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2010-12-28

[]カラヴァッジオ、マラーホフ、ビゴンゼッティ

ヨーロッパ絵画に革命をもたらしたとされるバロック期の天才画家カラヴァッジオ。その全作品を完全収録した作品集が日本語版で刊行された。 数奇な生涯を過ごした彼の芸術を作品を通して読み直したものらしく大判で再現された絵画も売りのようだ。


カラヴァッジオの生涯や芸術が広く知られるようになったのは奇才デレク・ジャーマン監督による映画「カラヴァッジョ」(1986年)だろう。また、今年、わが国では「カラヴァッジョ 天才画家の光と影」という映画も公開されたのも記憶に新しい。


カラヴァッジオ [DVD]

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そして、バレエ界では、イタリア人振付家のマウロ・ビゴンゼッティがウラジーミル・マラーホフ率いるベルリン国立バレエ団に振付けた『カラヴァッジオ』(2008年初演)が近年の話題。DVD等でご覧になったバレエ・ファンも少なくないはず。カラヴァッジオの絵画をモチーフとした全幕バレエで、日本でも「マラーホフの贈り物」にて抜粋上演された。


ビゴンゼッティの作品は『カンツォーニ』『カジミールの色』もわが国の各種ガラ公演で上演された。近年新たな振付家の名があまり挙がってこないなか注目される創り手といえる。イタリアで自身のカンパニー アテルバレットを持つほか各地から振付依頼が舞い込んでいるようだ。アテルバレットは小規模だが世界各地でツアーを行い、先年までは日本人の成澤幾波子が所属してもいた。来日が待たれるカンパニーである。

BIGONZETTI, Mauro: Romeo and Juliet

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CANTATA

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2010-12-25

[]「ダンスマガジン」「オン★ステージ新聞」年末回顧

年末回顧のシーズン。「ダンスマガジン」2月号(12/27発売)の年鑑「バレエ2011」におけるベストステージ&ピープルと音楽、舞踊、演劇、映像の情報、批評による総合専門紙「週刊オン★ステージ新聞」新年号(12/24発売)の洋舞ベスト5&新人ベスト1の発表となった。前者は批評家等31名、後者は批評家・ジャーナリスト15名の選出。それぞれ各選出者のコメント付きで、他の内容も充実しているので一読をお薦めする。


来日ではイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団×モーリス・ベジャール・バレエ団×東京バレエ団「奇跡の響演」、シディ・ラルビ・シェルカウイ×首藤康之『アポクリフ』に投票が集まった。パリ・オペラ座バレエ団、英国ロイヤル・バレエ団、オーストラリア・バレエ団といった大バレエ団の来日公演やボリショイ・バレエ×マリインスキー・バレエの合同ガラ、「エトワール・ガラ」、モーリス・ベジャール・バレエ団、ホフェッシュ・シェクターやピナ・バウシュ、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルらの公演の支持も強い。

国内では東京バレエ団の新制作『オネーギン』や新国立劇場バレエ団のエイフマン振付『アンナ・カレーニナ』、ビントレ―振付『ペンギン・カフェ』等への投票が目につく。精力的な活動が目についた勅使川原三郎や中村恩恵の諸作品、フラメンコ界の先端をゆく鍵田真由美&佐藤浩希のアルテ イ ソレラの『道成寺』、神戸の貞松・浜田バレエ団の上演した、欧州で活躍する気鋭・森優貴の大作『冬の旅』等も挙がっている。

恒例の「オン★ステージ新聞」新人ベスト1。今年の振付家部門は伊藤郁女が獲得した。9月に彩の国さいたま芸術劇場にて『Island of No Memories―記憶のない島』を発表。フィリップ・ドゥクフレやアンジュラン・プレルジョカージュやアラン・プラテル、シェルカウイらの作品に相次いで招聘される売れっ子ダンサーだ。振付作品でもスキル&センスの高さを示しており、納得の受賞であろう。ダンサー部門は該当なしとなった。実力拮抗する5人が競って同票となったため。詳しくは紙面をチェックしてほしい。

私の2010年舞踊界回顧は月末もしくは年始にここで発表する予定。

Apocrifu

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【preview】ARTE Y SOLERA 道成寺 dojoji 鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ

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2010-12-19

[]チェーホフ原作のバレエ&ダンス

今年はロシアの劇作家、アントン・チェーホフの生誕150年ということで様々なイベントや上演が行われた。東池袋のあうるすぽっとでは「あうるすぽっとチェーホフフェスティバル2010」が、シアターχでは国際舞台芸術祭IDTF「チェーホフの鍵」が開催されている。前者では、矢内原美邦ダンス公演『桜の園〜いちご新聞から〜』が上演され、後者でもダンス団体やアーティストが参加した。

今さらながらであるが、チェーホフ原作あるいはその作品に想を得たバレエ・ダンス作品はどれくらいあるのだろうかと気になった。主なもので思いつく限り挙げてみよう。

お膝元のロシアで作られたもので、もっとも人口に膾炙しているのは、おそらくマイヤ・プリセツカヤ振付・出演『かもめ』(1979)だろう。音楽は夫君のシチェドリン。シチェドリンは他にも一幕もののバレエ『犬を連れた奥さん』(1985)の作曲を手掛けている。そして、「頸にかけたアンナ」をもとにした『アニュータ』(1986)もチェーホフ原作だ。振付はボリショイ・バレエの雄ウラジーミル・ワシリエフで、昨年亡くなった公私に渡るパートナー・エカテリーナ・マクシーモワとの演技は伝説的である。



アニュータ [DVD]

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欧州で活躍する振付者もチェーホフ作品に題材を得ている。もっともポピュラーなのはケネス・マクミラン晩年の名作『三人姉妹/原題:Winter Dreams 』(1991年全幕初演)だろう。ダーシー・バッセルが初演したことで知られる別れのパ・ド・ドゥは特に有名で、ガラ・コンサートでも上演される。近年はシルヴィ・ギエムが当たり役としているのは周知のとおり。『かもめ』といえば先述のプリセツカヤ版が知られるが、近年、ハンブルク・バレエのジョン・ノイマイヤーが2002年に振付けてもいる。人物の設定を女優と作家からダンサーと振付家に替えたもののようで機会があればぜひ観てみたいものだ。


Thiago soares and Marianela Nunez Winter Dreams Pdd

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わが国のものでは、昨年、金森穣/Noismが 『Nameless Poisn〜黒衣の僧』を発表したのが記憶に新しい。チェーホフの小説「黒衣の僧」「六号病室」をもとに膨らませたもので、チェーホフ国際演劇祭との共同制作作品。チェーホフ作品の底流にある苦悩を現代に通じる普遍的なものとして捉えている。自己と他者との間のコミュニケーション不全や無名性のなか彷徨する現代人の実相を怜悧に描いた傑作だと思う。が、年度末前後の時期に上演されたためか、あまり話題にならなかったのは残念だった。


六号病棟・退屈な話(他5篇) (岩波文庫)

六号病棟・退屈な話(他5篇) (岩波文庫)


また、2006年に現代舞踊界の大御所・金井芙三枝が長年つづけた自らのリサイタルのファイナル・踊り収めに選んだテーマがチェーホフだった。主演と台本を手掛けた2作はともにすばらしい出来ばえ。『未亡人』は、笑劇「熊」を題材に二見一幸が振付けたもの。熊のような大男と対決する未亡人を描く。二見はデフォルメされた動きの面白さを出してシニカルな味を描出した。それに黒のドレス姿で舞いことに手の動きが雄弁な金井の踊りが忘れられない。『可愛い女』は小説「可愛い女」から想を得て創作されたものだ。振付は上田遥。不慮の事故等で愛するものを続けて喪いながらも、愛し、愛されたいという強い願望を持つ“可愛い女”を感動的に描いた好編である。当時御年75歳であった金井の、可愛らしさと、枯れを知らない瑞々しい感性に感じ入ったのだった。


可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん 他一編 (岩波文庫)

可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん 他一編 (岩波文庫)

2010-12-17

[]来春のバレエ界の注目は2つの『ドン・キホーテ

このところ活きのいい若手バレエ・ダンサーがどんどん出てきているし、充実期に入った主役級も少なくない。注目の踊り手が揃って研を競う舞台が来春続けて行われる。演目はともに『ドン・キホーテ』。日本バレエ協会公演と牧阿佐美バレヱ団公演だ。

