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ダンスの海へ 舞踊評論家・高橋森彦のblog このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2011-12-30

[]年末年始に際して

2011年も残すところあとわずかとなった。

年末回顧に関しては、このblogのカテゴリ[2011回顧]をご覧いただきたい。また、音楽、舞踊、演劇、映像の情報、批評による総合専門紙「オン・ステージ新聞」新年特大号の洋舞ベスト5に回答したほか、「ダンスマガジン」2月号の「バレエ年鑑2012」ベスト・ステージ&ピープル 2011のアンケートにも答えた。私がどの作品・誰の名を挙げたか/他の選者がどうか興味持たれる方は、お手に取って一読願えれば幸いである。



観劇納めは29日、神奈川県民ホールで行われたファンタスティック・ガラコンサート2011「カンターレ、イタリア! 永遠のオペラ&バレエ」だった。今年で6回目となる催しである。指揮:松尾葉子、司会:宮本益光、出演:岡本知高(ソプラニスタ)、山口道子(ソプラノ)、大澤一彰(テノール)、宮本益光(バリトン)、管弦楽:神奈川フィルハーモニー管弦楽団といった面々がヴェルディ「アイーダ」「運命の力」、プッチーニ「トスカ」「トゥーランドット」やジョルダーノ「アンドレア シェニエ」、ディ・カプア「オー・ソレ・ミオ」(イタリア民謡)といった珠玉の名曲を唄い奏でた。加えて、東京バレエ団のプリンシパル上野水香と高岸直樹が参加(今年で4回目)。『白鳥の湖』黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥのほかオペレッタ『メリー・ウィドウ』より「メリー・ウィドウ・ワルツ」を山口と宮本の唄にあわせて踊った。神奈川出身の上野は「かながわ観光親善大使」を務めることでも知られよう。今秋結婚式を挙げた上野と高岸は息の合ったパートナーシップをみせていた。

楽しく華やかに盛り上がった会だったが、MCの宮本は曲の合間に「今年は大変な年でした…」という風に語りはじめた。震災後、音楽家がいま必要とされているのか、何ができるのか自問をした。でも、すばらしい作品(曲)があり、それを聴きたい観客がいる以上は唄い・演奏していくのが使命。そのような意のことを熱意を込めて語っていた。公演の最後近くには岡本が「アヴェ・マリア」を祈りを込めて歌い感動を誘った。

また、神奈川フィルが近く予定される公益法人化に際し財政難のため存続の危機に瀕している旨が告げられた。「がんばれ!神奈フィル 応援団」が結成され、同時に、楽団内に「神奈フィル ブルーダル基金」が設けられている。舞台芸術界を取り巻く状況は極めて厳しいものがあるけれども、あらためてその現実を突きつけられた。


上野水香―バレリーナ・スピリット

上野水香―バレリーナ・スピリット


宮本益光とオペラへ行こう (旬報社まんぼうシリーズ)

宮本益光とオペラへ行こう (旬報社まんぼうシリーズ)


28日は両国のシアターΧでケイタケイ's ムービングアース・オリエントスフィア『水溜まりをまたぐ女』『かもめ』を観る。両方ともケイによるソロである。前者は伝説的なLIGHTシリーズのPart 35最新作だ。ケイは日本の現代舞踊の先駆者・檜健次&日本舞踊の藤間喜与恵に師事したのちジュリアード音楽院舞踊科に留学。アナ・ハルプリン、マーサ・グレアム、トリシャ・ブラウン等の下で学ぶ。アメリカン・ポストモダンダンスの最盛期のニューヨークで活動した彼女は、同地を拠点にムービングアースを結成する。1969年以降LIGHTシリーズを世界各地で繰り返し上演してきた。最初の作品の初演から40年を迎えた2009年以降、再びLIGHTシリーズ上演を本格的に開始している。

終演後、ロビーで行われた簡単な打ち上げの席で乾杯の音頭を取った評論家の大御所・うらわまことがケイはつねに「人と自然」の関係を描いてきたと触れた。大震災、原発事故の影響ははまだまだ大きい。「人と自然」について考えざるを得ない時節柄だ。うらわの指摘するように、ケイが一貫して追求してきた主題は、いま、一層アクチュアリティがあるといえるのではないか。彼女の創作は凡百の底の浅い安直な自然賛歌、生命礼賛とは一線を画する。自然の厳しさに対する畏怖をひしと伝えもする骨太の創作だ。祈りとは敬虔さから生まれる出るものという思いを新たにさせられた。

ケイの会が行われている同時刻、福島・いわきでは「オールニッポンバレエガラコンサート2011 in いわき」が催されていた。ユーストリームによる中継も行われた。所属を超えたバレエ・ダンサーが集いう震災復興支援チャリティーコンサート。自分たちに何ができるかを模索しながら震災後間をおかずプロジェクトを始動し、夏には東京公演を行った。その収益を基にして年内に被災地での公演にこぎつけた行動力を讃えたい。

「よいお年を」「あけましておめでとうございます」などと、気安くいえない雰囲気もある。が、少しでも2012年が良い年となるように願いたい。たとえ語るべき希望はなくとも、希望を見出すことができるのが人間であり、それを促すのが芸術の力であるかもしれない。2011年、そう感じさせてくれたすべてのアーティストに感謝と敬意を捧げたい。

(敬称略)


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2011-12-26

[]週刊「オン★ステージ新聞」2011年新人ベスト1に米沢唯&鈴木ユキオ

音楽、舞踊、演劇、映像の情報、批評による総合専門紙「週刊 オン★ステージ新聞」新年特大号1月6日号/第1906号が発行された。

当方も2006年以降同紙に寄稿しているが、今回の新年号でも2011年度の「洋舞ベスト5」と「新人ベスト1」が発表されている。評論家/ジャーナリスト15名の選出。

作品単位では新国立劇場バレエ団『パゴダの王子』、中村恩恵×首藤康之『Shakespeare THE SONNETS』、東京バレエ団『ラ・バヤデール』、小林紀子バレエ・シアター『マノン』、貞松・浜田バレエ団・創作リサイタル23『冬の旅』等が票を集めている。来日では、ベルリン国立バレエ『チャイコフスキー』、アメリカン・バレエ・シアター『ロミオとジュリエット』等が高評価を得た。団体・個人別で計上すると首藤康之の主催・出演公演とシルヴィ・ギエムの来日公演が抜きんでた評価を集めた。

細かな集計や各選者のコメント等詳しくは同紙を手に取ってご覧いただきたい。

「新人ベスト1」は以下の通り。

新人ベスト1舞踊家 米沢唯(新国立劇場バレエ団)

新人ベスト1振付家 鈴木ユキオ(金魚 主宰)

