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2011-05-27

[]新書館「ダンスマガジン」月刊化20周年!

新書館の発行する「ダンスマガジン」が2011年7月号をもって月刊化20周年を迎えた。

27日発売の同号では20周年特別企画として「ダンスのいま、そして未来」という特集を組んでいる。数々のスターダンサーが登場した20年分240号の表紙をすべて掲載。月刊化以後長らく編集長を務め、現在は顧問を務める三浦雅士氏による「ダンス、さらに未来へ」という一文はじめ、内外のバレエ・シーンの軌跡も回顧されている。

私は2004年11月号にはじめて署名入りで公演評を寄稿させていただいた。以後、公演評等を何度か書かせてもらったり、アンケート記事の回答依頼いただいている。

世紀をまたいだ激動の20年の内外のバレエ/ダンスシーンを広く網羅的な情報とヴィジュアルな紙面で捉えてきた同誌は、世界的にみても貴重な舞踊メディアといえよう。ダンスのさらなる未来を考える上でも同誌の一層の発展を祈りたい。



バレエ101物語 新装版 (ハンドブック・シリーズ)

バレエ101物語 新装版 (ハンドブック・シリーズ)


世界バレエフェスティバル写真集

世界バレエフェスティバル写真集

2011-05-26

[]横浜ダンスコレクションEXコンペティション審査員講評

今年2月に行われた、コンテンポラリー・ダンスの若手新進振付家の登竜門といわれる「横浜ダンスコレクションEX」コンペティションの審査員講評が掲載されている。

この種のコンペで問題なのは審査の経緯や審査員の評価が示されぬままうやむやに終わること。参加者や観客からすると不信感を抱いてしまう。こういった形で講評が掲載されるのは望ましく大歓迎だ。今更ながらではあるが、ご紹介しておきたい。

コンペティションI審査員講評(PDF)

http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/jp/file/Jury_reviews_competitonI_J.pdf

コンペティションII 審査員講評(PDF)

http://www.yokohama-dance-collection-r.jp/jp/file/Jury_reviews_CompetitonII_jp.pdf

なお、「ダンスマガジン」(新書館)2011年5月号には、審査結果や舞台写真とともにコンペティションIIの審査員を務めた浜野文雄さん(新書館「ダンスマガジン」編集委員)による両部門の批評が掲載されている。併せて読まれることをおすすめしたい。



むく (横浜ダンスコレクションEX)

概要: 2011.02.09 横浜赤レンガ倉庫横浜ダンスコレクションEX コンペティションI新人振付家部門「むく」 最優秀新人賞受賞作・出演/川村美紀子 (KawamuraMikiko)

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2011-05-24

[]東京文化会館「青少年のための舞台芸術体験プログラム」および青少年・学生への優待サービスについて

わが国きってのオペラ・バレエ・オーケストラの殿堂として知られる東京文化会館では、平成21年から「青少年のための舞台芸術体験プログラム」を行っている。

http://www.t-bunka.jp/program/index.html

海外からの招聘元やオペラ/バレエの上演団体の協力を得て、公演直前の最終リハーサル(ゲネプロ)を青少年に公開するもので、対象は舞台芸術を勉強している、あるいはプログラムに関心のある中学生、高校生および25歳以下の学生。今年からは公開ゲネプロに加えて、公開レッスンやバックステージツアーも盛り込まれるようだ。

青少年に向けの鑑賞会めいたものは少なくない。が、中身はというと、若年層向けにアレンジしたものや名曲・名作の抜粋のようなものが大半だろう。それらは口あたりよく、分かりやすく入りやすいかもしれないし、一概に否定はしない。が、きっちり本格的なものを手を抜かず上演・演奏したもの、しかも最高水準のオペラやバレエをゲネ公開という形であれ提供するのも見識というか、その方が、ホンモノをきっちり届ける真摯な姿勢だといえるだろう。対象となっている人は積極的に応募してほしい。

実演家やスタッフ、研究者や評論家志望者などにとっては多感といわれる学生時代に多くの優れた舞台、刺激的なステージを観ることは決して損なことではないはず。実演家や専門家志望でなくとも舞台芸術に興味あり愛する青少年の皆さんは多いかと思う。オペラやバレエの入場料金は決して安くないが、学生券等の優待は少なくないし、近年はエコノミー券や割引チケットなど破格のものも豊富だ。青少年にとってチケットが高額というバリアはフリーになりつつある。ネット等で情報収拾し活用してほしい。


2011-05-17

[]ダンス・トリビア☆ボヴェ太郎、酒井幸菜、木村愛子、三者の共通点とは!?