日本バレエ協会公演は「2011都民芸術フェスティバル参加公演」として1月28日(金)、29日(土)、30日(日)の3回公演で会場は東京文化会館。これまでバレエ協会の『ドン・キ』では、このバレエを全幕日本初演した谷桃子バレエ団版と基本的に同じヴァージョンが上演されていたが、今回は元ベラルーシ国立ミンスク・ボリショイ劇場芸術監督ワレンチン・エリザリエフ版を新制作するというのが話題である。

主演キャストが凄い。酒井はな&藤野暢央、法村珠里&奥村康祐、西田佑子&法村圭緒の3組。酒井の劇場中を鷲掴みにするかのような生命力あふれたキトリに香港バレエ、オーストラリア・バレエで活躍した実力者・藤野のバジルが組む初日は、まあ、外れなしであろう。法村珠里は今年6月に大阪でキトリを踊っているが若々しいなかに匂い立つような色香がある。人を酔わせる華がある。奥村は若手ノーブル・ダンサーの代表格のひとりで、このところ急激に伸びてきた。西田は、いまもっとも脂の乗ってきた中堅プリマ。テクニックもしっかりしているが清楚で美しい。関西出身で、現在東京中心にフリーで活動しているが、大役が舞い込むようになってきた。ノーブル・ダンサーとしてゆるぎない地位を誇る法村圭緒とは大阪時代によく組んでいただけにパートナーシップも問題ないだろう。西田・法村圭緒の日のエスパーダを小嶋直也が踊るというサプライズも。この版では、エスパーダの出番が多いようだ。小嶋ファンは見逃せないところ。

いっぽうの牧阿佐美バレヱ団公演は3月5日(土)、6日(日)に、ゆうぽうとホールで行われる。主役を、青山季可&清瀧千晴、久保茉莉恵&菊地研が務める。このところ牧バレエは若手の大抜擢が目立つ。今秋の『ラ・シルフィード』『セレナーデ』の舞台でも顕著で、そのことによって舞台にも客席にも活力がみなぎっていた。12月に上演された『くるみ割り人形』でも若手の起用が目立ったが『ドン・キ』も新鮮なキャスティング。

青山は昨年に続いてのキトリ役だがテクニックもしっかりしていて華のあるだけに適役。バジルには若い清瀧が抜擢されたが、折り目正しく美しい踊りに加え、ボリショイ・バレエへの留学を経て力強さも増してきた感がある。久保は入団一年目。初の舞台の今秋の公演で『セレナーデ』ソリストに配役された逸材だ。今春の全国舞踊コンクール第1部ではオーロラのヴァリエーションを踊って第1位を獲得。長身を生かした見栄えのよさと的確な踊りで強い印象を残した。菊地はプロ・デビューが早く、若くして脚光を浴びたが、その後主役はもちろんキャラクター役も踊れる若くして貴重な踊り手となっている。魅せ方がうまく、抜群にカッコいいバジルを踊ってくれるのではないか。

プレビューめいたが、期待の新鋭や充実期を迎えた人たちが揃って『ドン・キ』を踊って檜舞台に立つ、日本バレエ新時代を占う機会になりそうなだけに、触れておきたく思った。どちらの公演でも主役級だけでなくソリストや群舞のなかに明日のスターがいるかもしれない。その意味でも注目したいところ。来春が待ち遠しい。

(配役は記事掲載現在)


牧阿佐美バレヱ団「くるみ割り人形」<全2幕> [DVD]

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digi+KISHIN DVD 酒井はな

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2010-12-16

[]2010モダンダンスのコンクール回顧 シニア/創作

先日、「あきた全国舞踊祭」が行われ、結果発表が行われた。これで本年度のモダンダンス系の主要コンクールがすべて終了したことになる。シニア・成人部門および希少な創作部門について結果を振り返っておこう。

第67回全国舞踊コンクール現代舞踊第一部

第1位

木原浩太「誰もいなくなった部屋」(指導:加藤みや子)