ダンサーに関しては昨年は上位が拮抗して該当者なしだったが、09年が福岡雄大、08年が小野絢子、07年が清水健太という風に大手バレエ団の若手が入っている。振付家に関しては昨年が伊藤郁女、09年が該当なし、08年が森優貴、07年がキミホ・ハルバート、06年が東野祥子。なかなか渋いラインナップではないだろうか。振付家に対する賞は少ない。大きな賞ではないけれども貴重なものがあるかと思う。

米沢は新国立劇場バレエ団『パゴダの王子』さくら姫役の踊りなどが評価された。愛知県出身で名古屋の塚本洋子に学ぶ。ヴァルナ国際バレエコンクールジュニアの部第1位をはじめ内外のコンクールにて上位入賞。2006年米のサンノゼ・バレエ団に入団し、さまざまな古典・現代作品に出演した。バランシンやサープ作品も踊っている。

2010年に新国立劇場にソリストとして契約・入団し『パゴダの王子』で抜擢される。堅実なテクニックと豊かな表現力を披露。文句ないキャリア・実績も備えているだけに小野絢子と並んで若手プリマのエース格となることが期待される。

父親は演出家の故・竹内敏晴。「からだとことばのレッスン」と呼ばれる独特の演劇トレーニングの仕方を開発したことで知られる(wikipediaより引用)。私も演劇評論家・西堂行人の論考を読んで竹内の仕事に興味を持っていたのだけれども、米沢が竹内の愛娘だったとは不覚にも最近まで知らなかった…。竹内の最後の本となった「レッスンする人—語り下ろし自伝」には米沢が「父と私」と題する一文を寄せている。

個人的には2005年に愛知芸術文化センターで行われたダンスオペラ「UZME」においてギンギラギンのメタルの衣装を着せられて踊っているのが忘れがたいというかツボった(笑)。その後に行われた塚本洋子バレエスタジオの創立25周年記念公演でも活躍していたのを覚えている。塚本は榊原弘子・有佳子姉妹や荒井祐子ら少なからぬ名プリマを輩出している。米沢も芸どころ・名古屋が生んだ注目の気鋭プリマである。


レッスンする人―語り下ろし自伝

レッスンする人―語り下ろし自伝


鈴木は2月、青山円形劇場他にて上演された『HEAR』、7月、こまばアゴラ劇場で上演された『密かな儀式の目撃者』、11月、愛知芸術文化センター主催のオンド・マルトノ・コンサートとコラボレーション・ダンス公演『プロメテウスの光』等が評価された。

鈴木は舞踏出身。土方巽の系譜を継ぐアスベスト館に学び、室伏鴻やSAL VANILA等の作品に出演するかたわらカンパニー金魚を立ち上げた。独自の方法論による強固な身体性が基盤にありながらその舞台ではつねにリアルで切実な身体とは何かが問われ、時代と共振するアクチュアリティに満ちている。2005年に「トヨタコレオグラフィーアワード」の「オーディエンス賞」、2008年には同アワードのグランプリ「次代を担う振付家賞」を獲得した。以後、毎年新作を発表するほか海外公演も数多く行っている。

個人的には2004年12月に行われたネクストネクスト・ファイナル『幸福の森の掟』(金魚×10)を観て以後は主な公演の大方を欠かさず追ってきた(無論、それ以前から鈴木の存在を知っていたが)。鈴木と安次嶺菜緒を中心としたカンパニーは年を追うごとに成長をみせ、2006年12月の『犬の静脈に嫉妬せず』、2007年の『沈黙とはかりあえるほどに』あたりからコンテンポラリー・ダンスシーンの一線に躍り出てきた。2008年のトヨタ受賞後は破竹の勢いで活躍し内外で公演・ワークショップに引っ張りだこである。

東京シティ・バレエ団に提供した『犬の静脈』や、この夏のDANCE COLLOQUIUM Xで発表した『密かな儀式の目撃者』のようにバレエやモダンダンスで鍛えられた踊り手の潜在能力を活かしつつ彼女たちの築き上げてきたメソッドやスキルをリセットし新たな動きや身体性を追求した作品群も大変刺激的だ。バレエ団やモダンの団体がもっと振付委嘱してほしい。おもしろい化学変化が起こりそう。年明け2月には、シアタートラムで「揮発性身体論」と題した公演を行う。鈴木のソロ『EVANESCERE』と安次嶺ら女性メンバーによる『密かな儀式の目撃者』を上演する。心待ちにしたい。


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2011-12-20

[]ベジャールの遺伝子を受け継ぐ者たち〜小林十市、金森穣、東京バレエ団、風間無限

故モーリス・ベジャールゆかりのアーティストの舞台を観る機会が続いた。

最初は小林十市×大柴拓磨によるダンスアクト『ファウスト・メフィスト』(12月15日 新宿BLAZE)。ベジャール・バレエ・ローザンヌで活躍した小林は腰を痛めバレエの舞台から遠ざかり、現在は役者として演劇中心に活動する。昨年末の東京バレエ団によるベジャール振付『M』において初演時に務めたシを2日間踊ってベジャール作品からの卒業を表明した。とはいえまだまだ身体は動く。『ファウスト・メフィスト』はダンスや演劇といった枠にとらわれず新しい挑戦をしたいと小林自ら動いて実現させた企画のようだ。

演出・振付には日本人男性としてはじめてパリ・オペラ座バレエ団と契約し、ボルドー・オペラ座バレエ等ヨーロッパで活躍した大柴を迎えた。ゲーテ「ファウスト」をモチーフに小林がファウストを、大柴がメフィストを演じる。最初、椅子に腰かけたふたりが軽妙なトークを繰り広げ、今回の舞台の出来上がった経緯が明らかになる。その後もダンスの合間に両者の対話が入る。大柴が小林にどういったものを踊りたいかと問うと、小林は太極拳や殺陣やヒップホップを挙げ実際に踊る。両者のダンスは掛け値なしにすばらしい。クールでかっこいいデュオ、小林の磁力十分なソロは一見の価値がある。

公演名・内容に関してはベジャール・バレエがベジャールの『我々のファウスト』を再演すべく動いていたことも頭をよぎって「ファウスト」が浮上してきたようだ。とはいえ具体的にベジャールの影響は見受けられない。トーク部分では十市ファンおなじみのスターウォーズネタをはじめ楽屋話めいたものも少なくなく、ちょっとどうかとも思ったし、さほど大きくないライブハウスが会場とはいえ全席指定7,500円という価格設定からして十市ファン以外には食指が動きにくかったはず。しかし、ジャンルや表現の壁を軽々と越えてマルチプルに活動する小林の新展開のスタートとして好意的に受け止めたい。

続いてはNoism1 & Noism2合同公演 劇的舞踊『ホフマン物語』(12月16日 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館)。Noismは日本で初めてといえる本格的な欧州スタイルの劇場付カンパニーであり、数々の企画を成功させダンスシーンに風穴をあけているのは周知のとおりだ。芸術監督・金森穣はルードラ・ベジャール・ローザンヌに留学しベジャールに師事、ルードラ・ベジャール・ローザンヌ学校公演にて処女作『You must know』を発表している。金森はベジャールへのリスペクトを折に触れ語る。

