」

●7/23(金)〜25(日)11:30&15:00/新国立劇場中劇場

\2,100

http://www.nntt.jac.go.jp/

初演時は即完売し追加公演も設けられた。子ども向けだがストーリーも分かりやすく踊りも楽しめる。全日11:30公演はさいとう美帆&江本拓、15:00公演は小野絢子&貝川鐡夫が主演。前回時の上演では、小野のチャーミングな魅力が全開した。


MRB松田敏子リラクゼーションバレエ・第12回「バレエスーパーガラ」

●7/25(日)16:30/大阪国際会議場(グランキューブ大阪)メインホール

\8,000〜5,000

http://mrb.matsudatoshiko.net/

関西を中心としたトップ・ダンサーが集うバレエの祭典。伸び盛りの若手・法村珠里や福岡雄大を含む関西勢ほか、田中祐子、吉岡まな美、青山季可、京當侑一籠、菊地研ら牧阿佐美バレヱ団の主役陣、ボリショイ・バレエの岩田守弘、実力派プリマの渡部美咲、田中ルリ、新星の秋元康臣らも参加。そして、日本バレエの至宝・小嶋直也が群舞作品を発表するほか自作ソロを披露するのが見逃せない!

※出演者に誤りがありました。謹んで訂正いたします。


第21回「清里フィールドバレエ」

「白鳥の湖」

●7/27(火)、7/29(木)、8/5(木)、8/8(日)20:00/清里高原 萌木の村 特設野外劇場

「シンデレラ」

●7/28(水)、7/30(金)、8/1(日)、8/4(水)、8/7(土)20:00/清里高原 萌木の村 特設野外劇場

「天上の詩」

●7/31(土)、8/3(日)、8/9(月)20:00/清里高原 萌木の村 特設野外劇場

\大人5,000〜4,000 子ども3,000〜2,000(当日各\1,000増) クローバーシート(特別指定席)\10,000

http://www.moeginomura.co.jp/FB/

山梨県清里高原のリゾート地で行われる野外バレエ。夜空の下で体感するステージは夢のひととき。一度味わうと虜になってしまう。牧阿佐美バレヱ団で活躍した今村博明・川口ゆり子の主宰するバレエシャンブルウエストのレパートリーのなかから定番の『白鳥の湖』『シンデレラ』のほか八ヶ岳を舞台にした創作『天上の詩』(芸術祭大賞受賞作品)を披露する。雨天中止等になったりするので要注意。


熊川哲也K-BALLET COMPANY 2010 Summer 「New Pieces」

●7/31(土)16:00、8/1(日)13:00&16:00/赤坂ACTシアター

\14,000

http://www.k-ballet.co.jp/

中村恩恵、服部有吉、長島裕輔の作品を上演。中村はキリアン、服部はノイマイヤーに師事し、その後独自の道を行く。団員の長島に関しては熊川の抜擢らしいが未知数。天才的な音楽感覚を持つ服部が日本のカンパニーに初めて振付けるのが最大の話題だろう。熊川、康村和恵、SHOKO(中村祥子)らスターも出演。


スターダンサーズ・バレエ団「チャリティ・ガラ」

●7/31(土)17:00、8/1(日)14:00/ゆうぽうとホール

\12,000〜3,000

http://www.sdballet.com/

吉田都をメインに迎えてのチャリティ・ガラ公演。都さんを安価で観られる!スティーブン・マックレー、小林ひかる、セルゲイ・ポルーニン、菅野英男も来演。

【国内ダンス】

舞踊作家協会「真夏の夜の夢」

●7/1(木)19:00/ティアラこうとう小ホール

\3,000

http://www.kcf.or.jp/tiara/

洋舞・邦舞界の実力派作家の協会。シェイクスピアの戯曲やメンデルスゾーンの音楽に触発された創作を披露。芸術監督:石井清子、加藤みや子。吾妻寛穂、石井清子、加藤みや子、武元賀寿子、谷よう子、真島恵理の作品を上演する。


「踊る妖精2010 六羽のソロ」

●7/2(金)19:00、7/3(土)15:00、7/4(日)15:00/シアターχ

\3,000 シニア・学生\2,000

http://www.theaterx.jp/

アキコ・カンダ、ケイ・タケイ、倉知外子、花柳面、竹屋啓子、折田克子という並ならぬ巨匠たちによるソロ・ダンス集。一度は観ておきたい人ばかり。


ばら色の日々プロジェクト「ばら色の日々」

●7/2(金)19:30、7/3(日)13:30&17:00/門仲天井ホール

\3,000 ペア券\5,600 4人券\10,000

http://homepage3.nifty.com/studiogoo/gooinfo/gooinfo.html

岡田智代、斎藤麻里子、根岸由季、吉福敦子という、世代の異なる女性たちが組み、競って一年をかけ練り上げてきた創作群を発表。


ミクニヤナイハラプロジェクト『幸福オンザ道路』準備公演

●7/2(金)19:30、7/3(土)14:00&19:00、7/4(日)14:00&19:00、7/9(金)19:30、7/10(土)14:00&19:00、7/11(日)14:00&19:00/STスポット横浜

\2,500 学生\2,000 当日\3,000

http://nibroll.com/

ダンス界の風雲児・ニブロールの矢内原美邦が演劇を上演するために立ち上げた個人プロジェクト。演劇ともダンスともパフォーマンスともつかない異色な創作を展開して毎回賛否両論を巻き起こす。来年3月の本公演に向けての準備公演だが、エッジーな表現のレアな、コアな部分が見たいシアターゴアーならば見逃せない。


ボヴェ太郎『消息の風景−能《杜若》−』

●7/2(金)19:30、7/3(土)15:00/アイホール(伊丹)

\3,000 学生&ユース(25歳以下)/60歳以上\2,000円(当日各500円増)

http://tarobove.com/

空間と身体とのゆらぎを追求する異才。表現は緻密極まりなく舞台意匠の構築性も高いが、それでいて流麗な舞を見たという、えもいわれぬ感興をももたらす。稀に見る異能。今回は能楽との協同作業で夢幻能の名作「杜若」に挑む。必見。


大駱駝艦・壺中天公演 鉾久奈緒美『白鳥湖』

●7/6(火)〜7/9(金)20:00、7/10(日)15:00&20:00、7/11(日)15:00/大駱駝艦・壺中天

\2,500(当日\500増)

http://www.dairakudakan.com/

おなじみ麿赤兒率いる舞踏集団のスタジオ公演。


noon dance performance『hands〜抱擁〜』

●7/7(水)19:30、7/8(木)16:00&19:30、7/9(金)15:45&19:00/LAPAN ET HALOT(表参道)

\4,000(1公演45席) 立見\3,000(当日のみ発売)

http://www.ny.airnet.ne.jp/piccolo/

バレエ&コンテンポラリーで注目される松崎えり主宰のユニット公演。各回上記した開演時間の45分前からギャラリーでの無料パフォーマンスを行い、その後、地下のスタジオに降りての上演(有料)が行われる。松崎のほか松本大樹、大嶋正樹、森本由布子、小出顕太郎、増田真也という個性派の実力者揃い。


