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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2011-04-30

[]2011年5月 バレエ編

東日本大震災によって舞台芸術界は大きな影響を受けた。来日・国内公演共に中止・延期に追い込まれたり、キャスト変更等もあった。予断許さぬ原発問題への不安もあって、海外アーティストやスタッフの来日が今後どうなるかいまだ不確定な要素は残る。夏公演以降への影響も出つつあるようだ。非常事態なのでやむを得ないか…。

が、海外ゲストやスタッフが相次いでキャンセルするなか、当初の予定キャストと遜色ない、あるいはそれ以上ともいえる新旧のトップアーティストを直ちに招いて滞りなく上演し、多くのファンの信頼を裏切らなかった上演団体/バレエ団や、今後の上演に向けて海外から一級の指導者を招いて公演準備を進めつつ、その合間に彼らとともに復興支援のクラスを開催するバレエ団など、頼もしい団体もある。長年の実績による国際的信用力と制作能力の高さによるものだろう。一朝一夕には築けない真の信頼関係やブランド力あってこそ、と実感させられる。本当に頭が下がるし、心から感謝したい。

さて、5月のバレエ/ダンス公演をみると、ほぼ予定通りに開催されるようで、落ち着きをみせている(4/30現在)。有難いことである。

来日では、やはりバーミンガム・ロイヤル・バレエ団『真夏の夜の夢』『ダフニスとクロエ』&『眠れる森の美女』(5/14-29 東京・名古屋・西宮ほか)がいちばんの見物となる。前者は英国バレエの洗練の粋を示す巨匠フレデリック・アシュトンの中編2本立て。後者は日本では初演となるライト版。話題はゲストの吉田都が『真夏の夜の夢』に出演することだろう。それに日本人プリンシパル佐久間奈緒が映画「小さな村の小さなダンサー」に出演して有名になったツァオ・チーと組んで『眠れる森の美女』『真夏の夜の夢』に出演するのも注目したい。そして5/17(火)ゆうぽうとホール公演は東日本大震災被災地へのチャリティーとして急遽追加。主催者とバレエ団に敬意を表したい。

サンクトペテルブルグ・バレエ・シアター『白鳥の湖』(5/6-9 Bunkamuraオーチャードホール)は、イリーナ・コレスニコヴァを主役に据えたロシアの民間カンパニーで海外ツアーが多い。マリインスキーやボリショイのような一級を期待するのは禁物だが、「古典はロシア!」という向きには値段相応程度のものは見せてくれるのでは。

国内バレエもまずまず盛況。

ゴールデンウィークに7公演行われるのが新国立劇場バレエ団『アラジン』(5/2-8 新国立劇場オペラパレス)。現在の芸術監督デビット・ビントリーが2008年に同バレエ団に振付け世界初演を果たしたもの。夢いっぱいの冒険ファンタジーで、ファミリー層向け。舞台美術や衣装も豪華なので一見の価値はある。英国ロイヤル・バレエ団が16年ぶりの新作全幕バレエとして『不思議の国のアリス』を、欧州バレエの新たなメッカとなりつつあるマラーホフ率いるベルリン国立バレエ団が『オズの魔法使い』を初演するなどファミリー向けのプロダンクションが世界的に盛況を誇るなか、タイムリーな再演となる。どのキャストでもそれなりに楽しめるだろうが、芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞したばかりの新星・小野絢子のプリンセスはハマり役なので見逃せない。

熊川哲也のKバレエカンパニー『ロミオとジュリエット』(5/7〜 東京・大宮など)は、2009年初演版の再演。熊川版はマクミラン版などの影響受けつつ現代的かつ深みのある物語を志向する。ロザラインの存在感を際立たせドラマを深めるとともにスピーディな展開でロミオとジュリエットの悲恋物語を疾走感にあふれたドラマとして鮮烈に描く。英国ロイヤル・バレエ団の俊英プリマ、ロベルタ・マルケスの出演日あり。