コンテンポラリー・ダンスの新たな才能のなかでも個人的に注目している人たちは少なくない。なかでも、ここでご紹介する、ボヴェ太郎、酒井幸菜、木村愛子というアーティストの名はご存じだろうか?3者すべての舞台を意識して観ていれば、筋金入りのコンテンポラリー・ダンス マニアというか猛者といってもいいのではないだろうか。

ボヴェ太郎は、“空間の〈ゆらぎ〉を知覚し、変容してゆく「聴く」身体”をコンセプトに創作を行なう舞踊家・振付家だ。関東出身だが、現在は京都を拠点に活動を続けている。黒っぽい胴衣をトレードマークに踊るソロが活動の中心だが、空間・場の空気や気配を身体になじませ紡いでゆく踊りの、ときに滑らかであったり、ときに近寄りがたいまでに強度みなぎったりする「気」の変幻自在さからは目が離せない。近年は能楽とのコラボレーションも展開する。まだ弱冠30歳ほどであるが、もう、ほとんど天才舞踊家といっていい。私もこの3年ほど関西の公演であっても極力足を運ぶようにしている。それだけの価値あると信じている。今週末にも新作『Resonance of Twilight』 @伊丹市「旧石橋家住宅」・庭園を発表する。こちらも見逃したくないところだ。

【関連記事】[DANCE] ボヴェ太郎『消息の風景−能《杜若》−』

http://d.hatena.ne.jp/dance300/20100704/p1

酒井幸菜は、2006年のJCDN「踊りに行くぜ!!」に登場するなどして注目された。東京芸術大学音楽環境創造科卒。5歳のときからモダンダンスを学び、しなやかな動きとしっかりした身体コントロールが基盤にある。かわいらしい容姿に恵まれ、目にも力がある。踊りにも磁力と華がある。活動はソロが中心であるが、ギャラリーや美術館などの空間を活かした繊細な舞台づくりが魅力だ。アートディレクションへの意識も高く、音楽家や漫画家とのコラボレーションも行うなど精力的。演劇やミュージックビデオへの出演・振付も行う。先年、横浜にて群舞作品『難聴のパール』を発表し話題を呼んだ。独自のセンシティブな感性に期待したい創り手・踊り手である。

In her, F major

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木村愛子は、ボヴェ、酒井に比べまだ知られていないが、このところ注目される新鋭。桜美林大学総合文化学群演劇専修に学び、名舞踊家・木佐貫邦子に師事した。卒業公演プロジェクトにて長編ソロ『温かい水を抱く』を発表。今年2011年新春には、「ダンスが見たい!新人シリーズ9」(助成:文化庁芸術団体人材育成支援事業、EU・ジャパンフェスト日本委員会)にて新人賞を獲得し、2月には新装された「横浜ダンスコレクションEX」の新人振付家部門にもノミネートされるなど底力ある逸材だ。当方は前者の新人賞審査員を務め、木村の自作ソロ『温かい水を抱くII’』を観る機会を得た。淡々とした静謐なトーンのなか玄妙に身体をコントロールしていく品のある踊り。そこに時おり浮かぶ狂気や激しさ――。緻密な空間構成も相俟って、不思議な魅力を醸した作品として心に残った。審査員をご一緒した映像作家のヒグマ春夫さんも絶賛されていた。4月、木佐貫門下の変わり種・北尾亘主催Baobab『純白のスープ皿の完璧な配置』への客演では、一転してコミカルな演技を披露してコメディエンヌぶりを発揮していた。ちょっと容姿が似ている気がするというのもあるが、私は勝手に“コンテンポラリー・ダンス界の貫地谷しほり”と思いつつある。瑞々しくかつ的確な演技力を持つ若手演技派女優でありながらコメディエンヌぶりに味をみせる貫地谷となんとなくダブったから。8月には「ダンスが見たい!新人シリーズ」受賞者単独公演を2日間行うという。楽しみだ。