東野祥子×カジワラトシオ「UNTITLED RITUALS NO.1- NO.5」

●7/8(木)20:00★、7/9(金)20:00★、7/10(土)15:00&19:30★、7/11(日)19:30★/リトルモア地下

\2,800(予約制) 当日券\3,000(残席分若干枚数)★はアフターパーティあり

http://www.littlemore.co.jp/chika/

演出・音楽:カジワラトシオ、演出・振付:東野祥子という音楽×ダンスのセッション的なパフォーマンス。


ナチュラル・ダンス・テアトル『東向きに恋をする』

●7/8(木)19:00、7/9(金)18:30/座・高円寺2

¥3,500 ジュニア割引¥2,000(前売のみ) 当日¥4,000

http://natural-dance.com/

中村しんじ&川野眞子によるモダン・ダンス集団の新作。元Noismの原田みのる出演。メンバーの宇佐美和奈作品を併演。


「吾妻橋ダンスクロッシング」

●7/16(金)19:00、7/17(土)14:00&19:00、7/18(日)14:00/アサヒ・アートスクエア

\3,500 学生\3,000 当日\4,000

http://azumabashi-dx.net/

ダンス批評・作曲家の桜井圭介がキュレーションした“ダンスらしきもの”を集めた定番企画。ダンスとは何か?を緩やかに、しかし、深く問いかける。出演は、飴屋法水、宇治野宗輝、遠藤一郎、off-Nibroll、車AB(三浦康嗣×篠田千明)、チェルフィッチュ、スプツニ子(7/18のみ)、東京ELECTROCK STAIRS、Line京急(7/17夜の回のみ)。インスタレーション:泉太郎、水上アートバス:KENTARO!!。


Noism1&2合同新作 新潟限定公演 劇的舞踊『ホフマン物語』

●7/16(金)19:00、7/17(土)17:00、7/18(日)17:00/りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場

¥5,000 学生¥2,000

http://www.noism.jp/

Noism/金森穣新作は、E.T.A.ホフマンの「砂男」「クレスペル顧問官」「大晦日の夜の冒険」を基に新たなストーリーを紡ぐという大作舞踊劇。新潟限定公演だが今年のダンスシーン最大級の話題を呼びそう。見逃したくない。


黒沢美香&ダンサーズ・第7回家内工場(7/2追加)

●7/18(日)15:00、7/19(月・祝)15:00/綱島・スタジオくろちゃん

\2,000(2日券\3,000)

旗手:リナ・リッチ、滝口美也子、藤井友美、木檜朱実。美香ダンサーズのディープなパフォーマンス。

http://www.k5.dion.ne.jp/~kurosawa/


「トヨタコレオグラフィーアワード2010」“ネクステージ”(最終審査会)

●7月19日(月・祝)15:00/世田谷パブリックシアター

\3,000〜2,500

http://www.toyota.co.jp/tca/

コンテンポラリー・ダンス界の最大のイベント。6組が「次代を担う振付家賞」を目指して覇を競う。「オーディエンス賞」もあり。ファイナリストは石川勇太/神村恵/ストウ ミキコ・外山晴菜/田畑真希/キミホ ハルバート/古家優里。審査方法・結果に毎回議論が起こるが、民主的・建設的なものであれば大いに結構。


Project POINT BLANK ‒ what is contemporary ballet? -

●7/23(金)19:30、7/24(土)14:00&18:00/川崎市アートセンターアルテリオ小劇場

\3,500 当日\4,000(残券が出た場合)

http://www.hokutokodama.com

コンテンポラリーとバレエの境界の壁を破ろうとする現役バリバリダンサー&作家による自主企画らしい。児玉北斗、小尻健太+大手可奈、山田勇気が新作を発表。


森山開次ソロダンスツアー2010『翼 TSUBASA』

●7/23(金)19:30、7/24(土)14:00&19:30、7/25(日)14:00/世田谷パブリックシアター

¥5,500〜4,000(当日各\500増)

http://www.kaijimoriyama.com/

NHK「からだであそぼ」等で名を売った、いい意味で得体の知れないダンスバックグラウンドと語彙を持つのが大変に魅力的な異色舞踊家。白い!


『空白に落ちた男』

●7/24(土)〜8/3(火)/PARCO劇場

\7350 U-25チケット\5250

http://www.parco-play.com/

小野寺修二の作・演出による傑作サスペンス待望の再演。出演は首藤康之、藤田桃子、小野寺という初演メンバーに加え、今回は安藤洋子と藤田善宏が参加。


東野祥子『I am aroused..............Inside woman』

●7/31(日)18:30、8/1(日)18:30(日没とともに開演)/世田谷美術館くぬぎ広場

\1,500(当日先着150名・中学生以下および障害者とその介護者は無料)

http://www.setagayaartmuseum.or.jp/event/list.html

2008年初演のBABY-Q作品『私はそそられる I am aroused』を再構築したソロ。


マドモアゼル・シネマ『いい子 悪い子 子守唄』

●7/31(土)20:00、8/1(日)14:00&17:00/セッションハウス地下スタジオ

\2,700 学生\2,500 当日\3,000

http://www.session-house.net/mc.html

振付・演出を担当するベテラン伊藤直子が一昨年、文化庁芸術祭の新人賞を獲得して業界で注目を浴びた、セッションハウス小屋付きのカンパニー。新作。


【その他】


東京二期会オペラ劇場『ファウストの劫罰』

●7/15(木)19:00、7/16(金)14:00※、7/17(土)14:00、7/18(日)14:00/東京文化会館

¥18,000〜5,000(※平日マチネのみ¥14,000〜3,000) 学生¥2,000

http://www.nikikai.net/

ベルリオーズのオペラを指揮:ミシェル・プラッソン、演出・振付:大島早紀子で上演。白河直子らH・アール・カオスのダンサーも出演する。3年前のシュトラウス「ダフネ」の演出・振付は音楽畑にも好評だっただけに大島の手腕に期待したい。


維新派『台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき』

●7/20(火)〜8/1(日)18:30(7/26(月)は休演日)/犬島精錬所内特設劇場(岡山)

\4,500〜3,500 ペア券あり

http://ishinha.com/

<彼>と旅をする20世紀三部作の最終章。12月に埼玉公演も行われそちらも期待したいが、維新派といえばなんといっても野外公演。屋台村も楽しみ。一昨年秋の琵琶湖畔での『呼吸機械』はすでに伝説の舞台に。犬島では2002年に『カンカラ』を上演しており、これも忘れられないステージだった。必見。