金森作品にベジャールの影響を見出すことができるのか——。ベジャールの死後に作られた『Nameless Hands〜人形の家』にはオマージュが込められた場面があるし、この夏「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」にて上演された『中国の不思議な役人』はベジャールも振付けており創作に際して意識したという。しかし、振付のボキャブラリーや演出に関して具体的にベジャールの影響を見出すことは難しい。詮索すること自体馬鹿げているともいえる。とはいえ、2010年夏に初演された『ホフマン物語』を観たとき、金森のなかにあるであろう「ベジャールの血」を感じずにはいられなかった。

オッフェンバック曲のオペラの台本と原作であるE.T.A.ホフマンの著した3つの小説を読み込んで完成させたオリジナル台本を基に展開される2時間の舞台には、劇場空間を非日常な祝祭的空間に変えるダイナミズムが充満する。生と死というテーマも秘められていよう。やや難解にも思われるが観客の想像力に働きかけ祝祭空間に巻き込むという点、生と死という人間にとって舞踊にとって根源的な主題が底流をなしている点に、ベジャールの創作姿勢と相通じるものがあるのではないだろうか。

『NINA〜物質化する生け贄』を皮切りに近年の『Nameless Hands〜人形の家』や『中国の不思議な役人』では、生け贄や人形、黒衣、そしてエロス・タナトスといった同様のモチーフが同曲異音で語られ、リンクしあい奥行きと広がりを獲得している。金森ワールド、金森の舞踊宇宙である。ベジャールは生涯にわたって膨大な数の作品を遺した。それらは大きな円環のなかに位置づけられる。広大無辺のベジャール芸術である。ベジャールを喪ったのは痛恨だ。けれどもベジャールの血を受け継ぐ若き巨匠の歩む道程に寄り添うことができる。その喜びを新たにした今回の新潟訪問であった。

最後は東京バレエ団の『ザ・カブキ』(12月17日 東京文化会館)。この公演に関しては寄稿する予定もあり詳しく触れない。1986年の初演から内外で170回を超える上演を重ねてきた東京バレエ団の代表作であるのは言うまでもないだろう。歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」のバレエ化であり、うわべだけのジャポニズムとは一線を画した日本文化への深い敬意が感じられる。今回は初演から四半世紀を経て冒頭の現代の場面の衣装と美術の一部が改訂された。所見日のキャストは由良之介:高岸直樹、顔世:上野水香。今回が高岸の日本での踊り収めになるという。翌日には、昨年4月公演で鮮烈な印象をのこした新星・柄本弾&二階堂由依が主演。来年5月にはパリ・オペラ座(ガルニエ)での上演が予定されている。末永く踊り継がれていくことを願いたい。

以下は余談めくがベジャール絡みの話題ということでお許し願う。東バと翌日に観た牧阿佐美バレヱ団の会場入り口で配布されていたチラシの束のなかに興味深いものが。3月に行われる東京小牧バレエ団の「被災地の復興を願って贈る鎮魂歌」公演のチラシに知る人ぞ知る踊り手の名がある。その名は風間無限。10歳のとき、東京バレエ団『M』(ベジャール振付)の再演時に三島由紀夫の少年時代を演じたことで知られよう。牧阿佐美バレヱ団の『くるみ割り人形』にはフリッツ役として4年連続出演。天才子役の名をほしいままにした。その後東京バレエ学校ボーイズクラス第1期生となり溝下司朗、森田雅順に師事。ユース・アメリカ・グランプリ入賞後はドイツのジョン・クランコ・バレエ・スクールにスカラシップ入学する。卒業後はアメリカ・オクラホマ州のタルサ・バレエ団に入り数々の近現代バレエの名匠の作品を踊っている。2010年帰国後は話題の舞台『GQ』や川崎市岡本太郎美術館で上演された「TAROと踊ろう!」に出演して小気味いいダンスを披露している。今回出演する創作バレエ『マダレナ』は江戸時代、キリシタン弾圧の陰で散った若者の恋を淡く切なく描くもの。東北の寒村の青年マチアス役(主役)を演じるようだ。『M』の三島少年を演じてからから15年余り——。彼がどのような成長を遂げているのか興味を抱くベジャール・ファンも少なくないのではないか。

ベジャールの遺伝子は確かに受け継がれている——。そう実感した週末だった。


小林十市インタビュー収載

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2011年 03月号

DANCE MAGAZINE (ダンスマガジン) 2011年 03月号


NINA materialize sacrifice [DVD]

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2011-12-18

[]地域における先進的な文化活動 八戸、金沢など

時事通信が以下の記事を配信した。

芸術家に魅力ある都市は?=先進的文化活動を調査−総務省(時事通信)

http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=2011121700177

総務省が地方都市に芸術創造活動に携わる人材が定住して、地元住民と交流していくための条件を調査する事業に乗り出したというニュース。青森県八戸市や金沢市などの地域で行われている先進的な文化芸術活動に着目し、現地調査を通して特長を調査するという。記事によると、総務省は今後の地域の在り方について「高い知的付加価値を生み出す人材を引き付ける都市づくりが重要になる」とみているという。「知の拠点」として栄える都市をモデルケースにするということだろう。

八戸は芸術文化振興に熱心だ。たとえば「南郷アートプロジェクト」がある。森下真樹、鈴木ユキオ、山田うん、といったコンテンポラリー・ダンスの気鋭らがワークショップ等を行ったりしている。余談だが、そもそも八戸にはバレエや現代舞踊の教室が結構あって現在活躍するダンサーも少なからず輩出。港町・八戸は東日本大震災において死者こそ出なかったが被災し、少なからぬ被害を受けた。一日も早い復興を願いたい。

南郷アートプロジェクト

http://nangoartproject.jp/

【予告編】 南郷アートプロジェクト2011 Co.山田うん × madrugada

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金沢といえば近年、金沢21世紀美術館がオープンし現代美術の展示のみならずダンス関連のイベントや公演も盛ん。1988年に結成されたオーケストラ・アンサンブル金沢は地方を本拠としながらも国籍地域を問わず幅広いメンバーを募ってスタートし、レベル高く独特な個性を放つオケとして知られている。音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」金沢版も行われている。ファッションエッセイストでバレエ・ファンにもおなじみのフランソワーズ・モレシャンも夫妻で金沢に書斎を構えており、金沢の文化に魅了されているようだ。