ダンスが見たい!新人シリーズ9 講評

http://www.geocities.jp/kagurara2000/s9c

で、3者の紹介に長々費やしたが、何がトリビアかというと――。実はこの3人とも、1995年に開校した県立神奈川総合高等学校出身である。ボヴェが酒井、木村より4、5学年上らしく彼女たちと在学中にともに活動することはなかったようだが、酒井・木村は一学年違いでダンス部の先輩・後輩関係にあたる。モダンやバレエ畑の専門学校や専修ならともかく、自由で型にはまらない表現を追求するコンテンポラリー・ダンスの世界において、これだけの個性ある気鋭を短期で輩出するのは、なかなかないだろう。

2011-05-11

[]平田オリザのメッセージと、こまばアゴラ劇場の支援会員制度

平田オリザの主宰する劇団「青年団」の本拠地として知られるこまばアゴラ劇場の公式ホームページに平田が寄せたメッセージがネット上等で反響を呼んでいる。

文化庁重点支援施設採択について(2011.4.30)

http://www.komaba-agora.com/info/

本年度から本格的に実施される「優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業」の採択結果を受け、同劇場オーナーでもある平田が述べたものだ。

同劇場は、全国で12施設のみしか選ばれなかった「重点支援施設」に採択された。しかし、助成金額は、昨年度までの文化庁の「芸術拠点形成事業」で受けていたものからすると大幅な減額になったという。要因を平田は、一昨年秋の「事業仕分け」のあおりを受け、助成金総額が大幅に減少したことにあるという。ことに同劇場の減額率は多大なものがあるようだ。詳しくは元記事を当たって欲しいが、これは同劇場だけでなく多くの公立・民間施設にとっても抜き差しならない問題であろう。内閣官房参与で、「芸術立国論」などの著書を持ち、賛否両論喧しい「劇場法」の旗振り役的存在としても知られる平田の発言だけに、重みというか切実なものがあろう。

こまばアゴラ劇場では、2003年から貸公演を廃し、劇場で行われる年間通しての全公演を劇場主催もしくは提携公演としている。青年団関連のみならず、若い劇団やアーティストとの連携・支援を行ってきた。ダンス公演もときどき行われる。夏と冬のフェスティバル「サミット」(現在は、サマーフェスティバル「汎-PAN」として年1回に統合)では、若いアーティストをディレクターに抜擢し、新鮮なラインナップを並べるなど意欲的。劇場に宿泊することもでき、各地の劇団やカンパニーに手厚いことでも知られる。

今後どうなるのか――。経営の合理化を進めるのは致し方なく「託児サービス」を5月いっぱいで停止するという。来年度の利用劇団の公募に関しては、利用料無料の「劇場主催公演」の枠を廃して、公募は有料利用の「提携公演」のみになるようだ。また来年度も減額が続く場合、支援会員制度自体を見直すことになるかもしれないという。

「観ることは育てること」をキャッチフレーズに支援会員を募ってきたことは、この劇場の大きな特徴であり魅力。支援会員の支援金が文化庁等の公的な助成金に加えて劇場の運営を支える費用に回る。劇場は支援会員に同劇場や小竹向原にあるアトリエ春風舎等で行われる公演の年間パスや回数券を発行し、同劇場が選別した各劇団・カンパニーは固定客+劇場の顧客を得ることができる。個人の観客同士が集い法人会員として皆で観劇するグループも存在する。会員のなかには、小劇場系演劇を中心とした熱心なシアターゴーアーや見巧者も少なくない。そういった観客のあいだで話題になってブレイクしたり、口コミで評判が伝わっていった団体も少なからずあった。

私も初年度から2、3年間、年間パス発行される特別賛助会員になっており、その後も回数券をもらえる通常会員に何度かなった。はじめて観る、あるいは普段は触手の伸びない劇団・カンパニーでも気軽に足を運べ、その後フォローするようになったものもいくつかある。制度が新たな出会いを生む場として機能する。そして、支援金によって微々たるものであっても舞台芸術の発展に寄与しているという自負というか心意気を示せるのもシアターゴーアーのプライドをくすぐる。システムは若干ずつ変更されているようだが、着実に実を結んできていたようだから、可能な限り続いてもらいたいと願う。


演劇入門 (講談社現代新書)

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芸術立国論 (集英社新書)