「2010真夏の夜のフラメンコ」

●7/31(土)18:00、8/1(日)18:00/日比谷野外大音楽堂

\8,000〜3,000 ペア席-5,000

http://www.komatubara.com/

小松原庸子フラメンコ舞踊団による、夏の風物詩の野外フラメンコ。

2010-06-25

[]谷桃子バレエ団『リゼット』と至宝プリマ・高部尚子

昨年から展開されている、老舗・谷桃子バレエ団の創立60周年記念シリーズの第5弾は『リゼット』全幕。牧歌的な農村を舞台にした喜劇バレエ「ラ・フィユ・マル・ガルデ」の谷版であり、1962年の初演以来大切に受け継がれるレパートリーである。ロシア経由のゴルスキー=メッセレル版を元に谷桃子が再演出・再振付を手がけたものだ。

今回は3キャストが組まれたが、初日の高部尚子&今井智也、2日目の永橋あゆみ&三木雄馬で観た。2日目の初役同士の初々しい演技も好ましかったが、なんといっても初日に若手の今井と組んだ大ベテラン高部のパフォーマンスに圧倒された。

60周年記念シリーズにおいて高部は、昨夏のクルベリ振付『令嬢ジュリー』のタイトルロールを踊り、良家の高慢な令嬢が下男に魅了され堕ちていくさまを凄絶に演じ印象に残ったが、『リゼット』では一転しておきゃんな村娘という役柄だ。好青年コーラとの相思相愛ぶりをいじらしいくらいにチャーミングに演じたかと思うと、恋人との結婚に反対する母マルセリーヌをやりこめようとしつつも憎めない結びつきもひしと感じさせる。何度も踊りこんでいる役だけに、リゼットの喜怒哀楽さまざまの感情を生きいきと演じて、動きが無言の言葉となる。表現の形態はバレエという洋服を着ているものであっても、内面からにじみでるものに、われわれ日本人にも素直に感情移入できるリアリティと親しみやすさがある。バレエ=舞踊劇を踊るには優秀なダンサーであるとともに優れた役者でならなければならないという至言を体現するかのような名演であったと思う。

高部は、ローザンヌ国際バレエコンクール受賞後、英国留学を経て谷バレエ団に入団。1987年に『リゼット』で主役デビューした。高部にとっても格別な思い入れのある作品のようだ。舞踊評論家の山野博大はデビュー当時の高部をこう評している。“谷桃子は高部を自分の後継者に考えていると思う”と。それから四半世紀近くが経つが、どうなっただろうか。これまで観る機会のあった高部の踊る舞台の記憶を辿り、今回の『リゼット』の演技に接すると、お仕着せの洋服ではない日本人の感性にあった滋味豊かなバレエを創造してきた谷桃子の理想を受け継ぎ体現しているとあらためて感じる。

そして、高部に関して言えば、谷バレエの伝統を継ぐプリマ、クラシック・バレエを極めたプリマであるだけでなく、さらなる独自の境地を切り拓いた点を見逃せない。バレエ団公演のほかに日本バレエ協会公演はじめ外部公演への出演を通して現代作品でも目覚しい成果を挙げたことである。佐多達枝、望月則彦、後藤早知子、坂本登喜彦、金森穣、黒田育世らの大ベテランから新進までわが国の代表的なバレエ/コンテンポラリーの創作者の作品で主要なパートを務め、新国立劇場バレエ団の登録ソリストとしてもナチョ・ドゥアト作品等を踊っている。佐多作品などは谷バレエの先輩筋らも出演していた経緯もあるが、当代を代表する正統派プリマが、古典とはまったく体使いが違ったり、奥深い内面表現を求められる創作において如何なく才を発揮したという点で先駆的存在といえる。同世代の下村由理恵や斎藤友佳理らも各々すばらしい業績を挙げているが高部も彼女らに劣らない。日本のバレエに特筆すべきメルクマールを残した踊り手、日本バレエの至宝として後年も語り継がれると思うし、そうなるべきである。

年齢的に考えれば高部のキャリアは終盤に差し掛かっているのは間違いない。しかし、昨夏や今回の舞台を見ると、容姿もたたずまいも衰えず若々しく、テクニックも非常にしっかりしている。今秋にはバレエ団創立60周年記念シリーズの掉尾を飾る『レ・ミゼラブル』にてコゼット役を踊る。さらに、来春に行われる、佐多達枝が芸術監督・振付を手がける合唱舞踊劇O.F.C公演『カルミナ・ブラーナ』『陽の中の対話』の出演予定者にも名が記されている。また、レッスンに指導に忙しいなか発表した振付作品『ライトモチーフ』『ロデオ』も高評を得た。踊り手としてもまだまだもうひと花、ふた花咲かせてくれそうだし、将来は創作者としても期待される。活躍を楽しみにしたい。

2010-06-24

[]映画「石井輝男 映画魂」に『土方巽野辺おくり祭り「むしびらき」』の記録映像収録

高倉健主演「網走番外地」シリーズ、東映の異常性愛路線の「徳川女刑罰史」、つげ義春原作「ねじ式」等のカルト的名作で知られ、ジョン・ウーやクエンティン・タランティーノら今をときめく世界の鬼才映画人にも大きな影響をあたえた監督が石井輝男だ。没後5年になるが、その人気は衰えを知らないどころか日増しに高まっている。

8月には東京・シネマヴェーラ渋谷にて30作品一挙公開となる特集上映が組まれるという。同時期にユーロスペースでレイトショー公開される。石井作品の出演者をはじめとした関係者のインタビューや1995年に撮影された「無頼平野」の撮影風景などで構成されるドキュメンタリー映画「石井輝男 映画魂」(監督:ダーティ工藤)である。

このドキュメンタリー映画のなかには、1987年に行われた『土方巽野辺おくり祭り「むしびらき」』の記録映像が入っているようだ。撮影は石井監督自身の手によるものという。石井は土方とは何度もコラボレーションを行ったことで知られる。なかでも1969年公開の「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」は、グロテスクな内容によって今なおカルト的な人気を誇る。今夏封切られる「石井輝男 映画魂」収録の野辺おくり祭「むしびらき」の映像は、盟友の手による貴重なものであり、舞踏ファンには見逃せないだろう。

「石井輝男 映画魂」公式ブログ


映画『石井輝男映画魂』予告編 D


石井輝男映画魂

石井輝男映画魂



江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 (日本カルト映画全集)

江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間 (日本カルト映画全集)

2010-06-23

[]英国ロイヤル・バレエ『うたかたの恋(マイヤリング)』

来日中の英国ロイヤル・バレエ団公演の目玉は、ケネス・マクミラン振付の大作『うたかたの恋(マイヤリング)』全三幕(6月22〜24日 東京文化会館)だろう。

これは、19世紀末オーストリア=ハンガリー帝国を統治するハプスブルク家の皇太子ルドルフの心中事件“マイヤリング事件”を題材にしたもので1978年に初演された。ルドルフや彼を取り巻く女性たちをはじめとした人間たちによる愛憎劇であり、マクミランならではの濃密なドラマティック・バレエの極点といえる。日本では23年ぶりの上演。3公演のうちの初日を観たが、平日とは思えないくらいの多くの観客を集めていた。