描き出すアートな街 井上道義さん(オーケストラ・アンサンブル金沢音楽監督)

http://kanazawa.keizai.biz/column/1/

モレシャン夫妻の北陸記(読売新聞)

http://hokuriku.yomiuri.co.jp/hoksub4/morechand/index.htm




2011-12-15

[]洋舞2011 vol.2

現代舞踊やコンテンポラリー・ダンスと呼ばれる分野のダンス中心に触れる。

大ベテランでは芙二三枝子が米寿記念「芙二三枝子現代舞踊公演」を行って健在ぶりをみせた。山田恵子・和田寿子・藤里照子・森嘉子・山田奈々子による五人の会『五重奏』というものもあった。vol.1で触れたが、藤井公珈琲の会・藤井公追善公演「われは草なり」も忘れ難い。現代舞踊協会が文化庁の委託を受けて行った「全国新進芸術家による現代舞踊フェスティバルin東京」では、西田堯『パラダイス・ナウ』(1986年)が25年ぶりに再演され話題になった。多くの弟子筋が活躍し「江口・宮アーカイヴ」(vol.1にて触れた)開催の主導的役割を果たすなど現代舞踊界をリードする金井芙三枝『樹魂』も「時代を創る 現代舞踊公演」にて久々に再演された。今秋惜しくも亡くなったモダンダンスの巨星アキコ・カンダは死の2週間前まで舞台に立ち、「花を咲かせるために〜バルバラを踊る〜」は忘じ難い会となった。

近年活発に活動するケイ・タケイs ムービングアース・オリエントスフィア『Chanting Hill』はグループワークとして前作より格段に深化し、生の根源を深く鋭く問うた。花輪洋治は神楽坂の小劇場でひとり『リア王』を舞い健在を示した。加藤みや子ダンススペースブラジル凱旋公演『Sand Topos』&『笑う土』『日記』の2プログラムを上演して存在感十分。独自の創作路線を歩む森谷紀久子モダンダンス公演『神話の森〜狐のふうりん』もあった。笠井叡『Utrobne〜虚舟〜うつろぶね』の、いよいよ先鋭化しつつ手応えのあるパフォーマンスにも圧倒された。上田遙劇的舞踊集団kyu『灰かぶり姫〜僕らのシンデレラ物語〜』『Sotova』でエンターテインメントとの親和をみせた。本間祥公ダンスエテルノシリーズ企画第8弾 名嶋聖子×池上英樹×梶谷拓郎では本間と子女で振付に才をみせ現在ドイツに文化庁在外研修員として留学する山口華子が振付を行った。田中いづみダンス公演『そして、今』は、いまという時代と誠実に向き合った人間賛歌に思われた。

80年代後半のコンテンポラリー・ダンス黎明期から活動する大御所の活動もあった。現代ダンスの巨匠・勅使川原三郎はゴールデンウィークにカンパニーメンバーと『サブロ・フラグメンツ』を発表しメディアや批評家から極めて高い評価を受けた。ただ、終盤にあった津波を思わせるシーンなど、私にはまだ少しばかり生硬な表現にも思われたし、勅使川原&佐東利穂子と他のメンバーの技量差がやや目に付いた。コンテンポラリー・ダンス界のゴッドマザーと呼ばれる 黒沢美香は自身出演しなかったが大作となる黒沢美香&ダンサーズ公演・ミニマルダンス計画2『虫道』を発表。

中堅がいい仕事をした。コンテンポラリーダンサー/振付家として第一線で活躍する平山素子が単独公演を行った。『After the lunar eclipse / 月食のあと』リ・クリエイションは2009年の愛知初演ソロの完成度を高め照明・音響・衣装などの諸要素との緊密なコラボレーションに発展させていた。内田香Roussewaltz『真実』は彼女たちが現代日本で最高に美しくクール、そして繊細かつ大胆に踊れる練度高い集団であることを証明したのではないか。二見一幸ダンスカンパニーカレイドスコープ・15周年記念公演も忘れがたい。二見は動きのヴァリエーションの多さと組み合わせにセンスをみせるが、近作では繊細な情緒も感じさせるものも発表し作家として進化を遂げている。今年は目立った活動がなかったが能美健志らを含めたこの世代が日本の現代ダンスの厚みを形成していることはもっと強調されてもいいかと思う。

昨年度の舞台成果により今春、芸術選奨文部科学大臣賞と江口隆哉賞を得た中村恩恵はvol.1で触れた首藤康之との協同作業『Shakespeare THE SONNETS』等に加え、初の自主公演としてダンスサンガ・カマラード公演『Songs of Innocence and of Experience(無心と体得のうた)』を行いフルイブニング作品を発表した。

彼らと同世代の実力者がすぐれた作品を発表して新境地を開拓した。岩淵多喜子は横浜・象の鼻テラスで新境地となるDance Theatre LUDENS『1 hour before Sunset』を発表。パーカッショニスト・加藤訓子との共演も話題に。これまでの折り目正しく型にはまった岩淵作品とは違って開放感があった。個人的には今年もっとも予期せぬうれしい収穫。岡登志子アンサンブル・ゾネ『Still moving2』はドイツ表現主義の影響も受けつつ独自のメソッドを探求してきた岡/ゾネの集成にして新展開を予感させる傑出した舞台だった。中村恩恵(ダンス)、高瀬アキ(音楽)とのコラボレーションがストイックに傾きがちだった岡/ゾネの世界に広がり・奥行きをもたらしている。

コンテンポラリー界の人気者も実力を発揮。イデビアン・クルー率いる井手茂太は新国立劇場で『アレルギー』を発表したほか、秋に快作『出合頭』を発表し脂が乗りきっている。コンドルズの近藤良平は久々のソロ『11DANDY』を披露して話題に。近藤は近藤良平と障害者によるダンス公演『適当に やっていこうと 思ったの』もあったが、これがなんともやりたい放題のブッ飛んだ舞台で驚かされた。

2000年代のコンテンポラリー・ダンスを担ってきた存在が現在も一線で活躍している。矢内原美邦ニブロール『THIS IS WEATHER NEWS』は昨年秋「あいちトリエンナーレ2010」で初演されたものだが(初演も所見)、震災後の世界を予知していたかのような重くずっしりとした内容にあらためて震撼させられた。黒田育世(BATIK)の『おたる鳥をよぶ準備』は試演会のような形式での上演だったが、黒田の踊りたい・表現したいという狂おしいまでの内的衝動が反映され、痛々しくも切実で胸を打つものがあった。震災を挟んで『私たちは眠らない』『FACES BLANK』というアングラチックで刺激的な作品を発表した東野祥子(BABY-Q)も活発な活動を展開した。

近年東京以外での活動が中心の白井剛はフェスティバル/トーキョーにて『静物画—still life』を発表。ストイックな舞台創りの極点をみせた。舞踏から出発し常に身体で試行し内省的な創作を行っている鈴木ユキオは映像やアニメーションとの協同作業による金魚『HEAR』のほか、愛知芸術文化センター主催による音楽とのコラボレーション公演にて『プロメテウスの光』を発表して新展開を予感させる。遠田誠/まことクラヴはサイトスペシフィックな作品制作を続けるが、江戸東京博物館で発表した新作『東京立体図鑑』でも独自路線を歩む。森山開次×岡田利規『家電のように判りあえない』という演劇界・舞踊界のエッジーな才能の意表をつくコラボレーションも。