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ロボット演劇

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2011-05-09

[]vol.3 平山素子〜近年の動向と最新作『月食のあと』リ・クリエイションについて

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このカテゴリでは、私が敬愛する、いま、もっとも見逃せない、そして確実に次代を担うに相違ないアーティストについて紹介し、簡単な作家論めいたことを記している(vol.1は矢内原美邦、vol.2は森優貴 バックナンバー参照)。vol.3では、わが国の現代ダンス界を代表するアーティストとして押しも押されぬ存在となった平山素子に触れる。いまさら彼女のような大物を取り上げても…と思われるだろうが、近年の作品傾向や動向についてメディア等で多角的に紹介される機会は意外にもなかったと思う。そこで、デビューからの来歴も絡めて、平山の活動の軌跡と現在についてまとめてみた。

平山は愛知県出身で、5歳よりクラシック・バレエを始める。筑波大学に進学し、若松美黄にモダンダンスを師事。同大学院体育研究科コーチ学専攻を修了している。1999年には、名古屋で行われた第3回「世界バレエ&モダンダンスコンクール」にて、モダンダンス部門の「金メダル」と「ワツラフ・ニジンスキー賞」をダブル受賞した。一世を風靡したH・アール・カオスのメンバーとして内外で多くの舞台を踏んだのち、2001年には、文化庁派遣在外研修員としてベルギーのウルティマ・ヴェスに留学。帰国後は、山崎広太、金森穣、島崎徹らの作品の中軸として迎えられている。なかでも、2005年、兵庫県立芸術文化センター開館公演・ニジンスキー版『春の祭典』復元上演において、選ばれし生贄の乙女役で主演した際の鮮烈な踊りと存在感は忘れがたい。

また、同時に振付も始め、2005年には、世界最高峰の名門ボリショイ劇場に招かれ、ソロ作品『Revelation』を当代を代表するプリマ、スヴェトラ―ナ・ザハーロワに振付ける。これは少し前に同作を踊る平山を見て感動したザハーロワたっての希望であるという。2008年にはフランクフルトと上海(国際芸術祭)でソロ『DANAE Sonzai Design』を発表。ミュージカルの振付も手掛け、シンクロナイズドスイミング日本代表のデュエットに振付協力した際には、2008年北京オリンピック銅メダル獲得に貢献している。

コンテンポラリーダンサー・振付家として内外で活躍する平山であるが、その評価を決定づけたのが、新国立劇場主催公演で発表してきた作品群だ。『シャコンヌ』(2003年)、『Butterfly』(2005年)という、それぞれ能美健志、中川賢と踊ったデュオを経て、フル・イブニング作品『Life Casting-型取られる生命-』(2007年)、柳本雅寛とのデュオ『春の祭典』(2008年)と話題作を連打。『シャコンヌ』『Butterfly』では、磨き抜かれた身体、怜悧な感性をもってして濃密でスリリングなデュオに仕上げ、『Life Casting-型取られる生命-』『春の祭典』では、それに加え、美術家や衣装デザイナー、音楽家との刺激的な協同作業を行いつつ劇的な興奮を観るものにもたらし、演出家としても才気を思う存分爆発させた。『Life Casting-型取られる生命-』における3Dデジタイザを用いた裸体像オブジェの斬新な用い方、『春の祭典』における連弾ピアノとの共演という意表を突く構成や終幕に用意された圧巻としか言いようのない演出は、その豊饒なるイマジネーションによって、観るものの脳天をぶち抜くくらいに強烈な印象を残した。

そして、驚嘆すべきは完成度の高さである。新国立劇場という日本の舞台芸術文化の中心を担うべき劇場のラインナップには、前衛性・先端性の求められるコンテンポラリー・ダンス作品であっても、業界人やダンス・マニアだけでなく広い観客層に訴求できる確かな強度というか表現の質の高さが問われてしかるべし。新国立での平山作品は、誰が見ても水準以上だと理解できる厳選された踊り手を起用している。そのうえで、モチーフや主題を的確に浮かばせる構造を緻密に仕組み、イマジネーション豊かかつヴィジュアルとして強い印象を残す演出効果を生むことにも長ける。上記の舞台成果において「中川鋭之助賞」「朝日舞台芸術賞」「芸術選奨文部科学大臣新人賞」「江口隆哉賞」など名だたる舞踊賞・顕彰を総なめにしているのも当然といえよう。