わが国を代表する名門大手バレエのひとつ松山バレエ団・新『白毛女』(5/3-4 Bunkamuraオーチャードホール)は、日中文化交流に身をささげてきたこのバレエ団の大切なレパートリーを久々に改定再演するもの。中国国民党と通じた地主から暴行を受けた貧農の娘が山奥に逃亡し、潜伏中に白髪となるが、解放軍に救い出されて地主を打倒する物語だ。昨秋の試演会を経て満を持しての本公演での披露となる。わが国を代表するプリマバレリーナ森下洋子は今年舞踊歴60年を迎えた。その記念シリーズ公演のなかでもハイライトとなるであろう舞台だけに心して見届けたいと思う。

5月の風物詩的な公演として東京シティ・バレエ団「ラフィネ・バレエコンサート」(5/22 ティアラこうとう大ホール)も楽しみ。このバレエ団は、江東区と芸術提携を結び、親しみやすい庶民派路線で売ってきたが、新世代のリーダー安達悦子が理事長に就任してからはグローバルな視点での展開も模索しつつある。古典とともに創作バレエに力を入れてきただけに、団付きの実力派・中島伸欣の新作『一枚の「記憶」〜ひょっとして、あれのこと〜』はじめ意欲的な創作に期待。ライン美しく清楚な志賀育恵、演技派でこのところ創作で生き生きとしたパフォーマンスみせる橘るみという、2大看板プリマがいるのも魅力的だ。チケットが4,000円と比較的安価なのもいい。

八王子拠点に活動し、都心の劇場や山梨の清里でのフィールド・バレエを行い着実に公演展開するバレエシャンブルウエスト『白鳥の湖』(5/7 オリンパスホール八王子)も好舞台になりそう。牧阿佐美バレヱ団のトップ・プリンシパルとして活躍した今村博明・川口ゆり子主宰の団だが、演出・振付の精緻さに加え、美術や衣装なども手間を惜しまない高品質なものを導入していることが見て取れる。アンサンブルを何よりも大切にしており、団員の志気も常に高い。地元に開館した大ホールでの初めての公演。オデットを松村里沙、オディールを吉本真由美が踊る。王子は逸見智彦。


小さな村の小さなダンサー [DVD]

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小さな村の小さなダンサー (徳間文庫)

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バレエ白毛女はるかな旅をゆく

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2011-04-28

[] 相次ぐ情報誌・カルチャーマガジンの休刊、そして舞踊関連メディアの現在・未来

先日、ぴあ株式会社がイベントなどの情報誌「ぴあ」首都圏版(隔週刊)を7月21日発売号で休刊することを発表したのは周知のことだろう。昨年6月には中部版、同10月には関西版が休刊に。39年の歴史を持つ老舗情報誌はすべて休刊になるようだ。

ぴあ、首都圏版を7月に休刊 ネット普及で読者減少

http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819696E0E0E2E3E08DE0E0E2E6E0E2E3E39C9C91E2E2E2

ネットを通じての情報収集が容易になって、情報誌が売れなくなったようだ。一時代を築いたカルチャーマガジンで、株式会社インファス・パブリケーション発行の『STUDIO VOICE』は部数低迷により2年前に休刊し、『コンポジット』『インビテーション』の編集長を務めた菅付雅信が鳴り物入りで立ち上げたカルチャーマガジン『リバティーンズ』もマニアックな支持は得たようだが昨秋4号であえなく休刊に。いかに情報が精確であっても、いかにセレクトされ質高い記事であっても、情報量の多さや新しさ、何よりも無料であるというネットの強みの前に抗することは容易ではないのだろう。

バレエやダンスの場合、残念ながらマイナーな市場であるが、既存の商業ラインに載った雑誌や業界紙、小出版ながらポリシーある媒体は健在ではある。一部ネットでも読めるフリーマガジンが台頭してきてもいる。各媒体ともしっかりと刊行を続けているのは頼もしい(日本舞踊等の「邦楽と舞踊」は先日、版元社長逝去により惜しくも休刊)。