師弟関係やマーケットやプロデューサーの影響とは距離を起きつつ自らの力で自主公演の場を定期的に持ち、ぶれない活動をするアーティストも忘れてはならない。池上直子ダンスマルシェ『羽音(heart)〜光の幸福は・・影〜』深見章代高襟『悦楽晩餐舞踏会』などがそれにあたる。「女性であること」を徹底して追求する深見。異分野との協同作業を積極的に行う池上。人生は一回きりなのだから、やりたいことを自由に追求できるのは、何にも増して得難いことであろう(誰にでもできることではないが)。そのうえで、観客とも向き合った創作を展開しているのは、すばらしいことだ。

新鋭では、空間と身体の関係を常に問うボヴェ太郎『Lingering Imagery of Reflection —能《井筒》—』『Resonance of Twilight』などで卓越した踊りをみせつつ独自の美的空間を創造。関西中心の活動のため批評家や制作者で彼の動向をフォローしている人が少ないのは気にかかる。ストリートダンス出身で独自のムーブメントを追求し選曲や作曲にもセンスを示すKENTARO!!東京ELECTROCK STAIRS 『届けて、かいぶつくん』を発表した。ポップで楽しく切なく好感のもてる作風。好漢で、支持者を増やし各種助成金もふんだんに獲得し波に乗っている。コンテンポラリー・バレエ寄りともいえるが、児玉北斗小尻健太山田勇気の作品を発表した「project POINT BLANK 2011」も関係者やファンの熱い注目を浴びた。現代舞踊界若手舞踊家トップ級の米沢麻佑子が振付者として飛躍したのも特筆される。神奈川県芸術舞踊協会「モダン&バレエ」で発表した『呼吸と鼓動』は15分ほどの作品であるが非常な力作だ。多彩かつ緻密な振付術によるコンテンポラリーな質感の動きをモダンの力ある踊り手23名が技量高く踊りこなして圧巻の出来だった。

大学ダンス出身者の活躍が顕著だ。なかでもトヨタコレオグラフィーアワード2010 受賞者公演・プロジェクト大山『キャッチ マイ ビーム』を振付けた古家優里は注目される。スキルはあるし思慮深そう。演劇の振付の仕事が入るなど陽の当たる道を歩もうとしている。だが、ユニット単位ではどう展開していくのだろうか。「大学ダンスの限界」なんて言われないよう心して研鑽に励むことを求めたい。元プロジェクト大山で、横浜ダンスコレクションで賞を得て渡仏した長内裕美の新作『Namida』はフランスで創られたもののリ・クリエイション。抑制された動きの創出と、デュオという関係性を突き詰めた知性と構成に惹かれた。桜美林大学木佐貫邦子に師事し現在はさまざまなコンペや企画に参加している木村愛子は映像作家・美術家のヒグマ春夫とのユニットInfinie vol.1『氷中の星』で映像とダンスの新鮮なコラボレーションをみせた。

アートとエンターテインメントという壁を超える試みとして諸ジャンルの一線ダンサーたちが競演した『GQ Gentleman Quality 紳士の品格〜Chocolat ヘンゼルとグレーテルより〜』も今年を代表する舞台として挙げておきたい。専門筋の反応はともかく観客の異様なまでの熱気というか観劇中の集中力の高さは無視できないと思う。東京サンシャイン劇場での6公演がソールドアウト、大阪公演も盛況だった。いっぽう同公演を主催したCSB Internationalが秋に行った特別記念DANCE公演「Special Evening」は、新上裕也アレッシオ・シルヴェストリン(今年大活躍!)による禁欲的で極めて芸術性の高い作品のダブル・ビルで『GQ』とは180度異なる内容。その揺れ幅を受け入れ楽しんでいる観客層が出てきたのは大きく歓迎したい。

マイム系と目されるアーティストも活躍した。一世を風靡した「水と油」出身の小野寺修二は新展開のデラシネラβ『ロミオとジュリエット』を廃校の教室を活かした空間でロングラン上演。シンプルな空間での上演ながら才気と機知に富んだ作舞・演出で大人から子どもまで楽しめる秀作を作り上げた。CAVA(さば)『BARBER』はマイム・演劇・ダンスといった枠にとらわれず新たな表現を模索しつつ大人の楽しめる上質のエンターテインメント。今回はフランスの巨匠パトリス・ペリエラスが作曲し彼を含む楽団が生演奏した音楽も素敵で贅沢な時間を過ごすことができた。

以下は管見のなかからとお断りしておく。

舞踏では山海塾が日本初演の『二つの流れ−から・み KARA・MI』を発表。主宰の天児牛大は今秋、紫綬褒章を受けた。踏行四十周年記念独舞リサイタル・竹内靖彦『舞踏よりの召喚』もあった。若手では天狼星堂公演などで活躍するほかソロをいくつか発表した大倉摩矢子が印象的。

フラメンコでは、ARTE Y SOLERA率いる鍵田真由美・佐藤浩希が活躍した。自主公演で新機軸となるフラメンコレビュー『愛こそすべて』を発表。新国立劇場の近松DANCE弐題 Aプロでは『女殺油地獄』を放ち、近松の世界をアヴァンギャルドに描いて刺激的だった。名門・小松原庸子スペイン舞踊団の名花として名を馳せた石井智子石井智子スペイン舞踊団『ラ・ペテーラ〜運命の女の真実〜』で、テアトロ・フラメンコの新たな可能性を追求。2月にスペインのフェスティバル・デ・ヘレスに招聘された小島章司フラメンコ舞踊団は11月末に大震災追悼チャリティガラ「レクイエム」を行い、12月にはへレス招聘の『ラ・セレスティーナ〜3人のパブロ』を上演している。

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2011-12-14

[]洋舞2011 vol.1

2011年の舞踊界にとって大きな衝撃だったのは、いうまでもなく東日本大震災であろう。首都圏でも公演中止や延期が相次ぐとともにチャリティ公演や被災地への慰問公演を行うアーティストも現れた。「なぜ踊るのか」「ダンスに何ができるのか」などと自問する人も少なくなかったようだ。コンテンポラリー・ダンスの「作業灯、ラジカセ、あるいは無音」、バレエの「オールニッポンバレエガラコンサート2011」などアーティストが主体となって立ちあげたチャリティ・イベントは反響をよんだ。震災の爪痕は深く原発問題も収拾していない。折からの不況や助成金の削減等きびしい情勢でもある。そんな時代だからこそダンスの力・存在意義が問われているともいえるかもしれない。