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近年は振付家として名声を欲しいがままにしている平山だが、根はダンサーである。踊り手としての本能・嗅覚がより前面に出てきた作品群も得難い魅力を放つ。近年、新国立劇場で定期的に作品発表するのと並行するかのように出身地の愛知において、平山の踊り手としての天才性が発揮されたプロジェクトが行われれてきた。上村なおかと共演したダンスオペラ『月に憑かれたピエロ 』振付・出演(2004年)、西島千博、山崎広太と共に座頭的な働きで舞台を支配したダンスオペラ『ハムレット-幻鏡のオフィーリア』 オフィーリア役・共同振付(2007年)、老舗料亭の趣ある中庭においてハープの神谷朝子の奏でる調べにのせ夢幻的に舞った自作自演ソロ『Carp with wings,me』(「あいちトリエンナーレ2010」まちなかパフォーマンス参加)など、愛知芸術文化センター主任学芸員(舞踊)で平山の盟友的存在である唐津絵理のプロデュースによる舞台だ。唐津は、ダンスオペラ シリーズや数々のコンテンポラリー・ダンスの先鋭的なプロジェクトを生み、大規模な国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2010」パフォーミングアーツ部門キュレーターを務め大成功に導くなど、内外で評価されるわが国をきってのパフォーミングアーツ・プロデューサーである。

愛知芸術文化センターの、ひいては唐津のプロデュースするパフォーミングアーツ公演は、アーティスト同士の意想外の組み合わせによる化学反応が何よりも魅力的だ。厳しいご時勢ゆえ予算が潤沢とはいえないであろうと推察できたり、再演が難しい等公共施設のプロデュース公演につきものの不利な点もあるが、唐津はさまざまなアーティスト同士の出会いの場を仕掛け、刺激的な作品を生み出してきた。ダンスオペラ『兵士の物語』のように、海外で受賞を果たし再演の続く作品もあり、わが国の舞台芸術界を牽引する芸術創造活動のひとつであると私は常に注目し、可能な限り足を運ぶようにしている。平山が2009年12月に愛知芸術文化センター/唐津の企画する「ダンス・アンソロジー 〜身体の煌めき」において初演した『After the lunar eclipse/月食のあと』も、パフォーミングアーツシーンに一石を投じる快作となった。当時、音楽、舞踊、演劇、映像の情報、批評による総合専門紙「週刊オン・ステージ新聞」に求められ同公演の評を寄せたが、平山にとって新境地を切り拓く舞台となったように思う。

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これは、ライトアーティストの逢坂卓郎、衣装デザイナーのスズキタカユキと組んだソロ作品。舞台上には青く点滅するLEDスクリーン。光は宇宙から飛来してくる宇宙線をリアルタイムで変換したものだ。その前で平山は宇宙の律動を受けとめつつ己の体内のリズムとも向きあうごとくうごめく。光と闇の世界で生成と消滅を繰返す生命。その神秘的な営みをはるか宇宙からの光を浴びて踊る。そして…。これ以上詳細には触れないが、とにもかくにも生命の根源に触れたかのようないいようのない感動がある。また、それが、最先端のテクノロジーによって構築されたヴァーチャルな空間で進行していることの不思議さ、さらには、その危うさのようなものまでも浮き彫りにしている。深い作品である。

先述のように、近年、平山が新国立劇場で発表した作品群は手堅いダンスと精密な振付・演出による計算行き届き完成度高い(同劇場での最新作、昨年末のストラヴィンスキー曲『兵士の物語』は、一切の語りを排し動きで語る大胆な冒険が成され、これまで以上にチャレンジングな傾向が見られたが…)。その点『月食のあと』は、彼女が身ひとつで挑むソロ、パフォーマンスに傾いたこれまでにないパフォーミングアートとして針の振り切れたエッジーな作風だ。新国立で発表してきた平山作品とは一味も二味も違うと断言できる。ダンスのみならず広義のパフォーミングアーツのファンやアート、ファッションといったトレンドに関心ある人たちにもアピールするのではないか。