ネットが発達・普及し、公演団体のなかには、ブログやSNSを積極的に用いてファンとの交流をはかっているところも出てきた。書き手も各種紙媒体の求める/あるいは求める以上の記事を提供すると同時に、ネット媒体の開拓に加え個人ブログやSNSでの情報発信・情報共有ふくめネットを活用した活動を両立させることが常となっている。

個人的には紙媒体信奉者なところがあり、情報誌がなくなっていったりするのを見るのは寂しい。が、既存の媒体にきっちり書く機会を得るよう努力しつつ時代や状況に即した新たなメディアにおいて情報を発信・提供し受け取ることを意識して活動しなければ、新たな時代の趨勢に取り残されてしまうということなのだろう。



SWAN MAGAGINE Vol.23 2011春号

SWAN MAGAGINE Vol.23 2011春号


2011-04-24

[]現代舞踊協会の東日本大震災をめぐる動きと平成23年度事業予定

“現代舞踊(モダンダンス)の普及向上を図るとともに創作活動を推進し、わが国の芸術文化の進展に寄与することを目的として”(協会HPより)活動している社団法人現代舞踊協会。全国津々浦々に会員を擁し、各地に支部が設けられ、それぞれが合同公演を持ったり、東京で行われる公演やセミナーに参加したりと幅広く活動している。

同協会会報誌「DANCE EXPRESS」No.323(4/21発行)によると、東日本大震災において会員自身の直接の人的被害はなかったが津波による家屋の流出等の被害を受けた会員はいるという。協会では義援金受付の窓口を開設した。被災した会員個々に見舞金を渡すべく作業を進めている。広範なネットワークを活かした支援が期待される。

ちなみに震災発生当日(3/11)、同協会は新宿・全労済ホール/スペースゼロにて主催事業・新人公演「ダンスプラン2011」初日を迎えていた。場当たり・通し稽古を行っている際に地震が起こり、同日と翌日の公演を休止することに。延期・代替公演も検討されたが、そちらも中止になったという。出演者・関係者の心中察するに余りある。

同協会が公式HP上に平成23年度事業予定を発表しているので触れておきたい。

http://www.gendaibuyou.or.jp/news/project11.html

4つの事業に対して文化庁の「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」が採択されているのが目を惹く。同事業は“新進芸術家等が基礎や技術を磨いていくために必要な舞台などの実践の機会や、広い視野、広い見聞、広い分野に関する知識を身につける場を提供するとともにその基盤整備を図り、次代を担い、世界に通用する創造性豊かな新進芸術家の育成等に資するもの”(文化庁HP)を対象としている。

同協会では同助成に採択された4事業を「現代舞踊新進芸術家育成Project」と題している。「全国新進芸術家による現代舞踊フェスティバルin東京」(8月)「時代を創る現代舞踊公演」(9月)「新人舞踊公演」(10月)「文化庁新進芸術家海外研修員による現代舞踊公演」(11月)。昨年まで続いてきた同種の企画公演の延長上にあろうが、「新進芸術家育成」という面をこれまで以上に明確に示しているだけに、若手・中堅がステップアップしながら創作し、広い観客層に訴求できる有意義な場となることが望まれる。

近年、同協会では、事業部が中心となって新進育成の要素が強い公演に力を入れ、観客に対しても「魅せる」舞台を意識する等意欲が見られる。また、一昨年12月の「芸術団体人材育成支援事業」現代舞踊公演では、加賀谷香、菊地尚子、池田美佳という中堅・若手の気鋭を抜擢し、フレッシュな顔ぶれと充実した舞台成果で注目された。ここ数年の活動の成果が実を結びつつある手ごたえが感じられる。