脚本を小説家/脚本家のジリアン・フリーマンが手がけ、音楽はリスト曲を名手ジョン・ランチベリーが編曲するという巨匠の円熟期に相応しい一流スタッフを得ての創作であるが、同じマクミランの『ロミオとジュリエット』『マノン』という神懸った超傑作に比べ一層陰鬱で退廃的であるし、冗長に感じられる箇所がなきにしもあらず。人物関係も錯綜していてドラマの緊密感や完成度という点では少々落ちるのは否めない気もする。しかし、全三幕各々に配された複雑精妙にして劇的なパ・ド・ドゥの卓抜さ、死へと向かって疾走する若者の光芒をドラマティックに描くというマクミラン一流の手腕が存分に発揮されているのには、「さすが」というほかない。一見の価値はあるし、ドロドロとしたマクミラン節の好きなディープな観客には先に上げた2作以上に惹かれるかもしれない。

1889年におきた“マイヤリング事件”に関しては、事件からおよそ40年後にフランスの作家クロード・アネが小説「うたかたの恋」を著し、その後世界各国で何度も映画化された。また、ルドルフの母でドラマティックな生涯を生きた皇太后エリザベートに関しても、さまざまの舞台作品等が創られている。ウィーン発で東宝ミュージカルや宝塚歌劇団でも上演されたミュージカル「エリザベート」はミュージカル・ファンにはおなじみであるし、モーリス・ベジャールがシルヴィ・ギエムに振付けた『シシィ』は孤高の存在で美の化身といえるギエムとエリザベートの生が重なる異色の傑作として知られよう。

バレエ「うたかたの恋」は、重苦しい内容であるが、スケール感もあり、バレエ・ファンはもとより演劇・ミュージカルファン等にも訴求できる奥の深さと間口の広さもあるといえる。今後、より評価の上がっていく可能性の高いバレエといえるかもしれない。



ハプスブルク家 (講談社現代新書)

ハプスブルク家 (講談社現代新書)


2010-06-22

[]NBAバレエ団・第7回トゥールヴィヨン公演『ジゼル』

NBAバレエ団『ジゼル』全幕(6月19、20日 メルパルクホール、20日所見)。ジゼル役には当初、パリ・オペラ座バレエ団のベテラン・エトワール、デルフィーヌ・ムッサンを招聘する予定だったが、右足の怪我のためキャンセルとなった。変わってオペラ座からプルミエ・ダンスーズのミュリエル・ズスペルギーが来日し、アルブレヒトの秋元康臣と共演した。ムッサンの降板は残念だったが、ズスペルギーの全幕主演を見る機会はなかなかないので、パリオペフリークからすればこれも貴重なものになったとはいえる。

さて、今回の『ジゼル』全幕は、「トゥールヴィヨン公演」という枠で行われた。これは2004年に始まった企画であり、気軽にバレエに接してもらえるようにとの意図があるらしく、チケット代は低価格に抑えられている。貴重な古典作品の復刻や近現代バレエの上演に取り組んできたNBAバレエ団のレパートリーのなかから定評あるものを中心に上演を続けてきた。今年はS席6,000円、A席5,000円、学生席3,000円という価格だが、今回はオーケストラ付きの全幕公演であり、破格の値段といってもいいだろう。

この公演は文化庁の文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業)を受けている。これは高水準の舞台芸術活動が対象になるもの。採択を受けて公演の規模が拡大したカンパニーも少なくない。ただ、昨秋の「事業仕分け」関連の議論でも話題になったように、公的助成をうける公演は、芸術性や芸術理念を追求することのみならず公益性が問われるようになってきている。広範な観客に向けてオープンな制作体制が求められ、観客・納税者への還元も意識されてしかるべきということである。

人材育成への投資は当然ながら舞台芸術の成果を数値で測ることも難しいしナンセンスともいえる。しかし、公益性に関してはある程度の費用対効果は検討できる。助成額等も今年度から一般公開されるようになったこともあり、外部の目から見てのチェックも盛んになっていくだろう。芸術性と公益性のバランス、地に足着いた活動も大切だ。NBAバレエ団はNPO法人として芸術性や舞踊史上の意義を追求する意欲的なプログラムを組むと同時に、7年前、文化庁の重点支援事業をはじめて受けた年からトゥールビヨン公演を行ってバレエの普及、社会への発信に努めてきた。こういった活動方針はひとつのモデルとなり得るし、そういう流れは広がっていくのではないだろうか。

2010-06-21

[]くりた陸「MIYAKO バレリーナ吉田都ものがたり」

現在、来日中の英国ロイヤル・バレエ団公演『ロミオとジュリエット』主演をもって吉田都さんがロイヤル・バレエでの最後の舞台を迎える。2日間公演とも早々にチケットは完売しており、その舞台を観られる人は限られるのは残念なところ。

そんななか都さんの半生を描いたマンガ「MIYAKO バレリーナ吉田都ものがたり」が出た。「クララ」誌の別冊付録として昨秋から連載されたものを中心にまとめられている。都さんのバレリーナ人生を振り返るには格好といえ、時機を得た刊行といえよう。


MIYAKO バレリーナ吉田都ものがたり (ETOILE COMICS)

MIYAKO バレリーナ吉田都ものがたり (ETOILE COMICS)

2010-06-20

[]英国ロイヤル・バレエ来日公演『リーズの結婚』

今年のバレエ界の重要イベントのひとつ英国ロイヤル・バレエ来日公演が始まった。

『リーズの結婚』は、ロベルタ・マルケスとスティーヴン・マックレー主演で観る。

リーズ役のマルケスは、小柄なのは気になるかもしれないが、難しいクロスやオフ・バランスを駆使したアシュトン振付を難なくこなし、エポールマンの生む豊かな詩情も見事だった。ブラジル人のプリマだが、我らが吉田都同様に異国のプリマが機知に富んだ英国/ロイヤル・スタイルを鮮やかに体現しているというのが、なんとも面白い。

最年少プリンシパル(のはず)のマックレーは、回転や跳躍が切れに切れ、若々しく好感の持てるコーラスを演じた。ただ、やや貴公子然とした感じはあって、もう少し野性味が欲しい気もしたが、あくまでも個人的な印象に過ぎない。総じてブラボーな出来。

シモーヌ(裕福な農家の未亡人)のフィリップ・モーズリー、トーマス(金持ちのぶどう園主)のギャリー・エイヴィス、アラン(その息子)のルドヴィック・オンディヴィエラら脇のキャラクター・ダンサーも出色で、舞台を盛り上げていた。


[] Noism1『Nameless Hands-人形の家』再演

Noism1の秋の公演は、一昨年夏に発表された見世物小屋シリーズ第1弾『Nameless Hands-人形の家』の再演。第8回朝日舞台芸術賞舞踊賞を受賞したが、その際同時に受けたキリンダンスサポートによる再演とのことだ。すぐれた現代作品の再演に力が入るのは望ましく金森穣/Noismはしっかりと再演も行っているのは特筆に価する。