とはいえ、強調しておきたいのは、パフォーマンスに傾いたといっても、テクノロジーや舞台意匠の目新しさに溺れたり、安易に場踊り的に踊るわけではない。ライトアートや衣装との協同作業によって緊密な舞台空間を生み、そこの中核に平山の「身体」がずしりと際立ってみるものに差し迫ってくる。また、新国立で創ろうが愛知で創ろうが、グループワークであろうがソロであろうが、生命と物質のあり様やテクノロジーと身体の関係性といった今日的かつ普遍的主題を真摯に問いかける平山の姿勢が一貫しているのも明らかだ。芸術家としてブレない姿勢は信用できる。

その『月食のあと』が1年半ぶりにリ・クリエイションという形で上演される。今回のクリエイティブチームは、JAXAの宇宙ステーション「きぼう」で行われたプロジェクトにて宇宙芸術実験を行った経験を経て、究極に美しい光の世界を提案するという。

平山は今回の公演に際して以下のメッセージを出している。

今回の「月食のあと」は自然の現象から大きく影響をうけ、じりじりと変化していく身体をテーマにしています。節電が必要とされているこの時期に奇しくも「光と闇」に大胆に取り組んだ演出でもあります。また、ソロ作品は、独特の集中力をアーティストに強い、己を映し出す鑑として非常に過酷で孤独なものです。降り注ぐ宇宙線を浴びて身体は原始的な輝きを強め、LEDは多くの人々に未来を示すと信じています。

今、このタイミングで取り組むことが出来るのも、舞踊家として運命のようなものを感じています。心を込めて、身を投げ出し、人間の生きる力、そして希望の光を全身で表現できたらと思っております。本当に本当に、多くの方に見届けていただきたい作品です。

改めて、今回の地震、津波で被災された方々には、少しでも早く笑顔が戻りますようお祈りしております。

振付家・ダンサーとしてますます脂の乗った時期に入って来た平山は、筑波大学人間総合科学研究所准教授という重責も担っている。研究者として、後進を育てる指導者としても多忙な日々を送っているはずだ。そんななか、今回、世田谷パブリックシアターの提携を得ての自主公演となる東京公演のほか名古屋・兵庫で公演を行う。この初夏、平山のみならず中村恩恵、首藤康之、服部有吉といったビッグネームが奇しくも自主公演もしくはそれに近い形態の公演を行うが、そのなかでも平山公演の規模は大きい。クリエイティブな面のみならず、よりダンス界の内外で存在をアピールし、ダンスの魅力を広めていくリーダーとしての役割も一層期待されるところ大である。

平山素子ソロプロジェクト

『After the lunar eclipse/月食のあと』 リ・クリエイション

■出演者・主なスタッフ

構成・振付・ダンス:平山素子 ライトアート:逢坂卓郎 衣裳:スズキタカユキ

ヘア&メーク:上田美江子、三島裕枝(SHISEIDO) 音楽:落合敏行

■ 公演スケジュール

【東京】2011 5/27(金)19:30 5/28(土)16:00 5/29(日)16:00 会場:世田谷パブリックシアター

※各公演終了後、ポストパフォーマンス・トークあり。

5月27日(金)近藤良平(コンドルズ主宰)×平山素子

5月28日(土)唐津絵理(愛知芸術文化センター主任学芸員)×逢坂卓郎×スズキタカユキ×平山素子

5月29日(日)内富素子(JAXA国際部)×逢坂卓郎×平山素子

【兵庫】2011 6/18(土)14:00 会場:兵庫県立芸術センター 阪急中ホール

【愛知】2011 7/22(金)19:00、7/23(土)14:00/18:00 会場:愛知県芸術劇場 小ホール

■公式HP等

平山素子 公式ホームページ

「月食のあと」リ・クリエイション 特設サイト

写真:『After the lunar eclipse/月食のあと』(2009年)より

撮影:南部辰雄 初演:愛知芸術文化センター 提供:NPO alfalfa

2011-05-04

[]ポールラッシュ・ドリームプロジェクト(”清里フィールドバレエ”心の震災復興プロジェクトフィールドバレエ巡回公演)

先日、このblogでもご紹介したが(http://d.hatena.ne.jp/dance300/20110420/p1)、山梨県・清里高原のリゾート施設「萌木の村」(代表:舩木上次)、バレエシャンブルウエスト(主宰:今村博明・川口ゆり子)が毎夏、「萌木の村」特設野外劇場で行っている「清里フィールドバレエ」が5月半ばより東日本大震災の被災地にてミニ公演を行う。