同協会は、芸術の普及向上に関する業務を行うことを主たる目的とする特定公益増進法人に認可されている。その責をより大きく担うべくさらなる活動を望みたい。

2011-04-20

[]フィールドバレエが被災地へ 5〜6月にミニ公演で巡回

山梨県・清里高原の観光施設「萌木の村」(代表:舩木上次)にて毎夏行われている野外バレエ「清里フィールドバレエ」は今年で22回目を迎える。いまやその存在は広く知られ、大手紙等でも毎年報じられる。今村博明・川口ゆり子夫妻の主宰するバレエシャンブルウエストのレパートリーのなかから毎年いくつかのプログラムが組まれ日替わり上演される。22回目の今年は7月30日〜8月15日にかけて15日間開催され(雨天時中止の場合あり)、『コッペリア』『白鳥の湖』『ジゼル』の上演を予定している。

そんな「清里フィールドバレエ」が東日本大震災の被災地へ出張して公演することになったと報じられた。「萌木の村」の舩木上次社長らが企画し、5〜6月に、「萌木の村」の自慢のひとつである巨大自動演奏オルガンを積んだトラックで各地を巡回するという。約20回のミニ公演を予定し、被災された方々を無料で招待するようだ。

山梨・萌木の村、被災地で野外バレエ公演

http://www.nikkei.com/news/local/article/g=96958A9C93819490E3E7E2E08B8DE3E7E2E6E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;n=9694E3E4E3E0E0E2E2EBE0E0E4E6

フィールドバレエで安らぎを 被災地へ出張、住民を無料招待 清里・萌木の村、来月からトラックで巡回

http://www.47news.jp/localnews/yamanashi/2011/04/post_20110419075209.html

避暑地の星空の下行われる「清里フィールドバレエ」は、通常の劇場でのバレエ上演とは趣を異にする。豊かな自然のなかで、客席もあたかも舞台の一部であるかのような不思議な一体感を感じる。虚構の世界でありながら虚構を超えるような、独特なコスモロジカルな世界に惑溺させられる。夢のような興奮を味わえる場であるが、ダンサーだけでなく多くのスタッフ、地元の人々の多大な苦労の上になりたっている。これまで21年間も続いてきたことは、奇跡ともいわれている。清里での公演を今夏予定通り行いつつ、さらにその前に被災地でのミニ公演巡回を行うというのだから、舩木や今村・川口はじめとした関係者の熱意には、ただただ頭が下がるとしかいえない。

清里の豊かな自然のなかで行われる「フィールドバレエ」は、大自然の恵みのすばらしさを肌で感じさせてくれる。いっぽう、大地震・大津波といった、人間の手には負えないような大災害・悲劇も自然がもたらすものなのは粛然たる事実だ。直接大きな被害を受けず暮らしている人間が被災者の方の痛みを果たしてどこまで感じられるか…。敬愛するさるアーティストが「絶対に痛みは分からない」「分かるなどずうずうしい」と語っていたが、そうだと思う。でも、自然の猛威に対していかなる人間も無力なのは確かだ。その思いは共有できるというか、していいと思う。この地球に生きる以上、ときに豊饒の地や海をもたらし、ときに絶望の淵に人を追い込むこともある自然と向き合っていきていかなけばならない。舞踊というものの始原をたどると、神や自然への祈りを表すものでもあった。フィールドバレエ巡回公演が、亡くられた方への手向けとなり、被災された方を少しでも元気づけるものになることを心から願わずにはいられない。

芸術と自然が融合、清里でフィールドバレエ

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清里フィールドバレエ

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2011-04-16

[]ローラン・プティ×周防正行監督による奇跡のコラボレーション 映画『ダンシング・チャップリン』公開!!

4/16(土)に銀座テアトルシネマ他で公開された映画「ダンシング・チャップリン」。社交ダンスを扱った「Shall we dance?」や冤罪裁判に取材した「それでもボクはやってない。」などで知られる当代きってのヒット・メイカー周防正行監督が“ダンスの魔術師”と称される巨匠ローラン・プティが喜劇王チャールズ・チャップリンをテーマに振付けたバレエ「ダンシング・チャップリン」を映画化する話題作として注目を集めていた。