Noism1秋の公演情報(NEWS)

http://www.noism.jp/blog/2010/06/noism_22.html

りゅーとぴあ レジデンシャル・ダンス・カンパニー Noism1 

見世物小屋シリーズ 第1弾『Nameless Hands-人形の家』再演公演

演出振付・照明デザイン:金森穣

衣裳:中嶋佑一(artburt)

出演:Noism1

[新潟公演]

2010年11月5日(金)、6日(土)、7日(日)、10日(水)、11日(木)、

13日(土)、14日(日)、15日(月)

※全8回公演

【開演時間】 [平日]19:00 [土日]17:00

【公演会場】 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 スタジオB

【入場料】 一般:3,500円 学生:1,500円(再演特別価格/税込/全席自由)

【発売日】 N-PACmate 9月11日(土)/一般発売 9月18日(土)

【チケット取扱い・お問い合わせ】りゅーとぴあチケット専用ダイヤル TEL: 025-224-5521

2010-06-19

[]横井茂に関する論考

戦後創作バレエの歴史を語るに際して欠かせないのが横井茂の存在である。

1930年生まれ、今年で傘寿を迎えた横井は能楽宗家に生まれたが、戦後間もない時期に上演された第一次東京バレエ団による『白鳥の湖』を観て感激し、バレエの道へと足を踏み入れた。小牧バレエ団で踊り手として活躍後、振付家として活動し1957年の『美女と野獣』にはじまり1960年代以降のシェイクスピアに題材をとった諸作や日本の近現代史を凝視した作品を発表し一世を風靡してきた。一昨年の舞踊生活60周年記念公演では、新作『トロイの木馬』を発表。衰えぬ創作意欲を示し話題となった。

そんな横井の業績を研究・紹介した論文が昨年末に発表された。横井が長年舞台芸術科の教授として教鞭を取って後進を育ててきた大阪芸術大学の藝術研究所発行の紀要「藝術」32号に掲載された「日本の現代バレエを切り開いた舞踊家―横井茂の軌跡―」である。著者は、同大学の客員教授で演出・英国演劇を専門とする吉岩正晴。横井とは公私にわたって20年にわたる付き合いがあるようだが、その見聞にも基づき、また横井へのインタビュー、資料調査を踏まえて横井の創作の道程を分析している。今後のバレエ研究において大変貴重な資料となる論考だと思うので紹介しておく。

吉岩正晴「日本の現代バレエを切り開いた舞踊家―横井茂の軌跡―」(PDF)

http://www.osaka-geidai.ac.jp/geidai/laboratory/kiyou/pdf/kiyou32/kiyou32_05.pdf

2010-06-18

[]三島由紀夫 没後40年

今年は作家・三島由紀夫の没後40年にあたる。

関連イベントも行われている。先日まで銀座シネパトス「特集:日本映画レトロスペクティブ Part9〜没後四十年 映画で辿る三島由紀夫」では三島原作映画が連続上映されていたし、山中湖にある三島由紀夫文学館では今月30日まで「没後40年記念展示」として三島の学生時代の作文・絵画を中心にした収蔵品展が行われている。

音楽・舞踊界でも三島に関連した公演が行われる。まず今月23日に幕を開ける新国立劇場オペラ『鹿鳴館』は今年のオペラ界の最大の話題になること必至といわれているようだ。故・若杉弘芸術監督のラスト・シーズン最後の演目として創作委嘱したもので、音楽は、池辺晋一郎の書き下ろし。台本・演出を担うのは、新国立劇場演劇芸術監督で昨年の演劇賞を総なめした鵜山仁。新国立としても相当に力を入れたと思われる。明治時代の社交界を描く三島文学の精華がどうオペラ化されるのか注目されよう。

そして、バレエでは、12月に東京バレエ団がモーリス・ベジャール振付『M』(1993年)を5年ぶりに再演する。『ザ・カブキ』に続く東京バレエ団への書き下ろし大作は、三島の人生や文学、思想を大胆かつ骨太に描いたもので、奔流のように渦巻くイマージュの数々に圧倒される。ベジャールの才気が存分に発揮されており、三島とベジャールのケミストリーによる独特な美世界に好みは別れようが、熱烈な支持者も少なくない。バレエ・ファン以上に演劇・音楽・文学ファンや関係者などが感化されやすいようだ。今回の話題は三島の幼少期を思わせる少年の4人の分身や肉感的エロスの極み“聖セバスチャン”を誰が演じ踊るかということ。初代“聖セバスチャン”の首藤康之は特別団員に退き、2代目の大嶋正樹も退団してフリーで活動している。誰が踊るのか。分身役のなかでも狂言回し的な役割で重要なIV(シ)に関しても初代の小林十市、2代目で現・新国立劇場の古川和則に続く抜擢が誰になるのか。今から発表が楽しみなところ。


鹿鳴館 (新潮文庫)

鹿鳴館 (新潮文庫)


三島由紀夫―ある評伝

三島由紀夫―ある評伝

2010-06-17

[]「クロワゼ」サイトに谷桃子バレエ団「リゼット」リハーサル・レポ映像

谷桃子バレエ団が創立60周年記念シリーズ5として6月23日〜25日、東京・めぐろパーシモンホールにて団の代表的なレパートリーのひとつであるパストラル・コミック・バレエ『リゼット』(『ラ・フィュ・マル・ガルデ』)全幕を久々に上演する。そのリハーサル・シーンをレポートした記事が雑誌「クロワゼ」7月号(新書館)に掲載されているが、同時に、同誌のホームページ上で、リハーサルを取材した映像がアップされている。

タイトル・ロール演じる高部尚子、永橋あゆみ、瀬田統子による三者三様のリハーサルの模様が生き生きと伝わってくる映像であり、見比べるのも楽しい。稽古場レポートの類は多々あるけれども、こうやって映像でいいところをみせられると、並みの文章ではダンスの魅力やクオリティに迫ってレポートするのは難しいと実感。ともあれ、劇場に足を運ぶ動機付けになるのであれば、こういった試みも増えていっていいだろう。

密着☆リハーサル・レポ 谷桃子バレエ団「リゼット」


Croise (クロワゼ) Vol.39 2010年 07月号 [雑誌]

Croise (クロワゼ) Vol.39 2010年 07月号 [雑誌]

2010-06-16

[]「ニジンスキー・ガラ」に上野水香、中村祥子が出演!

ジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエ団は、毎年シーズンの最後に「バレエ週間」を催し、ノイマイヤーの代表作の数々を日替わり上演したり、海外からの一流カンパニーの招聘公演を行ったりしている。最終日に行われる「ニジンスキー・ガラ」は、ハンブルク・バレエのみならず世界のスターたちも招いての盛大なイベントであり、バレエ・ファン垂涎の的といえる豪華ラインナップだ。今年は6月27日に行われる。

ハンブルク・バレエ バレエ週間「ニジンスキー・ガラ」プログラム

今年の注目は、日本人が相次いで登場することだろう。まず、第24次海外公演ツアーの一環として招聘され、ガラの前にハンブルクでベジャール作品を上演する東京バレエ団からは上野水香&木村和夫がベジャール振付『バクチ』を披露。また、ベルリン国立バレエ団のプリンシパルである中村祥子が、今年2月、ウラジーミル・マラーホフの振付・演出で蘇ったロマンティック・バレエの名作『ラ・ぺリ』からのパ・ド・トロワに出演する。日本、ドイツと拠点の場は異なるが、ともにローザンヌ国際バレエコンクールの受賞者であり、スター性とワールドクラスの実績を持つ人気者の競演が注目される。

また、パリ・オペラ座バレエ団のジェレミー・べランガールが『AIR』からのソロを踊るが、これはよく知られるように、わが国のコンテンポラリー・ダンスの第一人者である勅使川原三郎が2003年にオペラ座に振付け再演も果たした話題のレパートリーからの抜粋。振付という創作/クリエイティブな面で世界のバレエ界に貢献する邦人が出てきたことはなんとも喜ばしいことである。さらにノイマイヤーが2000年に東京バレエ団に振付けたもので、ガラ公演の直前にハンブルク・バレエのレパートリーに入ったばかりの『時節の色』からのパ・ド・ドゥがロイド・リギンスらによって踊られるのも注目されよう。

アジアから中国国立バレエのメンバーが出演することもあり、日本/アジア色の強い今年のラインナップ。今後、さらに欧米の檜舞台での邦人勢の活躍を期待したい。


ニジンスキーの手記 完全版

ニジンスキーの手記 完全版


2010-06-15

[]中島哲也監督「告白」に黒田育世が出演!

昨年度の本屋大賞受賞作である湊かなえのベストセラーを原作に、松たか子主演で映画化した「告白」。「下妻物語」「嫌われ松子の一生」といった芸術性と商業性を兼ね備えた秀作を連打する中島哲也監督最新作ということもあって楽しみにしていた。

ひとり娘を亡くした中学校教師(松)が、担任を務めるクラスの生徒に娘を殺されたと語りだす告白にはじまり、教師、生徒やその親たちといった事件の当事者・関係者の相次ぐ告白によって、事件の真相が少しづつ明らかになっていく。殺人、暴力といった陰惨なシーンや学級崩壊、家庭崩壊といった現代社会の病巣が描かれる重い内容である。とはいえ、愛憎の果てに浮かびあがるのは、生命の尊厳。ここでは、中島監督一流の、華も実もあるケレン味たっぷりな映像・演出は影を潜める。変わって、無機的で荒廃感の漂う映像と、役者の表現力と存在感をクリアに引き出す演出が特徴的だ。レディオヘッドの美しい歌声が俗に塗れた愛憎劇に聖性をあたえており心に残った。

冒頭から明らかにされる犯人2人のうちのひとり少年A・修哉の生みの親をコンテンポラリー・ダンサー/振付家の黒田育世が演じているのも目を惹いた。ネタバレになるので詳しくは書けないけれども、少年の殺人に至る大きな動機を占めるものに、黒田扮する彼の生みの母親との葛藤がある。登場場面はさほど長くないが、重要な配役をとても印象的に演じていた。これまで黒田が舞台で演じてきたなかのある種の魅力が活かされていて、「なるほどそう来たか!」と唸らされるような登場の仕方だった。

ちなみに、もうひとりの犯人少年B・直樹の母親を演じたのは木村佳乃。その木村が以前、三池崇史監督の異色作「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(2007年)に出演した際に、同作の振付を手がけたのが黒田である。その際に両者は知り合い、以後公私共に仲がよいらしい(黒田の主宰するBATIKの舞台を映像化した「ペンダントイヴ」公開の際のトークショーで木村と黒田が対談して明かしている)。そのふたりが母親役で共演するというのはめぐり合わせなのか。コンテンポラリー・ダンサーが出演したり、振付でかかわった映画には、トホホな出来のものも少なくない。当代一流の実力派流行監督の快作に出て、偉才ぶりの一端を発揮できた黒田は、なんとも幸運だと思う。


映画「告白」公式サイト


映画「告白」予告編 最新long版 松たか子 岡田将生

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告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

2010-06-14

[]contact Gonzo

インドネシアダンスフェスティバルが行われ日本からはcontact Gonzoが参加する。

contact Gonzoとは、垣尾優と塚原悠也が2006年に結成したパフォーマンス・ユニットであり、関西を拠点としている。激しい殴り合いのような格闘技的な即興パフォーマンスをガンガン行っており、劇場やライブハウスのような場所よりも路上や公園等での活動が多い。現在、垣尾が抜けたものの塚原以下メンバーは4名を数える。

ダンスなんだかパフォーマンスなんだかわからない、得体の知れない(いい意味で)ことをやっているグループだが、ダンスの枠組みを揺るがせ、身体表現の多様性を示すという意味ではなかなか興味深いといえる。東京のイベントにも何度も参加し、海外活動も少なくない。4月から開催されている「六本木クロッシング-芸術は可能か?」にも出品。フットワークの良さは強みだろう。いい意味でバカなことをやっているのだけれども、今風にいえば草食系の男子ではなく、奔放なエネルギーを発散する、日本のコンテンポラリー・ダンスには貴重な?肉食系男子といっていいかもしれない。

contact Gonzo UMEDA BIGMAN 01

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2010-06-12

[]「2010年トルコにおける日本年」関連ダンス公演ほか

今年は日本とトルコの友好関係の起点として知られるエルトゥールル号遭難事件から120年を迎えた。それに伴って、「2010年トルコにおける日本年」が開催され、その参加公演中心にさまざまな文化事業やイベントが行われている。

トルコの現代演劇・舞踊界の話題といえばイスタンブール国際演劇祭。先日閉幕した17回目の同演劇祭には、新国立劇場ダンス公演「能楽と春の祭典」が参加し、平山素子『春の祭典』&森山開次『弱法師』が上演された。今年は舞踏の室伏鴻『クイック・シルバー』も上演され、室伏や鈴木ユキオが出演し、ワークショップも行ったようだ。

今後もトルコでは今月の17日にアスペンドス、19日にイスタンブールにおいて、世界的に著名であるチャイコフスキー記念東京バレエ団が第24次海外公演ツアーの一環としてベジャール作品を上演するほか、10月には、日本舞踊の菊の会公演「日本のおどり」伝統と創造が催されるなど、「2010年トルコにおける日本年」参加事業は続く。