回顧に入る。2010年12月〜2011年11月に行われた公演から振り返る。首都圏で上演されたバレエやコンテンポラリー・ダンス等洋舞の主要な公演の大方はフォローしていると思うが、個人的にみるべき/見たい思う公演を優先したケースもあるので、一部の重要/話題公演を見逃している。実見したもののなから選んで取り上げた。

今年多くの観客に感動をあたえたのはシルヴィ・ギエムではないだろうか。秋に東京バレエ団と共演しシルヴィ・オン・ステージ2011「HOPE JAPAN TOUR」を行った。東京での追悼ガラや福島・岩手公演の出演料は寄付された。それ以上に感動的だったのがその演技だ。エックとのコラボレーションによる新作『アジュー』では、ひとりの女性の人生の光芒を玄妙に描き共感を誘った。アシュトンの『田園の出来事』では、深い人間味を漂わせ演技者・女優としても深化していることを証明した。ボレロのメロディ役では、力強く大地を踏みしめるかのようなステップの端々に彼女の想いがこもっているかのよう。常に進化を止めない芸術家魂と日本への想いの深さに心打たれた。なお、同ツアー終了後、東京で、ロベール・ルパージュとラッセル・マリファントとのコラボレーション『エオンナガタ』がロンドン・パリに続いて上演された。

他の来日では年始のベルリン国立バレエ団『チャイコフスキー』(エイフマン振付)が多くのバレエ・ファンの心を捉えた。ウラジーミル・マラーホフの、役に憑依したかのような鬼気迫る演技への賞賛だろう。バーミンガム・ロイヤル・バレエ『真夏の夜の夢』では吉田都の客演が話題に。震災から間もないなか団を率いて来日し、チャリティ公演も行った芸術監督ビントレーに敬意を表したい。「マニュエル・ルグリの新しき世界2」、ファルフ・ルジマートフらによる「バレエの神髄」といったガラも大震災・原発事故の影響で内容変更等あったが無事上演された。アメリカン・バレエ・シアター『ロミオとジュリエット』『ドン・キホーテではスターが競演。ジュリエット役を好演したジュリー・ケントに賛辞が集まり、今回のツアーを持ってABTからの引退を表明したホセ・カレーニョの演技も印象的だった。日本ツアー後、ボリショイ・バレエに電撃移籍したデビッド・ホールバーグや女性では唯一全幕2作に主演したシオマラ・レイエスらの演技も評判高かった。コンテンポラリーでは、異才ジェローム・ベル『ザ・ショー・マスト・ゴー・オン』日本版が彩の国さいたま芸術劇場で上演され大きな話題に。コンセプチャルで人を食ったようなベル節が炸裂、賛否は大きく分かれた。ベルも望むところだろう。

国内バレエでは次の2作が業界注目の的だった。新国立劇場バレエ団『パゴダの王子』。芸術監督デビッド・ビントレーがジョン・クランコやケネス・マクミランらが挑んだブリテン曲に振付けたものだ。日本を舞台に変更し、ロマンス劇ではなく兄妹愛・家族愛を打ち出だした。ビントレーらしく手堅い作りであるものの全編に横溢するジャポニズムに対する評価中心に賛否割れた。続いて小林紀子バレエ・シアター『マノン』。マクミランの代表作を日本の民間のバレエ団としてはじめて上演した。タイトル・ロールを演じた島添亮子の演技ともども各紙誌では近来にないほどの絶賛を浴びている。

日本人アーティストでは首藤康之の活躍が印象深い。初の自主公演「DEDICATED」を行い、中村恩恵と共に踊り創った『Shakespeare THE SONNETS』を発表した。前者では以前にも組んでいるマイム畑の小野寺修二との協同作業で新たな身体表現を志向し、後者ではシェイクスピアの詩や戯曲をモチーフに極めて完成度の高い、そして奥深く玄妙な舞踊世界を生み出した。動向から目の離せない存在だ。

新潟発のNoism率いる金森穣の仕事も水際立っていた。外部から振付家を招いたNoism1「OTHERLAND」を行い、夏には、サイトウ・キネン・フェスティバル松本・バルトーク『中国の不思議な役人』(バレエ)『青ひげ公の城』(オペラ)を演出・振付した。後者では同プロダクションをもって中国公演を行い、フィレンッエでの上演も決まっている。研修生カンパニーNoism2も順調。Noism1の副芸術監督/メインダンサーの井関佐和子が心技体とも充実した演技を披露したのも特記したい。

来秋2012/2013シーズンからドイツのレーゲンスブルグ劇場バレエ芸術監督に就くという快挙を成し遂げた気鋭振付家・森優貴が古巣で発表した貞松・浜田バレエ団『冬の旅』も注目される。昨年秋に初演されたものを改訂再演し練り上げた。旅に出る若者の心象風景を寓意的・象徴的に描きつつ生と死の深遠をうかびあがらせる大作だ。音楽性豊かな振付とスケールの大きさと緻密さを兼ね備えた構成力に才気がある。加えて森は兵庫県洋舞家協会公演で新作『Flyng Zero』を発表している。

今年は帝国劇場開場から100年を迎え、ひとつの区切りとなる年でもあった。わが国の現代ダンスの先駆者のひとり・江口隆哉と宮操子にオマージュを捧げ、その作品群を未来へ繋ぐ試み「江口・宮アーカイヴ」が行われた。戦後バレエのパイオニアで今年生誕100年を迎えた小牧正英の業績を讃える東京小牧バレエ団・小牧正英生誕100年記念公演『ペトルウシュカ』『シェヘラザード』もあった。追悼・メモリアル公演ということでは、年始に行われた藤井公珈琲の会・藤井公追善公演「われは草なり」も忘れ難い。多くの優れた舞踊家・振付者を育てた巨人でありながら飾らない人柄で多くの人々に愛された藤井。その遺志を継ぐ弟子たちによる心こもる会だった。

国内バレエの新制作でいえば2月に東京バレエ団「ダンス・イン・ザ・ミラー」があった。ベジャールの旧作アンソロジー。ジル・ロマンが非常に巧みな構成に仕上げベジャールへのオマージュをささげた。日本バレエ協会・ワレンチン・エリザリエフ版『ドン・キホーテ』も楽しめた。薄井憲二会長が自信をもって放ったプロダクション。ゴージャスな作りで、主役・ソリスト・群舞も充実し志気の高い仕上がりだった。新作ではないが松山バレエ団・新『白毛女』が昨年の試演会を経て装いも新たに復活。久々に本公演で上演され秋には訪中公演を行い成功。森下洋子の舞踊歴60周年を飾った。

在京バレエ団がリスクを負いながら創作バレエのミックス・プロを行ったことは評価される。スターダンサーズ・バレエ団「振付家たちの競演」谷桃子バレエ団「創作バレエ・13 —女流振付3作品による」である。特に前者は鈴木稔、遠藤康行そして新進の佐藤万里絵の意欲作が並んだ。後者はコンテンポラリー・ダンスの木佐貫邦子に作品委嘱したが賛否両論で“ワークショップ的”とバッサリの声もあった。いずれにせよ今後とも続けてほしい企画だ。新国立劇場バレエ団「DANCE to the Future 2011」は同劇場のダンス部門の企画への出演という形態。キミホ・ハルバート『Almond Blossoms』の溢れる詩情と緻密な振付術が際立っていた。