第2位

幅田彩加「闇に歌声」(指導:下田栄子)

第3位

玉田光子「戻れない場所」(坂本秀子)

第67回全国舞踊コンクール創作部門部

第1位

宮本舞「verge」

第2位

中西優子「反響」

第3位

菊地尚子「境界線上のヘヴン」

第23回こうべ全国洋舞コンクールモダンダンス部門シニア部門

第1位

佐藤宏美「月夜にサク」(Roussewaltz)

第2位

伊東由里「Rose〜血跡に咲く〜」(Roussewaltz)

第3位

木原浩太「誰もいなくなった部屋」(加藤みや子ダンススペース)

第23回こうべ全国洋舞コンクール創作部門

優秀賞

木原浩太「三体」(加藤みや子ダンススペース)

奨励賞

玉那覇雄介「はっぴぃえんど」(貞松・浜田バレエ団・学園)

第43回埼玉全国舞踊コンクール2010モダン1部

第1位

林芳美「beyond〜その向こうに〜」(指導:金井桃枝)

第2位の1

海保文江「丑女」(指導:藤井利子)

第2位の2

幅田彩加「闇に歌声」(指導:下田栄子)

第3位の1

斉藤友美恵「草上、月とめまい」(指導:本間祥公)

第3位の2

北野友華「憐れみの賛歌」(指導:原島マヤ)

第3位の3

木原浩太「天空の庭-阿修羅の刻-」(指導:加藤みや子)

第12回なかの国際ダンスコンペティション シニア部門

第1位

新保恵「ココロ吐キカクル蝣」(金井桃枝舞踊研究所)

第2位

森本なか「響け叫びの果てまで」(小林容子ダンスカンパニー'y')

第3位

花輪洋治「花輪洋治」

第12回なかの国際ダンスコンペティション 創作部門

第1位

池田素子「東京Collage(+n)」( M.Dance Scene)

第2位

上原かつひろ 「紅」

第3位

Ahn Kyung Mi 「そっぽを向くことができない…」

あきた全国舞踊祭モダンダンスコンクール第29回シニア部

第1位・グランプリ

斉藤友美恵「草上、月とめまい」(指導:本間祥公)

第2位

水野多麻紀「orijin」(指導:水野聖子)

第3位

新保恵「ココロ吐キカクル蝣」(指導:金井桃枝)

(以上、開催順掲載)

隔年開催の北九州&アジア全国舞踊コンクールは本年度は開催なし。

上位入賞者をみると、若く才能ある踊り手がどんどん出てきた感がある。現代舞踊界の、教育システムとしての優秀さは否が応にも実感できよう。

全国舞踊コンクールシニア第1位はじめ埼玉、こうべの各コンクール成人部門で上位に入った木原浩太は、こうべでは創作部門で優秀賞を獲得した。彼と寺杣彩(2011年からは、てらそま彩)、塩川友佳子によるユニット・三体は来年2月に行われる「横浜ダンスコレクションEX」のコンペティションにもノミネートされている。

さいたまで2位に入った海保文江は自作出品であったが、コンクールピース以外に「白い人」「泥」という群舞作品を発表している。濃密な世界観の醸成に手ごたえがあり、より長い長編の作品へと発展してほしい佳作であった。創れる人である。

こうべで1・2位を占めたRoussewaltz勢であるが稀代の名ダンサーたる御大・内田香の下、のびのびと各自の個性を発揮していて目が離せない。このグループからは先日の「ソウル国際振付フェスティバル」にて第2位&ベストダンサー賞を獲得し、ランコントル(旧バニョレ)に招聘されるという快挙を果たした田中恵美理(Emily)やこの1年、文化庁の在外研修員制度を利用してフランスへ留学していた所夏海らも輩出している。

あきたで第1位を獲った斉藤友美恵作品の振付は指導者の本間祥公の息女の山口華子。彼女は今秋の新国立劇場主催公演「DANCE PLATFORM」に招聘されるなど注目を集める振付者である。モダン/コンテンポラリーの技法に通暁するが、それ以上に伝えたいもの・パッションの感じられる創作に手ごたえがある。伸びてほしい存在だ。