バレエ「ダンシング・チャップリン」でチャップリン役を演じるプティ作品の申し子ルイジ・ボニーノは還暦を迎えた。彼のユーモアとペーソスあふれる滋味深い演技、周防監督の公私のパートナーであるバレリーナ草刈民代の正真正銘となるラストダンスをフィルムに焼き付けたいというのが周防監督が映画化に当たっての抱負だったようだ。おかしくも哀しい、愛らしい人物たちの織りなす人間模様を描いて、チャップリンを通して映画へのオマージュにも溢れた佳作に仕上がった。バレエ好き・映画ファン共に楽しめる。両方好きなひとには、またとない贈り物だと思う。

詳しくは、コラムを連載させていただいている(株)健康ジャーナル社 運営の総合バレエ情報サイト「大人からのバレエ.com」に記した。ご高覧いただければ幸いである。

「高橋森彦のバレエ&ダンス逍遥」vol.10・映画『ダンシング・チャップリン』〜ダンスの魔術師ローラン・プティ×奇才・周防正行監督、ルイジ・ボニーノ、草刈民代による奇跡のコラボレーション

http://www.ballet-factory.com/ballet-hyakka/gotheater/balletanddance/t-010.html

映画「ダンシング・チャップリン」公式ホームページ

http://www.dancing-chaplin.jp/

映画『ダンシング・チャップリン』予告編

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周防正行のバレエ入門

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BALLERINE

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草刈メソッド DVD&BOOK (<DVD>)

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バレエ漬け (幻冬舎文庫)

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2011-04-14

[]平成23年度「優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業」助成対象決定

文化庁は14日付で平成23年度「優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業」の採択についてリリースした。

平成23年度「優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業」の採択について(PDF)

http://www.bunka.go.jp/ima/press_release/pdf/h23_sugureta_gekijou_saitaku.pdf

これは“劇場・音楽堂等の文化施設が中心となり、地域住民や芸術関係者等とともに取り組む、音楽、舞踊、演劇等の舞台芸術の制作、教育普及、人材育成、劇場・音楽堂スタッフの人材交流等を支援”するもの(文化庁HPより)で、一昨年前までの「芸術拠点形成事業」を受け継いだ新たな展開といえる。「重点支援劇場・音楽堂」「地域の中核劇場・音楽堂」「共同制作公演」の3区分に分けて採択されている。

「劇場法」をめぐる議論は諸々あるが、各地の劇場・文化施設が地域の舞台芸術を牽引する存在となることを期待されている。今回の事業概要をみても5年というスパンでの継続的な助成の区分等も。また、先日発表された「芸術創造活動特別推進事業」「芸術文化振興基金助成事業」は年度ごと個々の芸術団体の1公演単位に対する助成であるが、先日このblogでも触れたように舞踊に関してみても近年助成金額・採択件数が減少している。各芸術団体・アーティストとも劇場・文化施設との協同作業を見据えての活動の可能性を今まで以上に探っていくことになるのではないか。

2011-04-12

[]NBAバレエ団による東日本大震災への支援活動

東日本大震災への支援活動を行う芸術団体は内外数多くチャリティ・イベントも相次いでいる。義援金を募る公演は後を絶たない。それらの模様は、各種メディアにて報じられているし、バレエ・ダンス界の動きを調べ報告してくださるブログ等もある。

このblogでは、熊川哲也のKバレエカンパニーの支援活動の模様、松山バレエ団の森下洋子が被災者の方々へ向けたメッセージ、それにコンテンポラリー・ダンスの全国ネットワークであるJCDNの活動等をお知らせしてきた。

バレエ界でさらなる動きがあったのでお知らせしておく。

NBAバレエ団が公式ホームページにて下記の声明を出している。

・3月29日、NBAバレエ団は、日本赤十字社へ義援金100万円を寄付いたしました。

・4月10日に開催されます「スプリングバレエフェスティバル」ならびに、6月18日・19日に開催されます「第8回トゥールビヨン公演」の会場で募金箱の設置し、日本赤十字社へ寄付させていただきます。