我が国のバレエ界の中心になるべき新国立劇場バレエ団であるが、前記の『パゴダの王子』のほかビントレーの旧作として『アラジン』を再演し、こなれた出来だった。ビントレー作品『テイク・ファイヴ』を含む中劇場公演「ダイナミック ダンス!」が大震災直後のため中止になったのは残念だが2012/2013シーズンに仕切り直して上演されるので期待したい。マクミラン版『ロミオとジュリエット』7年ぶりの再演に関しては出来栄えに評価が分かれた。ダンサーではプリマが揃う。3月に芸術選奨新人賞を得た小野絢子のほか湯川麻美子、川村真樹、本島美和、長田佳世、米沢唯など。男性では福岡雄大が中川鋭之助賞を受賞して注目された。そして、劇場開設時から在籍し主役だけでなく脇でも活躍しバレエ団を支えた西山裕子が惜しまれつつ退団した。

民間では、東京バレエ団が公演数の多さに加えてバラエティに富んだ活動を展開。ギエムとのツアー、「ダンス・イン・ザ・ミラー」新制作のほか、大震災から間もない時期にベテランのイーゴリ・ゼレンスキーと新星マシュー・ゴールディングを急遽招いてマカロワ版『ラ・バヤデール』を高水準に上演した。8月に緊急開催された『ジゼル』でもロシアからディアナ・ヴィシニョーワとセミョーン・チュージンを招聘。著名アーティストのキャンセル相次ぐなか一流スターを直ちに招き質高い舞台を提供し国際信用力の高さと制作能力の高さをみせつけた。ダンサーでは上野水香と小出領子が目立った。

熊川哲也Kバレエカンパニーは3月にアシュトン版『真夏の夜の夢』を新制作し、とてもよい仕上がりだったが、大震災直後のため東京公演の一部が中止に…。見逃した人も多いだけに再演が期待される。他に『ロミオとジュリエット』等によって各地をツアー。名門大手の牧阿佐美バレヱ団は創立55周年を迎え記念シリーズを展開している。青山季可、菊地研が急成長を遂げたほか伊藤友季子、京當佑一籠がいるし、茂田絵美子、久保茉莉恵、日高有梨、清瀧千晴らイキがよく個性豊かな若手がどんどん出てきている。スターダンサーズ・バレエ団は前記の「振付家たちの競演」含め例年以上に多くの公演を行い存在感を発揮した。10月公演ではピーター・ライト版『コッペリア』を7年ぶりに上演。吉田都をゲストに迎え活気あふれる舞台をみせた。

東京シティ・バレエ団は江東区と芸術提携を結びティアラこうとうを拠点に地域密着姿勢を貫く。6年ぶりの『ジゼル』全幕などのほか小ホールでの創作バレエの夕べ「シティ・バレエ・サロン」を開催。中軸の志賀育恵と黄凱は見ごろの踊り手だ。谷桃子バレエ団は前掲の創作公演以外に新春公演『ラ・バヤデール』を上演している。齋藤拓、今井智也、三木雄馬、永橋あゆみ、佐々木和葉ら主役級にいいダンサーが揃っているのは強みだ。井上バレエ団はお得意のブルノンヴィル版『ラ・シルフィード』全幕と舞踊生活65年を迎えた芸術監督・関直人の『クラシカル・シンフォニー』を上演し気を吐いた。NBAバレエ団のトウールビヨン公演ではロプホフの『ダンス・シンフォニー』が再演された。舞踊史的に意義深い仕事である。今村博明と川口ゆり子の主宰するバレエシャンブルウエストは秋に創作バレエ『LUNA』を久々に再演。地元・八王子の新ホールにて『白鳥の湖』を披露した。恒例の「清里フィールド・バレエ」を2週間にわたって長期開催。被災地への慰問公演も行うなど幅広く活動した。

個人単位では篠原聖一DANCE for Life 2011『ジゼル』全幕を上演したのが特筆される。下村由理恵の至芸に多くの感動の声が寄せられた。松崎すみ子バレエ団ピッコロ『シンデレラ』はこじんまりした舞台だが、フリーランスとして活躍する気鋭プリマ・西田佑子がタイトルロールに客演し光彩を放った。ベテラン佐多達枝は合唱舞踊劇O.F.C.を中心に活動。『カルミナ・ブラーナ』『ヨハネ受難曲』『陽の中の対話』を再演した。佐多作品にも多く出演した足川欣也が初のプロデュース公演「PORTE AVENIR」を行い、佐多の『ソネット』、自身の旧作『クラリネット協奏曲』ほかを上演した。ラ ダンス コントラステ率いる佐藤宏も快作を連打。『Lallumette』『Le seau (ル・ソ)』のほか武蔵野シティバレエで発表した『ユーピテルJupiter』もあった。

首都圏外は管見のうえ主要なものに限るが所感を。関西最大手・法村友井バレエ団『バフチサライの泉』を10年ぶりに再演したほか初夏のロシア・バレエのトリプル・ビルで珍しいレパートリー『お嬢さんとならず者』を取り上げたが、これが逸品。同作に主演した法村珠里と奥村康祐は期待される踊り手だ。神戸の貞松・浜田バレエ団は「創作リサイタル」で先述の『冬の旅』を上演したほか『眠れる森の美女』全幕を上演。オーロラ姫を踊った瀬島五月が抜群の技量とオーラをみせた。最高に旬な踊り手だ。名古屋の松岡伶子バレエ団は篠原聖一を招き『ジゼル』全幕を上演したほかアトリエ公演で石井潤の代表作『カルミナ・ブラーナ』を上演した。塚本洋子の主宰するテアトル・ド・バレエカンパニーは芸術監督・深川秀夫版『白鳥の湖』を上演。

名古屋や大阪では創作でも意欲的な上演があった。大阪の地主薫バレエ団「ロシアバレエ トリプル・ビル」ではロシアの新鋭コンスタンチン・セミョーノフに委嘱して音楽性豊かでセンスのいいコンテンポラリー・バレエをものにした。男女ともダンサーの練度もじつに高く驚嘆させられた。名古屋の川口節子バレエ団創作公演「舞浪漫-My Roman- 2011」では、川口節子がツルゲーネフの『初恋』を舞踊化。少年の性の目覚めや苦悩をドラマティックかつ、みずみずしいタッチで描き切った。大阪の矢上恵子も注目される。夏に初演された『Mitra-3M』(MRB松田敏子リラクゼーションバレエ「バレエスーパーガラ」で上演)は矢上自身と福岡雄大、福田圭吾によるトリオ。エネルギッシュな動きと意想外な展開が相俟って、たとえようもないくらいスリリングだった。