振付・創作といえば、こうべの創作部門。先述の木原のほか奨励賞の玉那覇雄介に注目したい。神戸の名門・貞松・浜田バレエ団の団員。三人の若手女性ダンサーを用いて、その出し入れの上手さや振付の変化の巧みさが際立っており、今後さらに作品を観てみたい存在だ。このバレエ団では、イリ・キリアンやオハッド・ナハリン、スタントン・ウェルチら世界的巨匠やOBでドイツ拠点に欧州で活躍する逸材・森優貴らの先鋭的なコンテンポラリー作品や石井潤、後藤早知子らの日本バレエ史に残る名作を上演しているが、毎秋に行われる「創作リサイタル」は元来、団員の創作を発表するものだった。玉那覇作品は今秋、森の入魂の大作『冬の旅』とともに「創作リサイタル」でも上演された。短編だがセンス豊かなものだったので、さらなる展開を期待したい。

2010-12-12

[]松田正隆の試み

『海と日傘』『月の岬』といった名作戯曲を書いた劇作家・演出家の松田正隆(長崎出身)率いるマレビトの会では、2009年以降、原爆投下による惨禍に見舞われた長崎・広島という二つの都市をめぐる「ヒロシマ―ナガサキ」シリーズを展開している。先日はその最新作がフェスティバル/トーキョー10の公式プログラムとして発表された。題して『HIROSHIMA-HAPCHEON:二つの都市をめぐる展覧会』。

今回は“「ヒロシマ―ナガサキ」をみる視点を国外へと広げる。朝鮮半島における「もう一つのヒロシマ」と呼ばれる町「ハプチョン」に注目し、いまなお、広島での被爆者が数多く住む同地を取り上げることで、「唯一の被爆国・日本」からこぼれ落ちる「異邦性」をめぐる問題に迫る。”(F/T10公式サイトより引用)という試みがなされた。興味深いのが上演形式だ。博物館のような展覧形式と演劇が交差するものだった。池袋は自由学園明日館の講堂が会場。講堂内各所に配置されていたり動いたりするパフォーマーが、ハプチョンと広島でのフィールドワーク・取材で得たさまざまに証言等を証言者に成り代わって観る者に語ったりしていく。広島や長崎でおこったこと、その後に起こっていることをパフォーマーたちの身体を通して受け取るわけだ。その身体展示は同時多発的に各所で行われるので、何を観て何を聞くかは、観る者に委ねられる。観る者も傍観者ではいられない。歴史の重みを否が応にも引き受けなければいけないのである。

「原爆」というテーマは難物だ。ありとあらゆる芸術表現で題材として扱われてきた。「原爆を扱うと評価され易いが、それは芸術評価とは違う」といった旨をとある文学賞の選評で述べたのは筒井康隆だが、原爆をテーマにした芸術作品を評する際「貶してはならない」というようなムードが漂うこともあるのだろう。嫌味な言い方であるが「原爆を扱った芸術作品はすべて名作・秀作」説もあるとかないとか。原爆の惨禍や悲劇は重いものであるし、唯一の被爆国の人間として、そのことに関して問題意識を持つのは大切だ。いや、持つべきだといっていいかもしれない。が、やはりそれを「作品」に取り上げるには細心の注意を払わなければならないだろう。欧米でいえばホロコーストの問題もそうだろう。大上段にテーマをかざしたり、正義面して説教めいたものになったり、お涙頂戴のメロドラマになるのが大概のパターンだ。問題の矮小化につながる。

なにもこれは原爆に限らず環境問題やら社会問題を扱ったりする場合も同様といえる。そういった問題を大仰に正義面して糾弾したり、あるいはとってつけたように扱ったものが、あらゆる芸術表現に散見される。ダンスなんかでも環境問題を扱ったものは無数といっていいほど観てきたが感心させられたものはあまりない。先述したことと重なるが、そういった問題に対して意識を高くして生きることは悪いことではない。しかし、そういった問題を扱って観客にその問題の重さを実感し、共有してもらえるようにするには並大抵の手法では追いつかない。「わたし(創り手)はいかにも〜という問題について深く考えています」といった実感やら想念やら凡庸な主張を生のまま作品で開陳されても引かれるだけだ。その点、松田は、人間の身体というものを媒介に難しい主題を繊細に扱い、観る者の想像力に訴えることに成功した。この公演は今年観た舞台芸術公演のなかでも特筆すべき成果の一つであるように思う。示唆に富む試みだった。