・被災された地域のバレエダンサーの仲間達を支援すべく、NBAバレエ学校での無料レッスンを実施いたします。

このバレエ団は、1993年に新日本芸術バレエアカデミーとして発足し、日本バレエ劇場の結団を経て、2001年には特定非営利活動法人に認可されている。全国各地のバレエスタジオの集合体というのが大きな特徴。会員同士の互助活動を行いながら、古典や近現代作品の復刻上演等も行い、バレエ界に新風を吹き込んできた。

各種芸術団体の公益増進法人への移行が話題になるが、NBAバレエ団はNPO法人としてバレエ通の関心を呼ぶマニアックな作品等を紹介すると同時に、学校や養護施設といった社会施設にも出向して実演を行い、バレエ芸術の普及・社会貢献を果たしている。今回の支援活動もこれまでの延長上にあるものとして受け取れよう。

未曾有の大災害に際し、舞台芸術界では、「芸術に何ができるのか?」ということが語られる。いまさらながらそういうことを考えるのか?という批判や揶揄も含め考え方はいろいろあると思う。過去の言動も問い直されるところだが、何よりも現在さらには未来の活動が問われてこよう。NBAバレエ団のように公益性・社会のなかでの芸術活動というものを考え活動してきた団体には、これまで以上に率先した活動が期待される。NBAには、全国のスタジオとのネットワークという強みも。さらなる展開が望まれる。

バレエ「白鳥の湖」 NBAバレエ団

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fantastic Ballet!「 枕詞に導かれた3つの踊り 」

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2011-04-09

[]日本文化財団が事業活動停止

ピナ・バウシュやウィリアム・フォーサイス、マーサ・グレアム、マース・カニングハムらのカンパニーをはじめとして、世界の音楽・舞踊・演劇を長年にわたって紹介してきた日本文化財団が、3月31日をもって事業活動停止を発表した。

事業活動の休止のお知らせ

http://www1.ocn.ne.jp/~ncc/

リリースを広く出していないのか、数日前に某SNSで情報が広がって関係者やファンの間で衝撃が走った。その後、話す機会のあったダンス関係者等も一様に知らなかった、あるいは、数日前に聞いたが驚いた、と語っていた。記事出すタイミング遅れたが、ご存じでない方もまだたくさんいらっしゃると思うので、お知らせしておく。

解散に至る理由として公式ホームページのコメントのなかでこう記している。

国の方針による超低金利政策と、この度の公益法人改革の新制度の施行に当って、当財団の一定の使命を終えたものとして44期をもって休止、解散いたしました。

日本文化財団が招聘したアーティストの舞台によってパフォーミングアーツ鑑賞に開眼したファンは年代問わず少なくないだろう。とにもかくにも残念としかいいようがない。そして、昨年末、ジンガロ等招聘してきたカンバセーショアンドカムパニーの倒産に続いてパフォーミングアーツをめぐる財政環境のきびしさを否応にも痛感させられる…。

2011-04-02

[]コンテンポラリー・ダンスのチャリティ公演「作業灯、ラジカセ、あるいは無音」がもたらしてくれた素晴らしい感動!

東日本大震災の被災者の方々・被災地に対し何かできることはないか?舞踊界でも公演を敢行する団体が義援金を募るなど支援の輪が広がっている。そんななか、コンテンポラリー・ダンス界においてすばらしいチャリティイベントが行われた。

東京・北品川本通り商店会のフリースペース「楽間」で4月2日に行われたチャリティー公演である。発起人は品川在住でコンテンポラリー・ダンスの音響を幅広く引き受ける牛川紀政。牛川は昨秋できた「楽間」で何かダンスのイベントができないかと考えていたが、このたびの大震災に際し、チャリティ公演、そしてアーティストたちが自由に表現できる場を提供しようと一肌脱いだようだ。公演名は「作業灯、ラジカセ、あるいは無音」。ラジカセと簡素な照明機材のみを使用するエコな公演を心がけた。