宮城・岩手・福島の各県で計20回の公演を予定しているようだ。

「ポールラッシュ・ドリームプロジェクト」特設ホームページ5/11追記。

踊り手はバレエシャンブルウエストのソリストたち、BGMを奏でるのは「萌木の村」が所持する自動演奏楽器「ポール・ラッシュ」、仮設舞台を製作するのは「清里フィールドバレエ」でも舞台を手がける清里の大工の方たちだという。

今回の企画は、ポールラッシュ・ドリームプロジェクト(”清里フィールドバレエ”心の震災復興プロジェクトフィールドバレエ巡回公演)と名付けられている。ポール・ラッシュ(1897年 - 1979年)は、米国の牧師で、1923年の関東大震災後の日本のキリスト教青年会拠点を立て直すために1925年に来日し、聖路加国際病院の設立に寄与。清里高原を開拓した「清里の父」として知られる。わが国におけるアメリカンフットボール振興のパイオニアでもある。その業績は改めて顧みられていいだろう。

【日程・開催地】(「清里フィールド・バレエ」HPより引用)

5/12(木) 岩手県宮古市

5/13(金) 岩手県山田町

5/14(土) 岩手県大槌町

5/15(日) 岩手県釜石市

5/16(月) 岩手県大船渡市

5/18(水) 岩手県陸前高田市

5/19(木) 宮城県気仙沼市

5/20(金) 宮城県南三陸町

5/21(土) 宮城県女川町

5/22(日) 宮城県石巻市

5/23(月) 宮城県東松山市

5/24(火) 宮城県多賀城市

5/26(木) 宮城県仙台市

5/27(金) 宮城県名取市

5/28(土) 宮城県岩沼市

5/30(月) 宮城県亘理町

5/31(火) 宮城県山元町

6/01(水) 宮城県新地町

6/02(木) 福島県相馬市

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清里の父 ポール・ラッシュ伝

清里の父 ポール・ラッシュ伝

2011-05-01

[]2011年5月 ダンス編

ダンス系は大御所から新鋭まで盛りだくさん。

大御所では、まず勅使川原三郎『サブロ・フラグメンツ』(5/1-8 川崎市アートセンターアルテリオ小劇場)。御大・勅使川原やこのところソロ作品を師に振付けてもらうなど活躍する弟子の佐東利穂子らが出るグループワークのようだ。客席数120席余りの劇場で彼らを間近にみられるという点で貴重といえるのではないか。公演期間中には勅使川原関連の映像上映プログラムもある。また、勅使川原はラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンにも参加し5/5の2公演に出演する。

コンテンポラリーダンサー&振付家としていまをときめく平山素子『After the lunar eclipse/ 月食のあと』リ・クリエイション (5/27-29 世田谷パブリックシアター 6/18兵庫芸術文化センター阪急中ホール、7/22-23愛知県芸術劇場小ホール)は2009年末に名古屋で初演されたソロ作品の改訂再演。ライトアーティストの逢坂卓郎、衣装デザイナーのスズキタカユキとのコラボレーションで、近年、新国立劇場で彼女が発表している作品群とは一味も二味も違う。どちらかといえばパフォーマンスに傾斜した実験的な意欲作で新境地。が、生命とテクノロジーといったテーマやモチーフは一貫している点に、ブレないアーティスト魂を感じさせる。

このところ精力的に作品を連打する東野祥子率いるBABY-Q『FACES BLANK』(5/4-5 六行会ホール)も気になる。東野はこれまでのグループ作品においても、アングラチックで混沌とした世界を描きながら社会というシステムの中での翻弄される人間存在の危うさを描いてきた。「顔のない人達」が描かれるという今作は、大震災以後の世の中や日本人の言動や精神の深層をえぐるものになるかもしれない。

東京公演が行われないこと、同時期に公演が重なるためパスしてしまう人も少なくないと思うがNoism『OTHERLAND』(5/27-29 新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ劇場 6/18びわ湖ホール)は絶対に見逃したくないところ。外部振付家招聘企画第4弾となり、稲尾芳文&クリスティン・ヨット・稲尾、アレッシオ・シルヴェストリンという2組のゲスト振付家による新作と、芸術監督・金森穣振付レパートリーからの3作品を上演する。新潟公演限定で金森が研修生カンパニーNoism2に振付ける新作『火の鳥』も上演される。「極めて異なる身体性と世界観をもった振付家達と共にNoismが切り拓く新たな地平」というのがキャッチコピーだが、日本の真にプロフェッショナルなダンスの未来を開拓する金森とNosimのヴィジョンが見て取れる公演になるのではないか。