マレビトの会「HIROSHIMA-HAPCHEON:二つの都市をめぐる展覧会」PR映像

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2010-12-09

[]垣内友香里/BennyMossの上海公演

振付家・ダンサーとして多くの舞台で活動する垣内友香里/BennyMoss。学生時代に演劇をはじめたのちに、錬肉工房の岡本章に師事。その後ストアハウスカンパニー、伊藤キム+輝く未来を経て独自の活動を続けるアーティストである。

ラボ・アワードを獲得したSTスポットでのラボ#、山口小夜子賞を得た、いまは無き「東京コンペ」でのパフォーマンスに始まり2006年のJCDN「踊りに行くぜ!!」、ポタライブ『三人姉妹』、単独公演での大作『フリー』、社会派的な視点もあった『One<ある>』など主なものは追ってみることができた。垣内自身の独特な身体感覚と個人的なモチーフが核にありながら演劇的要素も取り入れたりしつつ常に今、社会とリンクする視点が織り交ぜられる。地道に地歩を固めつつ実験を続けている作家といえるだろう。大橋可也&ダンサーズやカワムラアツノリの初期型のメンバーとしての活躍も印象に残る。

そんな垣内の近年屈指の力作が2009年5月に初演された『jellybeanZ』である。今年12月には上海公演が予定され出演メンバーを新たにしリ・クリエーションを行ってきた。しかし、日中関係の悪化による身の安全を確保するため参加フェスティバルに訪中を取り止めさせられたようだ。国際交流基金からの助成金も出ていたがそれも下りなくなるとのこと。しかし、垣内は会場・日程を変えて自主公演として身銭を切ってでも上海での上演を敢行するようだ。情勢が情勢だけに身の安全が心配される。出演者・スタッフ含めそのリスクを冒してまでもの決意の公演となるようだ。無事成功を願っている。

以下、垣内からのBCCメール。

垣内友香里です。

上海にお住みのお知り合いの方にぜひお知らせください。転送大歓迎。

みなさまのblogに以下の情報をアップしていただけたらと思います。

海外といえども、中国はお隣の国、これから航空券を買って、見に来ませんか?パスポートの無い方は、取得を

お急ぎください。

当初予定していた、会場が変更になりました。(理由については、vol.31のご案内をお読みください。)

Zendai Contemporary Art EXhibition Hall (http://dca.zendaiart.com/)

上海郊外にある、素敵なアート空間です。写真を添付します。重くてすみません。

みなさまには、近くのホテルをご紹介できます。

東京ダンスタワーvol.30

「jellybeanZ」祭、なぜか自主公演!!私達と、メリークリスマス!上海蟹があなたを待っている!

2010年12月25日(土)、15時開演

12月26日(日)、15時開演

「jellybeanZ」

振付:垣内友香里

出演:根岸由季・深見章代・垣内友香里

テクニカルディレクター:サエグサユキオ

協力:後藤茂

入場料:無料!

助成:なし

会場:Zendai Contemporary Art EXhibition Hall (http://dca.zendaiart.com/)

詳細は東京ダンスタワーブログにて:

http://dance-tower.jugem.jp/

「帝国、エアリアル」(大橋可也&ダンサーズ)ダンサー紹介:垣内友香里 D

2010-12-05

[]新旧異色の映画「くるみ割り人形」について

師走の風物詩『くるみ割り人形』の季節。北米ではチャイコフスキーの「くるみ割り人形」にもとづいたファンタジー映画が公開されている。「The Nutcracker in 3D」だ。

公式WEBサイト

http://www.nutcrackerin3d.com/

The Nutcracker in 3D Trailer

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叔父からくるみ割り人形をプレゼントされた9歳の少女メアリーが、クリスマスの夜、人形によって妖精の国へと連れ出され、魔法の呪いを解くという冒険物語のようだ。監督はナスターシャ・キンスキー主演「マリアの恋人」や黒澤明脚本が出発点の「暴走機関車」等で著名なロシア出身アンドレイ・コンチャロフスキー。出演はエル・ファニング、ネイサン・レーン、ジョン・タトゥーロ、フランセス・デラトゥール、ダニエル・ピーコックら。