民族舞踊を別にしたトルコのダンスといえば、アンカラやイスタンブールといった大都市はじめ各地にオペラ劇場があって、その付属のバレエ団の活動が挙げられよう。佐々木涼子著「世界のバレエを見てまわる」には、佐々木さんが同地でバレエの代表的なパ(ステップ)であるアラベスクの起源を探り、アンカラ国立バレエの上演したプロコフスキー振付『三銃士』を観劇した報告が載っていて興味深い。日本との関わりでは、アンタリア国立バレエ団のバレエミストレスを牧阿佐美バレヱ団出身の樋笠淳子が務めたことがあり、樋笠の実家である四国・高松の樋笠バレエが行う国際交流公演にはトルコからのダンサーが参加してもいる。

いうまでもなくトルコはヨーロッパとアジアの分岐点に当たるしロシアとも近い。そういった地域性を反映しているであろうトルコのダンスのわが国における紹介も期待したい(昨秋、東京・渋谷で行われた「ダンストリエンナーレ トーキョー」では、同地のコンテンポラリー・ダンスの旗手であるタル・ダンスカンパニーが招聘された)。来たる7月上旬には、イスタンブールにて「第2回 イスタンブール国際バレエコンペティション」が開催されるなど国際的なイベントも増えてきている。トルコのダンスシーンをより注目したい。


2010-06-11

[]「横浜ダンスコレクションR」が来年度からリニューアル

旧バニョレ国際振付賞のジャパンプラットホームとして出発し、形態を変えながらも若手振付家の登竜門として機能してきた「横浜ダンスコレクションR」。次回(2011年度)から「横浜ダンスコレクションeX」としてリニューアルする旨が発表された。

コンペは今までの「横浜ソロ×デュオ<Compétition>+」と応募資格が異なる2部門に分かれての開催となる。「作品部門」は、これまでの「横浜ソロ×デュオ<Compétition>+」を受け、気鋭振付家が海外へと羽ばたく機会を与えるもの。新設の「新人振付家部門」は、キャリアやダンスのジャンルを問わない新人を発掘するものとなる模様。

コンペティション部門機嶌酩壁門」募集要項・応募用紙(PDF)

http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/jp/images/Competition-1-.pdf

コンペティション部門供嵜型与局娉班門」募集要項・応募用紙(PDF)

http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/jp/images/Competition-2-.pdf

コンテンポラリー・ダンスにおけるコンペティションの功罪はさまざまいわれるが、1990年代後半から2000年代半ばにかけてのコンペ勝者組の躍進は否定できない。内外で広く活躍している。とはいえ、コンペで認められたり、その延長でマーケットに則って「売れる」ことだけがすべてではない。地味に見えながらも着実な活動を続けるアーティストは少なくないが、コンペで注目されないと髀肉の嘆をかこってしまうケースも。今後行われるコンペでは、これまで以上に明確な判断基準が要求されるだろう。「横浜ダンスコレクションeX」には、評価基準をより鮮明にして新たな展開を期待したい。

2010-06-10

[]マシュー・ボーンの『白鳥の湖/SWAN LAKE』

チュチュ姿の女性ではなく男性が踊る異色版として話題になったマシュー・ボーンの『白鳥の湖』が5年ぶりに来日している。このバレエは1995年、ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で世界初演されロングランを記録し、1998年にはブロードウェイ進出を果たしこれまたヒット、トニー賞3部門を受けるなど大成功を収めたのはよく知られる。

2003年の日本初演は忘れられない。ザ・スワン/ザ・ストレンジャーを初演キャストのアダム・クーパーのほかジーザス・パスター、首藤康之が踊った。伝説といえるクーパーの快演、日増しに評判を上げていくパスターらの競演で盛り上がった。首藤の登場は開幕してからかなりたってからであったため、当日券でBunkamuraオーチャードホールの3階席よりも高いところにあるバルコニー席からの立ち見で見るという貴重な経験もした。2005年、2度目の来日の際は、首藤が王子役を踊って、ザ・スワン/ザ・ストレンジャーと両役を踊った希少な踊り手となったのを目に焼き付けることができた。

久々に見ると、忘れていた細部の印象が蘇ってくる。初演から15年経っても古びていない。男同士の同性愛や英国王室の痛烈な風刺は鮮烈であるし、チャイコフスキーの音楽の旋律がこれほどまでに力強くかつ繊細に聞こえてくる舞台もそうはないだろう(テープ録音を使っているが効果的で、経費節約やダンサーの踊りやすさ目的の“特別録音テープ”なるものとは違う)。舞踊語彙はさほど多くない気もするが白鳥の群舞はやはり圧巻。数あるボーン作品中(来日したプロダクションしか見ていないが)、特別なインパクトを備えた作品であり「現代の古典」と称してもオーバーではないだろう。

ところで、ここ4年ほどボーン作品が来日しなかった。部類の映画好きで知られるボーンらしくフォトジェニックなイメージをシアトリカルな演出をもって舞台に息づかせた『プレイ・ウィズアウト・ワーズ』『シザーハンズ』のような著名映画を題材とした作品が、期待されたほど観客動員できなかったように見受けらたのが要因かもしれない。個人的には、その2作がボーン作品のなかでも好みであり(後者に関しては「ダンスマガジン」に評を寄せた)、ディズニー映画をモチーフとした『メアリー・ポピンズ』の来日も楽しみにしていたのだが、来日は途絶えた。今回、久々に出世作『白鳥の湖』で来日を果たし話題を呼んでいるだけに、これを契機に他のボーン作品紹介も期待したいところだ。


チャイコフスキー:バレエ「白鳥の湖」 [DVD]

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2010-06-09

[]ピナ・バウシュ ヴッパタール舞踊団 『私と踊って』

ピナ・バウシュが率いていたヴッパタール舞踊団がピナの死後はじめて来日した。

今回の上演されたのは『私と踊って/Komm tanz mit mir』。リュートの生演奏にのせたドイツの古歌謡が舞台を満たし、「私と踊って!」と女が何度もなんども繰り返す言葉が、ときに暴力的なシーンもはらみながらも痛切な印象を観るものにあたえる。

1977年初演ということで、日本でも近年上演された初期作品群、いまやモダンダンスの古典となった感ある『春の祭典』(1975年)、ブレヒトの戯曲&ヴァイルの音楽による『七つの大罪/怖がらないで』(1976年)を経て、日常的な仕草や歌・会話を取り込んだピナ流のタンツテアターを確立するに至る嚆矢となる作品というのがよくわかった。

ピナの作品は、ダンサーの個性や身体性に大きく依拠していることは確かだろう。今回の舞台は、2008年にリバイバルされ今年に入っても再演をしたうえでの来日となった。初演時とは出演者も社会状況も異なるなかの再演とはいえピナの手の入った舞台ではある。昨年、ピナが亡くなって、今後その作品上演がどのように行われていくのかは気になるところ。舞踊/舞台作品の永続性という点でも考えさせられる公演だった。



2010-06-04

[]TETSUHARU構成・演出・振付『PLANET bite-sized』

エネルギッシュで胸すくような興奮を味わえつつ肩のこることなく楽しめる痛快なステージ。CSB International が企画・制作する『PLANET bite-sized』は、プロのダンスエンターテイナーたちが集って小空間で惜しげもなくその妙技と個性を爆発させる贅沢なイベントだ(6月1、2日、7、9日 各日19:00&22:00 西麻布 Super Deluxeにて上演中)。