集まったアーティストが凄い。牛川に加え、1990年代以降のコンテンポラリー・ダンス シーンを牽引した伊藤キム、舞台監督として活躍する原口佳子、STスポットの大平勝弘らがタッグを組んだ結果、コンテンポラリー・ダンス界の一線で活躍する面々が揃った。以下、アーティストと作品名。初初期型「コレオグラフィー」、井上大輔/辻田暁「未定」、栩秋大洋 、ボクデス「パンダンス」、高襟〜HAIKARA〜「Laughing Place」、神村恵「未定」、田畑真希「ヒキコモリ」、酒井幸菜「Far/near(遠く/近くに)」、鈴木ユキオ「無題」、おのでらん/ももこん「合席」、東野祥子「全廃...」、伊藤キム「生きたまま死んでいるヒトは死んだまま生きているのか?」(ソロパート)。当日パンフ等配られなかったので牛川のtwitterより引用した。

初初期型(主宰:カワムラアツノリ)は開場前から商店街でのパフォーマンスを行い、スペース内での上演ではその日出演する各アーティストの紹介を兼ねたパロディを披露して笑いを誘った。井上・辻田は海とも空とも取れるような青の彩色を施した絵を書きつつ踊る。地元在住?の栩秋の軽快なソロ、ボクデス(小浜正寛)はパンダの家族に扮してのお馬鹿で人を喰ったようなパフォーマンスをみせる。高襟(主宰:深見章代)は、客席をドン引かせること承知でエロスと猥雑さをフルスロットルに放出して暴れまくって喝采を浴びた。神村は携帯電話と水のペットボトルを対話させるという趣向やスペースを何度も走り回るなどコンセプチャルなパフォーマンスを提示。田畑は淡々とした動きの連鎖のなかに命の鼓動を伝えるソロを披露した。酒井は、ギター、ヴァイオリン/ヴィオラの奏者兼男性ヴォーカルを従えて繊細に舞った。実力者・鈴木はストイックななかに磁力あるダンスをみせる。おのでらん/ももこんはコミカルでシュールなマイム・ダンス劇において笑いを誘った。東野は原発全廃を謳うメッセージを掲げたらしいソロを踊る。伊藤は出世作のソロパートを静謐な祈りの中に踊って感動を呼んだ。

入場料は2,000円(中学生以下無料)。会場費を除いた全額を日本赤十字社および企業メセナ協議会を通して義援金として送られるという。会場費も商店街を通して義援金として送るとのこと。席数は70席前後(立ち見20席を含む)を用意して入退場は自由というものであったが、のべ114名の来場があったということなので(終演時の発表・正確な数字は主催者が後日発表するだろう)、約22万円もの支援が集まったということになる。終演後のあいさつで、牛川は「ダンスって素晴らしい」「身体って素晴らしい」と叫んだ。会場の皆の気持ちを代弁してくれた。伊藤はまず「ありがとう」と。そして「自分は、牛川、原口、大平らの企画に乗った、そして他のアーティストたちもそれに乗り、この日集まった観客も乗ってくれた」と感謝の意を語る真摯な言葉に胸打たれた。

今回の大震災以後、首都圏では劇場等の都合や計画停電等の影響によるやむを得ないケース含め公演の中止が相次いだ。こんなときにダンスなんてやっていていいのか?アーティストの誰しもが自問したことだろう。でも、アーティストにとっては経済活動として、また、自らの実存を世に問う手段として表現することは欠かせないだろう。自らが表現することで少しでも被災者のかたのためになれば、そして、観客を楽しませ刺激的な体験を提供することができれば、というのは、舞踊に限らずすべてのアーティストの心の底からの願いだと思う。カーテンコールでは、出演者たちが少々遠慮がちに、しかし、どこか誇らしげな表情を浮かべているのが印象的だった。人と人は「つながっている」「勇気を伝えられる」。へえ、いつから人はそうなったの?なんて揶揄する向きもあるが、甘っちょろい理想論であっても、そういうことは起こりうると信じたい――そう思わせられるくらいに深く深く感銘と勇気をあたえてくれた公演だった。ダンスが好きでよかった!生きていてよかった!そう実感させてくれる素晴らしいものだった。

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