11月末に全米公開された際、批評家/ジャーナリストから全く相手にされず酷評だらけのうえ興行的にも惨敗を喫した。物語も映像も凡庸の一言に尽きるようだ。「黒い瞳」「ウルガ」等で知られるニキータ・ミハルコフの兄でもあるベテランのコンチャロフスキーにとってはキャリアの終焉を意味するに等しいか?「ドア・イン・ザ・フロア」などの演技で姉のダコタ以上の天才子役とも評されつつあるエル・ファニングにとっても残念な結果になったといえる。とはいえ、バレエ・ファンとしては興味そそられるところ。


暴走機関車 [DVD]

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「くるみ割り人形」の異色映画化といえば、わが国でもサンリオ製作の人形アニメーション映画(1979年)が知られよう。ホフマン原作「くるみ割り人形とねずみの王様」とチャイコフスキーの『くるみ割り人形』を辻信太郎が脚色したものだ。

サンリオ映画「くるみ割り人形」予告編 Nutcracker Fantasy Trailer (1979)

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作・編曲に羽田健太郎、作詞に寺山修司が連ねるという顔ぶれも異色だが、バレエ界からは、森下洋子&清水哲太郎が出演している。長年にわたって日本のバレエを牽引し、いまなお踊っている黄金ペアの映像の記録としても貴重である。


くるみ割り人形 [DVD]

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華麗なるバレエ 10 くるみ割り人形 / チャイコフスキー (小学館DVD BOOK)

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バレリーナへの道〈38〉世界のプリマ森下洋子

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2010-12-02

[]2010年12月

今月は簡略版にて失礼します。

★来日公演〜レニングラード国立バレエ公演開幕

海外バレエでは、毎年恒例のレニングラード国立バレエのツアーが始まる。先ごろ、芸術監督がコンテンポラリー系のナチョ・ドゥアトに変わるという衝撃的なニュースがあったが、今回のツアーの演目等は以前から決まっており、彼の手腕が発揮されるのはまだ先になりそうだ。来日演目はおなじみのものが多いが、12月公演では『ロミオとジュリエット』に期待。ヴィノグラードフ版での上演となる。コンテンポラリー系では、「ロス・タイム〜コンテンポラリー・ダンスとサッカー」 振付:ピエール・リガルというものが行われるが、不勉強なのでイマイチ内容がよくわからない公演。

★『くるみ割り人形』シーズン

今年も師走は各地のバレエ団が『くるみ割り人形』を上演する。首都圏では、牧阿佐美バレヱ団松山バレエ団熊川哲也Kバレエカンパニー東京シティ・バレエ団井上バレエ団小林紀子バレエ・シアターNBAバレエ団バレエシャンブルウエストベラーム・ステージ・クリエイトなどが上演。キャストのフレッシュさではでは牧阿佐美バレヱ団が新鋭を相次いで抜擢していて注目される。志賀育恵&橘るみという看板プリマふたりが金平糖とクララで共演する回が2回ある東京シティ・バレエ団公演は狙い目かも。チケット代もお手頃なので。舞台美術の豪華さに顕著なように夢のあるゴージャスな舞台を楽しみたいのならKバレエといったところか。他の団もそれぞれ趣向凝らしている。各地でも上演が相次ぐが、名古屋の越智インターナショナルバレエ川口節子バレエ団、神戸の貞松・浜田バレエ団公演などが代表的なところ。貞松・浜田では「お菓子の国ヴァージョン」「お伽の国ヴァージョン」の2本を例年上演しており、演出の違いとともに層の厚いダンサーたちの踊りを楽しむことができる。