演出・振付・出演のTETSUHARU(増田哲治)は、安室奈美恵やSMAPらのステージやミュージカルへの振付で知られる。昨年末のNHK紅白歌合戦では、SMAPが出演した「MICHAEL JACKSON トリビュートショー」においてダンサーコーディネート、 SMAPを含めたダンス監修、それにMICHAEL JACKSONの振付師TRAVIS PAYNE、STACY WALKER らとショーを手がけた。ご覧になった方も少なくないだろう。ショービジネスとコンテンポラリー・ダンスを行き来する異才・新上裕也の舞台にも出演している。

今回の『PLANET bite-sized』は、懸賞金を掛けられたスーパーマンやそれを追う有象無象たちが絡んでいくというストーリー展開があるものの畳み掛けるように続くダンスやコミカルなやり取りの応酬を楽しむことがメインとなってくる。ショーダンサーや整体師、武術師範や弟子といった男たち、モデル、カリスマ占い師、家事手伝いの3人娘扮するチャーリーズエンジェルたちが入れ替わり立ち代わり舞台に現れる。スピード感たっぷりに展開されるナンセンスでドタバタしたタッチのダンス笑劇を楽しむことができた。

TETSUHARU&仲間たちは、ストリートダンスやHOUSEダンスの注目株、それに俊英バレエダンサーと幅広いメンツ揃いだ。YOSHIE(BE BOP CREW)、Jungle(NUMERO UNO)、HIRO(ALMA)、TATSUO(GLASS HOPPER)、山田海峰、吉本真悟、大貫勇輔、長澤風海、 ENDo、KO、MAEDA(KAMIKAZE CLOWNZ)、TETSUHARUという、ディープなファンにはこたえられない、各ジャンルトップ級が揃っていて、壮観だった。

ショービジネスやエンターテイントへの愛が詰まったステージだが、多彩なバックグラウンドのダンサーたちを巧みにさばくTETSUHARUの手腕が見事。各ダンサーにしっかり見せ場を配しつつステージの進行を滞らせることはない。各ダンサーとも得意の技を披露するが、コンテストやショーケースでの一発芸とは違う。いかにすごい技や斬新なムーブメントであってもそこだけ見せられると「だから、何?」となる。芸の開陳に終わる場合も多い。『PLANET bite-sized』では、各ダンサーが妙技をみせ自己主張を打ち出しつつもTETSUHARUの創るエンターテインメント世界に息づいている。ダンスが芸に終わらず観るものを興奮させるパワーを持って舞台を盛り上げる。そこが魅力的だった。

ストリート系やショービジネス界の俊英ダンサーの技量と客席を盛り上げる遊戯心は並ではない。今回などややもすれば身内ノリだけで盛り上がる危険も秘めつつ出演者たちの楽しみながら踊り・演じる余裕が舞台に活気をいや増している。エンターテインメントを舐めてはいけない。当たり前の認識とはいえ、その思いを新たにさせられた。

2010-06-03

[]平成22年度(第65回)文化庁芸術祭参加公演の募集

平成22年度(第65回)文化庁芸術祭参加公演の募集が始まっている。

平成22年度(第65回)文化庁芸術祭参加公演の募集についてhttp://www.bunka.go.jp/geijutsu_bunka/geijutsusai/22_geijutsusai_boshu.html

例年同様に「演劇」「音楽」「舞踊」「大衆芸能」の公演の参加を募集。優れた成果をあげた公演には、芸術祭大賞、芸術祭優秀賞、芸術祭新人賞が贈られる。

対象期間は、関西参加公演の部:10月 2日(土曜日)〜平成22年11月10日(水曜日)、関東参加公演の部 10月12日(火曜日)〜平成22年11月10日(水曜日)。

このところ舞踊部門の関東の部では、日本舞踊、フラメンコ、現代舞踊の参加は多いが、バレエやコンテンポラリー・ダンスの参加は少ない。逆に関西では、主なバレエ団が毎年のように参加して妍を競っている。昨年の関東ではフラメンコ勢など中堅から若手の気鋭アーティストが相次いで参加して盛り上がった。これは毎年感じるのだが、モダンやコンテンポラリーの若手のチャレンジがもっとあっていいような気もする。

今年はどんな作品が上演され、審査結果はどうなるのか?秋の開催が待ち遠しい。

2010-06-02

[]大野一雄、死去

舞踊家で舞踏を代表する存在である大野一雄さんが6月1日に亡くなられた。呼吸不全のため横浜市内の病院で息を引き取られたとのこと。享年103歳。

http://www.yomiuri.co.jp/national/obit/news/20100602-OYT1T00245.htm

http://mainichi.jp/select/person/news/20100602ddm041060042000c.html

http://www.asahi.com/obituaries/update/0602/TKY201006010573_01.html

土方巽と並ぶ舞踏の巨人であり、世界的名声を博したキャリアに関してはよく知られることなので、ここであらためて触れるまでもないだろう。10年くらい前に上星川の稽古場での公演を観にいって、終演後に握手してもらった。その温かな感触は忘れられない。最後に姿をみたのは、2007年に横浜で行われた「百花繚乱」ガラだった。

謹んで故人のご冥福をお祈りしたい。


天人戯楽―大野一雄の世界

天人戯楽―大野一雄の世界


大野一雄 御殿、空を飛ぶ。 [DVD]

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2010-06-01

[]池袋にチャコット直営店&カルチャースタジオ誕生

総合ダンス用品メーカーチャコットが6月5日に東京都豊島区池袋に全国で27店舗目となる直営店と6店舗目となるスタジオを開設するのが話題になっている。

劇場都市池袋に、新しいチャコット誕生【ニュースリリース】

http://www.chacott-jp.com/j/company/release/2010/05_8961.html

池袋というと、昨年、野田秀樹が芸術監督に就任した「東京芸術劇場」をはじめとした演劇や音楽関係の劇場がいくつかあり、一昨年開場した「あうるすぽっと」ではダンス公演も少なくない。東京発の舞台芸術の祭典として注目のフェスティバル/トーキョーも池袋を中心とした豊島区で行われるなど、東京のパフォーミングアーツの関係者やファンの間では熱い注目を浴びている地域である。埼玉にも物理的・心理的に近い。

新たに開設される店舗/スタジオは、池袋は西口・東京芸術劇場に近い「劇場通り」にも近接しているそうで、店舗名称「チャコット池袋劇場通り店」、スタジオ名称「チャコット・カルチャースタジオ 池袋劇場通りスタジオ」としてスタートする(5月24日よりプレオープン中)。池袋における直営店・スタジオのオープンは、今年で創立60周年を迎える同社にとっても新たな展開を迎えるにあたっての核となろう。注目される。