新国立劇場「DANCE to the Future 2011」(5/28-29 新国立劇場中劇場)は、新国立劇場のバレエ・ダンサーにモダン/コンテンポラリー系の振付者が振付けるという企画。今年の関心はキミホ・ハルバートが振付提供すること。クラシックの枠を大きく崩すことなくそれでいて適度にコンテンポラリーのテイストを織り交ぜた振付で踊り手の個性を繊細にすくいあげる。彼女の振付を得てローザンヌはじめ内外のコンクールで上位入賞した若手ダンサーは枚挙にいとまがない。基本的にクラシック中心に踊っている新国のダンサーと相性は悪くないはず。他に2者が作品提供。

佐藤宏の主宰するラ ダンス コントラステ『 L'allumette(ラリュメット)』(5/31-6/1 座・高円寺2)もバレエ系のダンサーが踊るコンテンポラリーもの。このカンパニーは、チャイコフスキー三大バレエやさまざまな古典的な物語を読み替えたコンテンポラリー・バレエを発表している。照明や衣装・美術等も洗練されている。10数年前からバレエ/コンテといった枠を突き抜けて創作を続けてきた姿勢はあらためて評価されていいだろう。新作は「マッチ売りの少女」をモチーフにしているようだ。

関西の公演をひとつ。ボヴェ太郎『Resonance of Twilight 』(5/20-21「旧石橋家住宅」・庭園)。ボヴェはまだ30歳そこそこだが、ひと言で言って天才舞踊家である。空間と身体への意識のなじませ方に並ならぬ感性がある。その踊りには、上善如水といえるような滑らかな質感もあり、空間との親和性を感じさせるが、同時に近寄りがたい位の異様なまでの緊張感を秘めていて、毎度ながら知らぬ間にその魔力に惹きつけられる。東京出身だが京都中心に活動。関西で静かにではあるが熱心に支援されているようで好ましいが、遠方からでも足運ぶ価値ある。

企画ものでは「DANCE-X11」(5/8-10 青山円形劇場)というものが。これは、東京・ソウル・モントリオールの劇場ネットワーク×3カ国のアーティストによるサーキットというのが触れ込みだ。日本から出演の森下真樹は2004年初演の『コシツ』を練り上げ2011バージョンとして発表。ダンスという切り口から時代の多様性を反映させるとともにダンスの現在・未来を問うというコンセプトのようなので楽しみ。

JCDN「踊りに行くぜ!!」II(5/13-14 アサヒアートスクエア)は大震災発生当日・翌日に予定された公演の振替となる。スペース間巡回を通して各地のダンス熱を高めることからクリエーション重視へと移行したこの企画の新展開。お手並み拝見といきたい。

わが国の現代舞踊の先駆者で後進にも大きな影響を遺した江口隆哉・宮操子を偲び、その作品を復元再演し未来へつなぐのが「江口・宮アーカイブ」(5/14-15 日暮里サニーホール)。「日本の太鼓」「春を踏む」「プロメテの火」「スカラ座の毬つかい」「タンゴ」という名作が甦る。現代日本のダンスの源泉を再確認できる文字通りの貴重な機会となるだけに、ひとりでも多くのダンス・ファンに足を運んでもらいたい。

舞踏では、麿赤兒の大駱駝艦・壺中天『底抜けマンダラ』(5/6-15 大駱駝艦・壺中天)。マニアックなファン中心に盛況を誇る。今回は向雲太郎の振付。

日本舞踊では各流派の中堅で次代を大きく担う西川箕乃助、花柳寿楽、花柳基、藤間蘭黄、山村若が集結した五耀會が公演を行い、新作「五彩華戯場(ごしきいろどるはなぶたい)」―楽屋のれん―ほかを発表する。日舞界を背負う気鋭たちがタッグを組み「舞台芸術」としての日舞を追求し、一般観客・業界外へのアピールを積極的に行う。バレエやコンテンポラリーの人たちも学ぶところがあるのではないか。

勅使川原三郎 『SKINNERSへのエチュード』

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モダンダンス江口隆哉と芸術年代史

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