★『くるみ割り人形』以外のバレエ

今年は作家・三島由紀夫の没後40年にあたる。東京バレエ団『M』は、ベジャールが三島の人生と芸術をテーマにした書き下ろし大作。個人的にはベジャールの傑作のひとつだと思う。狂言回し役のシを務める小林十市は今回久々にバレエの舞台に復帰するが同時に引退公演に……。貴重な舞台となりそう。新国立劇場地域招聘公演として新潟シティ・バレエ『角兵衛獅子』が上演される。これは日本バレエのパイオニアのひとり橘秋子の代表作のひとつ。以前、抜粋を観たが、和ものでありながらバレエの動きとマッチした振付で興味深かった記憶が。大きな会ではないが松崎すみ子の主宰するバレエ団ピッコロ『シンデレラ』が行われ、これは充実のキャスティング。西田佑子&黄凱という、玄人ファンには堪らない実力派の共演が楽しみだ。首都圏外では名古屋の松岡伶子バレエ団『白鳥の湖』。キーロフ・バレエの元プリマ・ナターリア・ボリシャコーワの振付によるバージョンで2日間公演、オデット/オディール役は日替わりで同バレエ団の中堅・若手プリマが踊るほか、王子役を碓氷悠太とゲストの奥村康祐が踊るのが注目される。若手男性ノーブル・ダンサーの双璧といえるだろう。

★コンテンポラリー・ダンス公演他

コンテンポラリー系では平山素子「ストラヴィンスキー・イブニング」が見逃せない。芸術選奨文部科学大臣賞新人賞、江口隆哉賞を受けた『春の祭典』&新作『兵士の物語』を上演する。重鎮山田せつ子ソロ『薔薇色の服で』も注目される。最近はご無沙汰だったが、この人の身体の使い方には独特なものがあって、10年前くらいに観たときは思わず目を疑うような恐るべき精度の踊りを見せていた。矢内原美邦ダンス公演『桜の園〜いちご新聞から』も見落とせないか。チェーホフの劇作に想を得ての舞台のようだが今春の『あーなったら、こうならない。』に続いて「ダンス公演」と標榜するだけに、どんなものになるのか。モダン畑では加藤みや子ダンススペース・ブラジル凱旋公演『Sand Topos』&『笑う土』『日記』。加藤は大御所の域ながらも若々しい感性とフットワークのいい舞台づくりを持ち味に精力的に今と向き合った創作を続けている。705 MOVING Co.『THE 式典』『IMPROVISATION.705117902.2』は気鋭の菊地尚子率いるカンパニーの公演。菊地はモダンベースにしながらも柔軟さと豊富なスキルを誇る存在で、インプロのソロからかっちり創りこんだ群舞、映像とのコラボレーションなどあらゆる創作において力を発揮している。まだホームラン、決定的な作品はないと思うが打率に関しては低くなく安定した作家とはいえる。舞踏系。和栗由紀夫+好善社新作舞踏公演『肉体の迷宮』は土方巽直系の和栗のカンパニー公演としては8年ぶりのもの。大駱駝艦・壷中天公演『壺ひっくり返っちゃった大作戦』は有名舞踏集団のアトリエ公演。今回の振付担当はベテランの村松卓矢なので楽しめそう。他にもいろいろあるが、ある程度の規模の公演で目立つものはこんなところか。

2010-12-01

[]「バレエ&ダンス逍遥」

健康・スポーツ・子育て等に関する単行本や雑誌を刊行する(株)健康ジャーナル社さんの運営による、バレエを愛する人のための総合情報サイト「大人からのバレエ.com」に観劇レポート&コラムを開始させていただきました。

「高橋森彦のバレエ&ダンス逍遥」

現在、以下の2本掲載。舞台写真付!(過去ログはトップ記事の下から)。

vol.2 牧阿佐美バレヱ団『ラ・シルフィード』『セレナーデ』

vol.1 谷桃子バレエ団『レ・ミゼラブル』

原則舞台鑑賞後に、感銘を受けたもの、意義深いと感じたものを中心に載せております。字数等長いので恐縮ですが、以後コンパクトにする予定です。

バレエだけでなくコンテンポラリー&モダン等のダンスも取り上げたいと思います。

よろしくお願いいたします。

健康ジャーナル社 刊行 バレエ関連本

名作バレエの踊り方

名作バレエの踊り方


バレエダンサーをめざす人へ

バレエダンサーをめざす人へ


バレエを習うということ

バレエを習うということ

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