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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2010-11-21

[]フラメンコ舞踊の現在〜小島章司を起点に

わが国のフラメンコ舞踊の第一人者のひとりとして活躍する小島章司。昨年秋に文化功労者に選ばれるという快挙を成し遂げたが、今年年明け早々に左脚アキレス腱断裂という事態に見舞われた。しかし、その後経過は良好らしく、ほとんど完治し、9月21日には徳島県郷土文化会館(あわぎんホール)で『小島章司&浅野寿穂 MAHO A MAHO 二人の古希のコンサート』を行い、翌々日には故郷の牟岐町<小島の浜>で絶景を舞台とした野外公演『潮騒に舞う満月のフラメンコ』を行ったという。

残念ながら毎年行われる秋の定期公演は行わない。とはいえお知らせによると来春からの活動への意欲高く、そして、今月23日(火)勤労感謝の日にはNHK総合テレビにて小島のインタビュー番組が放映される。牟岐町での舞台の模様も放送されるとのこと。小島の来歴と現在を知るうえで貴重なものになりそう。

NHK総合テレビ「ホリデーインタビュー」

11月23日(日・祝)午前6:30〜6:53

小島は後進へと託す思いも強く、黄金時代の本場スペインで研鑽し深めてきたフラメンコの精髄を伝えようとしている。2009年8月に行われたARTE Y SOLERA主催 desnudo Flamenco Live vol.3「小島章司 魂の贈り物」では、佐藤と鍵田・佐藤門下の矢野吉峰&末木三四郎、小島門下の関晴光&松田和也と共演し振付も行った。小島はその際のプログラムにおいて“世代間の交流”を掲げており、長年極めてきた奥義を後進に伝える。佐藤らがそれに応え気迫こもる感動的なステージだった。

ARTE Y SOLERA 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ desnudo 小島章司

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現在のフラメンコ舞踊のシーンでは、河上鈴子や香取希代子といったパイオニアを経て小島や先達にあたる山田恵子、小松原庸子らの第二世代が長老・巨匠にあたる。そして、さらに第三世代とよべるジェネレーションが脂にのった活動を展開している。

前述のARTE Y SOLERA(鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団)は主宰の両人が各々踊り手として卓越しているが、創作者としても力量を発揮し各舞踊賞等も獲得。阿木耀子・宇崎竜童と組んだ『FLAMENCO 曽根崎心中』は国内外で再演を重ねる大ヒットとなった。最近は小スペースでの「desnudo Flamenco Live」を開催して、小島を招聘したり、欧州コンテンポラリー・ダンスシーンで注目されるシディ・ラルビ・シェルカウイ作品に出演したアリ・タベと鍵田のコラボレーションを行っている。今月末には待望の劇場での新作『道成寺』が初演される(11月27(土)〜28(日)@ル・テアトル銀座)。佐藤が構成・演出・振付を手掛け、鼓童の吉井盛悟が音楽を手掛けるもので注目が集まる。

【preview】ARTE Y SOLERA 道成寺 dojoji 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ

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また、小島つながりでいえば、2008年に小島が『戦火の詩人たち<愛と死のはざまで>』で舞踊批評家協会賞を受賞した際、同時に同新人賞を得たのが石井智子だった。石井は名門・小松原庸子スペイン舞踊団の華として知られるが、近年は自身の舞踊団活動に力が入っている。2008年の『エル・コンパス』は、コンパスの魔術師と呼ばれるディエゴ・カラスコを招聘しなんとも昂揚感あふれる舞台であった。今秋には、カラスコに加え、天才ギタリストのモライート・チコも招いてフラメンコの魔力的な魅力を探った『MAGIA 魔法』を発表し話題を呼んだ。石井は、華やかで存在感ある踊りもさることながら知的で構成力ある舞台作りと、洗練された演出の手腕を備えている。

鍵田・佐藤と石井の活動を挙げることになったが恣意的ではない。小島起点というのと実力・知名度にもよるが、それ以外に大きな理由がある。それは、本年度の文化庁の「文化芸術振興費補助金(芸術創造活動特別推進事業)」に両舞踊団が採択されていることだ。最高水準の舞台芸術活動に下りるもので、小松原、小島以外のフラメンコ舞踊で採択されたのは初めてではないか(前者は『道成寺』含め2本、後者は『MAGIA 魔法』に対して)。近年、小島の文化功労者や小松原、長嶺ヤス子、岡田昌巳らベテランの相次ぐ受賞に加え、第三世代の活躍が高く評価されているということは、フラメンコ舞踊がわが国の舞踊シーンにおいてより高いポジションを占めつつあることの証左であろう。近年の文化庁芸術祭(舞踊部門・関東)のラインナップを観ても中堅・若手フラメンコ勢の意欲が感じられる。ベテランの充実と新世代のさらなる展開が楽しみだ。