(vol.2に続く)




SHUTO ダンサー首藤康之の世界

SHUTO ダンサー首藤康之の世界

2011-12-09

[]黛敏郎 没後15年

来年2012年は作曲家・黛敏郎(1929〜1997年)の没後15年にあたる。それを記念してのイベントが続いており、先日はオペラ『古事記』(1996年)が日本初演された。

黛は生涯を通し幅広いジャンルの曲を書いた。 管弦楽・吹奏楽・室内楽・器楽・声楽・オペラ等に加え映画音楽や電子音楽も手掛けた。ミュージック・コンクレートはじめ電子音楽をいち早く日本に紹介するなど先鋭的な活動を続けた。映画「天地創造」(1966年)では米アカデミー賞にノミネートされる。我が国を代表する現代音楽の巨匠のひとり。

バレエやダンスの音楽に関わってもいる。

バレエ音楽としては、まず「BUGAKU(舞楽)」(1962年)が有名だろう。ニューヨーク・シティ・バレエのジョージ・バランシンから委嘱されたもので、雅楽の舞をモチーフにしている。後年、モーリス・ベジャールが東京バレエ団に振付けたことでも知られよう(1989年)。日本でも牧阿佐美が取り上げている(1968年)。

東京バレエ団とのコラボレーションは長きにわたった。まず、1969年の創立5周年記念公演でミシェル・ディスコンベが「曼荼羅交響曲」(1962年)を用いて『曼荼羅』を上演。そして、1986年にはベジャールが「忠臣蔵」を題材として振付けた『ザ・カブキ』の音楽を書き下ろす。結果的にクライマックスとなる場面には代表作で声明のような男性コーラスが印象的な「涅槃交響曲」(1958年)が使われることになったがバレエ曲の代表作とした。さらにベジャールの『M』(1993年)にも書き下ろしで楽曲提供している。

他にも様々な形で日本の舞踊界に関わってきた。1953年には近藤玲子バレエ団公演にて原作:加藤道夫による『思い出を売る男』を作曲。牧阿佐美バレヱ団は牧阿佐美と三谷恭三の振付によって『曼荼羅交響曲』を発表し、1990年のソビエト公演で上演した。創作バレエへの意欲を燃やし続けているスターダンサーズ・バレエ団の千葉昭則振付『バレエ・アルバム2』(1974年)の作曲も黛である。また、詩人・瀧口修造の下に集った芸術家たちが結成した実験工房によるバレエ実験劇場第1回公演(1955年)において『未来のイヴ』の作曲を手掛けた(武満徹と共作)。1959年に始まった650 DANCE EXPERIENCE の会では暗黒舞踏の創始者・土方巽らとの協同作業も行っている。今秋亡くなったモダンダンスの巨星アキコ・カンダのリサイタルにも曲を提供した。

今月末に東京バレエ団が『ザ・カブキ』を再演する。初演から25周年となることを祝して、また、来年5月のパリ・オペラ座公演に先駆けてのキックオフ的な意味合いもあるようだが、黛の没後15年追悼ともなった。さらに来年3月には東京フィルハーモニー交響楽団が「和の美学―燃焼するMayuzumi Sound」と題して「BUGAKU」「涅槃交響曲」含む四曲を取り上げるようだ。黛の音楽をあらためて振り返る契機になろう。


黛敏郎:曼荼羅交響曲/舞楽

黛敏郎:曼荼羅交響曲/舞楽



黛敏郎の電子音楽

黛敏郎の電子音楽

2011-12-05

[]バレエ・ダンス・フラメンコ情報誌「DANZA」のリニューアル

バレエ・ダンス・フラメンコ情報誌「DANZA」(東京MDE)が11/18発行の第37号からリニューアルした。これまでの隔月刊から季刊になる。

バレエ・ダンス・フラメンコ情報誌 DANZAのデジタルマガジン

http://www.mde.co.jp/danza/

A4オールカラー。「ダンス」をキーワードに様々なカルチャー・シーンを紹介するという触れ込みだ。同誌はフリーマガジンとして全国の劇場やバレエ・ショップ等で無料配布されるほかデジタル版が公開されている。そちらのコンテンツも充実させるという。

誌面が大きく読みやすくはなった。が、ページ数が減り紙質が落ちた。レビューコーナーが無くなったのは非常に残念。以前よりもパブリシティ色が強くなった感がある。リニューアル前からその傾向はあったがミュージカル系記事を増やしていくようだ。

どういう理由でリニューアルしたのか知る由もないが規模縮小であることは否めない。このご時勢だから致し方ないと思う。文化庁・芸術文化振興基金の助成対象として広告宣伝費が認められなくなったというのもメディアにとって打撃になる。ここ7〜8年あまり、10年前ならば大きな広告を出すことなどなかったような団体が専門媒体に目立つ広告を出せるようになったのも少なからぬ額の助成金が行き渡ったからといえるだろう。新興媒体ながら派手な作りと無料配布という太っ腹で一躍名を成した同誌などその恩恵を最大限受けてきたのではないか。それが減少したり無くなるとすれば…。

「DANZA」が先を見越してか知らないが7年目に入るタイミングでリニューアルしたのは賢明ともいえる。季刊にし、編集体制をスリムにして、一定の広告を取ってくることができれば続くという判断があるのかもしれない。デジタルコンテンツの展開は注目される。舞踊メディアの今後の有り様を考えさせられる今回のリニューアルである。

2011-12-02

[]芸術院会員候補決定

文化庁は1日、平成23年度日本芸術院会員候補者を発表した。

平成23年度日本芸術院会員候補者の決定について

http://www.bunka.go.jp/oshirase_other/2011/pdf/h23_geijutsuiin.pdf

第三部(音楽・演劇・舞踊)では能楽の友枝昭世、日本舞踊の花柳壽輔が選ばれた。

友枝はシテ方喜多流の名門に生まれ育った。舞踊絡みでは、2005年10月に新国立劇場オペラ劇場で行われた平成17年度(第60回記念)文化庁芸術祭オープニング「ジゼル」〜能とバレエによる〜と題された公演において、新作能『ジゼル』のジゼル役を演じたことが記憶に新しい。新作能の上演後、新国立劇場バレエ団が『ジゼル』第2幕を上演し、先日惜しまれつつ新国を去った西山裕子がジゼル役を踊っていた。

花柳は花柳流宗家の四世家元。前名は五代目花柳芳次郎で、いまから25年前の1986年にはモーリス・ベジャールが東京バレエ団に振付けた『ザ・カブキ』の所作指導を務めた。今秋、シルヴィ・ギエムの「HOPE JAPAN TOUR」特別チャリティ・ガラに参加し、和太鼓の林英哲、横笛の藤舎名生という名手と組んで『火の道』を発表している。